経 済 論 叢(京 都 大学)第172巻 第1号,2003年7月 民 営 化 と 環 境 税 混合寡 占モデルの場合一 大 1は じ め 堀 秀 一 に 近 年,民 営 化 ・自由 化 に 関す る議 論 が 多 くな され て い る。公 的 規 制 の 対 象 と され て い た企 業 と新規 参 人者 との問 の競 争,い わ ば混 合 寡 占(mixedoligopoly) とい う市 場 形 態 が 多 くの 国 々 にお い て観 察 す る こ とが で き る。 特 に,政 府 規 制 産 業 に対 す る構 造 変 革 の 時 流 の 中 で,電 力産 業 の よ うな以 前 よ り公 的 に規 制 の 対 象 とされ て きた事 業 に新規 参 入 が認 め られ る よ うに な って きた 。 しか しなが ら,政 府 規 制 産 業 へ の新 規 参 入 が す す め れ ば,競 争 が 苛 烈 す る こ とで 財 の 価 格 が 低 下 し,そ の こ とが 汚 染 物 の 廃 棄 を上昇 させ る こ とにつ なが り うる。 例 を挙 げ れ ば,電 力 産 業 に おい て,電 力 自由 化 に よ る競 争 の 高 ま りが 各 企 業 に ク リー ンだが 高 価 な燃 料 よ り も,従 来 の 安価 な燃 料 の使 用 を促 し,各 企 業 の汚 染 削 減 に 対 す る技 術 開発 イ ンセ ン テ ィブ を妨 げ る 可 能性 が 挙 げ られ る1ン 。 だ が,混 合 寡 占 の 下で の この よ うな生 産 過 程 が 環 境 汚 染 を 引 き起 こす とい う観 点 は,従 来 の環 境 政策 研 究 コ)にお い て 考 慮 され て こな か った。 1)1990年 代 にお け る米 国 の 電 力 産 業 に対 す る環 境 規 制 改 革 の結 果 の一 つ と して 次 の よ う な も のが あ る 。 ク リー ン ・エ ネル ギ ー の 採 用 とエ ネ ルギ ー 保 全 を 目的 に 排 出 権 取 引(emissionstrading) がブ・ ・シュ政 権 時 の 「ig90年大 気 浄 化 改 正 法 」 と して 結 実 した が,低 硫 黄炭 の燃 焼 に よ り排 出 さ れ るSq、 を 削減 す る ス ク ラ バ ー の付 設 は予 想 よ りも少 なか った 。 そ の 理 由 と して,① 低硫黄 炭 の価 格 が 低 落 した こ と に よ り燃 料 転 換 が排 出 削 減 の 主 流 にな った こ と,② 排出権価格が予想以 トに 低 く推 移 した こ と,さ ら に・ ③ 電 力 産 業 が 規 制 緩 和 の 時 流 の 中 で リ ス トラ クチ ャ リ ン グ を 推 し進 め て い る時 期 で あ った た め,初 期 費 用 が 高 コ ス トで あ る こ の削 減 方法 を嫌 が っ た と い う事 情 が 挙 げ られ る(小 林[20021)。 2)GmbbandUlph[蹴121は,環 境政 策 が 産業 内 又 は産 業 間の リス トラクチャリング(re蹴uck曲1g)/ 68(68)'第172巻 第1号 公 益 事 業 民 営 化 ・自 由 化 に 関 す る 理 論 的 ア プ ロ ー チ に よ る 文 献 と し て は, BeatoandMas-Colell[1984],DeFralaandDelbollo[19891,[1990],Barros [1995],White[1996],Matsumura[19981,Poyago・Theotoky[2001]等 ら れ る 。 特 に,産 業 組 織 論 に お け る 研 究 の 多 く で は,公 大 化 す る よ う,一 方 で,民 金 政 策 を 議 論 した 。Poyago・Theotokyの 産 出 水 準 及 び社 会 厚 生 水 準 ば 及 び ③ 益 企 業 は社 会厚 生 を最 間 企 業 は 自 己 の 利 潤 を 最 大 化 す る よ う行 動 す る,と 仮 定 し 議 論 を 進 め て い る 。