Premium Talk Session Premium Talk Session 横河ディジタルコンピュータ株式会社 はじめての ARM マイコン。 スを充実させています。特にプロセッサ向 その不安を払拭しましょう。 さまざまな分野で ARM マイコンへの置き換えが進む中、横河ディジタルコンピュータ(以下、YDC)は、2012 年 4 月から MDKARM の取扱いを開始した。すでに 2000 年から ARM 正規代理店に認定され、コンパイラ、デバッグツールやトレーニングコースを 提供してきている。今回の「プレミアムトークセッション」では、YDC のキーマン達に、デバッガベンダーから見た ARM マイコン へ移行するポイントをはじめ、ARM マイコン市場の活性化に向けた取り組みについて伺った。 横河ディジタルコンピュータ株式会社 エンベデッドプロダクト事業統括本部 プロダクトマーケティング部 部長 桑原 健 氏 飯 塚:MDK-ARM は、 コ ン パ イ ラ、IDE、 けとなるハイエンド系ツールは、携帯電話 デ バ ッ ガ、 リ ア ル タ イ ム OS、 ミ ド ル ウ ェ やデジタルカメラ、プリンタ、半導体メー ア、デバッグアダプタ、評価ボードといっ カーなどに多く導入していただいておりま た開発に必要な各種ツールがパッケージ す。今後は ARM 社としても、いままでの 8 化された総合的なソフトウェア開発環境 ~ 16 ビットクラスのマイコン市場に力を で、これさえあればすぐに開発に取り掛か 入れていく中、YDC としても 2012 年 4 月か ることができるものです。対応マイコンも ら「MDK-ARM」を扱うようになりました。 多く、1500 品種以上に対応しており、バー MDK-ARM で狙っているのは、コストと消費 ジョンアップ毎に 50 ~ 100 品種くらい対応 電力が重視される、スマートメーター、車 マイコンを増やしています。Cortex-Mシリー 載 / 産業用制御システム、白物家電、コン ズはそれだけ品種が多いということですね。 シューマ製品、医療機器などです。 ち な み に、 リ ア ル タ イ ム OS は Cortex-M に 飯塚:このマイコン市場は、ずばりCortex-M シリーズが狙う分野ですね。 最適化されており、IDE は KEIL ブランドオリ ジナルのμVision、コンパイラは世界中で実 自由に設定でき、ARM 社のコースに加え、 桑 原: 従 来 か ら 独 立 系 の デ バ ッ ガ ベ ン YDC オリジナルのコースも用意しています。 ダーとして多くのマイコンに対応してきた コ ー ス の 内 容 は ツ ー ル よ り も、ARM コ ア 経緯もあり、お客様の開発事情をよく存じ お客様から「立ち上げが難しい」といったお の中身に関するものが多くあります。たと 上 げ て い ま す。MDK-ARM に お い て も、 ハ 話をいただいたことはありません。 えば、ARM コアに適したコードの書き方を イエンドで培った経験をお客様にご提供す 飯塚:YDC は、お客様の ARM マイコンお 理解する上では、コアの中身を理解してお る こ と で、 汎 用 ARM マ イ コ ン で も YDC に よび開発ツールの評価用に、コンパイラや くと有利です。ちなみに、国内で 1 番多く 相談してよかったと思っていただきたいで デバッガだけでなく、JTAG-ICE ならびに評 ARM 認定トレーナーを有しているのが YDC すね。 価ボードを含む一式で無償貸出をしていま です。すなわち、YDC からの技術サポートは、 飯塚:ハイエンドを手がけてきた実績で 績のある ARM C/C++ コンパイラです。 殿下:すぐにスタートできることから、 す。期間は2週間ですが、お貸出しする際に、 このトレーナーを中心に ARM に精通したス 言えば、これまでソフトウェアに関する質 フィールドエンジニアがデモをしながら詳 タッフから受けられるということです。 問は年間 1000 件以上いただいています。そ しくレクチャーしておりますので、まずは 桑原:コンパイラやデバッガなどのツー れが 10 年以上にわたっており、YDC には他 ルの使い方についてはもちろんですが、ト 社にはない多くのノウハウが蓄積されてい レーニングを含めて ARM への置き換えを総 ます。 合的にサポートするのが YDC と覚えていた だければと思います。 殿下:最近は難易度の高い質問が増えて きていますね。初心者レベルの質問は YDC のホームページに掲載している FAQ にまと 国内の ARM ユーザのことを でトップクラスの数を出荷していたことか Approved Training Centre(ATC)の 認 定 を 熟知している ら、ARM 社から見れば国内の ARM ユーザの 受け、毎年 20 回以上のトレーニングを開催 ことを熟知しているデバッガベンダーであ しております。 YDC が英国 ARM 社の正規代理店に認定さ れた経緯は? 桑原:正規代理店の認定は 2000 年です。 