スマートフォトニックネットワーキング - Biblio

2015 年電子情報通信学会通信ソ サイ エ テ ィ 大会
BI-5-6
スマートフォトニックネットワーキング
- アプリケーションドリブンネットワーキングの世界を目指して Smart Photonic Networking – Toward Application Driven Networking –
岡本 聡*1*2
Satoru Okamoto
*1
電気通信大学
The University of Electro-Communications
1. まえがき
2020 年以降の実現を目指すフォトニックネットワーク技
術のターゲットとして,スマートフォトニッククラウドが
提案されている[1].文献[1]においては,スマートフォト
ニッククラウド実現に向けて,スケールフリーフォトニク
ス,スマートフォトニックネットワーキング(SPN),シン
セティックトランスポートプラットフォーム,の 3S 技術
を立ち上げることが必要であるとされている.本稿では,
SPN を対象として,ターゲットとするアプリケーションド
リブンネットワーキングを目指した取り組みを紹介する.
*2
慶應義塾大学
Keio University
スフォトニックスライスでは,サービス毎に容量エラステ
ィックな“ハードスライス”(回線/パススイッチングで提
供)や“ソフトスライス”(フレームスイッチングで提供)
を提供する.光 L2 は,回線/パス,フレームの両方のスイ
ッチング技術の組合せが可能であり,提供するサービスス
ライスに対応してスイッチンング技術を適応的に組合せる.
PPE 及びマルチサービスフォトニックスライスより構成さ
れるネットワーク全体をフォトニック SDN と呼ぶ.
2. 伝達網向けネットワーキング
2.1 スマートフォトニックネットワーキング(SPN)
Software Defined Networking (SDN)を伝達網に適用し,マ
ルチプロトコル/マルチレイヤ SDN サービスネットワーク
を構築することが期待されている.データコム向けの SDN
と異なり,通信キャリアが求めるマルチプロトコル/マルチ
レイヤ SDN は,主に L2 以下を対象として,光技術を活用
した以下の特長を有することが求められている.
① 経済的な大容量 L1 及び L2 パスの提供
② 低遅延・低ジッタパスによる,遅延 QoS 保証
③ 他のトラヒックとアイソレートされた帯域保証
④ 容量自由なエラスティックパスの提供
⑤ プロトコルフリーネットワーク
これらの要求はネットワーク仮想化におけるスライスと
相通じるものが多い.
これらに要求を満たすために,伝達網に特化した光技術
を活用した新たなトランスポートプロトコルが必要となる
と考える.そのプトロコルを光 L2 プロトコルと仮称し,
光 L2 に基づいた新たな伝達網アーキテクチャをスマート
フォトニックネットワークアーキテクチャ(SPNA)と呼ぶ.
SPN は,光技術に基づいたパケット+伝達網サービス基盤
の実現を目標として,マルチサービスの提供,サービス毎
のスライス提供を行うものと言える.
2.2 スマートフォトニックネットワークアーキテク
チャ(SPNA)
提案する SPNA の概念を図 1 に示す.各種レイヤの伝達
網サービス,例えば IP,イーサネット, SDH, OTN,
MPLS-TP が,プログラマブル光エッジ(PPE)に収容される.
PPE は,複数のスライスを提供し,L1 以上の全サービスを
スライスとして提供する.ただし,上位レイヤのサービス
は,大容量性が要求されない場合は既存の SDN に収容し
た方が経済的と考える.PPE 間に設定されるマルチサービ
図 1.スマートフォトニックネットワークアーキテクチャ(SPNA)
2.3 光 L2 のコンセプト
光 L2 は,サービスノードから見ると,サービスが要求
するルータ(L3 サービス)やスイッチ(L2 サービスや L1
サービス)の機能を仮想的に提供する巨大なルータ/スイッ
チを伝達網が提供するコンセプトである.光 L2 は,コア
網部分がスイッチファブリック,エッジ部分がインタフェ
イスパッケージに相当する巨大装置である.その内部構造
の隠蔽は,光の広帯域性とその広帯域性を活かすために設
計される新たな光 L2 プロトコルで実現される.光 L2 は,
光の L1 伝送技術(λ/サーキット)と,光の L3 転送技術
(光パケット)の間を埋める新たな伝達網技術であるが,
純粋な光フレームスイッチを目指すものではない.また,
LAN 向けの L2 技術ではなく,光技術を最大限に活用する
伝達網指向の L2 技術であり,サービスからはこれまで L1
としか見えなかった伝達網を,L2 網(+L1 網)として見せ
ることが目的となる.光 L2 により,コア網が光 L2 網とな
り,L3 サービスに対してもコアルータを利用しない L3 ル
ータレス網を提供することで,シンプル化や省エネルギー
化,低コスト化を狙うことが期待される.