Poyago-Theot・ky[2001]は (Coumot)競 が あげ 争 を す る 場 合,② 混 合 寡 占 の 下 で の補 助 基 本 的 な 結 論 は,最 ① 適 補 助 金,利 公 益 企 業 と 新 規 参 入 者 が クー ル ノー す べ て の 企 業 が 利 潤 最 大 化 行 動 を と る 場 合, 公 益 企 業 が シ ュ タ ッ ケ ル ベ ル グ 先 導 者(Sta(:ke】berg-leader)と 行 動 す る場 合,如 何 に か か わ らず,そ 益 企 業 は 民 営 化 に対 す る イ ン い う こ とを意 味 す る。 本 稿 はPoyago-Theot。kyの モ デ ル に,① 環 境 汚 染 費 用,② ③ 環 境 汚 染 削 減 に 対 す る 各 企 業 の 努 力(effort)パ 環 境 税,及 業 の 排 出 す る 汚 染 物 資 に対 し て 環 境 税 を 課 す る 場 合 の 各 産 出 水 準,利 会 厚 生 水 準 を3つ の ケrス(① 占 競 争,及 混 合 シ ュ タ ッケ ル ベ ル グ複 占 競 争)の の で あ る 。 な お,シ 混 合 ク ー ル ノ ー 複 占競 争,② して い る か ら で あ り,民 制 当 局 が企 潤及び社 純 クー ル ノ ー複 問 で 比 較 ・検 討 す る も ュ タ ッ ケ ル ベ ル グ モ デ ル を 用 い る の は,例 る重 工 業 な ど に み ら れ る よ う に,国 び ラ メ ー タ を 導 入 す る こ と で, 混 合 寡 占 の 下 で 各 企 業 が 環 境 汚 染 を 引 き起 こ す ケ ー ス に 着 目 し,規 び ③ して れ ぞ れ の 値 は 同 一 とな る と して い る。つ ま り,混 合 寡 占 に お け る 最 適 補 助 金 の 下 で は,公 セ ン テ ィブ を 持 た な い,と 潤, えば 中国 に お げ 営 企 業 主 導 の一 部 地 域 に お け る産 業 を考 慮 間企 業 は国 営 企業 の 産 出量 を所 与 と して産 出量 を決 め る の が 現 実 的 に あ る た め で あ る 、, 本 稿 の 構 成 は 次 の よ う で あ る 。 第H節 第 皿節 で,最 第W節 で は 本稿 の基 本 モ デ ルにつ い て述 べ る。 適 環 境 税 の 下 で の 公 益 事 業 は 民 営 化 す べ き か ど う か を 議 論 す る。 は そ の結 果 を述 べ る。 \を押 し進め る白1'能 性につ いて指摘 してい る、 民営化 と環境税 ll基 本 稿 で は,1公 益 企 業,1新 (69)69 本 モ デ ル 規 参 入 企 業 が 同 質 的 な財 を生 産 す る混 合 複 占市 場 を考 え る。 企 業0を 社 会 厚 生 を最 大 化 す る よ う行 動 す る公 益 企 業,一 方,企 業1を 自己 の 利 潤 を 最 大 化 す る よ う行 動 す る 新規 参 入企 業(民 間 企 業)と (純 ク ー ル ノー 複 占 の ケ ー ス に関 して は.企 業0及 び 企 業1共 し に民 問 企 業 とす る),二 つ の 企 業 は 同一 の生 産 技 術 を所 有 す る とす る。 つ ま り,F(≧0)を 固 定 費 用,gを あ 企 業 の 産 出 量 とす る と,費 用 関 数 はC(g)=F+(1/2)κ(g)2で る3〕 。 単 純化 の た め,Fニ0及 び κ=1と す る射。 各企 業 は 税 負 担 及 び汚 染 排 出 を抑 え る こ と を 目的 と して,削 減 技 術 開発 を 行 う努力 をす るが,公 益 企 業 よ り も新 規 参 入 企 業 の ほ うが 努 力 をす る と仮 定 す る。つ ま り,参 入企 業 の汚 染 削 減 技 術 水 準 は公 益 企 業 の そ れ よ りも効 率 的 だ とす る 。 逆 需要 関数 は線 形 と し次 の よ う に与 え られ る。 Pニ α一Q.α>0 Pは 財 の 価 格 で あ り.Q(=σ .(1) 〇+91)は 総 産 出 量 で あ る。 各企 業 は市 場 需 要 関 数 に 関 して は 完 全 な 知 識 を もつ とす る。