研究テーマ:溶融石炭灰に対する高耐食性材料の開発 (NEDO研究基盤

研究テーマ:溶融石炭灰に対する高耐食性材料の開発
(NEDO研究基盤施設活用型先導的基礎研究調査事業)
研究目的 :石炭燃焼ガスを利用するガスタービン複合発電システムは、腐食性の高い灰分を発生することから従来の熱交換器材料では
高温強度や耐食性が不足する。従って、高温で高強度を持った耐食性の高い材料の素材創製を行い、市販材料を含めた素材 の耐食性の評価を行って、耐食性に優れた高温材料を開発する。
今後の課題:高温腐食環境下でも素材に悪影響を与えない緻密化用の助剤ならびに結晶成長抑止剤の選定、耐熱衝撃性および用途を考慮
した複雑な成形体の製造など。
波及効果 :他の高温腐食環境部材、例えばゴミ焼却炉の部材への使用 曲げ強さ(MPa)
成果の概要
1. 素材創製用組成の調査 :Cr2O3 単味と3Al2O3-Cr2O3の創製材は、高温での耐食性ならびに力学特性等の観点から組織の緻密化と結晶成長を抑制することが
必要と考えられたので、最適な助剤の選択とその添加量について調べた。
その結果、Cr2O3単味並びに3Al2O3-Cr2O3は共にMgOの添加が最も効果が認められ、その添加量はCr2O3単味では、0.5%のAl2O3Cr2O3 では1%添加で十分であったので、放電プラズマ燒結法用いてこれら素材の創製を行い、各評価試験に供した。
2. 石炭灰による高温耐食性の評価 :実際の大同炭由来の石炭灰を用いて、1500と1550℃で長時間の高温腐食試験を行った。市販材料は、非酸化物系のSiCと
酸化物系のムライトを試験したが、SiCが優れていた。一方、創製材であるCr2O3単味と3Al2O3-Cr2O3は共に結晶成長抑止剤
の添加にもかかわらず、良好な耐食性を示した。
3. 力学特性改善に関する評価 : 1500と1550℃で長時間の高温腐食試験を行ったのち、所定の高温下で曲げ試験を行って腐食前後の曲げ強さの劣化の程度を
評価した。その結果、1550℃までの範囲内では、市販並びに創製材を含めてSiC材が最も優れていた。また、創製材については、
Cr2O3単味が高温クリープも少なく酸化物系としては驚異的な値を示した。
4. Mo系合金へのMoSi2皮膜 :Mo板材をAl-Si融液に浸漬して皮膜を形成させて耐酸化性を評価したところ、皮膜の亀裂により酸化の進行が阻止できなかった。
形成による耐食性改善
そこで皮膜界面のモデル実験をした結果、非晶質石英は石炭スラグとの反応により、結晶化して、クリスバライトになる。この結晶の冷却時
の変態による体積変化のための亀裂が発生することが分かった。従って、SiO2単独で耐食皮膜の形成は困難なので、変態のない
ムライト、アルミナ等が耐食性皮膜候補として可能性が大きいことを見出した。
500
400
300
200
100
0
1550℃x0h
1550℃x200h
SiC
ムライト
Cr2O3
図1 1550℃における高温腐食前後の曲げ強さ
変化の比較
(用語の説明)
・放電プラズマ燒結:黒鉛製モールド中に原料粉末を充填し、通電加熱を行うこにより粒子間にアークを発生させ、 粒子成長の少ないまま短時間で粉末を燒結させる方
法。溶融温度が異なる異種材料同士、粒子が粗大化するのみで燒結できない何燒結素材でも燒結が可能。