理事長通信12月号 組織の永続性に向けての人事について

合掌
12 月に入り、
「今年の 10 大ニュース」が紙面で見られる時期になりました。パリ同時多発テロ
の発生からも早 1 ヶ月が経とうとしていますが、IS(イスラム国)による最初の日本人犠牲者が出た
のは 1 月でした。日本人にとって衝撃的だったこの事件の記憶そのものももちろんですが、私たちの
記憶の中には過去の出来事がどのような時間の経過として残っているのでしょうか。歳を重ねるにつ
れ、時が経つのが早く感じられるようになるのは誰しも同じでしょうが、歳をとると 1 年が短く感じ
られることを心理学的に解明した法則(“ジャネーの法則”)というのもあるそうです。東日本大震災
の発生から 5 年も経っていないのにそれ以上に過去の出来事になってしまったように感じられます。
時の経過は過去の出来事をあっという間に私たちの記憶の外に素っ飛ばしていくような気がします。
米軍基地問題(辺野古訴訟)で国と県の法廷闘争が始まりました。司法がどのように判断するのか注
目されるところですが、風化してしまった“風化させてはならない出来事”に思いを巡らせることか
ら始めなければならない問題や課題が私たちの周りに山積しているように思います。
さて、久しぶりに本を処分していたら、昭和59年に日本経済新聞社から発行された「会社の寿命」
という本が出てきました。当時、“企業の寿命30年の法則”が話題になったことが思い出されます。
企業には必ず寿命がある。少数の事業にこだわり続けると、そう遠くない将来に衰退し、没落して行
く、限りある寿命を延ばす唯一最大の方法は「変身」であり、その基本条件は働く人間が仲良しクラ
ブでなく、その組織がどう変わるかである。企業繁栄のピークはわずか30年、一業に固執し、環境
適応できないと、名門・大企業といえども没落する。変身を忘れた進化なき企業は生き残れず、変身
するためには規模の大小を問わず、リーダーたる経営者の人間的な努力に尽きる云々、と述べられて
いました。事業運営の中で、事業承継は大きく「経営の承継」と「財産の承継」に分けられ、おおむ
ね 10 年程度を費やすとされています。まず、後継者候補の選定から始まり、承継先には親族や従業
員、外部招聘やM&A 等がありますが、25 年前(1990 年)は約 7 割の企業が親族承継で、従業員
や外部招聘、M&A の手法は約 3 割に過ぎなかったということでした。しかし、2012 年の統計では
親族承継の割合は約 5 割に低下しており、従業員への承継は約 4 割までに増加していることと、外部
招聘や M&A が増加傾向にあるということでした。後継者選定にあたっては、候補者の「資質や能力」
とは別に「承継資金(贈与・相続税、株式買取資金)の負担」が挙げられ、特に承継資金の問題は事
業承継をより難しくしているとのことです。身近なところでは、県連顧問をお願いしてきた㈱デンソ
ーのトップ人事が記憶に新しいところです。5 年前にデンソー本社へ県連顧問をお願いしに伺った時
の有馬現社長は当時常務役員、その後専務役員を経て今年 6 月末に役員序列で 14 人抜きの大抜擢で
“4 兆円企業”のトップに昇格されました。国際競争が激化する中で、競争力強化を目指した若返り
は大企業において特に今年多くみられたようで、取締役を経験していない幹部からの抜擢も多く、世
代が離れた後継者に会社の変革を託し、長期的な成長戦略を担わせる狙いがあるようです。各社のグ
ローバル戦略を背景に、海外などで経験を積んだ人材を実力本位で選ぶ傾向も強まっているようで、
事業承継・組織の永続性に向けて従来型のトップ人事(副社長からの昇格等)に変化の兆しが出てき
ていると言えそうです。一方、企業とは根本的に異なる我が組織も創始 70 年を 2 年後に控えていま
す。当然のことながら、組織の永続性に欠かせないトップ人事は気になるところでもあります。昨年
のインターハイ正式種目化以降、一段と評価が高まった感のある“青少年の健全育成”に資する教育
システム、
「人づくりによる国づくり」を標榜する組織にとっては何よりも円滑な移行によってより強
固な組織づくりと運営が望まれます。
11 月 30 日、合田清一先生が逝去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。
※10・11 月は諸般の事情で理事長通信が発行できませんでした。多くの方々からご心配をいただき
ました。心より感謝申し上げます。
2015.12.1