環 境 税 率 を オとす る と,企 業 ゴの 利 潤 関 数 は次 の よ う に表 せ る。 πゴ=P4一 工 お 」 生 一 ∫(9'一μ')(2)22 μ∫は 企 業 ゴの 汚 染 削 減 努 力 パ ラ メ ー タで あ る 。 μf≦g`と 仮 定 す る 。 さ ら に,μo =0及 び μ1=μ ,す な わ ち μ。<μ1と 仮 定 す る 。 こ れ は,μ の値 が 高 け れ ば そ れ だ け 企 業 の 汚 染 削 減 技 術 が 高 い こ と を 意 味 す る 。 つ ま り,規 制当局が環境税 を 企 業 に 課 す の は 基 本 的 に は 汚 染 排 出 を 抑 制 す る の が 目 的 な の で,削 減技術努 力 を上 昇 させ る こ と は汚 染 排 出 水準 を 低 下 させ る こ とにつ なが る。 社 会 厚 牛 は レ γ=CS十 πo十π1十ま(Q一 μ)一Z)(3) 3)混 合寡 占の分析において,産 出量 に対 する限界 費用上昇の仮定は明白であ る、限界費用低下 も しくは一定 と仮 定 した場 合,市 場 を公益企業が独 占す るためであ る,, 4〉 この仮定の ト で も,モ デ ルの一般性 を失 うことはない・ 70(70)第172巻 第1号 で 与 え ら れ る 。CS=Q2/2は 消 費 者 余 剰 で あ り,Pニ4(Q一 損 害 費 用 で あ り,4(>0) μ〉2/2>0は 環境 .は環 境 損 害 費 用 関 数 の 傾 き で あ る 。 つ ま り,環 税 は 各 企 業 の 産 出 量 に 対 す る効 果 を 通 じて,間 境 接 的 に社 会 厚 生 に 影 響 を 与 え る とす る 、 、 ケ ー ス1:混 合 ク ー ル ノ ー複 占 こ の ケ ー ス に お い て,新 規 参 人 企 業 は与 え られ た 環 境 税 の 下で 利 潤 を最 大 化 す る よ う 産 出 量 を 決 定 し,一 方,公 益 企 業 は社 会 厚 生 を 最 大化 す る よ う産 出量 を 決 定 す る 。 ゲ ー ム の 順 序 は 以 下 の と お りで あ る 、,まず,規 fを 設 定 す る 。 次 に,各 制 当 局 は環 境 税 率 企 業 は 規 制 当 局 が 設 定 した 税 率 の 下 で,同 を 決 定 す る 。 ゲ ー ム は 第2段 時 に産 出量 階 よ り後 向 き 帰 納 法(backwardinduction)に よ っ て 解 く。 (3)と(2)よ り,第2段 階 に お け る 均 衡 産 出 量 は 次 の よ う に 表 さ れ る51,、 κ1v_(2-4)ρ1十34μ 。 一(4)24十5 酬_(4+1)α 1一(5)24十5 (4)及 び(5)よ り,税 =(4+1)/(24+5)>0) 一4μ 一(4+2)∫9 率 の 上 昇 が 企 業0の ,一 =一(4+2)/(24+5)<Ol)こ 第1段 り,一 方 で,企 業1の 産 出 量 を 増 加 さ せ(δg静/δ ∫ 産 出 量 を 低 下 さ せ る(δgFN/δ ∫ と が わ か る 、, 階 に お い て,規 定 す る 。(3)よ 十(4十1)'9 制 当 局 は 社 会厚 生 を 最大 化す る よ う最適 環 境 税 率 を設 階 の 条 件 を 求 め る と.最 適(・ptima1)環 境税率 は次 の よ うに 表 さ れ る。 〆 坪一(24『1)θ (6)を(4〉 5)卜 と(5)に 付 き 記 号MN,PN及 一44μ(6)24 十3 代 入 し解 く と,各 びMSを 企 業 の 産 出 量.総 そ れ ぞ れ.混 合 クー ル ノー ノ ー ・ナ ッ シ ュ 複 占 及 び 混 合 シ コ.タ ・ ソケ ル ベ ル グ複 占 を 表 わ す., 産 出 量,環 境損害費 ・ナ ・ ソ シ ュ 複 占,純 クー ル 民営化 と環境税 (71)71 用 各企 業 の利 潤及 び社 会厚 生 は次 の よ うに表 され る。 