ダットスキャン ®静注症例集

参照文献
1) Tossici-Bolt et al. EJNMMI 2006; 33(12): 1491-1499
2) Marshall VL et al. Mov Disord 2009; 24(4): 500-508
3) H.Oba et al. Neurology 2005; 64: 2050-2055
4) McKeith IG et al. Neurology 2005; 65(12): 1863-1872
5) 認知症疾患治療ガイドライン2010; 300-302 (CQ7-2)
ダットスキャン 静注 症例集
®
日本標準商品分類番号
874300
薬 価 収 載 2013年11月
販売開始
2014年1月
貯 法:室温,
遮光保存
有効期間:検定日時から7 時間
お問い合わせ先
日本メジフィジックス株式会社 製品企画第一部
TEL 03-5634-7452
日本メジフィジックス株式会社
監修 東京都健康長寿医療センター研究所 神経画像研究チーム 石井賢二
〒136-0075 東京都江東区新砂3丁目4番10号
TEL 03-5634-7006
(代) URL http://www.nmp.co.jp/
2015.9月作成
(SC-1509-G02)
• 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
「警告・禁忌等を含む使用上の注意」等については本書の裏面をご参照ください。
○ダットスキャン ®静注 症例集の作成にあたり
• DaTView/3D-SSP/ZSAMによる画像解析は、株式会社AZEの「AZE VirtualPlace隼」を使用することで実
施可能です。
• 本症例をご提供頂いた各施設におけるDaTSCANの収集・再構成条件一覧を巻末に掲載していますが、
脳内ドパミントランスポーターシンチグラフィで用いられるSPECT製剤「ダットスキャン®静注(以
下、DaTSCAN)」は、黒質から線条体に投射するドパミン神経細胞の密度を推定することのできる
DaTSCANの定量的指標であるSBR(Specific Binding Ratio)は使用機種、コリメータ、画像再構成法等に
よって異なりますので、その解釈には十分ご注意ください。
診断薬であり、パーキンソン症候群やレビー小体型認知症の診断における有用性は以前からよく知ら
れていた。本剤は、従前から用いられているX線CT、MRI、脳血流シンチグラフィ(以下、脳血流
SPECT)、MIBG心筋シンチグラフィ(以下、MIBG心筋シンチ)等とは全く異なる病態情報を得るこ
とができる待望の診断薬であり、発売から約1年の短期間で、本邦の診療の現場で広く普及して使わ
● パーキンソン病(振戦優位型)
4
一方で、正常例やさまざまな症例のDaTSCAN画像所見をみる機会が限られている状況で、読影
● パーキンソン病の疑い
5
や診 断に難 渋する経 験をしている臨 床 家の方々も少なくないと思 われる。このような中で、
● 本態性振戦からパーキンソン病への診断変更
6
● SWEDD(Scans Without Evidence of Dopaminergic Deficit)
8
例集を発刊することとなった。この症例集からDaTSCAN画像の読影や、診断のプロセスをたどって
● 進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy, PSP)①
10
頂き、日頃の診療や読影でお困りの点を少しでも解消することに役立てて頂ければ幸いである。
● 進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy, PSP)②
12
● 特発性正常圧水頭症
13
● 特発性正常圧水頭症とパーキンソン症候群の合併
14
● 多系統萎縮症(Multiple System Atrophy, MSA-P)
16
● 多系統萎縮症(Multiple System Atrophy, MSA-C)①
18
● 多系統萎縮症(Multiple System Atrophy, MSA-C)②
20
● 脳血管性パーキンソニズム①
22
● 脳血管性パーキンソニズム②
24
● 薬剤性パーキンソニズム
26
● レビー小体型認知症(DLB)の疑い
27
● レビー小体型認知症(DLB)とアルツハイマー型認知症(AD)の鑑別
28
● レビー小体型認知症(DLB)
30
● 純粋自律神経不全症(Pure Autonomic Failure, PAF)
32
● 各施設のDaTSCAN収集・再構成条件一覧表
34
れるようになったことは、臨床家の本剤に対する期待の大きさを表している。
DaTSCAN画像の読影の一助となるような症例集を求める声が多くの施設から挙がっていた。そこ
で、このたび多数のご施設のご協力をいただき、臨床症状や他のモダリティの検査の所見も含めた症
本剤の普及とその診断技術の向上により、パーキンソン症候群やレビー小体型認知症の診断が、よ
り早期に、正確に行われるようになり、患者さんやそのご家族にとって、より良い治療を受ける契機と
なることを心から願っている。
2015年3月
監修:石井賢二(東京都健康長寿医療センター研究所 神経画像研究チーム)
2
CONTENTS
3
パーキンソン病(振戦優位型)
パーキンソン病の疑い
(症例提供:慶應義塾大学 医学部 神経内科 関 守信先生)
50歳代前半 女性
(症例提供:愛媛大学 薬物療法・神経内科学 野元 正弘先生)
50歳代 男性
主 訴
右上肢の静止時振戦
主 訴
左上下肢の動作緩慢
現 病 歴
X-4年10月:初診時、右上肢に中等度の静止時振戦を認めたが、筋強剛や運動緩慢は目立たなかった。臨床
現 病 歴
X-4年:左上肢が重くなる。左上下肢の固縮・寡動。
症状から振戦優位型のパーキンソン病(PD)と診断し、抗コリン剤投与が開始され振戦は軽快した。
X-3年:初診。UPDRS パートⅢ 12点。MRIは正常で、足を引きずる。パーキンソン病(PD)を疑い、加療を
その後、振戦は緩徐に増悪したものの、それ以外の症状は目立たず症状は数年間安定していた。
開始する。治療薬(レボドパ)の反応は高くない。MIBG心筋シンチを実施。
X-2年:秋頃から右半身に筋強剛・運動緩慢も認めるようになり、ドパミン受容体刺激薬が追加され症状は軽
X年:DaTSCANを実施。
快した。経過中、何度かMIBG心筋シンチを施行したが集積低下は認めなかった。
X+1年:確認のためMIBG再検査を実施。
治療・経過
X年:DaTSCANを施行した。
DaTSCAN
MIBG心筋シンチ
DaTSCAN
PDとして治療薬3錠から5錠(レボドパ 100mg/カルビドパ 10mg)に増量して、改善。
DaTView結果画像
Original画像
Early
Delayed
R
H/M 2.72
H/M 2.64
Washout Rate 34.3%
心筋へのMIBG集積は保たれ
(X-2年12月)
て おり、P D 以 外 の 疾 患 を 考 える 所 見 で
あった。
R
R
SBRBolt R=4.38 L=5.22 Ave=4.80 AI=17.5%
DaTView結果画像
N
両側被殻の集積低下がみられた。また、尾状核は右優位で集積低下しており、SBRにも左右差が認められた。
6
MIBG心筋シンチ
5
4
3
2
1
0
SBRBolt R=4.65 L=4.10 Ave=4.38 AI=12.5%
DaTSCANでは後方優位、若干左側優位に両側線条体の集
積低下を認め、線条体集積はドット状であった。黒質線条体
ドパミン神経変性を呈する疾患が疑われる所見であった。
4
◎まとめ
PDの臨床症状は非常に多様 性に富み、振
Early
Delayed
◎まとめ
戦優位型と姿勢反射障害優位型に分ける考
症状からみてPD疑いの患者。
え方がある。MIBG心筋シンチはPDの診断
