広告効果モデルにおける感情の 位置づけに関する考察

17
広告効果モデルにおける感情の
位置づけに関する考察
三
井
雄
一
1 はじめに
2 広告効果指標としての感情
3 従来の広告効果モデルにおける感情の位置づけとその問題点
4 広告効果モデルへの感情の新たな位置づけ
5 広告効果モデルにおける新たな感情の位置づけと意義
6 おわりに
1 はじめに
現代社会において、多くの製品市場は成熟し、製品の同質化やニーズの多様化が指摘されて
いる。こうしたなか、現代マーケティングにおいて消費者心理へ訴えかけることの重要性が高
まっている。現に、感情マーケティングや消費者志向、マーケティング・コミュニケーション
など、消費者心理に関する概念を多く耳にするようになった。とりわけ、企業の広告戦略にお
いても、消費者心理への訴求が重要な役割を担っていると考えられる。
消費者心理の中でも感情がその情報処理過程に多大な影響を持つと指摘されながら(岸,
2012;Te
l
l
i
s
,2004)、長らく感情は、邪魔なものや、曖昧なものとして扱われ、研究の中心と
なることがなかった(Cohe
nandAr
e
ni
,1
991;大友他,2010;I
s
e
nandHas
t
or
f
,1982)。し
かし、近年、測定技法の発達などの影響も受け(I
s
e
nandHas
t
or
f
,1982)、マーケティング
における感情研究への関心は高まっている(岸,2012)。しかし、マーケティング研究内での
感情の位置づけや概念が必ずしも明確ではなく、統一されていないとの指摘もある(Cohe
n
andAr
e
ni
,19
91;岸,2012)。
そこで本稿では、まず、マーケティング研究における広告の効果測定について、心理的指標
の中でも、感情の重要性やその役割を明確にしたうえで、広告効果モデルにおける感情の位置
づけや定義について先行研究の整理を行い、現状の課題を明らかにする。
そして、広告効果研究に多大な影響を与えている心理学の知見をもとに再度、感情について
整理し、マーケティング研究における感情概念の位置づけや概念について、改めて考察を行う。
キーワード:マーケティング、広告効果モデル、感情、心理学、次元説
18
経営研究
第65巻
第 4号
加えて、感情を測定する際の指標や方法についても整理し、体系的な測定を行うために有用な
指標についても議論する。
さらに、感情は、情報を受ける前から保持している感情と、情報を受けたことによって生じ
る感情の 2つに分けられ、マーケティング研究における広告効果モデルの範疇である後者に焦
点をあて、先行研究で得られた知見をもとに感情の心理的指標への影響を示す。
最後に、本研究で得られた知見をもとに、従来の広告効果モデルを修正する形で、広告効果
測定モデルと、企業の目標設定のための概念モデルの中に新たに感情を位置づけ、より精緻な
効果予測や効果目標の設定を可能とするとともに、今後の広告効果研究における感情測定の課
題を明らかにすることを目的とする。
2 広告効果指標としての感情
2.
1 広告効果の測定指標
企業が広告に期待する役割とは、広告に接触した人がなんらかの心理的変容を遂げ、その結
果売上の増加につなげることである。そのためにはしっかりとした目標設定のうえで、綿密な
広告計画をたてることが不可欠である。広告計画は、広告目標にしたがって広告予算の決定を
行い、その予算制約の中で、広告表現と広告媒体の決定を行う。さらにそれらを実施した後に
広告効果の測定を行い、その結果を次の広告計画にフィードバックさせるという一連の流れを
いう。
図 1 広告計画の流れ
(出所:八巻,1983,47頁,図 2 3をもとに筆者作成)
この流れをフローチャートに示したものが図 1である。この図を見てわかるように、当然、
広告目標の設定が妥当なものでなければすべての広告計画がうまくいかない。そして、より正
確な広告目標を設定するためには広告目標から広告実施に至るまでの各要素がどれほど適当で
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
19
あったのかを正しく測定する必要がある。言い換えれば、広告効果測定が正しく行われ、その
結果が理論的に蓄積されれば自ずと効果のある広告が作れるということとなる。その意味で広
告活動において広告効果測定が非常に重要な意味を持つことがわかる。
広告効果を測定する指標は大きく二つに分けられる。ひとつは、マーケティングの究極的な
目標であり、企業にとっての最大の関心事でもある、売上の増大や市場シェアの拡大といった
経済的効果の指標である。この経済的効果を考えるためのモデルとしては、売上反応広告モデ
ルが一般的に使用される。売上反応広告モデルとは、その特徴は広告の露出から購買行動に至
るまでの消費者の複雑な心理変容メカニズムには触れず、単に広告インプットとしての広告刺
激とそのアウトプットとしての市場反応との関係を統計的数理モデルで記述している点である。
消費者心理の細部に言及しないことからマクロ的アプローチともいわれている(嶋村,2008)。
しかし現実には、広告以外のマーケティング諸活動も売上の増大に関与している。そのため広
告効果測定において売上に対する貢献を直接測定することが難しい(竹内,2005)。
そこで、もうひとつの指標として、市場成果の代わりに消費者の心理的効果を捉えようとす
る研究が行われはじめた。市場成果とは異なり、広告の特有の成果として関係性を直接測るこ
とができるため、今日に至るまで多くの研究がなされている。広告のインプットからアウトプッ
トまでの心理変容の過程に焦点を当て、インプットとアウトプットとの直接的な関係には言及
しない点からミクロ的アプローチとも呼ばれている(嶋村,2008)。
今日、多くの製品市場が成熟化し、消費者の心理に訴えるかけることの重要性は増している
ように思われる。実際に、感情マーケティング、マーケティング・コミュニケーション、顧客
志向など消費者心理に関わる概念がマーケティング分野において目立っている。そこで本稿で
は、心理的指標に焦点を当て、考察を進めていく。
2.
