平成 27 年度税制改正大綱のポイント(抜粋) 中川税理士社労士事務所

平成 27 年度税制改正大綱のポイント(抜粋)
平成 27 年 1 月 30 日
中川税理士社労士事務所
東 京 都 目 黒 区 青 葉 台 3-10-1
パシフィックマークス青葉台 7 階
TEL:03-3769-1656FAX:03-3769-1657
http://www.nakagawaoffice.com/
e-mail:[email protected]
平成 26 年 12 月 30 日に公表された「平成 27 年度税制改正大綱」のうち、主なもののポ
イントは次の通りです。
なお、本文は大綱で発表された内容がベースとなっていますので、今後、法令等の整備に
伴い実際に適用される制度と異なる可能性がありますのでご留意ください。
I. 個人所得課税
1. 金融・証券税制
(1)
ジュニア NISA の創設
平成 28 年から平成 35 年までの各年において、その年の 1 月 1 日現在 20 歳未満の者
について、年間 80 万円の非課税枠が設けられ、通常の NISA と同様に売却益や配当が
非課税となる。非課税期間は 5 年間であるため、非課税枠は最大 400 万円となる。
投資金額については、その年の 3 月 31 日において 18 歳である年の前年 12 月 31 日
までの間、原則として払い出すことができない。
(2)
NISA の拡充
現行の NISA の非課税枠が年間 100 万円から 120 万円に拡充される。
対象年齢
非課税投資総額
投資できる期間
ジュニア NISA
NISA
0~19 歳
20 歳~
最大 400 万円
最大 600 万円
(80 万円×5 年間)
(120 万円×5 年間)
平成 35 年まで(最終の非課税年は平成 39 年まで)
1
2. 住宅・土地税制
(1)
次の住宅取得等に係る特例の適用期限が平成 31 年 6 月 30 日まで 1 年 6 カ月延長
される。
① 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
② 特定の増改築等に係る住宅借入金等特別控除(バリアフリー改修工事、省エネ改
修工事)
③ 住宅耐震改修特別控除
④ 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除(自己資金型の
バリアフリー改修工事、省エネ改修工事)
⑤ 認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除など
(2)
適用の際に確定申告書等に住民票の写しを添付することとされている次の特例に
ついて、税務署長が行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に
関する法律の規定により氏名および住所等を確認することができるときは、住民票の
写しを要しない。
① 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率)
② 居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000 万円特別控除)
③ 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
④ 住宅借入金等特別控除など
3. その他
(1)
国外転出する場合の譲渡所得等の特例の創設
富裕層の海外移住による税逃れを防ぐため、株式など金融資産の含み益に出国時に
譲渡等したものとみなして課税する制度が創設される。
対象者は、出国時点で 1 億円以上の金融資産を所有し、かつ、国外転出の日前 10 年
以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が 5 年超である者である。
(2)
日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等義務化
外国人の配偶者を持つ人などが扶養対象の親族を実際より多く届け出ていると疑わ
れる事例があり、書類の義務付けで不正を防止するねらいで創設された。
確定申告や年末調整等において、非居住者である親族について扶養控除、配偶者控
除、配偶者特別控除または障害者控除の適用を受ける場合には、
「親族関係書類」およ
び「送金関係書類」を添付または提示等しなければならない。
2
(3)
確定拠出年金制度
確定拠出年金法等の改正により、個人型確定拠出年金制度の加入者に追加される企
業型確定拠出年金加入者、公務員等共済加入者および第三号被保険者について、現行
の個人型確定拠出年金制度に係る税制上の措置が適用される。
(4)
ふるさと納税(個人住民税における都道府県または市区町村に対する寄附金控除)
① 控除限度額の引き上げ
平成 28 年度分以後の個人住民税について、特別控除額の控除限度額が、個人住
民税所得割額の 2 割(現行 1 割)に引き上げられる。
② 手続きの簡素化
確定申告を行わない給与所得者等が寄附を行う場合、ワンストップで控除を受
けられる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設される。具体的には、寄
附者の要請により、寄附を受けた都道府県または市区町村は、控除に必要な事項
を寄附者の個人住民税課税市区町村に通知することとなる。
3
II. 資産課税
1. 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
次の措置を講じた上、その適用期限が平成 31 年 6 月 30 日まで延長される。平成 27