PDとして加療を開始するが、レボドパの反応性は
に非常に有用な検査だが、姿勢反射障害優
位型の方が振戦優位型に比べてより低下す
ることが報告されている。
本 症例は比 較的若 年発症の振戦優位 型の
PDであり、MIBG心筋シンチでは集積低下
の 所 見 は 明 ら か で は な か った 。しかし 、
DaTSCANでは黒質線条体ドパミン神経変
性が示唆された。
低かった。X-3年のMIBG心筋シンチでは正常で
R
H/M 2.04
H/M 1.68
Washout Rate 51.38%
あったが、X+1年 の再 検 査ではEarly像は正常、
Delayed像は異常であった。一方、DaTSCANでは
両側被殻への集積低下と左右差を認め、明らかな
X-3年のEarly H/M比は2.39、Delayed H/M
異常であり、PDが疑われた。治療薬を増量した結
比は2.62であり、いずれも正常であった。
果、改善につながった症例である。
X+1年のEarly H/M比は2.04で正常、Delayed
H/M比は1.68で異常であった(上図)。
5
本態性振戦からパーキンソン病への診断 変更
(症例提供:天使病院 精神科 山本 晋先生、核医学画像提供:市立札幌病院)
60歳代後半 男性(外国籍)
DaTSCAN
主 訴
四肢の振戦
現 病 歴
X-18年:2年前から手足がふるえると訴え、当科を初診。本態性振戦(ET)と診断。クロナゼパム(CNZP)、
Original画像
DaTView結果画像
SC(+)&CT/AC(+)
エチゾラム、タンドスピロン、ビペリデン、プロプラノロールなどが使用されるも、無効(眠気やかゆみで不耐
SC(+)&CT/AC(+)
性)。半年で中断。その後はA病院精神科・神経内科に通院(ET)。
N
X-9年:当科再受診。四肢の振戦は上 肢優位に安静時にもみられ、怒ったときや物をもったときに増悪。
5
CNZPを再開するも眠気でアドヒアランス不良。βブロッカーも無効。
4
X-6年:A病院神経内科を紹介再受診時、両手の姿勢時振戦のみでETと判断(ただし増悪傾向あり)、ジアゼ
パム(DZP)、CNZPを使用するも無効。同時期、排尿障害で泌尿器科より投薬あり。
3
X-2年:現主治医担当。日本語が通じず、意思疎通が困難。CNZPは眠気が強く、DZPは無効。1度のプリミド
2
ン服用で3日間ふらつきと歩行障害が出現。
1
X-1年:受診時に通訳が同伴。MMSE 27点。
0
X年:DaTSCANを施行、その後、他の神経画像検査(MRI、MIBG心筋シンチ、脳血流SPECT)も施行。神経
学的には両上肢の安静時振戦と筋固縮及び姿勢反射障害を軽度認めた。パーキンソン病(PD)の家族歴は
ない。
治療・経過
PDと診断。ロピニロール 0.75mg を開始、現在同剤2mgで振戦は軽減してきている。
Early
T1WI
SBRBolt R=5.92 L=6.53 Ave=6.22 AI=9.8%
R
視覚的に両側被殻及び左側尾状核の集積低下を示していた。
また、SBRは6.22であり、当施設のファントム実験結果からも、異常所見と判断した。
MIBG心筋シンチ
MRI
T2WI
Delayed
参考:当施設でのファントム実験結果
SC(+)&CT/AC(+)
R
R
H/M 1.26
H/M 1.52
Washout Rate 36.7%
R
画 像 か ら は 特 に 異 常 は み ら れ な い 。V S R A D
著明な集積低下あり。
advanceでのVOI内萎縮度(Z-score)は1.23。
HMPAO-脳血流SPECT
3D-SSP(Decrease)
RT.LAT
LT.LAT
SUP
INF
ANT
POST
RT.MED
R
R
L
R
L
L
N
6
5
5
4
4
3
3
2
2
1
1
0
0
SBRBolt R=5.54 L=5.68 Ave=5.61 AI=2.5%
※SC:散乱線補正、CT/AC:X線CTによる減弱補正、+:あり、−:なし
Z
7
6
5
4
6
SC(−)&CT/AC(−)
め、Boltらの論文1)で示されているカットオフ値4.5を考慮し、SBR=6.75を暫定的なカットオフ値としている。
R
GLB
PNS
6
SC(+)条件下では、SC(−)の約1.5倍のSBRを示した。当院ではSC(+)でDaTSCANの収集を行っているた
L
CBL
N
SBRBolt R=8.27 L=8.53 Ave=8.40 AI=3.1%
LT.MED
Surface
THL
6
3
両側頭頂葉、後頭葉、前頭葉の血
流低下を認める。
◎まとめ
2
長年、本態性振戦と診断され、治療にもかかわらず症状が改善せず悪化傾向にあった。外国人のために意思疎通が
1
とりづらかったが、DaTSCANの所見を機に精査を進め、PDと診断した。治療薬を抗PD薬に変更し、20年来の症
0
状が軽減した貴重な症例である。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
7
SWEDD(Scans Without Evidence of Dopaminergic Deficit)
(症例提供:公立南丹病院 脳神経内科 小泉 崇先生、牧野 雅弘先生)
70歳代後半 男性
DaTSCAN
主 訴
右上肢の安静時振戦・筋強剛、右下肢の安静時振戦、歩行障害
現 病 歴
X-4年:右優位の振戦で発症し、歩行障害及び安静時振戦の増強があった。
Original画像
X-1年1月:当科初診。初診時、右上肢の安静時振戦・筋強剛及び右下肢に安静時振戦を認めた。それまで胃腸
障害に対してスルピリドが処方されており、まず同薬剤の中止が行われた。
頭部MRI画像では特記すべき異常所見は認めなかった。
MIBG心筋シンチでは、低下を認めなかった。薬剤性パーキンソン症候群の可能性は否定できなかったが、ス
画像所見からDaTSCANの取り込み低下は認められなかっ
ルピリド中止後も左右差のある安静時振戦が持続し、姿勢反射障害も出現してきたため、臨床症状からパー
た。また、SBR値は左右ともに4.94と正常値であり、左右差
キンソン病(PD)と診断された。
(AI=0.0%)も認められなかった。
X-1年3月:プラミペキソールで治療開始。その後自覚的には若干の症状改善をみていた。
X年7月:精査のためDaTSCANを実施した。
治療・経過
PDではない可能性が高いと判断され、プラミペキソールを漸減中止した。中止後も症状には変化がない。
R
MRI
FLAIR
DaTView結果画像
T2WI
2003
N
2294
6
5
4
3
2
1
0
R
89
R
-4
SBRBolt R=4.94 L=4.94 Ave=4.94 AI=0.0%
特記すべき異常所見は認めなかった。
SWEDD
MIBG心筋シンチ
Early
DaTSCANの海外第Ⅲ相臨床試験では、臨床診断でPDと診断されたにもかかわらず本検査で異常のない症例が
Delayed
21%報告されており2)、これらの患者はSWEDDと呼ばれ、本剤が新しい診断基準を提 供することとなった。
SWEDDは診断困難な本態性振戦等を含むと考えられており、既存の臨床診断ではPDと誤診される2)。本剤はPD
が疑われる患者集団又はPDと臨床診断された患者集団からSWEDDを除外することが可能であり、PD患者の適
切な患者管理、SWEDD症例における無用な抗PD薬の長期投与の回避に寄与することが期待される。
Early H/M 2.30
Delayed H/M 2.27
Washout Rate 39.18%
◎まとめ
PDの診断基準を満たしているが、DaTSCANで正常集積を示す病態はSWEDDと定義されている。レボドパの効果
は認められない病態であり、ジストニア振戦及び本態性振戦、心因性パーキンソニズムなどが原因疾患として想定さ
R
H/M比:早期像2.30、後期像2.27と低下を認めなかった。
