初期含水比や密度の違いが降下軽石層の力学特性におよぼす影響 農学部 肥山 浩樹 1.はじめに 降下軽石層は,主に桜島を噴出源とした大規模なプリニアン噴火の降下火砕堆積物であ り,軽石を多く含む土壌である。主に九州南部に分布しており,鹿児島県では 10 層以上 にわたって堆積している。この中で,特徴的な層は「ぼら」や「大隅降下軽石層」と呼ば れることがある。降下軽石層は,透水性が高く,風化とともに粘土化することから,たび たび斜面崩壊の素因となっている。このため,しらすや赤ほやと同様,特殊土壌に指定さ れている。しかしながら,しらすと比較して賦存量が少なく,詳細な土質力学特性があま り報告されていない。 本研究では,比較的風化の進んだ降下軽石層を採取し,室内において一面せん断試験を 実施した。地山密度を基準に,供試体の締固め密度を3通りに変化させ,締固め密度とせ ん断特性の関係について検討した。また,締固めたままの不飽和状態の供試体を用いて, せん断中に水浸することで生じる強度低下や体積変化を測定し,飽和度の上昇にともなう 力学特性の変化について検討した。 2.実験材料と実験方法 (1) 実験材料 実験に用いた試料は,鹿児島県鹿屋市吾平町の丘陵地において採取した。ここには大隅 降下軽石層と考えられる降下軽石層が約 2m の厚さで堆積しており,その下層に四万十層 系の不透水層が存在した。現地での試料の様子を写真 1 に示す。この降下軽石層の上部は 白色で下部は黄色であった。以下,これらの試料をそれぞれ A 試料,B 試料と表す。いず れの試料も堆積時の軽石の形状が残っておらず,比較的風化の進んだ降下軽石層と判断さ れた。採取した試料を写真 2 に示す。 採取した試料を室内に持ち帰り,まず,乾燥密度ρ d ,自然含水比 w n ,土粒子密度ρ s , 粒度分布および強熱減量 L i を測定した。乾燥密度試験は,現場で乱さない試料を 100cm 3 採土円筒に採取し,室内で全量を炉乾して行った。土粒子密度試験は JIS A 1202 に準じて 行った。使用したピクノメータは 50cm 3 で湯煎の代わりにホットプレートを用いた。加温 時間は 6 時間とした。粒度試験は JIS A 1204 に準じて行ったが,分散剤として水酸化ナ トリウム溶液を用いた。強熱減量試験は JIS A 1226 に準じて行った。800℃の電気マッフ ル炉で 2 時間強熱し,恒量になったことを確認した。得られた結果を表 1 と図 1 に示す。 いずれの試料も降下軽石としては高いρ s を持ち, w n も比較的高い値を示した。また,無 機質系の試料としては L i が高く,いずれの試料も風化が進んでいることが推察された。粒 度は似たような分布を示したが,上層に位置する A 試料の方が B 試料より細粒分が多い。 両者とも粒度分布が良く,地盤材料の工学的分類では細粒分質砂(SF)に分類される。しか しながら,地山の乾燥密度は大きく異なり,B 試料のそれは砂質土としてはかなり小さい 値を示した。 - 77 - A試料 B試料 写真 1 試料採取状況 写真 2 表1 試料の状態 試料の物理的性質 w n (%) A試料 3 ρd (g/cm ) 1.21 B試料 0.74 67.64 47.19 3 ρs (g/cm ) L i (%) 2.612 3.99 2.520 4.92 通過質量百分率 ( % ) 100 80 A試料 B試料 60 40 20 0 0.001 0.01 0.1 粒 径 d ( mm ) 図1 試料の粒径加積曲線 - 78 - 1 (2) 実験方法 降下軽石層の力学特性を把握するために,4.75mm ふるい通過試料を用いて一面せん断 試験を行った。試験は,密度を変化させて通常の飽和試料一面せん断を行うものと,締固 めた不飽和状態のままでせん断を行うものの2通りを実施した。前者を初期水浸試験,後 者を途中水浸試験と称する。 初期水浸試験の供試体の初期乾燥密度ρ d は,A 試料で 1.05,1.21,1.37g/cm 3 ,B 試料 で 0.66,0.74,0.89g/cm 3 とした。いずれの試料も,中位の密度が地山の密度にほぼ相当 する。供試体の作製は以下の手順によった。まず,できるだけ自然含水比に近く,締固め たときに飽和度が 100%を越えないように含水比を調整した。A 試料では 25~50%,B 試 料では 58~77%であった。含水比調整した試料を直径 6cm の鋼製のカッターリングに入 れ,高さ 2cm で所定の密度になるように突固めた。 実験には改良型(三笠式)一面せん断試験機を用い,排水条件は圧密排水(圧密定圧) と圧密非排水(圧密定体積)とした。圧密圧力σ c は 50,100,200,300kN/m 2 の 4 通り であり,せん断速度は 0.1mm/min とした。供試体を試験機に設置し,5kN/m 2 で加圧板を 密着させ,下部ポーラストンから注水することで飽和させた。その後,所定の圧密圧力で 圧密し,せん断に移行した。せん断箱の隙間は 0.2mm とし,7mm までせん断変位させた。 