小児の Respiratory syncytial virus感 染症 における 細 菌性二次感染 に

248
小 児 の Respiratory
syncytial
virus感
染 症 にお け る
細 菌 性 二 次 感 染 に 関 す る臨 床 的 研 究
帝京大学医学部小児科学教室
有
Key words:
益
(63年9月9日
受 付)
(63年10月7日
受 理)
RS virus, Secondary bacterial infection, Indiscriminate use of antibiotics
要
1978年 か ら10年 間 に 入 院 し た Respiratory
菌 性 二 次 感 染 の 有 無 に つ い て 検 討 した.231例
認 め られ た.細
修
約
syncytial virus (RSV)
中56例(24.2%)に
菌 性 二 次 感 染 の 診 断 名 は 敗 血 症(2例),膿
鼻 咽 頭 炎(2例)及
び尿 路 感 染 症(2例)で
あ った.二
Streptococcus
pneumoniae,
β streptococci
二 次 感 染 と考 え られ る細 菌 性 重 感 染 が
胸(2例),肺
炎(41例),中
次 感 染 の 頻 度 は6ヵ
以 上 の 乳 幼 児 に 高 か っ た.超 炎 菌 は 乳 児 で はStaphylococcus
influenzae,
感 染 症 の 乳 幼 児231例 に お い て,細
aureusや
月 未 満 の 乳 児 よ り も6ヵ
な ど が 多 か った.
(21/56,37.5%)は
生物 質 の投与 を受 け てい た
生 物 質 の 投 与 を 受 け て い な か っ た 者(11/64,17.2%)よ
を 示 し て い た.中 で も,macrolideあ
るい はpenicillinの
り高 い 二 次 感 染 率
い ず れ か が 投 与 さ れ て い た 者 の細 菌 二 次 感 染 率
抗 生 物 質 非 投 与 群 の そ れ よ り も統 計 学 的 に 有 意 に 高 か っ た(p<0.025).以
感 染 症 は そ れ 自体,細
月
腸 内 細 菌,幼 児 で はHaemophilus
細 菌 二 次 感 染 率 を 入 院 前 の 抗 生 物 質 使 用 歴 に よ り比 較 検 討 した と こ ろ,抗
者(41/145,28.3%)は,抗
耳 炎(7例),
菌 性 二 次 感 染 を き た す こ と が あ る が,不
上 よ りRSV
適 当 な抗生物 質 の投与 が さらに二 次感 染
率 を 高 め て い る こ と が 明 らか に され た.
I. 序
Respiratory
文
syncytial virus (RSV)
感 染 に つ い て 検 討 し,1988年
は乳幼児
の 急 性 細 気 管 支 炎 及 び肺 炎 の 最 も重 要 な 病 因 で あ
ま で の 合 わ せ て10年
間231例
に お け る 臨 床 的 研 究 を 行 っ た.そ
RSV感
染 症 そ の も の も細 菌 性 二 次 感 染 を 引 き起
の 結 果,
り,わ が 国 で は 毎 年 冬 期 を 中 心 と して 流 行 を 繰 り
こ す こ と が あ る が,不
返 して い る.RSV感
二 次 感 染 率 は さ らに 高 くな る こ とが 認 め られ た の
染 症 は,ウ イ ル ス 性 疾 患 で あ
る か ら,そ れ だ け で は抗 生 物 質 療 法 の 対 象 とは な
らな い.し
で 報 告 す る.
II.
か し,わ が 国 の プ ラ イ マ リー ケ ア の場
で は ウ イ ル ス の 病 因 診 断 は ほ とん ど行 わ れ て お ら
対 象
ず,病
対 象 は1978年12月
因 不 明 の ま ま抗 生 物 質 が処 方 され て い るの
が 現 状 で あ る.