年 1 月 1 日以後に贈与により取得する住宅取得等資金から適用される。
<非課税限度額>
①10%消費税率適用者
住宅用家屋の取得等に係る
耐震・省エ
契約の締結期間
ネ・バリアフ
②左記以外(8%等)
耐震・省エ
一般住宅
リー住宅
ネ・バリアフ
一般住宅
リー住宅
~平成 27 年 12 月
平成 28 年 1 月~28 年 9 月
1,500 万円
1,000 万円
1,200 万円
700 万円
平成 28 年 10 月~29 年 9 月
3,000 万円
2,500 万円
平成 29 年 10 月~30 年 9 月
1,500 万円
1,000 万円
1,000 万円
500 万円
平成 30 年 10 月~31 年 6 月
1,200 万円
700 万円
800 万円
300 万円
2. 特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例
適用対象となる増改築等の範囲に、一定の省エネ改修工事、バリアフリー改修工事
および給排水管または雨水の侵入を防止する部分に係る工事を加えた上、その適用期
限が平成 31 年 6 月 30 日まで延長される。
3. 東日本大震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の
非課税措置
非課税限度額を次のとおりとし、その適用期限が平成 31 年 6 月 30 日まで延長される。
10%消費税率適用者
住宅用家屋の取得等に係る
耐震・省エ
契約の締結期間
ネ・バリアフ
左記以外(8%等)
耐震・省エ
一般住宅
リー住宅
ネ・バリアフ
一般住宅
リー住宅
~平成 28 年 9 月
平成 28 年 10 月~29 年 9 月
3,000 万円
2,500 万円
平成 29 年 10 月~31 年 6 月
1,500 万円
1,000 万円
4
1,500 万円
1,000 万円
4. 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設
将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させる要因の一つとなっていることを踏
まえ、祖父母や両親の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の結婚・出産・育児を
後押しするため、これらに要する資金の一括贈与に係る非課税措置が創設された。
<概要>
20 歳以上 50 歳未満の個人が結婚・子育て資金に充てるために、その直系尊属が金銭等を
拠出し金融機関等に信託等した場合には、受贈者 1 人につき 1,000 万円までの金額につい
ては贈与税が非課税となる。
結婚に際して支出する費用については 300 万円が限度となる。
平成 27 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31 日までの間に拠出されるものに限り適用され
る。
5. 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特例の対象となる教育資金の使途の範囲に、通学定期券代、留学渡航費等が加えられ、
その適用期限が平成 31 年 3 月 31 日まで延長される。
5
III.
法人課税
1. 法人税率引下げ
平成 27 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から、法人税の税率が 23.9%(現行 25.5%)
に引き下げられる。また、中小法人(資本金 1 億円以下の法人)の軽減税率の特例(19%
→15%)
、公益法人等の軽減税率の特例、協同組合等の軽減税率の特例は、各々適用期限が
2 年間延長される。
<普通法人の法人税率>
現行
区分
大法人
中小法人
年 800 万円以下の所得金額
年 800 万円超の所得金額
改正案
原則
特例
原則
特例
25.5%
―
23.9%
―
19%
15%
19%
15%
25.5%
―
23.9%
―
2. 欠損金の繰越控除の見直し
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、災害損失金の繰越控除制度等
について、控除限度額が段階的に縮小されるとともに繰越期間が延長される。また、経営
再建中の法人および新設法人については、7 年間、所得金額の 100%を控除できる特例が創
設される。平成 27 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用される(繰越期間の延
長は、平成 29 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用)。
なお、中小法人(資本金 1 億円以下の法人)等については、現行の所得金額の 100%控除
が継続される。
<控除限度額(中小法人等以外)
・繰越期間の見直し>
平成 27 年 4 月 1 日~平
現行
成 29 年 3 月 31 日までの
間に開始する事業年度
控除限度額
繰越期間
所得金額×80%
所得金額×65%
9 年間
平成 29 年 4 月 1 日以後に
開始する事業年度
所得金額×50%
10 年間
繰越期間が 9 年から 10 年に延長されることに伴い、帳簿書類の保存期間、欠損金額に係
る更正の期間制限、更正の請求期間も 10 年に延長される。
6
3. 受取配当等の益金不算入制度の見直し
現行
区分
完全子法
人株式等
関係法人
株式等
持株割合
改正案
不算入
負債利
割合
子控除
100%
区分
完全子法
×
人株式等
100%
25%以上
○
上記以外
の株式等