2 広告効果における感情の重要性
広告効果研究において、心理的指標では認知心理学の手法などを用いて、製品や広告に対す
る好悪の評価や購買意図などを変数としている。しかし、一方でこれらの変数に対して影響す
るであろう「感情」に関しては心理学においてさえ、1980年代までは研究の中心となること
はなかった(Cohe
nandAr
e
ni
,1991;大友他,2010)。
その理由として、感情は理性の妨げとなる要因であり、排除すべきものとしてあつかわれて
いた点(大友他,2010)、そして、調査手法が未熟であった点(I
s
e
nandHas
t
or
f
,1
982)が
あげられる。しかしながら、1980年代を境に、広告効果モデルにおいても感情への関心が高
まり、感情を取り込んだモデルが提唱されるようになった(岸,2012)。
l
i
s
(2004)は広告で感情の変化を利用することによるメリットを次のように示している。
Te
l
一つ目に、抵抗感の軽減、二つ目に、個人の接触への努力の軽減、三つ目に、人は感情を喚起
する刺激に関心を持つ点、四つ目に、感情を喚起する刺激としての絵や音楽などは再生が容易
20
経営研究
第65巻
第 4号
であり、感情とは対極の論理的刺激よりも記憶が持続する点、最後に、すぐに行動に影響する
点を挙げている。さらに、低関与のとき、製品がワインや絵画などの感情型製品のとき、ポジ
ティブな気分のとき、の 3つを広告で感情の喚起を用いるべき状況として挙げている。
また、上原(2008)は、感情は消費者ニーズを掘り起こすことが困難な成熟市場においての
マーケティングの有効な変数であるとしている。消費者の低関与化が主張される現代において、
広告戦略として、感情に訴えかけることの重要性が見て取れる。
しかし、感情を取り入れた多くのモデルは Cohe
nandAr
e
ni
(1991)の指摘するように、感
情の位置づけが必ずしも明確にできていない。また、岸(2012)ではマーケティングにおいて
使用される感情に関連する概念が研究者によって統一されていない点も論じられている。
そこで次節では、感情やそれに関連する概念を明確にし、さらに感情の広告効果指標として
の心理的指標への影響を先行研究からの知見より整理を行う。
3 従来の広告効果モデルにおける感情の位置づけとその問題点
3.
1 従来型広告効果モデルにおける感情の位置づけ
広告効果における消費者の心理変容を議論するためには、まず、その概念の整理が必要とな
る。心理変容の構成要素については研究者によって種々であるが、それらを経ていく過程を
Pe
t
t
yandCac
i
oppo
(1986)は態度形成プロセスとしている。では、この態度という概念は
どのようなものであろうか。
表 1 態度概念の構成要素と具体例
(出所:Aake
re
tal
.
,1980,pp.126 128を参考に筆者作成)
Aake
re
tal
.
(1980)によると、態度は認知あるいは知識要素、情緒的あるいは感情的要素、
行為あるいは意図要素の 3つの要素で構成される。この 3つの構成要素は表 1のように、さら
に下位の要素によって構成されている。態度概念においては、感情は情緒の構成要素として評
価と並列的に扱われているのである。
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
21
しかし、このような態度概念を支持している研究がある一方で(Aake
re
tal
.
,1
980;竹内,
2010;仁科,1
991)、実証研究を行っている多くの研究が、態度概念を評価反応、つまり好意
的・非好意的といった尺度で測れるものとして狭義に扱っている。研究者によってこの「態度」
という概念が統一されておらず、共通言語のように使用されていることは問題であるが、本稿
においては、態度概念を認知、情緒、行為の三要素からなるものとして捉え、議論を進めてい
く。
3.
1.
1 階層モデル
この態度形成の過程については、古くより階層モデルが想定されている。階層モデルで最も
代表的とされるモデルが、Hal
lS.R.
(1915)の提唱した AI
DMAであり、後の DAGMARモ
デルなどに多大に影響しているといわれている(岸他,2000)。Col
l
e
yR.H.
(1961)において
提唱された DAGMARモデルは、広告は「未知→認知→理解→確信→行為」の段階を踏んで
販売という最終目的を達成するが、各段階に中間目標を設定し、その効果を測定すればよいと
し、広告の目標設定を具体的に示している。その後様々な階層モデルが提唱されているが、そ
れらは情報処理を一定の方向で行われることを前提としている。
これらの階層モデルに対して、Le
vi
dgeandSt
e
i
ne
r
(1961)は、初期の階層モデルは情報の
受け手が事前にもつ知識などを考慮に入れていないと指摘している。そして、モデルの中に
表 2 階層モデルと態度概念との関係
(出所:岸・田中・嶋村,2000,178頁,表 7 1
)
22
経営研究
第65巻
第 4号
「知識」を加え、
「意識(awar
e
ne
s
s
)
→知識(knowl
e
dge
)
→好意(l
i
ki
ng)
→選好(pr
e
he
r
e
nc
e
)
→確信(c
onvi
c
t
i
on)→購買(pur
c
has
e
)」というモデルを示した。さらに、これらを「認知
(意識、知識)」→「情緒(好意、選好)」→「意欲(確信、購買)」という態度の各次元に対応し
ていると考えた。
これらは広告効果を考える上で現在も使用されるもっとも基本的なモデルであり、多くの階
層モデルはその階層の構成要素と順序に違いがあるものの、一貫して「認知」→「情緒」→「行
動」といった過程を想定している(表 2)。階層モデルには様々な検討がなされているが、こ
。
の点については認められている(Kr
ugman,1965;小嶋他,1993)
階層モデルでは感情は情緒的反応の一構成要素であり、認知が先行し、感情が従属するもの
として扱われている。また、上述の態度概念にみられるように、評価や核心、欲望などの概念
と並列的に扱われている点も特徴として挙げられる。
3.