材 料 と方 法
か ら1988年2月
学 小 児 科 病 棟 に 入 院 し,RSV感
筆 者 は1984年 まで の6年
間 に 入 院 したRSV感
生 後12日
か ら5歳
染 症 の 小 児 に お け る細 菌 性 重 感 染 に つ い て 回顧 的
RSV感
に 分 析 し,二 次 感 染 が 意 外 に 多 い こ とを 報 告 し
community-acquired
た1).そ の後 はprospectiveにRSVと
染 の16例,他
別 刷 請 求先:(〒173)東
適 切 な抗 生 物 質 投 与 に よ り
細菌 性二次
有益
修
virus
染 症 と診 断 され た
ま で の 小 児 で あ る.こ
染 症 と診 断 さ れ た 例 は254例
1例,
infection
の 間 に
で あ っ た が,
で は な い 院 内感
の ウ イ ル ス あ る い は マ イ コ プ ラズ マ
と の 重 感 染7例
京都 板 橋 区 加賀2-11-1
帝 京大 学 医 学 部 小児 科
までに帝京大
(Cytomegalovirus
Adenovirus
1例,
2例,
Rotavirus
感染症学雑誌
Measles
2例,
第63巻 第3号
小 児 のRSV感
Mycoplasma
pneumoniae
1例)
を除 く231例 を 対
象 と した.
方法
wash
(NW)
の採 取 法
炎 菌 に 対 す る抗 体 測 定
NW培
養 に よ り起 炎 菌 を 決 定 し た 例 の う ち9
抗 体 を 測 定 し た.1×106/mlにPBSで
首 長 ゴ ム ス ポ イ ト(株 式 会 社 平 沢)を 用
い てHallら
の方 法 に 従 っ て採 取 した2).即 ち,滅
菌 ゴ ム ス ポ イ トに約10mlの
れ,鼻
(4)起
例 に お い て ペ ア血 清 を用 い 患 者 分 離 菌 株 に対 す る
(1)Nasal
NWは
249
染 症 に お け る細 菌 性二 次 感 染
減 菌 生理 食塩 水 を入
咽 頭 の位 置 が 前 鼻 穴 の位 置 よ り少 し低 くな
者 分 離 菌 浮 遊 液 を ス ラ イ ドグ ラ ス に 塗 抹,乾
ア セ トン 固 定 し た も の を 抗 原 と し,蛍
法 に よ り9),IgMお
は56℃30分
よ びIgG抗
階 希 釈 し て 用 い た.FITCラ
置 で 固 定 す る か ベ ッ トに寝 かせ て 顔 を 横 に 向 け,
びIgGウ
片 方 の 前 鼻 穴 に ス ポ イ トを あ て速 や か に生 理 食 塩
し,明
水 全 量 を 押 し込 む.そ
体 価 と し た.な
咽 頭 の 分 泌 物 を 十 分 に 含 ん だNWが
反対 側 の前
1例
お,洗
dysgalactiae
し た 各1例
速 や か にHEp-2細
胞
(5)血
断 した2).RSVの
に塗 抹,乾 燥 させ,ア
ライ ドグ ラ ス
セ トン固 定 後,蛍
光抗体直
浄 喀 疾 培 養 に よ り診 断 し た
pyogenes
(G群
清CRPの
Ortho
例)に
Diagnostic
よ るNW中
Sytems
た9).成 績 を 統 一 す る た め,後 者 の 値 を 沈 降 法 の 値
III.
(1)NW培
はASOの
た 例 で は 上 原 ら の 方 法5)に 従 っ て 洗 浄 後 培 養 し
でIgM抗
た.1984年11月
rhalis 検 出 例 で はIgG抗
の場 合,採
泌 物 が認 め られ るNWだ
培
取 し た検 体 中 に膿 性 分
けを 対 象 と し,膿 部 分 を
喀 疾 と同様 に 洗 浄 後 培 養 した.そ
して コ ロニ ー の
90%以 上 を 占め る優 勢 菌 とし て培 養 され,か
つ洗
全 例 でIgG抗
か っ た が,2例
共 にIgM抗
Streptococcus
peumoniae
IgM抗
体 もIgG抗
を 発 症 し た 症 例12の
菌 とみ な し6).菌 の 同 定 は Bergey's
231例 中56例(24.2%)に
平 成元 年3月20日
体 が 陽 性 で あ っ た.