25%未満
50%
持株割合
1/3 超
株式等
100%未満
その他の
5%超
株式等
1/3 以下
的株式等
負債利
割合
子控除
100%
関連法人
非支配目
不算入
5%以下
×
100%
○
50%
×
20%
公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額については、その全額が益金算
入となる。ただし、特定株式投資信託の収益の分配の額については、その受益権を株
式等と同様に扱い、非支配目的株式等として 20%の益金不算入割合が適用される。

上記改正に伴い、関係法人株式等に係る負債利子控除の計算の簡便法の基準年度が、
平成 27 年 4 月 1 日から平成 29 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度とされる。
4. 所得拡大促進税制
基準事業年度と比較して雇用者給与等支給額が一定割合増加した場合等に、増加額の
10%を税額控除できる制度である。適用要件のうち、雇用者給与等支給増加割合の要件が
緩和される。
雇用者給与等支給増加割合=雇用者給与等支給額÷基準雇用者給与等支給額
開始事業年度
現行
中小企業者等
左記以外
平成 27 年 4 月 1 日前
2%以上
2%以上
2%以上
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
3%以上
3%以上
3%以上
平成 28 年 4 月 1 日~平成 29 年 3 月 31 日
5%以上
3%以上
4%以上
平成 29 年 4 月 1 日~
5%以上
3%以上
5%以上
7
5. 地方拠点強化税制
地域再生法の改正を前提に以下の措置が講じられる。
(1)
地方拠点建物等を取得した場合の特別償却または特別税額控除制度の創設
① 適用法人
地域再生法の改正法の施行日から平成 30 年 3 月 31 日までの間に地方拠点強化
実施計画(仮称)について承認を受けた青色申告法人
② 対象資産
その計画承認の日から 2 年以内に取得等して事業の用に供された一定規模以上
の建物およびその附属設備ならびに構築物でその計画に記載されたもの
③ 特別償却・特別税額控除
移転区分
税額控除
平成 29 年 3 月 31 日までに
特定地域→大都市等以外
25%
7%
計画承認を受けた法人
上記以外
15%
4%
特定地域→大都市等以外
25%
4%
上記以外
15%
2%
上記以外
(2)
特別償却
雇用促進税制の拡充
地域再生法の改正法の施行日から平成 30 年 3 月 31 日までの間に地方拠点強化実施
計画(仮称)について承認を受けた青色申告法人について、雇用促進税制が拡充され
る。
ただし、当期の法人税額の 30%から現行の雇用促進税制による控除税額と上記(1)
の控除税額を控除した残額が限度となる。
① 地方拠点への移転または新増設
計画承認の日から 2 年以内の日を含む事業年度において、地方拠点における増
加雇用者数(法人全体の増加雇用者数が上限)1 人につき、次の金額を控除できる。

現行の適用要件を満たしている場合…50 万円

雇用者増加割合(10%以上)だけ満たしていない場合…20 万円
② 特定地域から大都市等以外の地方拠点への移転
計画承認の日から 2 年以内の日を含む事業年度(対象年度)において上記①の
適用を受ける場合には、対象年度のうちその適用を受ける事業年度以後の各事業
年度において、地方拠点における増加雇用者数 1 人につき 30 万円を上記①に加え
て控除できる。
ただし、その地方拠点の雇用者数または法人全体の雇用者数が減少した場合に
は適用できない。
8
6. 法人の地方税制
(1)
法人事業税の税率改正
外形標準課税が適用される大法人(資本金 1 億円超の普通法人)の「所得割」の標
準税率が引き下げられ、
「付加価値割」および「資本割」の標準税率が引き上げられる。
現行
平成 27 年度
平成 28 年度~
付加価値割
0.48%
0.72%
0.96%
資本割
0.2%
0.3%
0.4%
3.8%
3.1%
2.5%
(2.2%)
(1.6%)
(0.9%)
5.5%
4.6%
3.7%
(3.2%)
(2.3%)
(1.4%)
7.2%
6.0%
4.8%
(4.3%)
(3.1%)
(1.9%)
年 400 万円以下の所得
所
得
年 400 万円超 800 万円以下
の所得
割
年 800 万円超の所得
(
(2)
)内は地方法人特別税を含んでいない税率
地方法人特別税の税率改正
上記(1)の所得割の税率引き下げに伴い、大法人の地方法人特別税の税率が改正さ
れる。
大法人の税率
現行
平成 27 年度
平成 28 年度~
67.4%
93.5%
152.6%
9
IV. 消費課税
1. 消費税率引上げ時期の変更
消費税率(国・地方)の 10%への引上げの施行日が平成 29 年 4 月 1 日とされる。これ
に合わせて請負工事等に係る適用税率の経過措置の指定日が平成 28 年 10 月 1 日となる。
2. 輸出物品販売場制度の見直し
(1)
手続委託型輸出物品販売場制度の創設
商店街やショッピングモール等に設置された「免税手続カウンター」を営む事業者
に免税手続きを委託した場合には、その「免税手続カウンター」で各店舗の免税手続
きをまとめて行うことができる。
(2)
外航クルーズ船寄港地における輸出物品販売場に係る届出制度の創設
輸出物品販売場を営む事業者が、あらかじめ港湾施設内に臨時販売場を設置する見
込みであることについて所轄税務署長の許可を受けている場合には、設置日の前日ま
でに一定の届出書を所轄税務署長に提出することにより、免税販売ができる。
3. 国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し
(1)
内外判定基準
インターネットの普及により、電子書籍・音楽・広告の配信等の電気通信回線を介
して行われる役務の提供を「電気通信役務の提供」と位置付け、その内外判定基準を
「役務の提供に係る事務所等の所在地」から「役務の提供を受ける者の所在地等」に
見直す。改正により、国外事業者が国境を越えて行う役務の提供が国内取引となり、
消費税の課税対象となる。
(2)
リバースチャージ方式の導入
国外事業者が行う電気通信役務の提供のうち、その役務の性質または契約条件等か
ら、その役務の提供を受ける者が事業者であることが明らかなものを「事業者向け電
気通信役務の提供」と位置付け、その取引に係る消費税の納税義務者をサービスの提
供者からサービスの受け手に転換する。
10