多摩川河口の自然を考えるシンポジウム2015 - TOKYO

野 鳥・Tokyo
「多摩川河口の自然を考えるシンポジウム2015」
の開催にあたって
日本野鳥の会神奈川支部副支部長・〔公財〕日本野鳥の会評議員 石井 隆 多摩川河口の「羽田連絡道路(仮称)」建設に向
う情報があります。橋の取り付け部分は、国土交
けて、行政側の準備が最終段階に入っています。
通省や神奈川県も担当する都県境であることや、
道路計画には様々な計画段階があり、都市計画決
空港も関係するという複雑な状況もあります。ま
定→道路計画→アセスメント→用地買収→実施設
た大田区側がいままで反対していたのは、川崎市
計→予算→建設という手順が一般的です。しかし
側の工業地帯の大型トラックが大田区の環状八号
今回の羽田連絡道路は、国際戦略特区ということ
線や大井埠頭方面に流入する場合に、大田区の市
で、既存の手続きの緩和により、色々な作業が一
街地を通過するという懸念ですが、その問題の検
気に進められています。多摩川の国際戦略特区は、
討と解決策も不明です。
行政側の内部組織で法的な裏付けもありません。
もっとも基本的な問題は、約5kmの範囲に首都
もちろん、市民参加や詳しい情報公開もありませ
高速横羽線、国道15号線、首都高速湾岸線が既に
ん。色々な問題が出た“東京オリンピック問題”
存在していて、国道357号線の多摩川トンネルの
と同じ構図で進んでいます。川崎市・東京都・国
建設も決まりました。その上、都市計画上の位置
土交通省・内閣府などの行政機関内で審議が進ん
づけのない羽田連絡道路が、造る必要性の議論が
でいてルートや構造が確定しました。以前の検討
ないまま進行してしまいました。その原因は、行
組織では、環境や広域的な交通体系の検討があり
政の枠組みの中で議論された事にあると考えま
ましたが、今回はその経過は明らかにされずに、
す。内閣府は「川崎市の要望が強い」、川崎市は「内
多摩川河口干潟の中央部を横断するルート、構造
閣府の主導で行っている」、大田区は「国道357号
は橋梁構造となりました。
線の先行整備」など、担当からの責任ある回答も
今回の連絡道路では、自然環境への影響調査は
なく、自民党の菅官房長官の記事のスクープで建
行われません。例えば、上流ルートは干潟への破
設の方向が確定した事から、政治主導が透けて見
壊が最小になるとか、下流ルートは干潟への堆砂
えます。また東京オリンピックまでの完成が予算
影響が少ないなどの検討経過は行われた形跡はあ
獲得の関係で必要という声もあります。様々な検
りません。中央ルートはシギ・チドリ類の飛来に
討が未消化のまま進行する東京オリンピックが時
関して最悪のパターンです。ルート案の上流部は
間制約だという問題があります。
シギ・チドリ類の飛来数が多数を占めます。その
現実的な状況としては、6月~10月は多摩川の
ため橋が架かるとシギ・チドリ類は橋梁上空を通
増水期にあたるので建設工事は出来ません。2016
過する事を避ける傾向があるので、その利用が激
年~2020年までの4回の工事期間で本当に完成出
減する事が予想されます。
来るのでしょうか? そんな短期間工事で津波や
交通体系では、年間1万人が羽田空港から川崎
地震に耐えられるのでしょうか?問題点ばかりが
市の殿町地区研究所に移動があるという試算があ
見えてきます。
ります。1日約30人です。このために約400億円
前号で案内しました10月31日のシンポジウムで
と言われる建設費を投入する意味があるのでしょ
は、新しい見解や意見も出ると思います。また、
うか? 川崎市市民や羽田空港利用者は京急線や
まだ最終的な予算も決まっていません。署名や要
モノレールがあるのに、自家用車でわざわざ湾岸
望も含めて今後も活動の支援をお願いします 。
線や横羽線から迂回して道路を利用する人がいる
のでしょうか? 予算は橋梁部分では東京都と川
このシンポジウムの開催場所・プログラムについ
崎市が折半で、維持管理は川崎市が担当するとい
ては、10月号10ページをご覧ください。
ユリカモメ No.721 2015.11
3