1.
2 二重過程モデル
階層モデルでは、態度の要素が認知、情緒、行動といった順で情報処理過程が一定の反応系
列をとることを前提としているが、そのことに異を唱える研究も存在する。その代表的なものが、
Kr
ugman
(1965)、Ray
(1973)、Pe
t
t
yandCac
i
oppo
(1986)、Sol
omon
(2011)などの研究で
あり、刺激を受ける際の消費者の状態によって情報処理の方略は変化するという主張を行った。
Kr
ugman
(1965)は、消費者は特別の注意を払っていない状態(=低関与状態)で TV広
告に接触していると考え、このような状態で TV広告に接触してもブランド態度の変容には
至らず、実際に購買して使用した後でブランド態度の変容が生じることを指摘し、「低関与学
習理論」を提唱している。
Ray
(1973)はこの研究を継承し、製品関与の高低によって広告効果の反応系列が異なるこ
とを指摘した。受け手の製品関与が高く、ブランド間差異の大きい状況では、「認知→情緒→
意欲」という反応系列が該当し、受け手の製品関与が低く、ブランド間の差異が小さい状況で
は、「認知→意欲→情緒」という反応系列が該当するとした。
Pe
t
t
yandCac
i
oppo
(1986)は、「関与」を「広告の伝達内容に対する、受け手にとっての
個人的関連性(問題関与)」としてとらえ、「ブランドに対する態度」形成のプロセスは、受け
手の問題関与水準の高低および、情報処理能力の有無によって、「中心的ルート」と、「周辺的
ルート」という二つの異なるプロセスに分かれると考えた。このモデルでは、関与水準が高く、
情報処理能力が高い場合には、認知的情報処理が行われ、関与水準が低い、または情報処理能
力が低い場合に感情的な手掛かりが態度形成に影響することが示されており、感情が認知とは
独立した位置づけとなっている点は他のモデルとは異なる重要な点だと考えられる。
さらに、Sol
omon
(2011)は、態度の 3つの要素は関与や時間経過によって 3種類の反応系
列があると主張している。一つ目は、消費者が高関与な状態であり、情報を探索し、選択を注
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
23
意深く行う場合である。この場合は「認知」→「感情」→「行動」という反応系列をとる。二つ
目は、消費者が低関与の状態であり、情報処理を大量にすることが無い場合である。「認知」
→「行動」→「感情」という反応系列で、行動経験が態度形成に影響する。三つ目が、感情的な
反応が意思決定に影響力を持つ場合である。「感情」→「行動」→「認知」という順で階層的に反
応がおこるとしている。
表 3 二重過程モデルと態度概念との関係
(出所:筆者作成)
これらの研究を態度概念との関係で整理すると表 3のようになる。ここから考えられる認知
と感情との関係は、以下の三つの場合のいずれかが想定されているといえる。
・認知は情緒に先立って発生し、情緒は認知の影響を受け、行動へ影響する。
・認知は情緒が生起しない状態でも単独で行動へ影響する。
・情緒は認知が生起しない状態でも単独で行動へ影響する。
この三点からもわかるように、二重過程モデルにおいては、認知の情緒への影響は想定して
いるものの、情緒から認知への影響についてはモデルの中で想定されてこなかったことが窺え
る。しかし、日常の中で我々は、広告の刺激を知覚した段階で、その広告のメッセージやレイ
アウト、音楽、色彩などの表現によって感情を生起させ、その後に認知的な処理を行っている
場合も十分に有り得るものと考える。また、生起した感情から評価的判断を起こし、その後認
知的処理が行われる場合も想定できる。
3.
1.
3 感情と認知を独立ルートとしたモデル
1990年代になると、上記のような認知、感情、行動の順序やどちらのルートを通るのか、
といったモデルとは異なり、感情的な反応と認知的(理性的)な反応との二つの反応系列が相
互に影響しあいながら態度形成がなされることを想定したモデルが提唱された。
24
経営研究
第65巻
第 4号
Cohe
nandAr
e
ni
(1991)は、認知的反応の諸段階と相互に影響しあう感情的な反応系列も
各段階が存在し、それら段階を分けて把握することで、複雑な相互関係を説明しようとした
(図 2)。このモデルではまず、概念表象(c
onc
e
ptr
e
pr
e
s
e
nt
at
i
on)がまず最初に発生し、そ
の後は 2つのシステムがシステム内とシステム間で影響することを想定したという点で非常に
特徴的である。
図 2 CohenandAr
eni
(1991)のモデル
(出所:Cohe
nandAr
e
ni
,1991,pp.232,Fi
gur
e6.