検 出 例 で は2例
経 過 をFig.1に
(2)細
に準 じた7).
catar-
共 に
院 病 日頃
に よ る と考 え ら れ る 気 管 支 肺 炎
球 に貧 食 され て い る所 見 を 伴 って い る場 合 を 起 炎
Bacteriology
Branhamella
体 の 上 昇 は 見 ら れ な
急 性 細 気 管 支 炎 の た め 入 院 し,第5入
に B.catarrhalis
Systematic
を
体 も検 出 で き な か っ た.
と同一 と思 わ れ る菌 が 多 量 に鏡 検 で き,多 核 白血
of
出例 で
体 の 有 意 上 昇 を 認 め,3例
体 が 陽 性 で あ っ た.
浄 膿 性 分 泌 物 を 直 接 に グ ラ ム染 色 して 培 養 さ れ た
Manual
1)
出 例 で は 洗 浄 喀 疾 で 診 断 し た1例
含 む6例
以 降 は,喀 疾 に代 わ ってNWの
績
る い はS.dysgalactiae検
咽 頭 ス ワ ブは 常 法 に よ り行 った.喀 疾 が 採 取 で き
養 を 行 っ た.こ
∼6
有 意 上 昇 が 認 め ら れ た.Haemophilus
influenzae検
水,鼓 膜 穿 刺 液,尿,鼻
1(+)
養 で診 断 した二 次感 染 菌 に対 す る
S.pyogenesあ
(3)細 菌 培 養
細 菌 培 養 は,血 液,胸
成
患 者 の 抗 体 反 応(Table
の抗 原 証 明 に よ っ た.
(±),
段 階 で 表 し た.
ッ ト,18例)
Inc. の抗 血 清 使 用,6
れ
以 降 は ラ テ ック ス 凝 集 法 に よ る定 量 法 で 測 定 し
(+)の
あ る い は 蛍 光 抗 体 直 接 法3)(デ ン カ 生 研 ま た は
(ASO)
測定
結 合 抗 体 測 定3)にお け る抗 体 の 有 意 上 昇(24例),
EIAキ
O
ま で は 沈 降 法 に よ る 半 定 量 法,そ
に 換 算 し て 全 例 の 値 を (-),
RSV
養 に
を 起 炎 菌 と決 定
antistreptolysin
接 法 で 行 っ た.一 部 の症 例 は ペ ア血 清 に よ る補 体
酵 素 免 疫 法4)(Abbott
たNW培
あ る い は Stnptococcus
streptococcus)
ず つ で は,
1985年9月
め た 場 合,感 染 細 胞 を 取 り出 し,ス
よ
の 測 定 を も っ て 抗 体 価 測 定 と した.
チ ュ ー ブ に接 種 して 行 う ウイ ル ス分 離 法 に よ り診
同 定 は特 徴 的 細 胞 変 性 効 果 を 認
段
よ り染 色 し て 観 察
も 同 様 に 抗 体 を 測 定 し た.ま
受 け取 る.
染症 の診断法
り2倍
ベ ル 抗 ヒ トIgMお
サ ギ 血 清(Tago社)に
鼻 穴 か ら勢 い よ く出 て くる の で これ を 滅 菌 容 器 で
主 と し て 採 取 し たNWを
て1:16よ
らか な 蛍 光 を示 す 最 大 血 清 希 釈 の 逆 数 を 抗
て Streptococcus
(2)RSV感
燥,
光 抗 体 間接
体 を 測 定 し た.血 清
非 働 化 後PBSに
る よ うに,患 児 を 坐 位 に して顎 を つ き 出 させ た 位
うす る と鼻 腔 後 部 お よ び鼻
調 整 した 患
示 す.