8
れている。本症例はDaTSCANの所見より、PDではない可能性が高いと判断され、プラミペキソールを漸減中止し
た。中止後も症状には変化がなく、PD以外のパーキンソン症候群と考えられた。これにより不要な薬剤投与を継続
することが回避されたと考えられる。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
9
進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy, PSP)①
(症例提供:国立病院機構大牟田病院 放射線科 熊副 洋幸先生、神経内科 菅原 三和先生)
80歳代前半 女性
MIBG心筋シンチ
主 訴
ふらつき
現 病 歴
X-4年夏頃:つまずきやすくなり、自転車にも乗れなくなった。
Early
Delayed
90
90
心筋への集積:
X-3年3月:転倒し左手首を骨折。この入院中より見当識障害あり。その後、歩行障害、認知症の緩徐な進行あり。
X-3年12月:転倒。この頃より症状が急速に進行し、布団から一人で起きられなくなった。
Early H/M比 2.13(正常値 1.9∼2.4)
X-2年4月:歩行障害がさらに進行し、近医にてパーキンソン病と診断され内服加療も改善なく、同年7月に当院
Delayed H/M比 2.50(正常値 1.9∼2.9)
に精査加療目的にて紹介となった。その後、大脳皮質基底核変性症候群(R/O PSP)との臨床診断で経過観察。
Washout Rate 10.8%(正常値 −3∼21%)
X年1月:転倒。同年3月に進行性核上性麻痺(PSP)の臨床診断に変更となった。
臨床所見では、左上肢に強い寡動、筋固縮あり。著明な姿勢反射障害あり。認知症、高次脳機能障害(構成失行、失認)あり。
R
心理検査所見は、HDS-R 6/30、MMSE 6/30、CDR 2であった。
治療・経過
0
H/M 2.13
T1WI
T2WI
H/M 2.50
早期像から後期像にかけて心筋への取り込み増加を認
める。明らかな異常所見はなし。
Washout Rate 10.8%
長期臥床症例かつ嚥下障害があり、レボドパの内服困難。臨床症状の推移と観察継続予定。
MRI
0
T2WI
DaTSCAN
QSPECT再構成画像
6.000
DaTView結果画像
N
R
R
6
5
1. 矢状断にて脳幹部が ハチドリの嘴 状の形態を呈していた。中脳被蓋の萎縮が疑われる。PSPの所見として合
4
致。橋の膨らみは保持。橋、中小脳脚に変性の所見はなかった。
2. 両側大脳半球は前頭葉から頭頂葉優位に軽度脳萎縮を認めた。やや右側優位の萎縮の印象。
3
3. 両側側脳室から第3/4脳室の拡大を認めた。水頭症の疑い。両側側脳室周囲深部白質はびまん性にT2延長をき
2
たしており脳室周囲病変と考えられる。
4. 橋、両側基底核領域から放線冠、両側大脳半球深部白質には多数の陳旧性ラクナ
塞/非特異的虚血性病変/動
1
脈硬化性病変を認めた。
0
脳血流SPECT
Original画像
統計解析画像(Decrease)
Inferior
(%)
110
R-Iateral Posterior L-medial
R
L
Superior L-lateral
L
6
R
Anterior R-medial
SBRBolt R=1.77 L=2.52 Ave=2.14 AI=34.9%
R
0.000
SBR
Str-Rt
Str-Lt
Str-Ave
Whole-BG
1.226
2.269
1.747
線条体への集積は右側優位の低下を認める。QSPECT再構成画像、DaTViewのSBRはともに低下していた。
黒質線条体ドパミン神経の脱落を伴う疾患(パーキンソン症候群やDLBなど)で認められる所見となっている。
R
10
L
R
R
L
2
Tc-99m製剤600MBq安静閉眼時静注、10分後より頭部断層像を撮像した。
Patlak-Plot法により定量を行った。
脳血流量(mL/100g/min)は、大脳半球平均が右37.3、左39.6であった。 Original画像では、両側大脳半球は前頭葉優位にびまん性に血流低下を認める。また、両側側脳室周囲の血流低下
も目立つ。脳幹部や小脳の血流は比較的保たれている。血流分布に明らかな左右差は認められなかった。
統計解析画像:前頭葉に相対的血流低下が目立つ。また、側脳室周囲の相対的血流低下も目立つ。
10
◎まとめ
臨床症状及びMRI、脳血流SPECT、MIBG心筋シンチからPSPが疑われたが、DaTSCANの結果と臨床症状、特に
左右差が一致し、PSPであると確診できた。本症例は典型例であり、各画像診断の結果が一致していたが、種々の
画像診断で確認することにより、診断の確診度を高めることができた。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
11
進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy, PSP)②
特発性正常圧水頭症
(症例提供:東京都健康長寿医療センター 放射線診断科 伊藤 公輝先生)
70歳代前半 男性
(症例提供:岡山大学病院 神経内科 佐藤 恒大先生、阿部 康二先生)
70歳代後半 女性
主 訴
歩行障害、認知機能低下
主 訴
歩行障害
現 病 歴
X-2年:アルコール多飲にて近医を受診し、脳萎縮を指摘された。
現 病 歴
X-3年:歩行時のふらつきを自覚し、徐々に悪化した。
X-1年:つまずきやすくなり、自発性が低下した。構音障害も出現。
近医を受診し、動作緩慢、開脚歩行を認め当科紹介、精査目的で入院した。
X年:近医より歩行障害、認知機能低下にて紹介。
神経学的には認知機能低下(CDR 0.5、MMSE 22/30、HDS-R 24/30、FAB 12/18、MoCA 14/30、
来院時のMMSE 21/30(遅延再生2/3)、HDS-R 20/30(遅延再生5/6)、ビタミンは正常範囲内、眼球
TMT-A 240秒)、歩行は開脚歩行であり、パーキンソニズムとしては無動・姿勢反射障害を認めるも振戦や
運 動障害が認められた。MRIにて中脳被 蓋の高度萎 縮(64mm ) 、MIBG心筋シンチは正常(H/M比
筋強剛はなかった。また切迫性尿失禁を認めた。
2.95)であった。
X年:歩行障害の原因を精査するため、DaTSCANを施行。
2 3)
進行性核上性麻痺(PSP)を疑いDaTSCANを施行した。
治療・経過
治療・経過
特発性正常圧水頭症(iNPH)と診断。VPシャントを検討中。
自立はできているが、転倒の回数が増加している。自宅に手すりを付けるなどで対応している。
DaTSCAN
MRI
DaTSCAN
Original画像
DaTView結果画像
FLAIR
N
FLAIR
B
6
5
C
A
A
4
DaTView正規化画像
N
B
5
C
4
D
3
3
2
1
0
SBRBolt R=1.15 L=0.92 Ave=1.03 AI=21.7%
R
6
R
2
R
1
(A)側脳室、第3脳室の拡大、(B)高位円蓋部の脳溝
の狭小化、(C)シルビウス裂の拡大、(D)局所的脳溝の
拡大。
0
SBRBolt R=4.31 L=4.50 Ave=4.40 AI=4.4%
両側線条体(左優位)に集積低下がみられ、特に被殻の低下が高度であった。
明らかな集積低下なし。
脳槽シンチ
MRI
T1WI
ANT
◎まとめ
◎まとめ
DaTSCANにより歩行障害の原因がパーキンソン病
臨床症状及びMRI、MIBG心筋シンチからPSPが
疑われ、DaTSCANで左優位の両側線条体の高度
集 積低下により、黒質線条体の変性を確認でき、
あるいは進行性核上性麻痺など黒質線条体ドパミン
24Hr
神経の脱落を伴う疾患によるものではないと推定さ
れた。念のためレボドパチャレンジテストを行ったが
PSPと診断した。
