フィルダムのロック材料用大型一面せん断試験機の開発 D - 06 - 日本工営

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D - 06
第 43 回地盤工学研究発表会
(広島) 2008 年7月
フィルダムのロック材料用大型一面せん断試験機の開発
一面せん断試験,ロックフィル,ダム
土木研究所 正会員 山口 嘉一,佐藤 弘行,林 直良,吉永 寿幸
日本工営(株) 国際会員 ○スレン ソッキアン,下村 幸男
1. はじめに
ロックフィルダムの設計合理化を目的としてロック材料の低拘束圧条件下でのせん断強度を評価するための実験的研
究を進めている 1)。本研究においては,現在ロック材料に対する最も一般的なせん断試験である三軸圧縮試験以外のせ
ん断試験を用いた低拘束圧条件下におけるせん断強度評価が重要となっている。
一面せん断試験は直接せん断試験法の一つで,三軸圧縮試験に比べて,①試験機の構造が単純で試験法も容易である
こと,②せん断面上の応力状態が明確であること,③低拘束圧条件での試験が可能であること,などの点で優れている。
しかし,フィルダムのロック材料などの粗粒材料に対する従来型の大型一面せん断試験機では,試験機の構造上の問題
で,得られたせん断強度は三軸圧縮試験結果よりも過大な値を示すことが指摘されている 2)。その主な原因として,CD
試験の場合,せん断箱の上下方向への変位を拘束している(上・下せん断箱の隙間の固定)ため,せん断中のダイレタ
ンシーにより供試体とせん断箱側面との摩擦が生じることが指摘されているが,この課題は未解決のままであった。小
型一面せん断試験(供試体寸法φ60mm×h20mm)について,原田ら 3) は三笠型一面せん断試験機を改良し,上部反力
板に 2 個の独立したエアジャッキと荷重計を取り付けて上部せん断箱を上下させ,定圧に保つよう制御する方法で豊浦
砂を用いた試験において側面摩擦を大幅に低減できたと報告している。本研究ではこの方法を参考に,側面摩擦を低減
させるために大型一面せん断試験機を改良した上で,フィルダムのロック材料の大型一面せん断試験を行い,その結果
が大型三軸圧縮(CD)試験の結果と良い一致を示したので報告する。
2. 試験機の改良と試験条件
2.1 開発した大型一面せん断試験機
図-1 は改良した大型一面せん断試験装置の概要図であ
る。試験機は下部せん断箱移動型で,その主な改良点は,
せん断箱内の側面摩擦の低減を目的に,上部せん断箱と反
力板の間にローラーを設置(図-1)して,体積変化に対応
して上部せん断箱の移動が可能なようにし,さらにモーメ
ントを作用させて,上部せん断箱がせん断中に水平調整軸
から傾かないように保つというものである。またせん断試
験機を囲むように水浸箱を設け,水浸状態で飽和供試体に
対するせん断試験が実施できるようにしている。供試体寸
法は幅 40cm×高さ 40cm×奥行 40cm である。
試験法の妥当性を検証するために,せん断箱を上下方向
に固定する試験(以下,「固定型」と記す)およびローラ
ーを介してせん断箱を上下方向に移動可能な試験(以下,
「移動型」と記す)を実施して,結果を比較検討した。
垂直荷重
鉛直ローラー
水平調整軸
載荷板
防水
シート
水浸タンク
反力板
反力板
水
防水
シート
40cm
供試体
せん断荷重
40cm
水
水平ローラー
2.2 試験材料と試験条件
図-1 大型一面せん断試験装置の模式図(飽和条件)
試験に用いた材料は I ダムのロック材料で,最大粒径を
37.5mm として粒度調整した材料である。図-2 および表-1 はそれぞれ粒径加積曲線および材料の物理特性を示したもの
である。各大型一面せん断試験の供試体は振動ランマーを用いた振動締固め法で,せん断箱内で乾燥密度ρd=1.816g/cm3
(Dr=90%)になるように作製した。なお比較のため,同じ乾燥密度に締固めたφ30cm×h60cm 供試体の大型三軸圧縮 CD
試験も実施した。試験条件は表-2 に示すとおりである。
表-1
100
通過質量百分率(%)
90
材料の物理特性
最大粒径 Dmax (mm) 37.5
60%粒径 D60 (mm) 15.64
50%粒径 D50 (mm) 11.36
30%粒径 D30 (mm) 4.26
10%粒径 D10 (mm) 1.15
均等係数Uc
13.6
曲率係数 U'c
1
3
合成比重Gg (g/cm ) 2.689
吸水率 (%)
4.53
80
70
60
50
40
30
20
10
表-2
試験名
試験条件
大型一面
大型三軸
せん断試験
圧縮試験
(固定型,移動型)
供試体作成 振動締固め
試験条件
定圧条件,飽和
せん断速度 1.3mm/min
σn=25,49,
垂直応力/
2
拘束圧(kN/m ) 98,196
振動締固め
CD条件,飽和
0.5%/min
σ3=49,98,
196,294
0
0.0
0.1
図-2
1.0
粒径(mm)
10.0
100.0
粒径加積曲線
Development of Large-scale Box Shear Apparatus for
Coarse-grained Materials of Rockfill Dams
Yoshikazu YAMAGUCHI, Hiroyuki SATOH, Naoyoshi HAYASHI,
Hisayuki YOSHINAGA, Public Works Research Institute, Sokkheang
SRENG, Sachio SHIMOMURA, NIPPON KOEI CO.,LTD.