その当時、国内で ARM 向けのエミュレータ 12 ARM PARTNERS SUCCESS ARM コアやツールの めておりますので、多くの場合そちらで解 トレーニングコースが充実 決いただけるようになっています。 現在、正規代理店として特に注力してい り、YDC にとっては正規代理店に認定され 殿 下: ト レ ー ニ ン グ コ ー ス は、ARM 社 ることでより詳しい技術情報をいち早く得 からの英語テキストをそのまま使うのでは 桑 原: ま ず ARM が 使 用 さ れ る 市 場 を 広 られるなど、お互いにメリットがありまし なく、エンジニアにわかりやすい言葉で意 げ て い く こ と が 最 も 重 要 で す。 そ の た め た。続いて 2002 年には、英国 ARM 社より 訳して用いています。コース構成は比較的 に、ARM コアやツールのトレーニングコー ることはありますか? MDK-ARM を使用することで コードサイズを小さくできる あらためて MDK-ARM の特長を教えてく ださい。 横河ディジタルコンピュータ株式会社 エンベデッドプロダクト事業統括本部 ARM サポートチーム 部長 殿下 信二 氏 ARM PARTNERS SUCCESS 13 Premium Talk Session Premium Talk Session 横河ディジタルコンピュータ株式会社 ラの知識はあった方が良いでしょう。 は別のコースとして用意されています。す でに開発に関わっているエンジニアの場合、 殿下:Cortex-M シリーズではないのです 殿 下:ARM マ イ コ ン は 海 外 の も の だ か が、キャッシュがあるマイコンの場合、コー ら、とっつきにくい、大変そうだ、といっ 解決したい課題が明確になっているなどト ドサイズが小さいとキャッシュに収まりや たことを気にされる方もいますが、一番気 レーニングコースへ参加する意義は大きい すいといったメリットもあります。 に さ れ る の は、 既 存 の ソ フ ト ウ ェ ア 資 産 ですね。中堅クラスのエンジニアが新人教 飯塚:ソースの書き方によってコードサ をそのまま移行できるのか、ということで 育を行う時間はありませんので、それに代 イズは変わってきます。YDC ではソースの書 しょう。コンパイラは、似ているところも わって YDC のトレーニングコースを使って き方に向けたトレーニングコースも用意し 多いので特に問題となることはないのです いただければと思います。 ています。 が、課題となるのは、割り込みのプライオ 桑原:トレーニングの提供はもちろんで リティ、リンク時のメモリ配置などです。 すが、ARM 初心者に向けては半導体メーカー 「MDK-Standard」 、「MDK-Professional」が あ 割り込みについては、その考え方が ARM と合同セミナーを開催したり、オンライン ります。「MDK-Standard」にはミドルウェ マイコンに合っていないとつまずくことが でも提供資料の充実を図っていきたいと考 アがなく、「MDK-Professional」にはミド 多 い の も 事 実 で す が、YDC と し て は ARM えています。 ルウェアが入っています。また、マイコン コアのアーキテクチャの違いをあらかじめ 安心して ARM に触れられる機会を使ってい に限定した低価格製品もラインアップして しっかりご説明していますので、大きな問 ARM マイコンであれば ただければと思います。 います。たとえば、評価の段階では「MDK- 題になったことはありません。また、ブー ツールは流用できる Standard」を導入し、マイコンが決定し開発 トローダは MDK-ARM の場合、クリックだ がピークになった時に、限定モデルを複数 けで自動生成されるため非常に簡単です。 横河ディジタルコンピュータ株式会社 エンベデッドプロダクト事業統括本部 プロダクトマーケティング部 課長代理 飯塚 晶子 氏 MDK-ARM は有償ですが、無償ツールとの 違いは? 桑 原: 無 償 ツ ー ル と の 大 き な 違 い は、 桑原:MDK-ARM には、無償の「MDK-Lite」 、 導入するといった方法を採られるお客様も います。 MDK-ARM を使用することでコードサイズ を小さくできることです。最近の ARM マイ コンは大容量のメモリを積んだものも多く ありました。 ARM マイコンに置き換えたお客様が苦労 されるポイントはありますか? ARM 初心者へ向けた取り組みはあります か? 以前は ICE がデバッグの主流という時代も あ る か ら、 そ れ に 適 し た ARM マ イ コ ン を 殿 下: 技 術 的 な と こ ろ で 言 え ば、 同 じ ARM マイコンといってもペリフェラルや動 教えて欲しいと相談されることもあります。 と思っています。 殿下:まずマイコンありきで開発するの もちろん、そういったご要望にも丁寧にお は 理 想 で す が、 実 際 に は マ イ コ ン が 変 わ 答えいたしますので、ARM へ乗り換える際 ることでツールも変わってしまうことを開 にはお声がけください。 