歩行障害の明らかな改善は認められなかった。タッ
R
中脳被蓋の高度萎縮(64mm2;正中矢状断での面
24時間後も111In-DTPAの脳室内への滞留を認め、
積の正常範囲は101∼169mm ) が認められた。
iNPHと診断した。
2 3)
12
L
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
プテストでMMSE 22→23点、HDS-R 24→26点
と改善があり、VPシャントの施行を検討中である。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
13
特発性正常圧水頭症とパーキンソン症候群 の合併
(症例提供:岐阜大学 医学部 脳神経外科 中山 則之先生)
80歳代前半 女性
主 訴
歩行障害
現 病 歴
X-5年:小刻み歩行が出現。
DaTSCAN
Original画像(グレースケール)
Original画像(カラースケール)
X-3年:高血圧と頭痛のためA病院脳神経外科を受診。この際の頭部精査では異常を指摘されていない。
X-2年:歩行障害が進行したためB病院神経内科を受診。パーキンソン病(PD)は否定的(MIBG心筋シンチ
正常)で特発性正常圧水頭症(iNPH)が疑われた。同院脳神経外科でタップテストが2回施行され、いずれも
歩行障害の改善が認められたため陽性の判断。脳室腹腔短絡術が勧められたが、頭部の手術のため不安とな
り当科へセカンドオピニオンとなった。
X-2年12月:腰椎腹腔短絡術を施行。L3-4 paramedianに 刺し、コッドマン・ハキム圧可変式バルブを背部留置。
術前不能であった3m up and goは可能となり1分2秒。以後、外来に定期通院。
X年4月:右上下肢の振戦が出現し、筋力低下も加わり徐々に歩行障害進行。頭部CT上over and under
drainageなく、過去にPDが否定されていたため本態性振戦としてプロプラノロールを投与するも改善がみ
られなかった。
X年6月:DaTSCANを施行。両側線条体の集積が著明に低下しており、PDの併発が疑われたため神経内科を紹介。
治療・経過
レボドパ内服を開始し、安静時振戦の軽快がみられている。
R
R
DaTView結果画像
CT
N
6
術前
5
4
Evans Index 0.31、シルビウス裂の
両側線条体の集積が著明に
3
低下。
開大は中等度、高位円蓋部・正中脳溝
狭小化あり、脳梁角は90度程度。左
基底核に陳旧性ラクナ
2
塞巣あり。
1
0
R
SBRBolt R=1.92 L=1..30 Ave=1.61 AI=38.7%
R
術後
本症例では、MIBG心筋シンチが正常でDaTSCANが低下
しており、レボドパの効果がみられたことより、初期のPD
シルビウス裂の開大、高位円蓋部・正
中脳溝狭小化は軽 快し、脳梁角は鈍
角化。
あるいは他の変性性のパーキンソン症候群の可能性も否
定できなかった。
アルツハイマー型認知症やPD、脳血管障害など他の疾患
がiNPHに合併することがある。合併がない場合に比べて
合 併 が あ る 場 合 は シ ャント 術 の 効 果 が 減 弱 す る 。
DaTSCANを含めた各種SPECT評価を組み合わせること
R
14
R
でiNPHとの鑑別や合併の有無を判別し得た症例である。
症状の原因疾患の比率
◎まとめ
髄液シャント術による効果
・認知症
合併症 ・歩行障害
iNPH ・認知症
・歩行障害
・尿失禁
術前
合併症 ・認知症
・歩行障害
術後
アルツハイマー型認知症やパーキンソン病、脳血管障害などが合併
していることがあり、シャント術の効果は合併していないものに比
べ小さい。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
15
多系統萎縮症
(Multiple System Atrophy, MSA-P)
(症例提供:香川県立中央病院 神経内科 森本 展年先生)
70歳代前半 男性
DaTSCAN
主 訴
歩行障害、上肢運動障害
現 病 歴
X-2年8月頃:左上肢の動かしにくさを自覚。
Original画像
SPECT-CT Fusion画像
(%)
100
X-1年6月:両上肢の運動障害と動作緩慢があり、近医神経内科受診。
(%)
100
X-1年12月:頑固な便秘・尿閉となり自己導尿開始。このころより構音障害(断綴性)が出現。
X年6月:レボドパ 450mg/日まで増量されるも運動障害の改善に乏しいことから、精査目的で当院紹介と
なる。
現 症
初診時は、明らかな脳神経麻痺なし、構音障害(断綴性)あり、明らかな眼振なし。
歩行は開脚歩行。つぎ足歩行は不可。
両上肢安静時振戦あり(左=右)、筋固縮あり(左>右)、姿勢反射障害あり。
起立性低血圧あり(臥位:135/87mmHg 脈拍59、立位:104/68mmHg 脈拍64)。
排尿障害(尿閉)あり-自己導尿。
治療・経過
多系統萎縮症(MSA-P)と診断し、リハビリ等を行い経過観察中。
R
R
0
MRI
T2WI
T1WI
T2*WI
0
DaTView結果画像
T1WI
N
6
5
4
3
R
R
小脳・脳幹萎縮 T2*被殻スリットあり。典型的なMSA-P症例である。
2
1
MIBG心筋シンチ
脳血流SPECT
統計解析画像(Decrease)
0
6
Early
Delayed
79
79
SBRBolt R=2.92 L=5.14 Ave=4.03 AI=55.1%
右優位の線条体への集積低下を認め、症状と画像の左右差は一致している。DaTViewの視覚的な情報ではPDと比
べて際立った特徴はなさそうな印象である。
※参考:当院でのPD及びMSA-PのSBR結果、PD:SBR=3.68±1.13(n=28)、MSA-P:SBR=3.15±1.35(n=4)、p=0.38
R
0
H/M 2.38
0
H/M 1.94
Washout Rate 40.5%
心筋への取り込みはほぼ正常。
多系統萎縮症を疑う(MSA-P s/o)。
R
小脳及び両側大脳基底核の血流低下あり。
16
2
◎まとめ
本症例も含めた当院の検討結果では、PDとMSA-PとでSBRに有意差はなく、パーキンソニズム症例の鑑別という
観点では、DaTView解析結果を単独で用いることは慎重でなければならないが、本症例ではDaTSCANにより黒
質線条体系の障害を明らかにできたといえる。今後はDaTViewのオプションとして線条体部位ごとにSBRを解析で
きる機能が付加されれば、より有益な情報が得られると考えられる。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
17
多系統萎縮症
(Multiple System Atrophy, MSA-C)
①
(症例提供:香川県立中央病院 神経内科 森本 展年先生)
70歳代前半 女性
DaTSCAN
主 訴
ふらつき
現 病 歴
X年3月:歩行障害、ふらつきを自覚。
Original画像
SPECT-CT Fusion画像
(%)
100
X年5月:症状増悪し近医受診。
(%)
100
X年6月:当院当科受診。
現 症
明らかな脳神経麻痺なし、構音障害なし、明らかな眼振なし、著明な体幹失調あり。歩行は開脚歩行。つぎ足
歩行は不可。
指鼻指試験:拙劣/拙劣(運動分解+)。 明らかなパーキンソニズムなし。
起立性低血圧あり(臥位:159/93mmHg 脈拍68、立位:107/67mmHg 脈拍78)、排尿障害(頻尿)
あり-残尿は50mL、睡眠時無呼吸あり(RDI 8.1)。
治療・経過
多系統萎縮症(MSA-C)と診断し、タルチレリンを服用し経過観察中。
R
R
0
0
MRI
T2WI
T1WI
T1WI
T1WI
DaTView結果画像
N
6
5
4
R
R
R
3
小脳・脳幹萎縮。橋十字サインがみられる。
2
1
MIBG心筋シンチ
0
Early