なお,垂直応力(圧密圧力)は載荷側のみで測定し,反力側では測定していない。 途中水浸試験は A 試料についてのみ行った。水浸によるコラプス現象を確認するために, 含水比を約 18%に調整した。これ以外の供試体作製方法は初期水浸試験と同じである。試 験機,圧密圧力およびせん断速度も初期水浸試験と同じである。排水条件は圧密排水のみ である。供試体を試験機に設置し,5kN/m 2 で加圧板を密着させ,注水することなく,不 飽和状態のまま所定の圧密圧力で圧密した。圧密終了後,直ちにせん断に移行した。せん 断中,せん断応力が最大値を示したところで下部ポーラストンから注水することで水浸さ せ,そのまません断変位 8mm まで試験を継続した。ひずみ硬化型の供試体の場合,せん 断応力の最大値を確認することが困難である。この際にはせん断変位 7mm で水浸した。 3.実験結果と考察 (1) 初期水浸土 初期水浸土について,A 試料の圧密排水せん断試験結果を図 2 に示す。緩詰め(ρ d = 1.05g/cm 3 )試料と中位詰め(ρ d =1.21g/cm 3 )試料のせん断応力τはほぼ同程度であるが, 密詰め(ρ d =1.37g/cm 3 )試料のそれは急激に増加する。密度が小さく垂直応力(圧密圧 力)σが大きい供試体の応力τ-変位δ曲線はひずみ硬化を示すが,密度の増加と垂直応 力の減少にともないひずみ軟化型に遷移する。せん断中の体積変化(垂直変位 H )は,せ ん断開始時に減少し,ダイレイタンシーが負である。体積変化はせん断の進行中に徐々に 増加に転じ,この増加傾向は密度が大きく垂直応力が小さい供試体ほど顕著である。最終 的にせん断開始時よりも体積が増加した(ダイレイタンシー正)供試体は,全ての密度に おけるσ c =50kN/m 2 と密詰めのσ c =100kN/m 2 の場合であった。 A 試料の圧密非排水せん断試験結果を図 3 に示す。せん断応力は圧密排水せん断試験結 果(図 2)と同程度の値を示した。せん断中の垂直応力は,緩詰め試料ではせん断の進行 とともに緩やかに減少し,ほぼ一定値に落ち着いた。いずれの供試体もせん断開始時に一 旦垂直応力σが減少するが,密度が高く圧密圧力σ c が小さい供試体ほどせん断の進行とと もに垂直応力が増加する傾向が認められた。この供試体は,圧密排水試験において正のダ - 79 - 2 200 300 2 σc = 300 kN/cm 0 -1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 200 300 100 200 100 0 0 50 1 2 2 σc = 300 kN/cm 200 400 200 100 0 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 0 -1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 200 300 200 100 0 0 1 3 200 300 100 0 -1 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 200 2 50 1 0 200 100 300 2 -2 300 2 50 400 200 7 σc = 300 kN/cm 200 100 2 100 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) A試料 ρd = 1.37 g/cm σc = 300 kN/cm 300 100 50 A試料 3 ρd = 1.37 g/cm せん断応力 τ ( kN/m ) 垂直変位ΔH ( mm ) 1 1 50 300 100 2 0 100 100 200 -2 200 2 σc = 300 kN/cm 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 300 3 300 400 垂直変位ΔH ( mm ) 7 A試料 ρd = 1.21 g/cm A試料 3 ρd = 1.21 g/cm 50 図2 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 2 400 1 0 2 垂直変位ΔH ( mm ) 1 0 50 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 100 2 -2 100 300 7 A 試料の圧密排水せん断試験結果 0 100 200 50 100 0 0 図3 - 80 - 垂直応力 σ ( kN/m ) 200 100 100 200 垂直応力 σ ( kN/m ) 200 50 せん断応力 τ ( kN/m ) 2 σc = 300 kN/cm 400 垂直応力 σ ( kN/m ) 300 A試料 3 ρd = 1.05 g/cm A試料 3 ρd = 1.05 g/cm 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 