菌 性 二 次 感 染 の 頻 度 と起 炎 菌
臨 床 経 過 か ら二 次 感 染
と 考 え られ る 細 菌 の 重 感 染 が 認 め ら れ た.細
菌 性
有益
250
Table
Apn:
Alveolar
pneumonia,
1
Antibody
Bpn:
Responses
of Children
Bronchopneumonia,
Fig.1
The
case elicited
修
OM:
Clinical
IgM antibodies
against
Otitis
media,
the Superinfecting
Br:
Acute
Course
of Case
against
the superinfecting
Bacterium
bronchiolitis.
12
B. catarrhalis
isolate.
二 次 感 染 の 診 断 名 は,鼻 咽 頭 炎2例(結
1例),中
耳 炎7例(急
支 肺 炎22例(中
膿 胸2例,敗
性 咽 頭 炎 合 併2例),気
耳 炎 合 併1例),肺
血 症2例
膜炎合併
お よ び 尿 路 感 染 症2例
あ った.な お,56例 のRSV感
管
胞 性 肺 炎19例,
で
染 症その ものの臨床
診 断 名 は,急 性 細 気 管 支 炎17例,気 管 支 肺 炎24例,
肺 胞 性 肺 炎15例 で あ った.た
だ し,肺 炎 は胸 部X
線 像 を 主 な根 拠 と して 診 断 した た め,重
い る細 菌 に よ るX線
感 染 して
所 見 も加 味 さ れ て い る 可 能
性 が あ る.
感 染 症学 雑 誌
第63巻
第3号
小児 のRSV感
染症 にお け る細 菌 性 二次 感 染
1例,
例),洗
二 次 感 染 の 起 炎 菌 は, S.pyogenes
galactiae
1例,
S.pneumoniae
coccus
aureus
philus
paminfluenzae
Escherichia
coaceticus
10例,
7例,H.influenzae
1例,
coli 2例
B.catarrhalis
4例,
cal-
2に 示 し た.1例
刺 で 膿 性 胸 水 が 得 ら れ た が,入
炎32例,う
ち1例
穿 刺 液 培 養 陽 性3例(中
耳 炎3例),鼻
な お,こ
炎 菌 と臨 床 診
だ け は胸 腔 穿
Table
2
Etiology
and diagnoses
あ った.
れ らの ほ か に 臨 床 経 過 な ど か らRSV
と診 断 した 例 が,231例
tmchomatis
養陰性 のため起炎菌 は不明 で
液 お よ び 胸 水 培 養 陽 性1例(膿
中5例
感 染 症2例,百
あ っ た(Chlamydia
日 咳1例,Campy原 大 腸 菌 下 痢 症1
例).
血
胸1
(3)細 菌 性 二 次 感 染 の男 女 比 お よ び年 齢 分 布
of secondary
bacterial
infections
in children
with
RSV diseases
(56 cases)
Fig.2
Age
children
distribution
with
of the
incidence
RSV diseases
Age
平 成 元年3月20日
咽 頭 ス ワブ
よ び 尿 培 養 菌 量105/
路 感 染 症2例)で
lobacter jejuni 腸 炎1例,病
症2例),血
膜
よ り も細 菌 の 方 が先 に 感 染 して い た 偶 然 の 重 感 染
院前 に抗生物質 が
液 培 養 陽 性2例(敗
は鼓 膜 穿 刺 液 か
検 出,中 耳 炎4例),鼓
ml以 上2例(尿
あ っ た.