Delayed
53
SBRBolt R=3.83 L=4.10 Ave=3.97 AI=6.8%
53
視覚的には右優位に線条体での集積低下を認める。
心筋への取り込み低下はみられなかった。
多系統萎縮症を疑った(MSA-C s/o)。
R
0
H/M 2.31
0
H/M 2.93
Washout Rate 15.48%
18
◎まとめ
臨床的にパーキンソニズムを認めないMSA-C症例で線条体集積低下を認めた。小脳失調の鑑別においては臨床上
有益な情報をもたらした。DaTSCANによりその病態が良くわかった症例である。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
19
多系統萎縮症
(Multiple System Atrophy, MSA-C)
②
(症例提供:国立病院機構大牟田病院 放射線科 熊副 洋幸先生、神経内科 菅原 三和先生)
60歳代後半 女性
MIBG心筋シンチ
主 訴
ふらつき
現 病 歴
X-5年頃:片足立ちがしにくくなり手すりが必要となった。2∼3ヵ月前より、歩いていてなんとなく斜めに歩い
Early
Delayed
66
66
ているような感じがあり、友人から「歩き方がフラフラしている」といわれるようになった。道を歩いていて曲
心筋への集積は全体に低下している。
がるときに体が道の角に触れる頻度が増えてきた。
Early H/M比 1.50(低下)
(正常値1.9∼2.4)
X年7月:精査加療目的で当院を受診。めまい、難聴、耳鳴はなし。便秘傾向あり。不眠傾向なし。
Delayed H/M比 1.37(低下)
(正常値1.9∼2.9)
臨床所見では、軽度衝動性眼球運動あり、眼振なし。フレンツェル眼鏡装着にてごく軽度右注視障害。
Washout Rate 25.1%(亢進)
(正常値−3∼21%)
ごく軽度の失調性構語障害、左上肢指鼻指試験 軽度拙劣(dysmetria)、
膝叩き(右0.5、左2)、右アキレス
R
反射低下、
0
H/M 1.50
ロンベルグ試験+/−、継ぎ足歩行−2、閉眼足踏み試験不安定。
治療・経過
T1WI
H/M 1.37
H/M比が早期像から後期像にて低下している。
以上の所見から、交感神経機能の低下が示唆された。
Washout Rate 25.1%
治療方針としては、レボドパの適用外事例であり、今後も経過観察予定。
MRI
0
DaTSCAN
T2WI
FLAIR
FLAIR
QSPECT再構成画像
6.000
DaTView結果画像
N
6
5
R
R
R
4
1. 橋正中部にFLAIR像にて十字状の高信号域を認めた。橋横走線維の変性を反映した所見となっていた。T1WI矢
3
状断では、橋の腹側のふくらみが減少していた。中小脳脚の変性(T2延長病変)、萎縮も高度であった。
2
2. 小脳は全体に萎縮。両側大脳半球は前頭葉優位の軽度脳萎縮を認めた。両側基底核領域に異常信号、萎縮の所
見は認められなかった。
1
以上から、小脳性運動失調を主体とする多系統萎縮症(MSA-C)の所見として典型的である。
0
脳血流SPECT
Original画像
統計解析画像(Decrease)
R-Iateral
Inferior
(%)
110
R
L
Superior
Posterior
L
L-lateral
L-medial
0.000
6
R
Anterior
SBRBolt R=1.78 L=1.83 Ave=1.81 AI=2.6%
R
SBR
Str-Rt
Str-Lt
Str-Ave
Whole-BG
1.747
1.648
1.697
線条体への集積は高度低下を認める。左右差はなし。QSPECT再構成画像、DaTViewのSBRはともに低下してい
た。黒質線条体ドパミン神経の脱落を伴う疾患(パーキンソン症候群やレビー小体型認知症など)で認められる所見
R-medial
となっている。
R
10
L
R
R
L
2
Tc-99m製剤 600MBq安静閉眼時静注、10分後より頭部断層像を撮像。Patlak-Plot法により定量を行った。
脳血流量(mL/100g/min)
:大脳半球平均 右43.0、左41.8。
SPECT:両側大脳半球は前頭葉優位にびまん性に血流低下。脳幹部や小脳は高度の血流低下を認めた。血流分布
に明らかな左右差は認められなかった。
統計解析画像:前頭葉に相対的血流低下が認められる。小脳に高度の相対的血流低下が認められた。
20
◎まとめ
本症例の場合、臨床上、小脳症状が主体であり、MRIや脳血流SPECTの結果からもMSA-Cと診断可能であった。
ただし、長期臥床状態のため現時点でのパーキンソニズムの詳細な評価が困難であり、筋トーヌスもわからなかっ
た。また、MIBG心筋シンチで集積低下がみられたこともあり、潜在的な線条体機能の確認目的で、DaTSCANを施
行した。結果として線条体節前機能の低下がみられ、進行したMSA-Cであることが確認できた。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
21
脳血管性パーキンソニズム①
(症例提供:関東中央病院 神経内科 織茂 智之先生)
80歳代前半 女性
DaTSCAN
主 訴
左手のふるえ
現 病 歴
X-20年:一過性の左下肢の脱力。約1ヵ月で軽快。2ヵ月後から左手の軽いふるえが出現。日常生活に問題が
Original画像
(グレースケール)
Original画像
(カラースケール)
ないために放置。
X-13年7月:当科を初診。神経学的所見では、左手の静止時振戦とごく軽度の姿勢時振戦、左半身の軽度の
筋強剛。下肢の
反射がやや亢進していたがバビンスキー徴候は陰性。その他の神経所見には異常を認めな
かった。
表面筋電図では、左手において、4.5cpsの振戦が確認された。
レボドパ/カルビドパ 200mgの投与で症状は軽快した。以後、外来で経過観察しており、初診後13年経過し
治療・経過
ているが、レボドパ/カルビドパ 500mg、アロチノロール 20mg、ビペリデン 3mgでADLは自立。軽度の左
手の振戦と筋強剛を認めるのみである。
MIBG心筋シンチ
MRI
T1WI
Delayed
R
R
DaTView結果画像
N
6
5
4
3
2
R
R
(X-13年)右の中脳に虚血巣を認めた。
1
集 積 は正常 で、H / M 比 も2.61と正常 で
(X-13年)
あった。
0
SBRBolt R=0.41 L=3.09 Ave=1.75 AI=153.3%
PET
C-CFT
DAT
11
11C-CFT*では右線条体の集積は全く
(X-13年)
C-RAC
D2/3R
11
認められないが、左線条体の集積は正常であっ
た。一方11C-RAC *では左右ともに集積は正常
3.5
SUVR
22
であった。
※11C-CFTは123I-FP-CITと同様にドパミントランスポーター
に結合するPET製剤である。11C-RACはドパミンD2受容
0.3
R
(X年)右線条体の集積は全く認められなかった。SBRは右0.41、左3.09であった。
◎まとめ
脳血管性パーキンソニズムには3つのパターンがある。①大脳深部白質の広範な虚血巣、②大脳基底核、特に線条体
体に結合するPET製剤で、ドパミン系神経伝達機構におけ
における多発性の小
塞、③中脳の
塞である。
る節後機能がわかる。両者により節前と節後のどちらが障
本例は黒質を含む中脳の不完全虚血による非常に珍しい片側性の脳血管性パーキンソニズムである。臨床的には運
害されているかを見分けることができる。
動症状はパーキンソン病と変わらない4.5cpsの静止時振戦と筋強剛が認められた。11C-CFT PETやDaTSCAN
*両製剤は研究用薬剤である。
画像で右線条体の集積は著明に低下しているが、健常側である左線条体は全く正常であり、これはホーエン・ヤール
画像提供:東京都健康長寿医療センター 石井 賢二先生