400 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 A 試料の圧密非排水せん断試験結果 200 100 0 0 100 200 300 2 400 垂直応力 σ ( kN/m ) 300 2 2 300 400 A試料 3 ρd = 1.21 g/cm せん断応力 τ ( kN/m ) 400 A試料 3 ρd = 1.05 g/cm せん断応力 τ ( kN/m ) 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 400 200 100 0 0 100 200 300 2 300 200 100 400 垂直応力 σ ( kN/m ) 図4 A試料 3 ρd = 1.37 g/cm 0 0 100 200 300 2 400 垂直応力 σ ( kN/m ) A 試料のベクトルカーブ(圧密非排水) イレイタンシーを示す供試体と共通している。正のダイレイタンシーが顕著な供試体では, せん断開始時よりも大きな垂直応力が必要なものも存在した。 圧密非排水せん断試験結果(図 3)をベクトルカーブで表示したものが図 4 である。緩 詰め試料のベクトルカーブは,いずれも双曲線状であり,いわゆる正規圧密状態に相当す ることを示している。中位詰め試料の低垂直応力と密詰め試料の全ての供試体はベクトル カーブが立ち上がっており,過圧密に相当する状態にあることを示している。 B 試料の圧密排水せん断試験結果を図 5 に示す。緩詰め(ρ d =0.66g/cm 3 )試料と中位 詰め(ρ d =0.74g/cm 3 )試料のせん断強さτ f はほぼ同程度であるが,応力τ-変位δ曲線 の立ち上がりは中位詰め試料の方が急である。密詰め(ρ d =0.89g/cm 3 )試料せん断応力 τは他の 2 つに比べてかなり大きい。A 試料と同様に,密度の増加と垂直応力(圧密圧力) の減少にともない,ひずみ硬化型からひずみ軟化型に遷移する。せん断中の体積変化(垂 直変位 H )の傾向も A 試料と同様であり,せん断開始とともに減少し,その減少割合は次 第に小さくなる。多くの供試体で,最終的にダイレイタンシーが正になる。体積変化の程 度は A 試料よりも大きい。 B 試料の圧密非排水せん断試験結果を図 6 に示す。せん断応力は圧密排水せん断試験結 果(図 5)と同程度の値を示した。せん断中の垂直応力は,密度が高く圧密圧力σ c が小さ い供試体ほど,すなわち圧密排水せん断試験で正のダイレイタンシーを示した供試体ほど, せん断の進行にともなう垂直応力の増加が顕著である。 図 7 に B 試料の圧密非排水せん断試験のベクトルカーブを示す。緩詰めのσ c≧ 200kN/m 2 の供試体だけがかろうじて双曲線状であり,それ以外はほぼ真上に立ち上がり 破壊線に沿って移動している。このことから B 試料は締固めの影響を強く受けることが分 かる。 それぞれの試料のせん断強度を定量化するために,各供試体のせん断強さにクーロンの 破壊基準を適用し,強度定数を算定した。得られた強度定数を乾燥密度に対して示したも のが図 8 である。圧密排水せん断試験の場合,A 試料の内部摩擦角φ d は緩詰めと中位詰 め試料であまり差がなく,砂質土としてはかなり小さい 20°程度である。しかしながら, 密詰め試料では急激に増加し,40°以上の十分な強度を有する。粘着力 c d は乾燥密度の増 加に対してわずかに減少するが,有意な違いはない。B 試料の内部摩擦角も A 試料のそれ と同様に,緩詰めから中位詰めではほぼ 20°で一定であり,これより乾燥密度が増加する と急激に増大する。粘着力は乾燥密度の増加に対してわずかに増大するが有意な差はない。 - 81 - 300 2 B試料 3 ρd = 0.66 g/cm 200 300 2 0 2 1 0 -1 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 200 100 0 0 1 B試料 3 ρd = 0.74 g/cm 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) B試料 2 2 200 200 400 2 50 200 1 0 -1 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 100 0 0 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) B試料 2 σc = 300 kN/cm 7 300 3 ρd = 0.89 g/cm 図5 300 200 200 400 2 σc = 300 kN/cm 200 200 100 300 50 2 1 0 -1 -2 0 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 B 試料の圧密排水せん断試験結果 0 50 200 100 0 0 図6 - 82 - 100 100 