捌v_超v_`7十4μ9ぢ 一 σ124十3 (7-al) Q〃 泥一2(α+4μ)24十3 (7-b) 酬 一妥(糖 ア (7-c〉 癖一募(調 (7-d) 財ノv_3α2十2(442十74-3)`zμ π1- 騨 ケ ー ス21純 ∈2α2+(4α4-4一 ・)μ一2(24+1) (7-e) (7イ) 2(24+3) ク ール ノ ー複 占 こ の ケ ー ス で は,各 ケ ー ス1と 一(1742十364十14)μ2 2(24+3)2 企 業 は 共 に 民 間 企 業 で あ り,利 同 様 に 後 向 き 帰 納 法 で 求 め る と,産 潤 最 大 化 行 動 を と る。 出量 は次 の よ うに表 され る。 σP坪_P押_α 一f 。 一91一(8)4 課 税 が 双 方 の 産 出 量 を 低 下 さ せ る こ と が 容 易 に 分 か る(δgfN/δ'=一1/4<0)。 次 に,第1段 階 で は 規 制 当 局 が 社 会 厚 生 を 最 大 化 す る よ う環 境 税 率 を 設 定 す る,,し か し,求 ま る 最 適 環 境 税 率 は ケ ー ス1,つ の 同 じ値(6)と な る 。 よ っ て,最 れ ぞ れ(7)と 適 産 出 量,環 ま り複 合 ナ ッ シ ュ複 占 の 場 合 境 損 害,利 潤 及 び社 会厚 生 もそ 同 様 の 値 と な る 。 こ れ ら の 結 果 はPoyagO-Theotokyと 同様で あ る。 ケ ー ス3:混 合 シ ュ タ ッケ ル ベ ル グ複 占 こ の ケ ー ス に お け る ゲ ー ム の 順 序 は 以 下 の と お り と な る 。 第1段 規 制 当 局 は 環 境 税 を 企 業 に 課 す る,、次 に,第2段 階において 階 に お い て 公益 企 業 が 産 出 量 72(72)第172巻 第1号 を 選 択 し,第3段 は 第3段 階 に お い て は 参 入 企 業 が 白 らの 財 を 選 択 す る,と 階 よ り考 え る 。 追 随 者(follower)で 規 制 当 局 が 設 定 した 税 率 及 び 公 益 企 業(企 あ る 新 規 参 入 者(企 業o)の す る。 まず 業1)は, 産出量を下に産出量を決定 す る 。 つ ま り,新 規 参 入 企 業 の 産 出 量 は 次 の よ う に 表 さ れ る 。 4ダs(9。,∫)一 α+9ヂs(9)3 第2段 階 で は 先 導 者(leader)で あ る 公 益 企 業 が,規 の 下 で 利 潤 最 大 化 行 動 を と る 。 した が っ て,シ 制 当 局 炉 設 定 した 税 率 ュ タ ッケ ル ベ ル グ均 衡 に お げ る 各 企 業 の 産 出量 は次 の よ うに表 され る。 MS_(5-24)σ+64μ+(24+1)f9 ρ 一2(24+7)(10) Af5_(24十3)α 1一(11)2(24+7) ケ ー ス1と 同 様 に,(10)及 一24μ 一(24十5)`9 び(11)よ り,税 率 の 上 昇 が,公 増 加 さ せ(δg〆s/δ'=(24+1)/2(24+7)>0),一 下 さ せ る(δ4s/δ 最 後 に,第1段 方,新 ∫=一(24+5)/2(24+7)<0)こ 己 の 決定 が どの よ うに 各企 業 の産 出量 境 税 率 を 設 定 す る 。 した が っ て,ケ ス1及 び2と 同 様 に 最 適 税 率 を 求 め る と,こ (6)と 等 し い 結 果 と な る 、,した が っ て,最 厚 生 に 関 し て も(7)と ゆ え に,こ 命題 規 参 入者 の 産 出量 を低 とが 分 か る 。 階 で は 規 制 当 局 は,自 決 定 に 影 響 を 与 え る か 予 測 しな が ら,環 益 企 業 の産 出 量 を れ も ケ ー ス1及 適 産 出 量,環 び2の 境 損 害,利 ー 最適税 率 潤 及 び社 会 同 様 な 結 果 が 求 ま る 、, こ ま で の 議 論 を ま と め る と次 の 命 題 を 得 る 。 