Ⅰ度のパーキンソン病と大きく異なる点である。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
23
脳血管性パーキンソニズム②
(症例提供:小牧市民病院 脳神経外科 飯塚 宏先生)
70歳代後半 男性
DaTSCAN
主 訴
左上下肢の片麻痺(徐々に改善しADLは自立)
現 病 歴
X-3年:高血圧症、脂質異常症の既往があり、脳
X-2年:2度目の脳
Original画像
塞発症。
塞を発症。
X-1年:精査にて右側の頚部内頚動脈の高度の狭窄を指摘され当院に紹介。NASCET85%、PSV320cm/s
以上、乱流あり。プラークは安定。CASを施行(Carotid WALL)。
術後の経過は良好。虚血症状なし、過灌流徴候もなし。抗血小板剤2剤を服用。退院後、外来通院している。
視覚的には左右とも被殻の集積低下が
X年:徐々に歩行がおぼつかなくなり、小刻みの不安定な歩行。歩行時に前屈みで特に足の出始めが悪い。元
みら れ 、特 に 右 側 の 低 下が 著 明 で あ
気もなくなり、 を使うのもおっくうになった。振戦、固縮は明らかではない。
る。SBRも左右平均=2.10と全体的に
脳血管性パーキンソニズムを疑い、頭部MRIを再検。DaTSCANを施行。
治療・経過
低めで、右=1.67、左=2.54と右側の
レボドパの投与を行い、経過観察中。
方が低値であった。
術前MRI
FLAIR
MRA
R
DaTView結果画像
N
6
5
4
R
R
FLAIR画像で両側にラクナ
3
塞がみられた。今回の病変は右頭頂葉Watershed領域であり、MRAで右内頚動脈の
高度狭窄がみられた。
2
術後MRI
FLAIR
1
MRA
0
SBRBolt R=1.67 L=2.54 Ave=2.10 AI=41.3%
R
R
CAS後、歩行障害を中心とした症状悪化がみられたため、MRI及び頭部MRAを施行した。FLAIR画像では右頭頂
葉の
24
塞病変が明瞭になった程度の変化であった。またMRAでは開存状態は良好であった。
◎まとめ
脳
塞 の既 往 が あり脳 血管 性 パーキンソニズムを疑ったが、パーキンソン 病の 合 併 も否 定しきれないため、
DaTSCANを行った。DaTSCANで集積低下がみられたため、レボドパの投与を行い経過をみている症例である。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
25
薬剤性パーキンソニズム
レビー小体型認知症(DLB)の疑い
(症例提供:東京都健康長寿医療センター 放射線診断科 伊藤 公輝先生)
80歳代前半 女性
(症例提供:横浜新都市脳神経外科病院 内科・認知症診断センター 眞鍋 雄太先生)
70歳代後半 女性
主 訴
姿勢反射障害により歩行困難
主 訴
エピソード記憶の低下
現 病 歴
X-18年:うつ病の診断にて三環系抗うつ薬を内服開始。
現 病 歴
時期は不詳ながら夫より寝言の指摘あり。
治療・経過
X-9年:転倒のため頭部を打撲し入院。この時、寡動と小刻み歩行が認められた。抗うつ薬の内服を止めたと
X-4年頃:エピソード記憶の低下を自覚。
ころ姿勢反射障害が増悪し歩行困難になった。MIBG心筋シンチを行ったところ集積低下(H/M比1.39)が
X年:認知症罹患を心配して受診。
みられた。レボドパを開始した後、症状が安定した。
既往歴は、特記事項なし。3親等以内での神経変性疾患なし。
X年:パーキンソン病(PD)としてレボドパを内服するも症状の進行がほとんどみられなかった。再評価目的
初診時検査では、UPDRSⅢ 1/108、MMSE 29/30(視覚構成把握障害のみ)、NPI-hallucination 0/12、
でDaTSCANを施行した。 レム期睡眠行動障害(RBD)+、自律神経症状 +(便秘, 起立性低血圧)、嗅覚障害 −。
薬剤性パーキンソニズムと判断し、レボドパは中止となった。中止後3ヵ月の時点では症状の増悪は認められない。
中核症状は全く欠くものの、先行する認知機能障害として視覚構成把握障害を認め、支持的特徴のRBDを認
めた。MRIでは側頭葉下部内側域に萎縮は認められず、possible DLBと考えられた症例である。
DaTSCAN
Original画像
DaTSCAN
DaTView結果画像
Original画像
N
DaTView結果画像
(%)
100
6
N
6
5
5
4
4
3
3
2
2
1
1
0
0
SBRBolt R=4.38 L=4.31 Ave=4.34 AI=1.6%
R
0
があることから、定量評価においても定性所見を支持し得る値と考えられた。
MIBG心筋シンチ
IMP-脳血流SPECT
◎まとめ
Original画像
抗うつ薬を中止後、初回のMIBG心筋シンチで集積
(%)
100
低下がみられ、レボドパで症状が安定したためPD
と診断された症例。定性的にも定量的にもドパミン
レボドパを中止したが症状の増悪はなく、薬剤性
トランス ポー ター の 取り込 み 低 下が 確 認 さ れ、
パーキンソニズムと判断した。追加のMIBG心筋シ
DLBの診断が補強された。こうしたケースを多々経
ンチでは正常であり、初回の心筋集 積低下は抗う
験することから、本症例のようにDaTSCANで線
つ薬の影響と考えられた。DaTSCANにより薬剤
性パーキンソニズムとPDの鑑 別ができた症例で
ある。
(X年)
H/M比2.83。心筋に良好な集積が認めら
◎まとめ
DLB移行型の軽度認知障害(MCI due to DLB)
を疑い、DaTSCANを行ったが正常集積であった。
R
SBRBolt R=4.58 L=4.74 Ave=4.66 AI=3.3%
両側線条体への取り込み低下を認めた。また、当施設ではCT補正を行っており、SBRが全般的に高めに出る傾向
両側ともカンマ状の形態で正常と判断された。
Delayed
R
条体への集積低下が見られた場合、DLBの可能性
20
R
後頭葉の軽度血流低下を認める。
を考慮して臨床経過を注意深く観察する必要があ
ろう。
れた。
26
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
27
レビー小体型認知症(DLB)とアルツハイマー 型認知症(AD)
の鑑別
(症例提供:東京都健康長寿医療センター 放射線診断科 伊藤 公輝先生)
80歳代後半 男性
DaTSCAN
主 訴
見当識障害、振戦
現 病 歴
X-2年:同じ話を繰り返し、聞き返しが多くなった。
Original画像
X-1年:骨折で入院後、見当識障害が出現。認知症の精査のため、紹介受診。診察時に振戦を認めるも、幻視
などを疑うエピソードは認められなかった。来院時のMMSE 22/30点(遅延再生0/3)、HDS-R 15/30点
(遅延再生1/6)であった。
画像診断にて、海馬の萎縮は描出されず、脳血流SPECTにて頭頂葉の低下に加え、右後頭葉内側の低下がみられ
た。また、MIBG心筋シンチにて軽度集積低下(H/M比1.8、カットオフ2.0)が認められたため、臨床症状よりア
治療・経過
ルツハイマー型認知症(AD)が疑われるもレビー小体型認知症(DLB)合併などの可能性も除外できなかった。
両側の線 条 体の集 積は明瞭で形態異常
X年:DLBの診断のため、DaTSCANを施行した。
も認められなかった。このためDLBの可
治療薬ガランタミン2錠(24mg)の内服を継続している。
能性は低いと考えられた。
MRI
T1WI
VSRAD
2.0
R
後
前
下
DaTView結果画像
上
R
左内側
右内側
右外側
左外側
N
灰白質容積低下レベル
6
6
5
4
T1強調画像では海馬の萎縮は描写されなかった。
VSRADでのVOI内萎縮度(Z-score)は0.55でほとんどみられなかったが、関心領域以外の帯状回後部から楔前
3
部の萎縮が描出されている。
