Shiga University Seeds No. 11 しゃ 2015–January 【代表的な研究テーマ】 ■ 金融の不安定性 ■ ミンスキー ■ ポスト・ケインズ派 ■ 非線形経済動学 金融の不安定性に関する理論的研究 課題解決に役立つシーズの説明 【研究内容】 異端の経済学者ハイマン=ミンスキーは、ケインズ自身が重視したにも関わらず、その後の研究では 軽視された実物面と金融面の相互関係を強調し、資本主義経済に内在する複雑な金融構造が経済の 不安定性、循環を引き起こすことを強調する金融不安定性仮説を提唱した。サブプライム問題に端を発 した世界的な金融危機により、ミンスキーはその慧眼を国内外で称賛されている。 ミンスキーは、企業の投資決定が貸し手、及び借り手のリスクに大きく依存し、その決定は極めて安 定性に欠けると論じている。企業が投資を行う場合、内部留保等でファイナンスできない部分は銀行借 入等の外部資金に依存せざるをえない。そして、その債務契約の質は、貸し手、及び借り手のリスクに 影響を与える。企業の投資決定は、これらのリスクにも依存するので、極めて安定性に欠けたものにな る。また、経済全体の安定性は企業の投資決定に大きく依存する。 言い換えれば、債務契約の質が金 二宮 健史郎 Kenshiro Ninomiya 経済学部/教授 融システムの質を決定し、それが経済の安定性に影響するということである。 バブル経済の崩壊以降、都市銀行や大手証券会社、生命保険会社の経営破綻が相次ぐ等、日本経 済は極めて深刻な不況を経験した。そして、日銀は、その不況に対応するために異例のゼロ金利政 策、量的緩和政策を、アベノミクスにより異次元の金融緩和政策を採用するに至っている。 また、アジ アの通貨危機やサブプライム問題に端を発した金融危機が世界各国を襲い、深刻な打撃を与えてい る。 【プロフィール】 ●略歴 ・1995 年 神戸大学大学院 経済学研究科 博士後期課程中退 ・1995 年 滋賀大学 経済学部 助手 講師、助教授を経て ・2006 年 滋賀大学 経済学部 教授 ・博士(経済学) 神戸大学 【主な社会的活動】 ●所属学会 ・経済理論学会 ・日本金融学会 ・経済教育学会 ・日本経済学会 ・ケインズ学会 このような問題について、ミンスキーの視点を非線形経済動学に適用し、金融的な経済の不安定性、 循環を研究している。具体的には、 ①金融の不安定性を回避するための政策等の検討 ②国際資本移動を考慮した開放体系における金融の不安定性の検討 ③所得分配と金融の不安定性との関係の検討 ④金融資産の蓄積と金融の不安定性との関係の検討 ⑤金融構造の変化と「確信の不安定性」を導入した金融不安定性、循環の検討 等である。最近では、金融不安定性の長期化と金融化の研究に着手している。 【主要業績】 二宮健史郎(2006)『金融恐慌のマクロ経済学』中央経済社. Ninomiya,K. and M.Tokuda (2012), Structural Change and Financial Instability in an Open Economy, Korea and the World Economy 13(1), pp.1-37. 二宮健史郎・得田雅章(2011)「構造変化と金融の不安定性」『季刊・経済理論』第 48 巻第 2 号, pp.81-95. 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 ※数値が大きくなるほど,確信の不安定性が大きくなることを意味する。 「日本における確信の不安定性」 出所 二宮・得田(2011) 36
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