た とえ各 企 業 の 汚 染 削 減 努 力 が異 な っ て い て も,規 制 当 局 が 設 定 す る 最 適 環 境 税 の もとで は,最 適 環 境 税,各 企 業 の産 出量,環 境 損 害 費 用, 利 潤 及 び 社 会 厚 生 水 準 は,① 争 を す る場 合,② 公 益 企 業 と新 規 参 入 者 共 に ク・ 一ル ノ ー競 各企 業 が 利 潤 最 大 化 行 動 を と る場 合,及 び ③ 公益 企 業 が シュ タ ッケ ルベ ル グ的先 導 者 と して 行動 す る場 合,如 何 にか か わ (73)73 民営 化 と環境税 らず そ れ ぞ れ 同 一 の 値 で あ る 、, III考 察 ま ず 混 合 複 占 の 両 ケ ー ス に お け る 課 税 の 効 果 に つ い て考 察 す る 。(4)と (15),又 は(10)と(11)よ り,環 境 税 率 の 上 昇 が 公 益 企 業 の 産 出 量 を増 加 させ (δg。/δ'>0),一 方,新 規 参 入 者 の 産 出 量 を低 下 させ る(δg・/δ'<0)。 これ は. 環 境 税 が参 入企 業 か ら公 益 企 業 へ 産 出 量 を シ フ トさせ る こ とを 意味 す る。 公 益 企 業 は,産 業 内 に お け る財 の安 定 供 給 とい う観 点 か ら,課 税 負 担 を通 じた民 間 企 業 の 産 出量 低 下 に対 して補 完 的 な役 割 を演 じて い る とい え よ う。 さ ら に.最 適 環境 税 の 下 で は双 方 の 産 出量 が 等 し くな る こ とか ら,複 合寡 占 の 下で 環 境 税 を各 企 業 に 課す こ とは 費 用効 率 的だ とい う こ とが で き る。 次 に本稿 で 導 出 した命 題 につ い て考 察 す る。 この 命題 が 意味 す る と ころ は, 最 適 環 境税 の 下で は.規 制 当局 は公 益 事 業 を 自由 化 させ る イ ンセ ンテ ィ ブを持 た な い とい う こ とで あ る。 これ は,民 営 化(privalizatlon)・ 自 由 化 以 前 の 社 会 厚 生 は 民営 化 ・白 由化 以 後 の それ と 同一 で あ るか らで あ る。 で は,何 故 この よ う な興 味深 い結 果 を導 き得 た のだ ろ うか 。 この 問題 を理 解 す るた め に は市 場 の 失 敗(marketfailures)に に,3つ つ い て考 え る こ とが有 効 か も しれ ない 。 まず 第1 の ケー スの 如 何 に関 わ らず,不 完 全 競 争 に よ る過 少 生 産 効 果(under- productioneffect)が あ る,,こ の市 場 の 失 敗 は寡 占的 相 互 依 存 関 係 及 び環 境 損 害 の 存 在 に よ り生 じる 。 さ らに,第2の 市 場 の 失敗 と して,各 企業 の生 産 行動 目的 が 異 な る こ とか ら生 じる.目 的 相 違 効 果(g()a1-differenceeffect)が あ る。 これ らの市 場 の失 敗 に対 して,公 益 企 業 が 産 業 内 の財 を安 定 的 に供 給 し よ う と 行 動 す る。 ヒ述 した よ うに,こ れ は新 規 参 入 者 の 税 負担 か ら生 じ る産 出量 低 下 に対 して 公益 企 業 が 産 業 内 に お い て生 産 補 完 的 な 役割 を担 う こ とに よ り,不 完 全競 争 に よ る過 少 牛 産効 果 の相 殺 に貢 献 して い る とい え る。,よって,最 適 環 境 税 率 の 下 で は企 業 間 の 費 用構 造 は等 し くな る ご とで,企 業 間 の 産 出量 も また 同 一 と な るひつ ま り,混 合 クー ル ノー複 占及 び混 合 シ ュ タ ッケ ルベ ル グ複 占 に お 74(74)第172巻 第1号 い て 規 制 当 局 が 最 適 環 境 税 を 設 定 す る こ と で ,各 で,費 用 効 率 的(costef6cient)と 企 業 の 産 出 量 は 等 し くな る の い う こ とが で き る,, IVま と め 本稿 で は,汚 染排 出企 業 に対 して 環 境 税 を課 す場 合 に お い て,最 適 環 境 税 率, 各 企業 の産 出水 準,環 境 損 害,利 潤 及 び 社 会厚 生 は,公 益 企 業 と新 規 参 入企 業 が クー ル ノー 的行 動 を とる ケー ス,各 企業 が民 間企 業 と して利 潤 最 大 化 行 動 を と るケ ー ス,公 営 企 業 が シ ュ タ ッケ ルベ ルグ先 導 者 と して行 動 す る ケ ー ス の如 何 に 関わ らず,そ れ ぞ れ 同 一 の 値 に な る こ とを表 した。 