2)
また、Chaudhur
i
(2007)は、信念・評価・態度形成を感情と理性の 2つの側面からとらえ
たモデルを提唱している(図 3)。このモデルでは信念は相互に影響を持つが、その後の情報
処理では具体的信念より感情的ブランド評価へ影響するのみとなっている。また、理性的反応、
感情的反応が別々に購買意図へと影響していることも特徴といえる。
図 3 Chaudhur
(2006)のモデル
i
(出所:Chaudhur
i
,2006,邦訳 51頁,図 3.
2)
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
25
これらのモデルでは感情と認知とは別々の情報処理システムを有し、互いに影響をしあいな
がら態度形成がなされることが想定されている。また、相互に影響するシステムを構成要素で
分解することで複雑なモデルを説明可能にしている点も従来のモデルとは異なる点である。
3.
2 従来の広告効果モデルの問題点
これまで、従来の広告効果モデルにおける感情の位置づけについて整理してきたが、モデル
によって感情の位置づけは様々であるだけでなく、その捉え方も異なっている。
階層モデルにおいては、感情は認知に従属するものとして位置づけられており、態度概念の
うちの一つである情緒概念の一構成要素として捉えられている。一方で、二重過程モデルでは、
同様に態度概念の中の構成要素として捉えられているが、認知との関係では、認知に従属する
以外にも、認知とは別のルートとして存在し、二者択一的な位置づけとなっている。さらに、
感情と認知とを独立したシステムとして認識しているモデルでは、別の独立した概念として捉
えたり、認知的態度形成と感情的態度形成というように、態度よりも上位の概念として捉えた
りと、従来の感情の捉え方とは大きく異なる。また、認知との従属関係を考えるのではなく、
相互関係が存在することを前提としている。
このようにモデルによって感情の位置づけや捉え方は統一されていないにもかかわらず、こ
れらのモデルは今日も企業や研究者によって使用されている。このことは、おなじ感情という
言葉を用いながら、統一された指標で評価することができず、マーケティングにおける広告効
果研究をより精緻に行うための阻害要因となっているように思われる。
そこで、次節にて感情概念について、心理学の知見よりその定義や捉え方を整理する。さら
に、他の態度の構成要素との関係も明らかにし、感情の位置づけも示したい。
4 広告効果モデルへの感情の新たな位置づけ
4.
1 感情の定義と認知システムとの関係
心理学において感情(af
f
e
c
t
)とは、気分(mood)や情動(e
mot
i
on)といった状態を含む
概念である(北村,2006)。気分(mood)とは、比較的弱く、いい気分や悪い気分などの漠然
としたもので、また、必ずしもはっきりとした原因がわからず、身体的な表出も明確でないこ
とが多いとされている(高橋,2008)。情動(e
mot
i
on)とは、気分よりも明確で、怒りや喜
びのように表現されたり、生理的な覚醒状態をも伴う状態とされている(杉本,2012)。
f
e
e
l
i
ngを感情と訳することもあるが、これは、感情(af
f
e
c
t
)に対する主観的感情経験を
指し、区別する際には感情経験と記される(北村,2006)。本稿においても af
f
e
c
tを感情、
f
e
e
l
i
ngを感情経験として論を進めていく。
感情は心理学においては、認知とは独立し、区別されるべきものとされており(海保,1997;
13)、情報処理過程における両者の関係についてはさまざまな議論がなされている。
石淵,20
26
経営研究
第65巻
第 4号
心理学において使用される認知概念は、「感覚や知覚だけでなく、注意、記憶、思考、問題解
決、意思決定や動作の遂行(パフォーマンス)を含む広い概念」とされている(八木,1997)。
この定義はマーケティングにおける態度の三要素としての認知とはことなるため、本稿では、
心理学における認知を、知覚から態度形成までの一連の情報処理システムを指すことから「認
知システム」とし、態度の三要素としての「認知」をそのまま「認知」とする。
マーケティングにおける広告効果モデルで感情と同じ「情緒」概念に含まれる「評価」は対
象が好きか嫌いかという判断である選好(pr
e
f
e
r
e
nc
e
)で測定される(大平,2
010)。直感に
基づく無意識下の好悪判断というようなニュアンスの場合は研究者によって、感情に含む考え
方(Zaj
onc
,1980;大平,2010)と、認知システムに含む考え方(Laz
ar
us
,1984)とが存在す
る。一方で熟考に基づく合理的な好悪判断の場合は認知システムに含められる(新倉,2
005)。
マーケティングにおいて想定される「評価」は「認知」の影響を受ける位置に置かれている点
から熟考に基づく合理的な好悪判断としての「評価」だと考えられる。つまり、感情が生起す
る情報処理と評価が生起する情報処理は異なるシステムの中で行われるため、第 3節で確認し
た態度の三要素における情緒の下位概念として感情と評価を同列に含むことを否定しているの
である。
また、感情と認知システムとの関係については、どちらが優位なのか、あるいは、従属的な
関係なのか、心理学においても議論が盛んであった。人の情報処理過程において、認知システ
ムが先か感情が先かという、Zaj
oncと Laz
ar
usの論争はその代表的なものである。
Zaj
onc
(1980)は認知システムを感覚の発生の後に心的労力を要して生じるものとし、感情
のほうが優位であると主張している。また、人は対象への馴染みなどのみで選好を生じさせる
ar
us
(1984
)
ため、感情は認知システムから独立して発生することも示している。一方で、Laz
は、刺激を受けた後に生じる認知的反応を手がかりに、心理的反応の性質が決定するため、感
情は認知システムに依存すると考えた。
この認知システムと感情のどちらが優位であるのか、または独立して発生するものなのかと
いう議論に対して、神経学の視点から情報の処理経路を研究した Le
Doux
(1987)は、脳内の
辺縁系と大脳新皮質のどちらを使用しているのかを測定して調査を行った。結果としては、人
が刺激を受けた場合、不随意的・無意識的に脳内の扁桃体が活性化され、それによって感情を
司る感情皮質が準備状態となることを証明している。つまり、先述の無意識下の好悪判断とし
ての「評価」を認知システムの一部として考えるか、感情の一部として考えるかの違いでこの
論争は起こったとしている。さらに、通常の情報処理では両者を通過して情報処理が行われて
おり、また、時として、感情的経路のみを通過して処理がなされる場合があるとしている。
つまり、無意識下の「評価」をどちらの概念に含むのかという問題があるものの、人の情報
処理は、認知システムと感情が相互に作用する経路をとるか、感情のみが生じる経路をとるか
のどちらかであると考えられる。
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
27
本項における知見としては、以下の二点が挙げられる。
・感情は認知とは独立して捉えられるべきものである。
・感情と認知システムについては、両者が生起するか、感情のみの生起がおこる
では、広告効果モデルの中で感情を位置づけるにはどのように捉えるべきなのであろうか。
次項にて、心理学における知見をもとに、感情の捉え方を整理していく。
4.