起 炎 菌 の 決 定 根 拠 は,血
炎10例),NW培
ら も 同一H.influenzae
培 養 陽 性(鼻 咽 頭 炎2例)お
以上 の菌 が優 勢菌
と し て 検 出 さ れ た 例 は な か っ た.起
投 与 さ れ て お り,培
Haemo-
お よ び Acinetobacter
浄 喀 疾 培 養 陽 性10例(肺
養 陽 性36例(肺
Staphylo-
28例,
1例 で あ っ た.2種
断 の 関 係 をTable
S.dys-
251
of secondary
bacterial
infection
in
有益
252
RSV感
染 症231例
で あ り,細
(36.2%)と,細
の 男 女 比 は142:89(1.6:1)
菌 性 二 次 感 染 は6ヵ 月 未 満 に 少 な
く,そ れ 以 降 の年 齢 に 多 い傾 向 が あ った.
菌 性 二 次 感 染 合 併 例 の 男 女 比 は36:
20(1.80:1)で,い
修
ず れ も男 児 の 比 率 が高 か っ
年 齢 別 に 起 炎 菌 の頻 度 を み る と,S.auzeus, E.
coliは11ヵ 月 以 下 の乳 児 に,βstreptococci, S.
た.
RSV感
染 症231例
年 齢 分 布 をFig.2に
満,6∼11ヵ
お よ び 細 菌 性 二 次 感 染56例
示 し た.年
月,1歳
齢 に よ り6ヵ
以 上 の3群
中10例(26.3%),1歳
月未
に 分 け る と,6
ヵ 月 未 満 で は99例 中12例(12.1%),6∼11ヵ
は38例
の
月で
以 上 で は94例
中34例
pneumoniae, Haemophilus
3
Age distribution
bacteria
in children
(4)血 清CRP値(Fig.3)
RSV感
染 症231例 中229例 で 血 清CRPが
さ れ た.細
of superinfecting
測定
菌性 二 次 感 染 の な か った 例 の 大 部 分 は
が(-)∼3(+)で,5(+)以
か った.一 方,細
with RSV diseases
以上 に多い
傾 向 がみ られ た(Table3).
CRP値
Table
sp.は1歳
上 はな
菌 性 二 次 感 染 の あ った56例 中30
例(53:6%)はCRPが4(+)以
(-)∼3(+)に
上 で あ った が,
も広 く分 布 して い た.な
然 の重 感 染 と し て除 外 して いた5例
お,偶
の 値 は細 菌 性
二 次 感 染例 と区 別 して 図 示 した . 細 菌 感 染 が あ る
の にCRPが
陰 性 だ った の は,鼓 膜 穿 刺 液 よ りS.
auzeusが 検 出 され た 中 耳 炎 の8ヵ
の6ヵ 月 男 児,C.trachomatis感
の 女 児 お よ び1歳
月 男 児,百 日咳
染 症 の 生 後21日
女 児 で あ った.ま
(±)で あ った の はNWお
た,CRPが
よ び鼓 膜 穿 刺 液 よ り 亙
influenzaeが 検 出 され た気 管 支 肺 炎+中
耳 炎 の1
歳 男 児 で あ った.
(5)入 院 前 の抗 生物 質 療 法 の 有 無 と細 菌 性 二 次
Fig. 3
Serum
CRP values
of children
with
diseases
RSV
感 染 合 併 率 の関 係
入 院 直 前 の抗 生 物 質 使 用 の 有 無 に 関 す る病 歴 は
N=229
231例 中209例 で 明 ら か に す る こ とが で きた.少
く と も1日 以 上 抗 生 物 質(併
剤,他
tion
な
が注射
はす べ て 経 口剤)が 使 用 され て い た 者 は145
例(62.8%)で
Table
用 も含 み9例
4
あ っ た.
