無代掻き移植栽培と地耐力 宮城県古川農試 〇星 信幸、冠 秀昭

無代掻き移植栽培と地耐力
宮城県古川農試
キーワード
〇星
信幸、冠
秀昭
水田輪作、無代掻き、地耐力
水田輪作における畑転換を容易に移行させるための水稲栽培として,不耕起栽培や乾田
直播,無代掻き栽培などがある。ここでは無代掻き移植栽培について,落水後の地耐力及
び水稲品質等への影響について検証した。
試験方法
1)試験ほ場及び試験区の構成
土壌タイプ:灰色低地土(古川農試場内 ),泥炭土・強粘グライ土(現地)
栽培様式:無代掻き区,代掻き区
品種及び苗の種類等: ひとめぼれ
乳苗
なお,苗の種類による品質比較のため,強粘グライ土圃場では稚苗も供試した。
圃場条件:場内・現地すべて暗渠の整備されている水稲連作ほ場とし,暗渠と直行した
心土破砕施工によって均一な土壌水分条件を可能とする地下水制御(FOEASシステム)
圃場で実施した。なお,地耐力調査では暗渠のみの慣行圃場を隣接に設け実施した。
作業行程:図−1に示すとおりとし,春作業以外の管理は慣行とした。出穂期以降の水
管理は,湛水状態を保ち出穂後25日を目安に落水した。
2)主な調査項目
地耐力:5cm×10cmの矩形板を1kg/cm 2 で押し込んだときの沈下量測定
砕土率:田面から10cmの作土で,20mm以下の土塊の比率
品質等:慣行どおり篩目1.9mm以上のサンプルを用いた。
結果及び考察
1)落水後の地耐力は,心土破砕の有無にかかわらず無代掻き区がまさった。また,代
掻き区では,降雨による影響が見られるが,無代掻き区では少なかった 。(図−2)
2)水稲収穫20日後のロータリ耕による砕土率は,代掻き区では含水比60%程度あり土
壌を練る状態となったが,無代掻き区では含水比50%を下回り,砕土率もロータリ耕
1回で50%を上回る砕土が可能であった 。(図−3)
3)落水後,コンバイン走行が容易となる地耐力(沈下量2cm以下)の到達日数は,代
掻き区では11日程度かかるが,無代掻き区では半分の6日程度となった。土壌タイプ
別の落水5日後での地耐力は,泥炭>灰色低地>強粘グライであった 。(図−4)
4)代掻きの有無による土壌タイプ別での収量については,灰色低地で無代掻きが上回
ったが,他の土壌では有意な差は認められなかった。品質では,どの土壌についても
有意な差はなかった。なお,苗の種類では,乳苗で乳白など未熟粒や死米,稚苗で胴
割れが見られ,整粒歩合は稚苗≧乳苗であった 。(表−1)
以上のことから無代掻き移植栽培は,慣行代掻き栽培同等の収量・品質が得られ,収穫
時の地耐力が確保しやすく,畑転換への移行が容易な水稲栽培技術であると考えられた。
(移植2∼3日前)
無代掻き区 秋耕
砕 土
(ロータリ)
代掻き区
(慣行)
移 植
秋耕
春耕
代掻き
荒代 植代
(ロータリ)
(ロータリ)
入水 (代掻きハロー)
図−1
含水比
49.9%
80
8
代掻き
無代掻き
代かき
無代かき
10
6
20
砕土率 %
10
降水量(mm)
矩形板沈下量(cm)
14
降水量
弾丸無
弾丸無
弾丸有
弾丸有
慣行水管理
100
0
12
(乗用側条田植機)
無代掻き移植栽培の本田春作業
16
含水比
59.7%
60
40
20
4
2
0
30
0
9/7
9/12
図−2
9/17
9/22
1回目
9/27
落水後の降雨と地耐力経過
15
2回目
1回目
無代かき区
図−3
*落水:9月6日(出穂後25日程度)
*弾丸:サブソイラによる心土破砕
矩形板沈下量(cm)
活着後入水
入水
(代掻きハロー)
1∼2回
2回目
代かき区
ロータリ耕による砕土率
*調査:10月28日(水稲収穫後20日程度)
*トラクタ:ヰセキTK33,2500rpm,ロータリ:ARK17
速度:低速3速,PTO:2速,耕深:13cm
**
落水後日数
5
10 15
代掻き
6.0
4.6 0.7
灰色低地
9/6
無代掻き
0.4 0.0 0.0
代掻き
1.3 0.4 0.2
泥 炭
8/29
無代掻き
0.5 1.3 0.3
代掻き
10.2
8.7 1.8
強粘グライ
8/31
無代掻き
8.4 5.0 0.8
落水
月日
代掻き
R2 = 0.643
無代掻き R2 = 0.318 **
10
5
(土壌タイプ別)
0
0
5
10
15
20
25
落水後日数
図−4
表−1
落水後日数と代掻きの有無による地耐力
水稲収量・品質への影響
代
掻
き
有
無
有
泥 炭 乳苗
無
有
稚苗
無
強粘グライ
有
乳苗
無
灰色低地 乳苗
精玄米重
整
粒
%
(kg/a)
48.9
51.2
66.1
64.9
55.0
53.5
56.2
54.3
**
82.1
82.0
88.9
89.7
89.2
88.3
85.9
84.2
**:1%水準で有意
未
熟
粒
b
ab
a
a
17.4
17.3
10.2
9.7
9.9
10.4
13.1
14.9
乳白 基未 腹白 青熟 その他
b
b
a
a
1.2
1.2
1.5
1.8
1.7
1.4
2.2
2.5
0.0
0.1
0.2
0.1
0.2
0.2
0.2
0.3
0.4
0.5
1.3
0.8
1.5
1.3
0.9
1.7
4.2
4.7
0.7
0.8
0.5
0.6
1.7
0.6
11.6
10.8
6.5
6.2
6.1
6.9
8.2
9.9
被
害
粒
死
米
胴
割
粒
0.5
0.4
0.5
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.1
0.3
0.3
0.2
0.2
0.1
0.5
0.4
0.0
0.0
0.2
0.0
0.4
0.8
0.0
0.2
アルファベット:異なるものの間に1%又は5%水準で有意な差あり
*収量・品質:篩目1.9mm以上
品質:S社製穀粒判別機RGQI10A
除
草
剤
散
布