2 感情をどうとらえるか
感情を捉える際に、その方法に大きく分けて二つの考え方がある。一つは、基本情動を規定
し、それらの感情を測定する基本情動説である。基本情動とは、Pl
ut
c
hi
k
(1980)や Ekman
(1992)に代表される、相互に独立した情動の最小単位が存在し、すべての感情はそれらの
単一もしくは混合状態により表出するという考え方である。 Pl
ut
c
hi
k
(1980)では、 受容
r
)
、
(ac
c
e
pt
anc
e
)
、予期(ant
i
c
i
pat
i
on)
、嫌悪(di
s
gus
t
)
、喜び(j
oy)
、恐れ(f
e
ar
)
、怒り(ange
悲しみ(s
adne
s
s
)、驚き(s
ur
pr
i
s
e
)の 8つを基本情動として挙げ、Ekman
(1992)では、喜
び(happy)、驚き(Sur
pi
s
e
)、怒り(ange
r
)、恐れ(f
e
ar
)、嫌悪(di
s
gus
t
)、悲しみ(s
ad)
の 6つを挙げられている。
しかし上述のように研究者によって基本情動の数は異なり(Mandl
e
r
,1984)、感情は常に
可変的であることからも、そもそも基本情動は存在しないという主張もある(Or
t
onyand
Tur
ne
r
e
,1990)。また、基本情動説で問題となるのは、個々の基本情動に対応する刺激反応や
神経系の反応を特定、検証することができるのか、という問題も指摘されている(St
e
i
nand
Oat
l
e
y,1992)。
これに対して二つめは、次元説と呼ばれる感情の捉え方である。次元説とは Wundtにより
提唱された感情三方向説に端を発している。感情三方向説とは、感情を、「興奮-沈静(e
xe
)」の
c
i
t
e
me
nt
c
al
m)」「緊張-弛緩(t
e
ns
i
onr
e
l
axat
i
on)」「快-不快(pl
e
as
ur
e
unpl
e
as
ur
三次元で捉えることにより、個人の感情状態を座標によって表す方法である(Wundt
,1910)
。
そして、Wundt
(1910)の感情三方向説を受けて、次元説で代表的なものが、Me
hr
abi
anand
Rus
s
e
l
(1974)のモデルである。Me
hr
abi
anandRyus
s
e
l
l
(1974)は、基本情動説における感
情の相互に独立した基本情動を想定する立場を否定し、感情を、快感情(Pl
e
as
ur
e
)、覚醒
ORモデルの中に位置づけ
(Ar
ous
al
)、支配(Domi
nanc
e
)の 3つの潜在的次元をあげ、Sている。
その後、Rus
s
e
l
l
(1980)によって domi
nanc
e次元が実用的な効果を示さないとの指摘から
二次元モデル(快感情軸・覚醒軸の二次元)が作られ、多くの研究で使用されるようになった。
一方で Havl
e
naandHol
br
ook
(1986)は Me
hr
abi
anandRyus
s
e
l
l
(1974)の 3次元のモデル
が、消費者行動研究においては説明力が高いことを示しており、どちらを使用するかは研究者
によって様々である。
28
経営研究
第65巻
第 4号
また、感情といっても、前節にも述べた、気分としてのポジティブ感情や快楽などの一部に
焦点を当てる立場と、感情全体を捉えようとする立場とが存在する。前者は、ポジティブ-ネ
ガティブや快-不快といった二極を直接、または、基本感情を想定した項目をその二極に割り
振り、測定しようとする。しかし、そもそも複雑な感情を二極のみで測定することに問題があ
り、生理的覚醒次元を加え、気分と情動、つまり感情の全体を捉えるべきだという指摘もある
(Le
wi
ns
ohnandMano,1
993)。
本稿では、これらの指摘にのっとり、3次元説での感情の測定をより精緻な測定のための指
標として用いるべきだと考える。
4.