2
脳血流SPECT
1
(%)
110
0
SBRBolt R=4.95 L=5.24 Ave=5.10 AI=5.7%
頭頂葉の低下に加え、右後頭葉内側の低下が
認められた。
◎まとめ
臨床症状や神経心理検査などからADを疑ったが、MRIで海馬の萎縮は無く、脳血流SPECTで右後頭葉内側の集積
R
28
15
低下がみられ、DLBの合併の可能性もあった。DaTSCANは正常集積であり、DLBの可能性は低いと考えられた。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
29
レビー小体型認知症(DLB)
(症例提供:神戸大学大学院医学研究科 精神医学分野 山本 泰司先生)
70歳代後半 男性
DaTSCAN
主 訴
パーキンソン症状、もの忘れ、錯視
家 族 歴
3親等の親族内に、認知症及び神経疾患(パーキンソン病(PD)を含む)の家族歴なし。
現 病 歴
30歳代から70歳頃まで、不安神経症の診断で神経科クリニックの受診歴あり。
Original画像
(グレースケール)
Original画像
(カラースケール)
X-2年初め頃:左上肢と頭部の振戦が出現し近医を受診。同年5月、企図振戦も加わったため前医を受診し、
パーキンソン症候群と診断され抗PD薬の投薬を開始した(HDS-R 22/30)。数種類の抗PD薬の変薬調整
を続けていた。
X-1年1月:同じ質問を繰り返すなど、もの忘れが目立ち始めた。同年夏頃より「誰かが家に来た」という言動
(明らかな幻視ではなく記憶錯誤に近い印象)が出現したため、ガランタミンを追加し8mg→16mg/日と増
量維持した。その後、もの忘れが進行したため、同年10月に当科に精査目的で紹介受診となった。MMSE 22/30
(計算−2、遅延再生−3、日時の見当識−3)。同年12月の再検時、ADAS 19.0、MMSE 22/30で変動な
し。立 方体 模写は可、時計描画は不可。右手 指の丸 薬 丸め振戦(++)、両上 肢の固縮(軽 度)、頸部振戦
(3-5Hz、前後方向)あり、軽度の企図振戦および運動緩慢あり。レム期睡眠行動障害(−)、認知機能の変
動は目立たず。レビー小体型認知症(DLB)の臨床診断基準(2005年、第3版)4)では、上記の中心的特徴に
加えて、中核的特徴3項目のうち1項目(パーキンソニズム)のみみられた(possible DLB)。
R
R
DaTView結果画像
N
6
MRI
T1WI
5
FLAIR
1748
1838
軽 度 から中等度の 全 般 性 大 脳
4
萎縮を認め、両側前頭葉内側及
び 海馬は中 等度の 萎 縮 が みら
3
れた。側脳室(前角及び後角と
もに)周囲を含む深部白質虚血
R
R
-174
2
変化はやや強かった。
-32
1
0
IMP-脳血流SPECT
3D-SSP
(Decrease)
Original画像
右外側面
左外側面
上面
左
前面
後面
左
左
左
右 右
右内側面
Z-sum
(Z-score合計値)
多い
左内側面
左外側面
上面
下面
前面
後面
左
右
右内側面
右
左
左内側面
max(7)
大きい
脳血流低下の程度
右外側面
Z-score
R
0
右
左
左
右
小さい
min(0)
O r i g i n a l 画 像 で は 、両 側 の 頭 頂 葉 に 軽 度 血 流 低 下 を 認 め た 。
3D-SSP/ZSAMでは、両側の後部帯状回及び楔前部(Z-sum 450前
後)並びに頭頂葉(Z-sum 300前後)に軽度から中等度の血流低下あ
り(アルツハイマー型認知症(AD)パターン)。
後頭葉には内側面、外側面とも有意な血流低下を認めず(DLBパターンなし)。
両側前頭葉の血流低下は加齢性変化と判断。
30
ADは否定的であり、DLB、PD(認知症を伴うパーキンソン病(PDD))の可能性を示唆。
1050
左右差が強いため、PDD>DLBの可能性あり。しかし、いわゆる「1-year rule」でも判断困難。
少ない
右
両側の被殻及び尾状核の著明な集積低下を認め、左右差あり。
1200
脳血流低下の程度
右
下面
脳血流
(%)
100
SBRBolt R=0.18 L=1.53 Ave=0.86 AI=157.9%
ZSAMグラフ
900
750
600
◎まとめ
450
300
本症例は、パーキンソン症状で発症し、そのちょうど1年後に認知症症状が出現。さらにその半年後から錯視が加
150
わった症例。臨床診断として当初はpossible DLB(PDD)を疑って精査を進めたが、脳血流SPECTではADパター
0
3.79SD
-1.12SD
-1.12SD
健常平均 1.41SD
2.44SD
3.30SD
-1.17SD
-0.83SD
からの
右面
左面 右面
左面
右面
左面 右面
左面
の乖離
後部帯状回
後頭葉
後頭葉
頭頂葉
&楔前部
外側
内側
ンの所見を示したため、鑑別診断の目的でDaTSCANを施行した。その結果、線条体の取り込みの著明な低下(左
右差有り)を認め、改めてprobable DLB(PDD)と臨床診断するに至った。しかし、計2回の認知機能検査の失点
パターンの特徴(遅延再生で−3から−1、日時の見当識で−3から−5、serial7はいずれも−2で変化なし)および
検査結果
閾値:正常平均+1.64SD
健常者の平均値
脳血流SPECTでのADパターンを考慮すると、DLBに加えてAD病変の合併も否定できないため、今後はアミロイ
ドPETなども検討する必要があろう。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
31
純粋自律神経不全症(Pure Autonomic Failure, PAF)
(症例提供:神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 神経内科 関口 兼司先生)
80歳代前半 男性
DaTSCAN
主 訴
夜間の幻覚症状
現 病 歴
X-30年:寝言が多かったり、奇声を発したりしていたことがあった。
Original画像
(グレースケール)
Original画像
(カラースケール)
X-20年:便秘あり。
X-10年:においがわからなくなり耳鼻科に行ったが原因が分からなかった。
X-4年:高血圧を指摘され、降圧治療を開始してからたびたび意識を失ったり、立ち上がった際にふらつくよ
うになった。ある時、他院の循環器内科医より、洞不全症候群を指摘され、ペースメーカーを留置したが、ふら
つき・眼前暗黒感が続いた。
X-3年:起立性低血圧があり、最大血圧が70程度に下がることが起こるようになった。また明らかな幻覚で
はないが夕方以降に人の気配を感じるようになった。
6回失神したため当院循環器内科に紹介があり、その後循環器内科の精査中に神経内科紹介となった。
家族歴(−)、元事務職。酒はよく飲んだ。意識清明で明らかな認知機能障害はなかった。マイヤーソン徴候
(−)、筋強剛(−)、振戦(−)、動作緩慢(−)、明らかなパーキンソニズムなし。 反射(軽度亢進)、振動覚
R
R
DaTView結果画像
(正常)。起立性低血圧(+)。
X-1年2月:MIBG心筋シンチを実施した結果、H/M比低下。
N
6
早期のパーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)等の可能性を考えたが、パーキンソニズム、認知
症ともにみられなかったため、純粋自律神経不全症(PAF)を疑った。失神・幻覚ともになくなったため、生活
5
上の注意を行ったうえで、経過観察と近医紹介、抑肝散内服を開始した。
4
X年5月:幻覚が出現したため、近医を受診した(具体的には下記①∼③)。
①夜中に起き、座り込んで幻覚と話をしていた。懐中電灯でうろうろして湯飲みをもち宴会をしていた。
3
②夜中に起き、引き出しの中の物を出して字を書いたりしていた。
