第2章 中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成 事 例 2-2-2 有限会社ゼムケンサービス 女性の力を引き出す女性視点の空間づくり 福岡県北九州市の有限会社ゼムケンサービス(従業員 202 ている。 9 名、資本金 2,000 万円)は、1993 年に設立された一級 また、同社は女性の能力にも注目している。同社では 建築士事務所であり、住宅・商業施設等の設計やデザイ 代表取締役籠田淳子(こもりたじゅんこ)氏が自らデザイ ンを行う。従業員 9 名のうち6 名が女性であり、女性活用 ン塾を開催して人材育成に取り組むとともに、女性建築デ が進みにくい建築業界において、女性の感性や視点を活 ザインチームを組成し「女性視点のブランディングによる かしたデザインを強みと捉え、事業を展開している。 繁盛づくりまちづくり」を推進している。さらに、本業の 女性活用を積極的に行うようになったきっかけは、 家屋や商業施設の設計に加えて、地域への貢献も大切に 2006 年に従業員の新規募集をかけたところ、子育て中の している。こうした活動の一つに、北九州市の商店街、 女性建築士から複数の応募があったことである。子育てを 魚町銀天街のタウンマネージメントが挙げられる。子育て しながら働くという事情から、労働時間を短縮する必要性 中の母親、障害児を育てる母親、独身の女性デザイナー を感じ、ワークシェアリングを導入することで、一級建築士 等がプロジェクトに参加し、それぞれの生活者視点をまち (母親)とインテリアデザイナー(母親)の 2 名を採用し づくりに活かすため、商店街のお店の紹介やお店に関す た。採用してみると、短時間勤務であっても十二分な成 る気付きを発信するとともに、「車椅子で魚町銀天街」の 果をあげることが可能であり、また、働く母親の姿を子ど イベント活動や「誰からも愛されるまち、魚町銀天街」と もに見せることで子どもの成長に好影響を与える効果があ いうアイデンティティーを生み出すなど、その活動は多岐 ることから、現在に至るまで積極的に女性従業員を採用し にわたる。 2015 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 第 2部 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍 第1 節 籠田氏は「女性活躍が比較的遅れている建築士業界に おいて、女性が活躍するチャンスは多い。女性の強みで ある生活者視点やこまやかな気遣い等を活かして、今後 も事業を展開していきたい。」と語る。 同社の現場の風景 コラム 2-2-2 外国人留学生の活躍 国内における人口減少が今後継続して進展することを考えた場合、国内の潜在的労働力に目を向けることに加えて、 外国人労働者を労働力として国内に取り込むことも重要な選択肢の一つである。そこで、以下では外国人労働者、とり わけ、国内で就学し日本文化になじみ、また、語学能力が高い外国人留学生の日本における就業状況を見ていく。 まず、外国人留学生の卒業後の進路について見ていく(コラム 2-2-2 ①図) 。外国人留学性は増加傾向にあり、2012 年においては 39,295 人となっている。他方で、そのうち国内に就職する者は 8,722 人にとどまっており、一部にとどまっ ていることが確認できる。 コラム 2-2-2 ①図 外国人留学生の卒業後の進路 人 国内就職 国内進学 その他 年 資料独日本学生支援機構「外国人留学生進路状況・学位授与状況調査結果」 (注) 㻌 対象の「外国人留学生」は大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等への在籍者。 中小企業白書 2015 203
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