3 関連感情の認知システムへの影響
心理学では、感情と認知システムは区別されるべき概念であるとしている。そして先述のよ
うに、感情と認知システムが情報処理過程においてどちらが先んずるのかという点についても
多くの議論がなされてきた。そこでは、Le
Doux
(1987)の主張のように、感情システムはそ
れ単独で人の意思決定に影響を与えることができるが、認知システムは常に感情から多少なり
とも影響を受けるものと考えられる。
心理学においては、感情が認知システムへと影響することは古くから実証されており、感情
と処理方略との関係(Mac
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h,1989)や記憶との関係(I
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,1997;Hanna
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,1978)、さらに認知システムの構成要素との関係(Par
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gan,2005)など、すでに感情から認知システムへの影
響は明白である。
広告に対する受け手の情報処理は、心理学で想定される情報処理に比べて多少複雑な処理が
行われる。そこには大きく 3つの特徴が考えられる。一つ目は、広告に対する情報処理では、
「広告に対する心理変容」と「製品に対する心理変容」の二つが存在する点である(竹内,
2010)。広告が単に製品の説明をしているだけでも、その際の文字や写真、映像、起用タレン
トなどによって受け手は様々な印象を受ける。さらにその印象は製品の印象へも影響するであ
ろう。受け手の情報処理は多段階の階層を経ることとなるのである。本稿ではこの点には注意
しつつ、広告への心理変容に焦点を絞って考察を進める。
そして二つ目に、広告はあくまで企業が商品の販売促進のために行うものだという点があげ
られる。そのため、消費者の態度形成における企業の最終目標は購買意図など、購買に結びつ
きやすいとされる心理状態を作ることである。心理学と異なる点として、この「マーケティン
グ的評価」の段階が態度概念に含まれる点が特徴的だといえる。
最後に、広告はブランド名やメッセージを伝えることに加えて、物語やビジュアル、音楽な
ど、受け手の感性に訴え掛ける表現を用いる場合が多い。つまり、広告情報の処理に影響する
感情には、広告に接触することによって感情が生じる感情と、広告そのものではなく、事前の
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
29
番組や周囲の環境よりもたらされた感情とがある。前者を「関連感情」、後者を「無関連感情」
という(Pe
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,2001)。
田中(2004)によると、認知システムに対して、感情がどのような影響を与えるのか、認知
心理学の分野においても多くの研究がなされているが、その多くは刺激を受ける前の感情を想
定している。上述の心理学における知見も無関連感情を想定したものに含まれる。同書は、広
告における記憶の再生(情報の精緻化)については、広告そのものが、情緒的側面を有している
以上、事前の感情に加えて、広告に触れることによって発生する感情の双方を考慮に入れる必
要があるとし、関連感情が情報の精緻化にどのように影響しているかについて再生を指標に実
証している。結果、感情の源泉と情報とが関連している場合、ポジティブな感情をもった受け
手のほうが、ネガティブな感情を持った受け手よりも情報を精緻化(再生)できるとした。こ
れは今までの感情研究で支持されてきた無関連感情の認知システムへの影響とは逆の結果とな
り、関連感情は無関連感情とは異なった情報処理方略への動機となるとしている。
つまり、心理学における無関連感情と認知システムとの関係をそのまま関連感情に適用する
ことは適当ではない。企業にとって、無関連感情を想定することは容易ではないが、関連感情
と無関連感情とを区別し、それぞれの認知システムへの影響を整理することが重要である。ま
た、マーケティングでは、最終的に消費者の商品への評価も重要であるが、さらにその購入意
図、探索意欲なども重要な指標となり、その点についてはマーケティング特有の指標であると
いえる。そこで、以下にてマーケティングにおける、広告による関連感情とマーケティング的
指標を含む認知システムとの関係を先行研究をもとに整理していくこととする。
まず、認知への関連感情の影響を対象にしたものとして、ポジティブ感情だけでなく、覚醒
の次元についても研究した Wal
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(1995)がある。この研究では、46のテレビ広告に
ついて、広告中の音楽のテンポや旋律、音量による被験者の感情が注意喚起や記憶にどのよう
に影響するのかを明らかにしている。実験結果から、テレビ広告の中で音楽が用いられると温
かい感情が増え、不安な感情が軽減されることが示された。また、ボリュームやテンポや旋律
などの変化によって音楽が広告の中で際立つと、視聴者の気分が高揚し、さらにテレビ広告へ
の注意が喚起されることも明らかになった。音楽のリズムや馴染みがブランド・ネームとリン
クすることにより記憶されやすくなり、そのためには温かい感情や高揚した気分を喚起させる
ことが重要であるとしている。
加えて、関連感情に関する研究で、「馴染み」と記憶との関係について実証した Roe
hm
(2001)は、ラジオ広告について音楽のリリックの有無と被験者が感じるその音楽への馴染み
が、広告メッセージの再生にどのように影響するのかを調査している。馴染みがあり、かつリ
リックがない音楽を用いると、広告メッセージがリリックとして記憶されやすくなるため、音
楽への馴染みが高い場合にはリリックがない方がよいとしている。また、馴染みが低い場合に
はリリックがある方が広告メッセージの再生に関して効果的であると結論づけている。
30
経営研究
第65巻
第 4号
広告には感情に訴えかける様々な要素が存在するが、それらによって生起された感情は無関
連感情同様、認知へと影響することが分かった。また、関連感情と記憶との馴染みの度合いも
同様に認知へと影響を及ぼすことも実証された。さらに、感情状態によって、広告刺激の要素
間の影響も変化する点は、感情が調整変数として刺激と認知との間に介在していることを示し
ていることも重要である。
次に、関連感情と評価との関係については、Aake
randSt
ayman
(1990)において、感情の
広告態度、製品態度への影響を実証されている。この研究では態度概念を狭義の態度(評定・
選好)として評価し、CM 投下頻度によるおもしろさ、苛立ちで測定した感情の変化が広告評
価、ブランド評価に影響していることを明らかにしている。また、Haugt
ve
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(1994)