つ ま り この こ と は.1 公 益 企 業 と1参 人 企 業 で 形 成 す る混合 複 占 の下 で規 制 当局 が 最 適 環 境 税 を 各企 業 に課 す 場 合 にお い て は.規 制 当 局(ま た は社 会)は 公 益 企 業 を民 営 化 す る イ ンセ ンテ ィブ を持 た な い ,と い う こ とを意 味 す る。 とい う の は,寡 占市 場 的 相 互 依 存 関 係 及 び外 部 不経 済 の 存在 か ら生 じる過 少 生 産 効 果 や 口的 相 違 効 果 に対 して,公 益 企 業 が 生 産 補 完 的 な 役割 を担 い,そ の こ とが 費用 効 率 性 につ なが る か らで あ る,.、 しか しなが ら,本 稿 の 分 析結 果 は,線 形 需 要 関数 及 び 同質 の生 産技 術 と し, 汚 染 削 減 努 力 パ ラ メー タを外 生 的 と した 単純 な仮 定 に基 づ くもの で あ り,・企 業 間の 限 界 費 用 の 異 質 性,環 境 税 以外 の環 境 政 策(直 接 規 制 や 排 出 権取 引 制 度 な ど),企 業 間 の協 調行 動 な どの 条件 の 下 で の 混 合 寡 占 の 分 析 は 今 後 の課 題 とな ろ う。 参 考 文 献 Barros、E[1995]"lncentiveSchemesasStrateg主cVariables:AnApphcationtoa MixedDuq)oly,"1♪ 脚r'24々on〆Joε,r,1`71夢1η ぬ5'1ゴ 認 αgo,2'24f'o/2、13、pp,373- 386. Beato、P。andA,Mas-Colell[19841』 しTheMarginalCosしPricillgas載Reguhtion MechanismlnMixedNlarkets玲in7加Rガbr脚'κ8ガP励!'`E刀'8ψ byM.Marchand,P.PestirauandH.Tulkellg,North-Hollahd、Amsしerdam, プ酪eds. 民営化 と環境税 (75)75 DeFraja,G.andF.Delhono[19891`=AltemativesStrateglesof&PublicEnterprise inOligopoly,一'α 承 ・7ゼEα 〃1・η↓1`丑 ψ(∼ノ万,41,PP.302-311, DeFr&ja,G,alldF,Delbono[1990]"GameTheoreticModelsofMixedOhgopoly," 」α〃4〃α14E`η η・〃∼i`58〃 驚ノ6ツ5,4、PP.H7. Grubb,M,andD.Ulph[2002]"Energy,theEllvironment,an〔lhnovaしion,DO、 R顔 肥,げE`・ 小 林 健 一[2002】 η・〃∼1cη ・侮,,18、Nα1、 ψ ア ぜ 圧)P,92-106, 『ア メ リ カ の 電 力 自 由 化 ク リー ン ・エ ネ ル ギ ー の 将 来 』 目 本 経 済 評 論 社,., Matsumura,T。[19981``PartialPri∼ ・atizationinMixedDIlopoly,"/〔'∼ ∼η7扉4'1励!'` 五∼o〃oノ刀'`5,70,PP.473-483. P・yag・ 一The・t・ky。J.[2α)1]`』MixedOlig・P。ly・ F三rmspMoves White,M.[1996] 」L8πθ等.53,PP. :anIrrelevanceRes111t, "Ml xedOligopoly,P 189-195. 、Sul)sidlzati・nan〔ltheOrder()f 鴨E ω"o規 ゴσ β ∼ イ'!{∼々 η,12,No.3、pp.1-5. ・'vatizationalldSubs玉(iization』'E`o πo"z'`5
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