Incidence
of secondary
in RSV diseases
of prior
antibiotic
of children:
bacterial
infec-
The influence
therapy
感 染 症学 雑 誌
第63巻
第3号
小 児 のRSV感
細 菌 性 二 次 感 染 例56例 を こ の病 歴 別 に分 析 した
もの をTable4に
示 す.細
253
染 症 に お け る細菌 性 二 次感 染
菌性二次感 染は抗生物
る と,ス ウ ェー デ ンのWahlgrenら
症 の50%の
は,RSV感
染
症 例 の 鼻 咽 頭 に 何 ら か のpotential
質 の 前 投 与 を 受 け て い な か った 者(11/64,17.2%)
bacterialpathogensを
検 出 し,こ れ らの 例 で は発
よ りも,前 投 与 を 受 け て い た 者(41/145,28.3%)
熱,白 血 球 増 多 お よ び血 沈 値 の 亢 進 を伴 う例 が 多
に 高 い傾 向 が 認 め られ た が,統 計 学 的 に は有 意 差
か った と報 告 して い る11).また,死 亡 した2例 で は
は なか っ た(x2検 定 でp<0.1).し
鼻 咽 頭 で 検 出 され た と同一 の 菌 が 肺 炎 病 巣 か ら も
か し,使 用 され
た 抗 生 物 質 の 種 類 別 に み る とmacrolides(MLs)
検 出 され た とい う.ノ ル ウ ェ ーのCarlsenら
と β-lactam剤 の 併 用,MLs単
RSV感
cillins(PCs)単
これ ら3群,即
独 あ る い はpeni-
独 の 使 用 例 の二 次 感 染 率 が 高 く,
ちMLsかPCsの
少 な く と も1剤
は,
染症 に中 耳炎 を合併 した例 に鼻 咽頭 ス ワ
ブ の細 菌 検 査 陽 性 例 が 多 か った と報 告 して い
る12).ア メ リカのHallら
は,518例 のRSV感
染症
が 使 用 わ れ て い た 例 の細 菌 二 次 感 染 率(8+8+
で 入 院 した 小 児 の2.5%に
5/56,37.5%)は
時 に み られ た とい う13).い ず れ の報 告 で も検 出菌
%)よ
抗 生 物 質 非 投 与 群 の そ れ(17.2
りも有 意 に 高 か った(x2検
IV.考
定 でp<0.025).
察
全 身 性細菌 感 染症 が 同
はH.inflluengaeやS.pneumoniaeが
あ った.こ
主な もので
の よ うに 分 析 方 法 も異 な る た め 一 定 の
従 来 か ら上 気 道 の細 菌 検 査 は下 気 道 炎 の病 因 診
結 論 が で て い る訳 で は な い が,細 菌 性 二 次 感 染 を
断 法 と して 信 頼 性 が低 い と され て い る10).今回,細
きた す 例 が あ る こ と は いず れ の 研 究 で も認 め て い
菌 感 染 症 の 診 断 に 主 と して 用 い たNWに
る.
よ る細
菌 検 査 法 は 目黒 らが 考 案 した もの で あ る6).本 方
さて,RSV感
染 症 に お け る細 菌 性 二 次 感 染 の合
法 で 菌 が検 出 され た 患 者 で は,検 出 菌 に対 す る有
併 に は い くつ か の 要 因 が挙 げ られ る.そ の1つ は,
意 な抗 体 反 応 が 高 率 に み られ た とい う今 回 の結 果
RSVに
よ る生 体 の 感 染 防 御 機 能 の 障 害 で あ る.
は,本 方 法 は十 分 信 頼 性 が 高 い こ とを示 して い る.
RSVは
周 知 の ご と く鼻 腔 か ら細 気 管 支,肺 胞 壁 ま
従 っ て特 に 喀 痰 採 取 が 容 易 で は な い 乳 幼 児 で は簡
で広 範 囲 に気 道 粘 膜 を 強 く損 傷 させ る.そ
便 で 有 用 な 方 法 と思 わ れ る.た だ,S.pneumoniae
感 染 防 御 の第 一 関 門 の1つ で あ る気 道 粘 膜 の 破 綻
検 出例 で 抗 体 反 応 を 伴 わ な か った 点 は 今 後 さ らに
が お こ り,そ こか ら直 接 細 菌 が 侵 入 す る こ とが あ
り うる.ま た,強
検 討 す る必 要 が あ ろ う.
