Hirosaki University Repository for Academic Resources Title Author(s) Suppression of Starvation-Induced Autophagy by Recombinant Toxic Shock Syndrome Toxin-1 in Epithelial Cells Asano, Krisana Citation Issue Date URL 2015-09-30 http://hdl.handle.net/10129/5669 Rights Text version author http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/ 医共リポ様式1 機 関 リポジトリ登 録 用 論 文 の要 約 論文提出者氏名 弘前大学大学院医学研究科感染生体防御学講座 氏名 浅野 クリスナ ( 論 文 題 目 ) Suppression of starvation-induced autophagy by recombinant toxic shock syndrome toxin-1 in epithelial cells (遺 伝 子 組 換 え 毒 素 性 シ ョ ッ ク 症 候 群 毒 素 -1 に よ る 上 皮 細 胞 の 飢 餓 誘 導 オートファジーの抑制) (内容の要約) Staphylococcus aureus (以 下 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 )は 、 生 命 に 関 わ る 症 状 を 含 む 様 々 な 感 染症状の原因となる重要なヒト病原体である。従来本菌は細胞外増殖菌として扱わ れ て き た が 、近 年 で は 、細 胞 内 へ の 侵 入 と 増 殖 が 報 告 さ れ て お り 、ケ ラ チ ノ サ イ ト 、 線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞などの様々な非免疫性貪食細胞に感染することが 知られている。本菌感染機構においては、酵素及び毒素を含む様々な病原因子が重 要な役割をもつ。 毒 素 性 シ ョ ッ ク 症 候 群 毒 素 -1(以 下 TSST-1)は 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 に よ り 産 生 さ れ る 発 熱性スーパー抗原の 1 つで、宿主免疫系を強く賦活するメカニズムが明らかになっ て い る 。こ の 毒 素 は 、抗 原 提 示 細 胞 の 主 要 組 織 適 合 複 合 体 ク ラ ス II 分 子 と 、Vβ element を有する T 細胞受容体の間で架橋を形成し、T 細胞の盛んな増殖と非制御性の炎症 性 サ イ ト カ イ ン 放 出 を 惹 起 す る 。 一 方 近 年 の 報 告 で は 、 TSST-1 が 内 皮 細 胞 及 び 上 皮 細胞の未知の受容体に結合し、細胞内に侵入することが示唆された。加えて、マウ ス に 遺 伝 子 組 換 え TSST-1(以 下 rTSST-1)で 免 疫 す る と 、黄 色 ブ ド ウ 球 菌 感 染 に 対 し て 予 防 効 果 を 示 す こ と が 明 ら か と な っ た 。こ の 際 、TSST-1 特 異 的 な 抗 体 が TSST-1 の ス ー パ ー 抗 原 活 性 を 中 和 す る だ け で は な く 、 TSST-1 特 異 的 細 胞 性 免 疫 に よ り 宿 主 組 織 に お け る 細 菌 の 増 殖 を 抑 制 し て い る と 考 え ら れ 、 TSST-1 が ス ー パ ー 抗 原 活 性 以 外 の 生物活性をもつことが示唆された。病原性細菌が宿主細胞に感染する過程では、宿 主防御機構であるオートファジーが誘導され、細胞内の細菌はライソゾームに捕 捉・分解される。これに対して、病原菌の中には、オートファジーを回避あるい破 綻させて、自身の増殖を促進する戦略をもつものが報告されているが、黄色ブドウ 球 菌 と オ ー ト フ ァ ジ ー 機 構 の 相 互 作 用 に つ い て は 不 明 で あ っ た 。そ こ で 本 研 究 で は 、 TSST-1 の 上 皮 細 胞 オ ー ト フ ァ ジ ー に 対 す る 作 用 に つ い て 解 析 を 行 っ た 。 宿 主 細 胞 の オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム を 可 視 化 す る た め 、 ヒ ト 子 宮 頸 癌 細 胞 株 HeLa 229 に EGFP-hLC3 を 導 入 し た 。 こ れ を 飢 餓 条 件 で 培 養 す る と 、 オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム の 形 成 を 示 す GFP-LC3 の ス ポ ッ ト が 、 通 常 の 培 養 条 件 に 比 べ 著 明 に 増 加 し た 。 こ れ ら は 、rTSST-1 の 添 加 で 明 ら か に 減 少 し 、TSST-1 が HeLa 229 に お い て オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム 形 成 を 抑 制 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。こ の 際 、rTSST-1 は オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム と ラ イソゾームの融合を促進しなかった。