発 現 場 は 嫌 が り ま す。 し か し、ARM マ イ 桑原:はじめての ARM マイコンや、はじ 作電圧、割り込みのタイミングなど各社各様 桑原: ARM マイコンをどう選ぶか、とい コンであれば、半導体メーカーによる差は めての組込みという方には、「ビットとは何 です。特に割り込みのタイミングは、少しだ うお話であれば、お客様からは流通性など ありますが、基本的にツールは流用できま 見られますが、コードサイズを小さくする 殿 下: 私 が YDC に 入 社 す る 前 は、 産 業 か」といった極めて初級レベルからはじめる けクロックや性能を上げようとした場合、と 性能以外のことでも相談されることが多く す。ツールが同じならマイコンも変えやす ことでその必要はなくなります。トータル 機器の開発に携わっていましてフル ICE を 「ARM マイコン基礎講座」というトレーニン たんに上手くいかなくなることがほとんどで なり、ARM マイコンへ移行するお客様がか い。デバイスは選び放題ですから、エンジ で考えるとコストダウンが図れるというわ 使用していました。当時は、ICE 絶対主義 グコースを YDC 独自に用意しています。た す。多くのお客様がマイコンを変える時に なり増えつつあることを肌で感じます。簡 ニアにとっては世界が広がるはずです。 けです。 で し た が、YDC に 入 っ て JTAG エ ミ ュ レ ー とえば、大手電器メーカに対して年間契約 少し苦労されるポイントだといえます。また、 単にマイコンを置き換えることはできない タを使ってみたところ、これらなら充分だ で新人トレーニングを請け負っていますが、 多くの ARM マイコンは低消費電力化のため のが現実ですが、いつかは変えなくては、 様の ARM へ移行する不安やハードルをいか 他にもメリットがあります。特に開発が佳 という印象を受けました。ARM マイコンは、 Java や Android などは知っていても、ボー クロック周波数を切り替えられるようになっ という思いが特にこの 2 年で具体化してき に下げられるかがポイントと考えています。 境に入れば、少しでも速く内蔵フラッシュ ICE に必要となるエミュレータチップがな ドを使った組込みシステムの開発まで経験 ています。クロックの切り替えには注意が必 たと思っています。 YDC は豊富な経験がありますから、ツール にダウンロードしたいですよね。最近のよ く、必然的に ETM トレースや JTAG エミュ している方は少ないのが現状です。 要です。通常セキュリティロックがかかって うにコードサイズが 1M バイトを超えるよう レータを使わざるを得ませんが、ICE の文 殿 下: 2012 年 か ら「ARM 認 定 エ ン ジ ニ おり、クロックの切り替えの際には、決まっ お客様のハードルを ままで以上に最適な提案をしていきたいと になると、その差は歴然です。 化ではなく JTAG 文化に移行したといえる ア(AAE)プログラム」がスタートしており、 たシーケンスが必要になります。さらに、ス いかに下げられるか 思います。また、ARM エコシステムの一員 でしょう。 学生さんが就職のためにそういった資格を リープ時の割り込みの入り方なども移行時に 目指すようになると状況は変わってくると 注意するポイントです。 殿下:コードサイズを小さくできれば、 飯塚:もうひとつのメリットとして、製 品の起動時間の高速化ですね。パフォーマン 桑原:YDC のミッションとしては、お客 の提供やトレーニングコースを通じて、い として半導体メーカー、パートナー各社と 今後の展開についてお聞かせください。 協業しながら、セミナーをはじめ、まずは スを上げるためにアセンブラを駆使するの 既存のソフトウェア資産を 思います。「ARM マイコン基礎講座」を修 飯塚:ARM マイコンは、半導体メーカー 飯塚:現在も多くのお客様から声をかけ ARM に触れていただく環境を提供すること が当たり前の時代もありました。MDK-ARM そのまま移行できるのか 了し、組込みシステムがどういうものかが の数も品種も多くありますので、どれを選 ていただいていますが、今後は MDK-ARM を を最優先に考えて活動していきたいと思い 理解できた後、メモリ管理やキャッシュの べばいいのか、という最初のハードルがあ 通じて、ARM マイコンで開発するなら YDC、 ます。 使い方について学んでいただきます。これ ります。お客様からは、実現したい機能が といっていただけるような存在になりたい ではアセンブラは不要ですが、コンパイラ で最適なコードを出力する上でもアセンブ 14 ザが気にされていることはありませんか? ARM PARTNERS SUCCESS ARM マイコンを採用するにあたってユー 本日はありがとうございました。 ARM PARTNERS SUCCESS 15
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