も、広告の繰り返しのバリエーション(一回のみ、三回ずつ)、製品情報と広告表現のそれぞ
れ異なる広告とで感情と製品評価の関係を実証している。
Mac
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sandPar
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(1991)では、関与の違いによる広告音楽の効果について、広告評価お
よび、ブランド評価へと至るモデルの検証をしている。研究の結果、音楽と広告メッセージ
の一致による感情の方が、音楽に対する感情よりも影響力は強く、一致によるポジティブな
感情は広告評価とブランド評価に強く影響することが明らかにされた。さらに、低関与条件
の方がこれらの影響は大きいことや、不一致のときに発生するネガティブな感情は、低関与
のときにはブランド信念へ、高関与のときには広告評価へ負の影響を強く与えることが示され
た。
様々な刺激による関連感情も広告の評価に加えて広告の扱う製品の評価にまで影響を与えて
いる。また、関与の条件によっても感情の与える影響が変化する点は興味深い。
最後に、行為への影響についてである。マーケティングにおいて、広告効果を心理的指標と
する場合に最も重要となるのが購買に一番近いとされる購入意図である。広告によってもたら
された感情と購入意図との関係については牧野(2008
)が明らかにしている。牧野(2008
)は、
広告のメッセージによる説得力やユーモアにより生じる感情が受け手の気分、CM への好感度、
商品への評価やさらには購入意図まで、どのように変化させるのかをみている。広告のユーモ
アによるおもしろさは受け手の肯定的気分を高め、さらに、肯定的気分は、CM への好感度と
非常に強い相関がみられた。また、商品への関心や購入意図とも強い関連がみられている。さ
らにインパクト、親近性なども CM の好感度と強い関連性があるとしている。しかし、説得
力要因については、CM の好感度との関連はほとんど見られなかった。
この研究では説得的メッセージよりも関連感情のほうが、広告への評価へ強く影響している
点や、気分が広告だけではなく、商品への関心や購入意図にまで影響を及ぼす点は、マーケティ
ングにおいての関連感情の重要性を示唆していると思われる。
これらのことから、関連感情も無関連感情同様、認知システムの各要素への影響が見られる
ことが分かった。しかし、その結果は無関連感情と異なる可能性があることは注意すべき点で
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
31
あり、区別して、知見を積み重ねていくことが重要であるといえる。
次節では、これまでの知見をもとに、感情測定の精緻化に焦点を当て、従来の広告効果モデ
ルを参考に考察を行う。
5 広告効果モデルにおける新たな感情の位置づけと意義
5.
1 広告効果モデルにおける感情の位置づけ
第 4節で得られた知見としては、以下のようである。
・感情は認知システムとは独立したシステムで生じる
・感情と認知システムは双方が生じ相互に影響しあう、もしくは感情のみ生じる。
・無関連感情と関連感情とでは認知システムへの影響が異なる。
・関連感情は広告への認知や評価、行為へも影響する
以上のことから、広告効果モデルにおける感情の位置づけ及び、その捉え方について考察す
る。
まず、階層モデルでは、感情が認知システムの中の一部として組み込まれている点に問題が
ある。さらに、認知に従属することを前提としている点も、感情の認知への影響を考慮するこ
とができないため、モデルとしては不十分である。しかし、企業の目標設定のための指標とし
ては簡潔で扱いやすいため、情報処理過程を詳細に記述することによる過度の複雑化を避けて
いる点は、重要な視点であると考えられる。
次に、二重過程モデルについては、感情が認知に従属しないモデルも考案されている点は評
価できるが、情報処理のルートが認知システムか感情かの二者択一であり、相互の影響は想定
されていない。また、順序やルートに違いがあっても、認知システムの中に感情を位置づけて
いる点は階層モデル同様問題がある。
最後に、感情と認知とを別のルートとしているモデルは、感情と認知システムとを独立した
別の情報処理ルートとしている点は心理学で支持されている考え方と一致する。その中でも、
感情と認知システム相互の影響を想定した Cohe
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(1991)のモデルが最も心理学か
らの知見を忠実に記述していると考えられる。しかしながら、このモデルは相互に影響すると
いう複雑な状態を説明するために感情をフェイズごとに区分しているが、この各段階を実際に
捉えることは非常に難しい。特に、質問用紙による感情の測定では最終的な感情状態(Thi
r
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)のみを測ることとなる。また、刺激のインプットは認知システムから始まり、認知の
初期は感情の影響を受けないことを想定したモデルとなっている。
さらに、各モデルにおける感情の測定指標は研究者によって種々であり、その統一は大きな
課題である。また、多くのモデルは、概念の提示は行われているものの、実際に測定する際の
測定指標が不明瞭である。
これらのことより、広告効果モデルでは、さらに以下の点に注意する必要がある。
32
経営研究
第65巻
第 4号
図 4 広告効果モデルへの感情の新たな位置づけ
(出所:筆者作成)
・感情を正確に位置づけることによる過度の複雑化を避ける
・情報処理者の関与や能力といった視点を変数として考える
・相互に影響するという複雑な現象をどのようにモデルに記述するか
・構成要素を明示することによる統一化を如何に行うか。
上記の点を踏まえて、本稿で考えられる広告効果測定の仮設モデルは図 4である。
図 4のモデルでは、感情を次元説に則った三次元での測定を前提とし、広告目標としての認
知システムへは常に感情のバイアスがかかることを想定したモデルとなっている。感情と認知
システムとの間には相互作用が存在するが、マーケティングとして測定の目標となるのはあく
まで認知システムである点から、感情の経時的な変化には焦点を当てず、調整変数としての位
置づけを強調したい。
また、広告目標を設定するための概念モデルは図 5が想定される。このモデルでは、階層モ
デルにも見られるように、認知、評価、行為それぞれの目標に対し、各々に正負の影響を与え
るであろう感情も戦略の中に組み込み、目標設定を行うことを示している。
以上が感情に焦点をあて、先行研究の知見より広告効果モデルを聖地化したモデルである。
感情は、理性を妨害するもの、抑制すべきもの、または認知に従属するものといった考え方か
ら、認知システムへ大きな影響を持ち、独立した処理システムを持つ、積極的に戦略に組み込
図 5 広告効果モデルへの感情の新たな位置づけ(概念図)
(出所:筆者作成)
広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
33
み操作すべきものとして、考え方の転換が現代的マーケティングにおいてもっとも重要な点の
一つであろう。
5.