入 院 を 要 し たRSV感
%)に
染 症231例 中56例(24.2
何 らか の細 菌 性 二 次 感 染 を 認 め た.起 炎 菌
はmucociliary
い気 管 ・気 管 支 粘 膜 細 胞 の破 綻
clearance
と考 え ら れ る.RSVは
し,乳 児 で はS.aureusや
球,マ
はHaemophilus
sp.S.pneumoniae,
cocci,B.catarrhalis, 特 に前2者
RSV感
染 症 に よ る 入 院 は1∼2ヵ
βstreptoが主 役 で あ った.
月 児に ピーク
が あ るの に細 菌 性 二 次 感 染 は 生 後6ヵ
か った こ とも,生 後6ヵ
月以降に多
月未 満 は 受 働 抗 体 に よ り
各 種 細 菌 か ら防御 され て い る細 菌 感 染 症 に一 般 的
な現 象 と思 わ れ た.男 児 が多 い 点 も 同様 で あ る.
イ ン フ ル エ ンザ や 麻 疹 で気 道 や 時 に は全 身 性 の
mechanismを
著しく
障 害 し,こ れ が細 菌 性 下 気 道 炎 合 併 の 重 要 な要 因
は細 菌 感 染 症 の疫 学 に お げ る年 齢 分 布 とほ ぼ 一 致
腸 内細 菌 な どが,幼 児 で
のた め
ま た 一 過 性 にTリ
ンパ
ク ロ フ ァ ー ジ の 機 能 を 障 害 し,好 中 球 の
chemotaxisを
抑 制 す る14).筆 者 ら はRSV感
の 好 中 球 機 能 検 査 の1つ
と して,急
好 中 球 のchemiluminescence能
染児
性 期 に末 梢 血
を3例
で測定 し
た が 正 常 対 照 と差 は な く,殺 菌 能 の低 下 は見 出 だ
せ な か っ た(未 発 表 成 績).
今1つ
の要 因 と して,こ の よ うな ウ イル ス の直
接 的 影 響 の ほ か に人 為 的 な 抗 生 物 質 の 使 用 が 挙 げ
られ る.今 回 の 対 象 症 例 の 少 な く と も62.8%は
入
細 菌 性 二 次 感 染 を きた しや す い こ とは よ く知 られ
院 前 に抗 生 物 質 が 投 与 され て い た.そ
生
て い る.し か し,RSVと
物 質,特
細菌 性二次感染 の関連 に
つ い て は 十 分 な検 討 は な され て お らず,筆
者の知
る限 りわ が 国 で は 報 告 は な い.外 国 で の報 告 を み
平成 元 年3月20日
にMLsあ
る い はPCsの
して,抗
いず か1剤 以 上
が 投 与 さ れ て い た 例 は,抗 生 物 質 非 投 与 例 に較 べ
て 有 意 に高 率 に細 菌 性 二 次 感 染 を 伴 って い た.こ
有益
254
れ は 繰 り返 し指 摘 され て きた ウ イ ル ス 性 上 気 道 炎
に 抗 生 物 質 を 常 用 し て も細 菌 性 二 次 感 染 は防 止 し
得 な い15)とい う事 実 と共 通 点 の あ る結 果 で あ った
修
英典講師並 びに藤井 良知帝京大学 名誉教授 に深謝 致 しま
す.
文
1) 有益
献
修, 目黒 英 典, 藤井 良知: 小 児 のRSウ
イル
が,単 一 ウイ ル ス に よ る下 気 道 炎 に お け る成 績 と
ス 下 気 道 炎 に お け る細 菌 性 二 次 感 染 に 関 す る検
い う点 で は 新 し い知 見 で あ る.抗 生 物 質 投 与 が 細
討. 第15回 日本 小 児 ウイ ル ス病研 究会, 1984. 11.
9 (長 崎).