2 100 せん断応力 τ ( kN/m ) 垂直変位ΔH ( mm ) 2 B試料 3 ρd = 0.89 g/cm 7 200 2 400 0 2 2 0 100 300 100 100 -2 100 σc = 300 kN/cm 200 せん断応力 τ ( kN/m ) 垂直変位ΔH ( mm ) 300 3 ρd = 0.74 g/cm σc = 300 kN/cm 300 50 せん断応力 τ ( kN/m ) 7 2 400 50 垂直応力 σ ( kN/m ) 垂直変位ΔH ( mm ) 2 0 100 100 300 100 せん断応力 τ ( kN/m ) 200 100 -2 200 2 σc = 300 kN/cm 垂直応力 σ ( kN/m ) 200 50 せん断応力 τ ( kN/m ) σc = 300 kN/cm 400 垂直応力 σ ( kN/m ) B試料 3 ρd = 0.66 g/cm 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 400 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 B 試料の圧密非排水せん断試験結果 400 100 200 300 2 0 0 400 100 垂直応力 σ ( kN/m ) 200 2 20 粘着力 c ( kN/m ) 内部摩擦角 φ ( deg. ) φd φcu φ' cd ccu c' 0 150 100 50 1.2 1.3 0 0 1.4 3 100 200 300 2 400 垂直応力 σ ( kN/m ) B 試料のベクトルカーブ(圧密非排水) 60 1.1 100 400 2 A試料 40 1.0 300 200 垂直応力 σ ( kN/m ) 図7 60 200 300 1.5 0 B試料 40 φd φcu φ' 200 20 0 2 100 100 内部摩擦角 φ ( deg. ) 0 0 200 B試料 3 ρd = 0.89 g/cm 150 cd ccu c' 100 50 0.5 乾燥密度 ρd ( g/cm ) 粘着力 c ( kN/m ) 200 300 2 2 300 400 B試料 3 ρd = 0.74 g/cm せん断応力 τ ( kN/m ) B試料 3 ρd = 0.66 g/cm せん断応力 τ ( kN/m ) 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 400 0.6 0.7 0.8 3 0.9 1.0 0 乾燥密度 ρ ( g/cm ) 図8 試料の強度定数 圧密排水せん断試験の結果から,いずれの試料も強度が急変する密度が存在し,適切に締 固められていれば十分な強度を発揮する。しかしながら,満足な締固めが行われないと極 端に強度が低下することが明らかとなった。この試料を建設資材で利用する場合や基礎地 盤とする際には密度の管理や把握が重要である。 圧密非排水せん断試験から得られた強度定数も図 8 に示している。B 試料では乾燥密度 の増加にともない強度定数が増加する傾向が見られる。一方,A 試料では乾燥密度と強度 定数の間に関係性が認められない。このことは,強度定数のベクトルカーブ(図 4,7)で 示したように,乾燥密度や垂直応力によって正規圧密と過圧密状態が混在するため,同一 の手法で評価することが困難であることを示している。 (2) 途中水浸土 途中水浸試験に用いた供試体は,同じ含水比に調整した試料を締固めの程度を変えるこ とで 3 通りの乾燥密度になるように作製した。初期乾燥密度ρ d は,初期水浸土と同じく, 1.05,1.21 および 1.37g/cm 3 である。含水比が同じで乾燥密度が異なるため,乾燥密度に 応じて初期飽和度も変化する。供試体の飽和度はそれぞれ 33.8,40.0 および 51.2%(平均 値)であった。 せん断に先立ち,所定の圧密圧力σ c で圧密した。圧密時間は,本来,3 t 法を用いて決 定する必要があるが,砂質土である試料の圧密量が小さいと見込まれるため,60 分で打ち - 83 - 400 A試料 3 ρd = 1.05 g/cm A試料 300 せん断強さ τf ( kN/m ) 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 400 200 2 水浸 2 σc = 300 kN/cm 200 100 100 初期水浸土 途中水浸土 0 0 0.0 300 400 2 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 8 60 A試料 3 ρd = 1.21 g/cm 300 水浸 2 σc = 300 kN/cm 200 200 100 100 図 10 初期水浸土と途中水浸土のせん断強さ A試料 φd 40 cd 初期水浸土 途中水浸土 200 20 2 0 200 150 100 0 50 50 1.0 0.5 1.0 0.0 0 400 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 8 1.2 1.3 1.4 3 1.5 0 図 11 初期水浸土と途中水浸土の強度定数 3 A試料 ρd = 1.37 g/cm 切りとした。