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3. 試験結果
図-3,図-4 は固定型と移動型の大型一面せん断試験結果を比較したものである。図-3 は両試験のせん断過程を示す。
固定型の試験の場合,側面摩擦が大きいため,移動型と比べて,せん断中に発生した鉛直変位(ダイレタンシー)が小
さくなり,結果としてせん断強度が大きくなっている。図-4 は両試験のせん断強度を近似曲線により比較したものであ
るが,固定型の強度定数は移動型のそれと比べてφで 5 度程度,c で 2 倍程度とかなり大きい値となっている。
400
-20
390
3
3
ρ d=1.816g/cm (Dr=90%), 飽和条件
2
ρ d=1.816g/cm (Dr=90%), 飽和条件, σ n=196kN/m
-16
2
c=60.9kN/m , φ =53.0°
2
せん断応力, τ , (kN/m )
-12
190
固定型
(ダイレタンシーが小で
せん断応力が大)
移動型
(ダイレタンシーが大で
せん断応力が小)
-8
鉛直変位, ΔH , (mm)
2
せん断応力, τ , (kN/m )
290
200
移動型
2
c=22.13 kN/m , φ =48.3°
100
90
-10
固定型
300
-4
0
0
0
10
20
30
40
50
60
0
100
せん断変位, δ , (mm)
せん断過程の比較
図-4
400
せん断強度線の比較
600
3
ρ d=1.816g/cm (Dr=90%) 、飽和条件
500
2
一面せん断試験では,せん断箱を固定して実験を行うのが一
般的な方法であるが,今回の実験結果から,従来法の問題点は
ダイレタンシーに伴う側面摩擦の影響が大きいと判断される。
そこで,本研究では,移動型の大型一面せん断試験の結果を大
型三軸圧縮試験の結果と比較検討することとした。
図-5 は大型三軸圧縮試験および移動型の大型一面せん断試験
の結果をせん断応力-垂直応力の関係として整理したものであ
る。なお,三軸圧縮試験結果については垂直応力
σn=(σ1+σ3)/2+(σ1-σ3)×cos2α/2 とせん断応力 τn=(σ1-σ3)×sin2α/2 と
して整理した。ここで,α=45°+φ0/2, φ0=sin-1{(σ1-σ3)/(σ1+σ3)}で
表される。
今回開発した大型一面せん断試験の結果は,三軸圧縮試験に
よる結果とほぼ一本のせん断強度曲線で表すことができ,両試
験結果は非常に良い整合性を示した。さらに,大型一面せん断
試験の方がより低い拘束圧での試験が可能になっていることも
確認できる。ここでは,一材料の試験結果のみ紹介したが,そ
の他の材料に対しても同様な結果を得ている。
また,図中に示したように,せん断強度線は原点を通る曲線に
より近似できることがわかる。このことからも,ロック材料の
せん断強度には拘束圧依存性があることがわかる。
せん断応力, τ , (kN/m )
図-3
200
300
2
垂直応力, σ n, (kN/m )
400
300
τ = 3.448・σ n
0.802
2
R =0.9949
200
■ 大型三軸圧縮試験
100
● 大型一面せん断試験 (移動型)
0
0
100
200
300
400
500
600
2
垂直応力, σ n, (kN/m )
図-5
大型一面せん断試験(移動型)と
大型三軸圧縮試験のせん断強度の比較
4. まとめ
本研究では低拘束圧下におけるロック材料のせん断強度を適切に評価するために,移動型の大型一面せん断試験法を
提案し,実際のダムのロック材料に適用した。その結果,移動型の大型一面せん断試験から得られたせん断強度は大型
三軸圧縮試験から得られたせん断強度と非常に良い整合性を示した。また,これにより,移動型の大型一面せん断試験
により大型三軸圧縮試験より低拘束圧におけるせん断強度評価が可能となることも明らかとなった。
謝辞:本研究は一面せん断試験機の側面摩擦を低減させる方法について徳島大学の望月秋利教授よりご意見を頂きまし
た。ここに記して感謝の意を表します。
参考文献
1) 山口嘉一,佐藤弘行,中村洋祐,林直良,倉橋宏:低拘束圧条件下におけるロック材料強度の評価,ダム技術
No.249,pp.22-37,2007 年 6 月.
2) 社団法人 土質工学会:粗粒材料の変形と強度,pp.132-167,1986 年 5 月.
3) 原田俊之,西方卯佐夫,望月秋利,上野勝利,石川裕規,藤沢淳一:改良した一面せん断試験によるφcd 強度とφ’強
度,第 35 回地盤工学研究発表会発表講演集,pp.823-824,2000 年 6 月.
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