③夜中に幻覚と話をしていて、カーペット上で排尿「お城の女の人がきてトイレを貸してくれ」と言った。
2
病歴を聞きなおすと抑肝散が中止になり、アモバンからマイスリーに変更になっていた。診察上はパーキンソ
1
ニズムなし。見当識障害も明らかではなかった。
治療・経過
投薬変更によりレム期睡眠行動障害(RBD)が顕在化していたと考え、元の処方に戻したところ再び安定
0
した。
SBRBolt R=4.91 L=5.27 Ave=5.09 AI=7.1%
視覚的にカンマ様であり左右差もなく、SBRも正常範囲であった。
MIBG心筋シンチ
CT
純粋自律神経不全症(PAF)
従来より、パーキンソニズムなどの他の症状を伴わず起立性低血圧を中心とした自律神経障害のみを呈し、数十年
85
早期像H/M=1.54、後期像H/M=1.21、
(X-1年2月)
Washout Rate=71.88%。心筋全体で集積が高度
に低下しているため、SPECT像による局所診断は困
難であるが、Planar像上、早期像よりMIBGの心筋集
積 は高 度に低下しており、後 期 像にかけて 高 度 の
Washoutが認められる。心臓全体の交感神経機能
もの間緩 徐にしか進行しない 症例が 存 在 することが知られており、純 粋自律 神経不全 症(pure autonomic
failure:PAF)と呼ばれていた。近年の研究で、病理学的には交感神経節後線維にレビー小体が蓄積することが判
明し、DLBと共通の病態をもつ疾患と考えられている。小阪らのいう包括的概念レビー小体病のなかにはパーキン
ソニズムで発症するパーキンソン病(LBD-P)、認知症で発症するDLB(LBD-D)、自律神経症状で発症するPAF
(LBD-A)があるとされており、長期経過を観察した例ではDLBに移行した症例も報告されている。
認知症疾患治療ガイドライン2010 5)より抜粋。
が高度に障害されていると考えられる。以上の結果
より、PD及びびまん性レビー小体病の存 在が疑わ
れた。
R
特に異常はみられなかった。
32
-5
◎まとめ
便秘、嗅覚低下、RBDに加えMIBG心筋シンチ異常(集積低下)を伴ったためレビー小体病に関連したPAFが疑われ
た。幻覚症状の悪化から、DLBへの移行を疑ったが、パーキンソニズムも無くDaTSCANの所見から黒質線条体ド
パミン神経の脱落はないと考えられた。レビー小体病の範疇でもMIBG心筋シンチとDaTSCANの結果に乖離があ
る場合があり、注意を要する。
ダットスキャン®静注(DaTSCAN)の高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
33
各施設のDaTSCAN収集・再構成条件一覧表
慶應義塾大学
愛媛大学
天使病院
(市立札幌病院)
公立南丹病院
国立病院機構
大牟田病院
東京都健康長寿
医療センター
岡山大学
岐阜大学
香川県立
中央病院
関東中央病院
小牧市民病院
横浜新都市
脳神経外科病院
神戸大学
機種名
GE Discovery
670 pro
GE Infinia
GE Infinia
島津PRISM-AXIS
シーメンス
e.cam
GE Infinia
シーメンス
Symbia T16
GE Infinia
シーメンス
Symbia T6
シーメンス
e.cam
Philips SKYLIGHT
シーメンス
Symbia T16
GE optima
NM/CT640
データ処理装置
Xeleris
Xeleris
Xeleris
ODYSSEY-FX
e.soft
Xeleris
e.soft
Xeleris
e.soft
e.soft
JET STREAM
e.soft
Xeleris
使用コリメータ
LEHR-Fanbeam
ELEGP
ELEGP
LEHR
LEHR
ELEGP
LME-Fanbeam
LEHR-Fanbeam
LMEGP
Fanbeam
VXHR
LMEGP
ELEGP
撮像開始時間
投与後180分
投与後180分
投与後240分
投与後180分
投与後180分
投与後180分
投与後240分
投与後180分
投与後180分
投与後180分
投与後180分
投与後180分
投与後180分
収集モード
Continuous
Continuous
Step & Shoot
Continuous
Continuous
Step & Shoot
Continuous
Step & Shoot
Continuous
Continuous
Continuous
Continuous
Continuous
収集角度
4度/ステップ
6度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
4度/ステップ
3度/ステップ
ステップ数
45
30
45
45
45
45
45
45
45
45
45
45
60
エネルギーウィンドウ
159KeV±10%
159KeV±10%
160KeV±10%
159KeV±10%
159KeV±10%
159KeV±10%
159KeV±10%
(sub 7%)
159KeV±10%
158KeV±10%
159KeV±10%
157KeV±10%
159KeV±10%
(sub 7%)
159KeV±10%
収集時間
20分
28分
30分
30分
28分
30分
28分
30分
28分
28分
28分
28分20秒
30分
収集拡大率
1倍
1.33倍
1.33倍
1倍
1.45倍
1.33倍
1.45倍
1倍
1.45倍
1.45倍
1.46倍
1.45倍
1.3倍
マトリックスサイズ
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
128×128
ピクセルサイズ
1.9mm
3.3mm
3.3mm
2.0mm
3.3mm
3.3mm
3.3mm
2.1mm
3.3mm
3.3mm
3.2mm
3.3mm
3.2mm
スライス厚
1.9mm
4.0mm
3.3mm
2.0mm
4.0mm
3.3mm
3.3mm
4.2mm
3.3mm
3.3mm
3.2mm
3.3mm
3.2mm
画像処理フィルタ
Butterworth
Butterworth
Butterworth
Butterworth
なし
次数
(order or power)
10
10
8
10
10
8
10
遮断周波数
0.5cycles/cm
0.55cycles/cm
0.5cycles/cm
0.35cycles/cm
0.55cycles/cm
0.4Nyquist
0.6cycles/cm
画像再構成法
(Iteration、Subset)
OSEM
OSEM
OSEM
OSEM
(Ite:10, Sub:9) (Ite:6, Sub:10) (Ite:8, Sub:6)
FBP
(ramp)
減弱補正
なし
あり
あり(CT補正)
あり(chang法:
μ=0.08cm -1)
あり
なし
あり(CT補正)
なし
あり(CT補正)
なし
なし
あり(CT補正)
あり(CT補正)
散乱線補正
なし
あり(TDCS法)
あり
なし
あり(TDCS法)
なし
あり(MEW法)
なし
なし
なし
なし
あり(TEW法)
あり(DEW法)
Gaussian(3mm)
OSEM
OSEM
(Ite:4, Sub:9) (Ite:6, Sub:10)
※QSPECT再構成実施
34
FBP
(ramp)
Gaussian(3mm)
Butterworth
OSEM
OSEM
(Ite:4, Sub:9) (Ite:6, Sub:10)
Gaussian(9mm)
Butterworth
Gaussian(6mm)
Gaussian(4mm)
Butterworth
OSEM
OSEM
OSEM
(Ite:4, Sub:10) (Ite:10, Sub:6) (Ite:2, Sub:10)
※QSPECT再構成実施
35