ソーラボジャパン株式会社

このページはソーラボジャパン株式会社によるPR記事です。 シグナル伝 達 のイメージングと応 用
大場 雄介 (北海道大学大学院医学研究科・細胞生理学分野)
緑色蛍光タンパク質(GFP, green fluorescent protein)
シグナル伝達においては、タンパク質の局在変化や
の発見とその塩基配列の決定は、細胞機能の解析を
タンパク質間相互作用に加え、構造変化とそれに伴
大きく加速した。非常に豊富なカラーバリエーショ
う酵素活性の変化も重要である。そのようなタンパ
ンの蛍光タンパク質も開発され、生きた細胞内のオ
ク質の質的変化を可視化する技術がフェルスター
ルガネラ観察は勿論、ダイナミックなタンパク質の
共鳴エネルギー移動(FRET, Förster resonance energy
動態や細胞内外の環境変化を、リアルタイムかつ多
transfer)である。FRET はドナー(エネルギー供与
次元に観察・解析することができるようになった。
体)からアクセプター(エネルギー受容体)へと励
機能—局在連関があるタンパク質動態として、転写
起エネルギーが移動する現象である。蛍光タンパク
因子の核移行がある。蛍光タンパク質と融合した転
質を用いた FRET ではシアン色と黄色の蛍光タン
写因子を発現させ、タイムラプス蛍光顕微鏡を用い
パク質のペア(CFP と YFP)が使用される場合が
て経時的に撮像すると、活性化因子の作用に応じて
多く、両者が近接した時のみ FRET が観察される。
転写因子が細胞質から機能する場である核へと移
440 nm
480nm
FRET
行する様子が見て取れる。また興味領域を核内に設
YFP
CFP
定することで、核移行の程度を定量化できる。
FRET
FRET
440 nm
530 nm
YFP
CFP
転写因子核移行のイメージング
蛍光タンパク質は β シートをつなぐループ領域で
切断すると蛍光能を消失するが、両者にそれぞれ相
互作用する分子を結合させると、それらの相互作用
によって GFP が再構成され蛍光能を回復する。し
たがって、分子間相互作用を蛍光強度の増強として
検出することができる。これを BiFC(bimolecular
fluorescence complementation)という。
FRET バイオセンサーの原理
最近我々は、FRET バイオセンサーを応用して慢性
骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia, CML)に
おける薬効評価をするための体外診断技術を開発
した。CML は骨髄の造血幹細胞に染色体相互転座
によって新たな異常染色体(フィラデルフィア染色
体・Ph1)が形成され、遺伝子の再構成により、CML
の原因タンパク質 BCR-ABL チロシンキナーゼが
白血病細胞内に発現する。15 年ほど前に認可され
た BCR-ABL に対する分子標的治療薬イマチニブ
00:00
45:00
は、過去のどの治療よりも成績が良く、その有用性
が確立した。一方、イマチニブが効かない、あるい
は治療途中から効果が減弱する症例も少なからず
60:00
120:00
BiFC の原理とイメージング例
存在する。薬の有効性は、これまでは実際の投薬の
結果、数カ月から 1 年以上に亘る経過中の血液検査
PR記事 や骨髄検査のデータを見るより他はなく、治療前に
しかし、このような技術革新に追随するために、新
効果を予測する術はなかった。
しいテクノロジーが出るたびに高額な光学機器セ
この課題を解決し、患者さん一人一人に有効な治療
ットを購入することは、予算の面から考えてビッグ
を個別に予測するために開発されたのが FRET バ
ラボ以外には難しい。我々のような中小の研究室は
イオセンサーPickles(Phosphorylation indicator of
指を咥えて見ているだけしか無いのだろうか?実
CrkL en substrate)である。Pickles は CML の原因
はここで紹介した技術に、特殊な専用機器は必要な
タンパク質 BCR-ABL によってリン酸化される基
い。通常の落射蛍光顕微鏡をベースに、周辺機器を
質 CrkL をベースに、BCR-ABL の活性が高いと
準備するだけで完結するものがほとんどである。新
FRET が生じ、逆に阻害薬でキナーゼ活性が抑制さ
しい技術に対しては、必要な部分のみを拡張するこ
れると FRET が減少するよう設計されている。
とで対応できる。そんな研究者の要望に適切に応え
てくれ、ともに目の前の課題に熱心に取り組んでく
480 nm
Venus
SH2
SH3 Y
SH3
れる企業の存在は大変心強い。 ECFP
207
CrkL
ソーラボ社のご紹介
440 nm
BCR-ABL
TKI (IM)
ソーラボジャパン株式会社
530 nm
SH
SH3
P
Y
2
SH3
弊社は、光学実験に必要な様々な部品や製品の開発、製造、販
FRET
Venus
売を通し、お客様の研究スピードの向上に貢献することを目指
ECFP
しています。 440 nm
数年前より、ライフサイエンス
分野に向け、高輝度 LED 照明、
Pickles の模式図と薬効評価例
XY/Z ステージ、メカニカルシ
Pickles はごくわずかに潜む薬剤耐性細胞を検出し、
かつ投薬開始前に将来の薬剤反応性を予測可能で
ャッタ、フィルターホイールな
どの顕微鏡関連製品を充実さ
せています。その中にケージシ
ケージキューブで構成された
3 色 LED 光源
あることが、100 例を超える症例での経験から明ら
ステムと呼ばれる製品群がありますが、このケージシステムを
かになってきた。現在は実用化に向けた取り組みを
活用することにより、弊社の製品を自由に組み合わせたり、他
行っている。
社の製品に組み込むことが可能になります。例えば、お手持ち
蛍光イメージングはこれまでも生物学研究に文字
通り多くの光を照らしてきた。これからは、さらな
る画期的な技術革新が続くと考えられる。光遺伝学
技術によって可能になった光による細胞の操作は
その一例であろう。光感受性タンパク質を用いるこ
の顕微鏡に、ケージシステムを用いて新たな機能を加えること
が可能になります。 また、お客様の研究スピードの向上に貢献すべく、製品の仕様
や図面、価格、納期の情報が分かりやすいウェブサイトを目指
しています。多くの製品で国内在庫を持ち、短納期で納品(ご注
文の当日もしくは翌日発送)をしております。また、弊社製品の
とで、光を当てた部位のみで細胞の形態変化を誘導
約 30%はお客様からのアイディアを基に開発されております。技
することも可能になってきている。
術的なご質問や研究でお困りの際は、技術サポートグループが
ご相談に乗らせていただきますので、是非一度お問い合わせを
Kymogram
Region
Region
頂ければ幸いです。 time
ソーラボジャパン株式会社
〒170-0013 東京都豊島区東池袋 2-23-2
Email:[email protected]
光 遺伝 学に よる
局 所的 細胞 形態
変化の誘導