圧密量は,密度が小さく圧密圧 2 水浸 2 1.1 乾燥密度 ρd ( g/cm ) -0.5 -1.0 粘着力 c ( kN/m ) -1.0 100 垂直応力 σ ( kN/m ) -0.5 2 せん断応力 τ ( kN/m ) 垂直変位ΔH ( mm ) 3 ρd ( g/cm ) 1.05 1.21 1.37 100 0.5 400 せん断応力 τ ( kN/m ) 200 1.0 内部摩擦角 φ ( deg. ) 垂直変位ΔH ( mm ) 50 300 σc = 300 kN/cm 300 力が大きい供試体ほど大きかった。最も圧密 200 量 が 大 き い ρ d = 1.05g/cm 3 , σ c =300kN/m 2 の供試体で 3mm 程度であった。同じ条件の 200 100 初期水浸土の圧密量と比較すると,いずれの 50 100 供試体でも途中水浸土の方がわずかに少なか 垂直変位ΔH ( mm ) った。 1.0 途中水浸土のせん断過程の試験結果を図 9 0.5 に示す。図中の矢印は水浸した位置である。 0.0 乾燥密度が小さく垂直応力が大きい供試体で -0.5 -1.0 図9 0 1 2 3 4 5 6 せん断変位 δ ( mm ) 7 8 は,ひずみ硬化を示すため,せん断変位δが 7mm のときに水浸した。水浸以前のせん断 応力τは,概ね初期水浸土(図 2)と同様な A 試料の途中水浸試験結果 傾向を示したが,幾分大きい値であり,ひず (圧密排水せん断) み軟化を示す供試体の数が増えている。水浸 - 84 - することで,いずれの供試体もその直後に急激にせん断応力が低下している。水浸後はせ ん断変位の進行にともない,せん断応力がある一定値に漸近することが推察できる。 途中水浸土の体積変化(垂直変位)挙動は,初期水浸土のそれと幾分異なる。水浸以前 では,緩詰め試料のダイレイタンシーは全て負である。これは,両者の間隙比が供試体作 製時には同じであるが,せん断開始時(圧密終了時)には途中水浸土の方が大きいことに 起因するものと考えられる。緩詰め試料をせん断中に水浸すると,コラプスと呼ばれる体 積圧縮減少が発生する。中位詰め試料では,低垂直応力(σ c ≦100kN/m 2 )においてダイ レイタンシーが正であり,これより高い垂直応力では負である。ダイレイタンシーが正で ある供試体を水浸すると,それ以後の体積は一定となる。ダイレイタンシーが負である供 試体ではわずかにコラプス現象が確認された。密詰め試料では,σ c ≦200kN/m 2 の供試体 までダイレイタンシーが正であった。ダイレイタンシーと水浸後の体積変化挙動は中位詰 めの場合と同様であった。 途中水浸土のせん断強さτ f を初期水浸土と比較したのが図 10 である。緩詰めと中位詰 め試料のせん断強さにはあまり大きな差異はない。密詰め試料では,他の試料よりせん断 強さは明らかに大きくなり,初期水浸土より途中水浸土の方がさらに大きい。この図にク ーロンの破壊基準を適用し,強度定数を算定した。得られた強度定数を乾燥密度に対して 示したのが図 11 である。途中水浸土の粘着力は乾燥密度とともにわずかに増加するが, 大きな違いはない。内部摩擦角は,乾燥密度の増加に対して中位詰めまではほぼ一定であ るが,密詰めで急激に増加している。いずれの強度定数も初期水浸土の場合と同様な傾向 である。しかしながら,内部摩擦角は途中水浸土の方が若干大きい。 4.おわりに 鹿児島県内で採取した比較的風化の進行した 2 種類の降下軽石層について,供試体の乾 燥密度,排水条件および水浸条件を変えた一面せん断試験を行い,これら条件の違いがせ ん断特性におよぼす影響について実験的に検討した。得られた主な成果は以下の通りであ る。 (1) 初期水浸土の圧密排水せん断試験では,乾燥密度が大きく垂直応力が小さい供試体ほ ど正のダイレイタンシーを示す。緩詰めと中位詰め試料のせん断力には大差ないが, 密詰め試料では急激に増大する。このことは内部摩擦角に大きな影響を与える。せん 断強度が急変する密度が存在するため,この試料を建設資材で利用する場合や基礎地 盤とする際には密度の管理や把握が重要となる。 (2) 初期水浸土の圧密非排水せん断試験では,排水せん断試験でダイレイタンシーが正で ある供試体ほど垂直応力の増加が顕著であり,この種の供試体が過圧密状態であるこ とを明らかにした。 (3) 途中水浸土の圧密排水せん断試験では,水浸により急激な強度低下が発生することを 示した。特に緩詰め試料では水浸によりコラプスが発生することを確認した。途中水 浸土のせん断強度は初期水浸土のそれと同様な傾向を示すが,初期水浸土より幾分大 きい値である。 - 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