2 本研究のインプリケーションと今後の課題
本稿では、広告効果研究における感情の位置づけについて再考察し、心理学研究での知見も
踏まえて新たな位置づけを提案した。
従来の広告効果モデルにおける感情の位置づけとは異なり、新たな感情の捉え方を提示する
ことで、マーケティング戦略をより精緻に行うことが可能となったと考えられる。例えば、態
度形成のある段階をマーケティング目標とした場合にも、その段階により効率よく影響する感
情状態も広告計画に盛り込むといったことができるのである。さらに、関連感情と無関連感情
を区別した上で、関連感情を位置づけることで、広告そのもののイメージと、広告の掲載場所
や状況などを区別して、マーケティング戦略に取り入れることができる。マーケティング研究
において近年取り上げられている感情という曖昧なものを正確に測定するために、この位置づ
けの作業は非常に有意義であると考える。
しかしながら、本稿では、外部情報の受容に影響する関与の概念について考察がなされてお
らず、関与の高低によって感情の生じ方や感情が与える影響の変化などについて整理する必要
がある。また、感情をどのような測定指標で計るのかという点についても、本稿においては言
及をしておらず、先行研究を整理する上でも、そのばらつきは見過ごすことができない課題で
ある。そして最後に、今回提示したモデルのうち、感情の構成要素各々がどのように認知シス
テム各要素に影響するのかを実証するには至っていない。この点については今後実験的な手法
用いて実証する必要があるだろう。
これらの残された課題をもとに、今後の研究として、
・関与概念の整理と感情との関わり
・感情の測定方法の整理
・感情の各構成要素と認知システムとの関係
の 3点を明確にし、モデルへ取り入れることで、より実践に耐えうるモデルへ精緻化すること
が可能であり、今後のマーケティング研究や広告研究にとって必要な議題であると考える。
6 おわりに
本稿では、広告の効果測定について、心理的指標をもとに整理を行った。その中でも、感情
という概念に焦点をあて、先行研究における位置づけに疑問を呈し、心理学の知見をもとに再
度、感情と認知システムとの関係やその位置づけについて考察した。結果として、従来の広告
効果研究において用いられる態度概念や効果モデルの中での感情の位置づけには問題があるこ
とが明らかとなった。
34
経営研究
第65巻
第 4号
広告効果研究は、心理学の影響を多大に受けている。各々の広告効果モデルが提唱された当
時の心理学の知見を援用しているため、心理学で新たな発見や修正がなされた場合、マーケティ
ングにも同様の調整がなされるべきである。従来のモデルの中で感情の捉え方に齟齬があった
のはその点にも原因があるように考えられる。心理学においても感情について議論が継続され
ている点もあり、マーケティング研究もその動向に注意をし、今後さらなる精緻化を試みる必
要があるだろう。
その点において、本稿は現状の心理学の知見を整理し、マーケティング研究に援用すること
で、心理学とマーケティング研究との齟齬を解消した点に大きな貢献があると考える。
また、企業がマーケティング戦略や広告戦略を計画するにあたり、その計画の効果の測定や
予測のためには独立変数、調整変数、説明変数それぞれに広告効果指標のどれが当てはまるの
かを明確にする必要がある。その意味では、今回の感情の位置づけの見直しには大きな意義が
あったと思われる。
さらに、情緒や感情などの諸概念を、心理学での捉え方に立ち戻り、再度整理することで、
あやふやなままであった類似概念を明確にすることができたことも大きな貢献であろう。それ
によって、態度概念の中で同列にみなされていた感情と評価を切り離して考えるべきとの結論
を見出せた。
今後の課題として残されたものは多いものの、マーケティング研究において、感情という今
まで非常に曖昧に捉えられてきた概念を明確にし、今後のマーケティング研究で行うべき重要
な課題を抽出できたことに、本稿の学術的意義があるものと考える。
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経営研究
第65巻
第 4号
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広告効果モデルにおける感情の位置づけに関する考察(三井)
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