2.4 光 L2 の基本機能
光 L2 は,(1)多様化する上位層のプロトコルを,高性能
なワンホップ光 L2 にマッピングするエッジ機能を提供す
る“光 L2-MAC-E”,(2)光技術を活用する光 PHY の大容
SS-85
2015/9/8 〜 11 仙台市
( 通信講演論文集 2 )
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量低遅延性を最大限に引き出し,多様性を隠蔽し,光 L2ID(波長,周波数,タイムスロット,光ラベル,電気ラベ
ル等)に基づきスイッチングするブリッジ機能を提供する
“光 L2-MAC-B”,(3)プレミアム光 L2 として,超大容量,
遅延最小,低消費電力な光ネットワークを提供する“光
L2-PHY”,の三機能より定義付けられる.図 2 に光 L2 の
アプリケーション例として,イーサネット over 光 L2 を示
す.PPE の UNI がイーサネットであり,イーサネットを光
L2 にマッピングして NNI 側には光 L2 が出力され,エッジ
間を転送される.ブリッジノードにおいては,光 L2-MACB でのフレームスイッチ機能に加えて,プレミアム光 L2
として光 L2-PHY におけるλでのバイパススイッチングも
想定する.光 L2 網の規模としては 100 万 UNI ポートが期
待されており,新たなアドレッシング体系[2,3]の実現が要
求されている.
図 2.光 L2 のアプリケーション例(イーサネット over 光 L2)
3. フォトニックネットワークプロセッサによ
る光 L2 ノード構成
光 L2 のノードを実現する手法としてフォトニックネッ
トワークプロセッサ(PNP)を提案する[1].PNP は,図 3 に
示すように,再構成可能光インターコネクト(シリコンフ
ォトニクスインターポーザ[4])を中心に,長距離伝送イン
タフェイスプール,ネットワークプロセッサ(NP)/CPU プ
ール,スイッチプール,他の PNP と接続するための超短距
離インタフェイス(VSR-IF)プールが接続され,インターポ
ー ザ で の デ バ イ ス プ ー ル 接 続 変 更 , DSP , ス イ ッ チ ,
NP/CPU の設定やプログラム変更で様々なネットワーク機
能を提供する.
図 3 では,比較的大きな機能モジュールを示しているが,
Long Reach IF 部と DSP プールと VSR-IF 部からなる DSP
コアモジュール,NP/CPU プールと VSR-IF 部からなる NP
コアモジュール,NP/CPU プールと SW プールと VSR-IF 部
からなるクライアント処理用の UNI モジュールに細分化す
ることでよりフレキシブルな PNP が構成可能と考える.
PNP を組合せることで,図 2 の光 L2 ノードや,Multi-flow
Optical Transponder [5]のようなネットワーク機能を構成す
ることができる.
4. 光 L2 によるアプリケーションドリブンネッ
トワーキング: ACTION
アプリケーションに対して必要十分な QoE を提供するこ
とで,仮想レイヤ 2 スライスに割り当てる資源を最小化さ
せる取組である ACTION が提案されている[6].ACTION
では,ACTION エッジノードにおいてフローのアプリケー
ション種別を判別する.アプリケーション種別毎に異なる
QoE が要求されるが,ACTION エッジ間には,必要十分な
QoE を提供するための必要十分な QoS を提供する仮想レイ
ヤ 2 網であるスライスが複数用意される.スライスに対し
ては動的な資源割当が行われ,① 資源割当で QoS の維持
の実現,あるいは②フローの所属するスライスを動的に変
更,の二つの方式により,QoE の必要十分性を担保する.
ACTION エッジ間のネットワークに対して SPNA を適用す
ると,PPE が動的に資源割当を行うことで光 L2 が複数の
QoS スライスを生成し,QoS 制御機構を PNP により動的に
再構成することで資源割当の最適化を実現することが可能
となる.
PNP により,単純なイーサネット over 光 L2 から,複雑
な QoS 割当を行うことが必要な ACTION エッジまで幅広
いエッジノードを,ネットワーク仮想化,ネットワーク機
能仮想化(NFV),サービス機能チェイン(SFC)といった技術
を取り込むことで実現可能となる.
5. まとめ
本稿では,アプリケーションドリブンネットワーキング
を目指すためのツールとしてスマートフォトニックネット
ワーキングと光 L2 を紹介した.
謝辞
本研究の一部は,NICT 委託研究「将来ネットワークの
実現に向けた超大規模情報ネットワーク基盤技術に関する
研究」の成果です.
参考文献
[1] K. Kitayama, et. al., “Photonic Network Vision 2020 – Toward
Smart Photonic Cloud,” IEEE JLT, Vol. 32, No. 16, pp. 27602770, Aug. 2014.
[2] 岡本他,“新世代広域レイヤ2網におけるアドレッシング及び
エ ッ ジ ク ロ ス コ ネ ク シ ョ ン 設定 手 法 の 検 討 , ” 信 学 技 報 ,
PN2010-15,2010年9月.
[3] 中島他,“光レイヤ2ネットワークにおけるスケーラブルなア
ドレス解決手法の提案,”信学会PN研究会学生WS,No.2,
2015年3月.
[4] Y. Arakawa, et. al., “Silicon photonics for next generation
system integration platform,” IEEE Comm. Mag., Vol.51, No.3,
pp.72-77, Mar. 2013.
[5] M. Jinno, et. al., “Multiflow Optical Transponder for Efficient
Multilayer Optical Networking,” IEEE Comm. Mag., Vol.50, No.5,
pp.56-65, May 2012.
[6] N. Yamanaka, et. al., “Application-centric, energy-efficient
network architecture, ACTION, based on flexible optical
network,” Proc. COIN2014, TB1-3, Aug. 2014
図 3.フォトニックネットワークプロセッサ概念図
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