さらに、ライソゾーム酵素に対する阻害剤の 添 加 で は 、rTSST-1 に よ る オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム の 減 少 は 回 復 し な か っ た 。こ れ ら の 結 果 か ら 、rTSST-1 は オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム ラ イ ソ ゾ ー ム の 融 合 と オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム 分 解 を 促 進 し て い な い と 考 え ら れ た 。ま た 、rTSST-1 に よ る オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 効 果 を LC3 の 免 疫 染 色 と 電 子 顕 微 鏡 観 察 に よ り 形 態 的 に 確 認 し た 。 ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ で は 、 rTSST-1 は 細 胞 内 の LC3-II の 蓄 積 を 用 量 依 存 的 に 抑 制 し て お り 、 同 様 の 効 果 は オ ー ト フ ァ ジ ー 誘 導 剤 の rapamycin を 添 加 し た 場 合 も 確 認 さ れ た 。 TSST-1 の オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 効 果 を さ ら に 検 証 す る た め 、 pEGFP-hLC3 を 導 入 し た HeLa 229 に 野 生 型 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 (以 下 WT)と TSST-1 欠 損 型 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 (以 下 Δ tst)を 感 染 さ せ 、 細 胞 内 の GFP-LC3 を 示 す ス ポ ッ ト 量 を 解 析 し た 。 こ の 結 果 、 Δ tst で は WT に 比 べ GFP-LC3 の ス ポ ッ ト が 多 く 分 布 し て い た 。こ れ よ り 、TSST-1 を 産 生 す る 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 が 感 染 過 程 に オ ー ト フ ァ ジ ー を 抑 制 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 Δ tst 感 染 で の GFP-LC3 ス ポ ッ ト の 増 加 は 、 ヒ ト 腎 臓 上 皮 細 胞 株 HEK293 と ヒ ト 小 腸 上 皮 細 胞 株 407 で も 見 出 さ れ た 。ま た 、黄 色 ブ ド ウ 球 菌 の 感 染 に お け る オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 効 果 を ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ で 解 析 し た 結 果 、 Δtst を 感 染 さ せ た 宿 主 細 胞 内 で の LC3-II の 蓄 積 は 、rTSST-1 の 添 加 に よ り 減 少 し た 。さ ら に 、オ ー ト フ ァ ゴ ゾ ー ム 抑 制 が TSST-1 の ス ー パ ー 抗 原 活 性 に よ る も の か を 検 証 す る た め 、 LC-3-II の 蓄 積 を 誘 導 し た HeLa 229 に rTSST-1、 ス ー パ ー 抗 原 活 性 欠 損 TSST-1(以 下 mTSST-1)、 及 び 他 の ス ー パ ー 抗 原 で あ る 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 エ ン テ ロ ト キ シ ン (SEA、SEB、SEC)を 添 加 し た 。 こ の 結 果 rTSST-1 と mTSST-1 は 同 様 の オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 活 性 を 示 し た 一 方 、SEA、 SEB、SEC は い ず れ も 、オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 効 果 を 示 さ な か っ た 。こ れ ら の 結 果 か ら 、 TSST-1 の オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 効 果 は 本 毒 素 に 特 異 的 で あ り 、 ス ー パ ー 抗 原 活 性 が 関 与しない新たな機能であることが明らかになった。 TSST-1 に よ る オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 効 果 の 意 義 に つ い て は 今 後 解 明 が 待 た れ る が 、 黄色ブドウ球菌の感染に貢献している可能性がある。本菌は健常人に常在する細菌 として知られ、宿主の免疫応答を逃れるため粘膜上皮表面や細胞内に潜在する戦略 をもつ。特に、細胞内に侵入後は、宿主の細胞死を誘導せず共存しながら細胞内宿 主防御機構を回避あるいは不活性化するため、オートファジーをダウンレギュレー ト す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。 従 っ て 、 TSST-1 に よ る オ ー ト フ ァ ジ ー 抑 制 効 果 は 本菌が細胞内に潜在するための重要な戦略の 1 つである可能性があり、今後さらに 検証を進める予定である。
© Copyright 2024 ExpyDoc