菌 性 二 次 感 染 を 誘 発 す る理 由 と して,使 用 抗 生 物
質 に よ る上 気 道 の有 益 な常 在 菌 叢 の抑 制 が,ウ
イ
ル ス に よ り障 害 され た 気 道 粘 膜 上 で 使 用 され た 薬
剤 に感 受 性 が低 くて 病 原 性 の あ る菌 種 の 増 殖 を容
2) Hall, C.B. & Douglas, R. G. Jr.: Clinically
useful method for the isolation of respiratory
synchytial virus. J. Infect. Dis., 131: 1-5, 1975.
3) 沼 崎 義 夫:
易 に す るた め と思 わ れ る.口 腔 や 咽 頭 の 常 在 菌 α
streptococciが
病 原 性 細 菌 を 抑 制 す る作 用 を 有 し
感 受 性 が 高 い い.こ
れ らの 事 実 は 筆 者 の 成績 でPCsやMLsを
4)
5)
力 の 弱 いMLsの
よれ ば,国 民1人
上 原 す ゞ子,
6)
州 の8倍 位 に
わ れ る.
た だ し,RSV感
染 症 に お い て も抗 生 物 質 の 必 要
な例 は 少 な くな い.上 気 道 に 存 在 す るpotential
pathogenが
そ の 後 の二 次 感 染 菌 とな る 可 能 性 が
あ るか ら11)18),検出 され た 菌 に 抗 菌 力 の よい 薬 剤
を選 択 す れ ば そ の 菌 に よ る二 次 感 染 は 未 然 に 防 ぐ
こ と も十 分 可 能 で あ る.実 際 に は細 菌 性 二 次 感 染
の 所 見 を認 め て か ら抗 生 物 質 を 開 始 す る の が 正 し
い 方 法 で あ ろ う13).RSV感
染 症 で は血 清CRP値
は 一 般 に低 値 で あ った か ら,CRP高
値 は細 菌 性 二
次 感 染 の 存 在 を示 す よ い指 標 と な る.従
って ウ イ
ル ス検 査 を 施 行 し得 な い場 合 で も乳 幼 児 の 急 性 下
気 道 炎 に お い てCRP高
値 は抗生 物質療 法 を開始
す る 目安 とな ろ う.
謝辞:稿 を終わ るに臨み,御 指導を賜 った帝京大学医学
部小児科阿部敏明主任教授に深謝致 します.ま た,本 研究
に多大 な御一
協力をいただき,直 接御指導をいただいた 目黒
周:
洗 浄 し た 痰 か らの 起 炎 菌
新 しい考 え方 に よ る小 児気 道 疾 患 の 日
目黒 英 典,
p.25-32,
南 山 堂,
東 京,
有益
修 二急 性 下 気 道 炎 の 細 菌 性 病 因
新 生 児,
乳
児 の 感 染 症 の 発 症 機 構 と制 御 に 関 す る 研 究(昭
和
書.
7)
代 表 藤 井 良 知),
Krieg,
ual
8)
もな る と推 定 され る17).筆 者 の 成 績 は この よ うな
乱 用 に警 告 を 発 す る もの と して の 意 義 もあ る と思
寺 嶋
イ ル ス抗 原 の
1987.
熟 児,
61年 度 科 学 研 究 費 補 助 金59440048研
が国
当 た りの 抗 生 物 質 使 用 量 はわ が
メ リカ の4∼5倍,欧
1152-1155,
の 決 定 法 な ど に 関 す る 研 究.未
N. R.,
of
9)
Sneath,
P.H.
(ed):
Baltimore,
竹 田 美 文, 清 水 洋 子 (訳):
p.30-34,
近 代 出 版,
富田
CRP(
38:
1397-1402,
1987.
Bergey'
Bacteriology,
Wilkins,
仁:
究 成果報 告
p.123-137,
Systematic
Williams
国 の 場 合,ア
28:
p.42-53,
1987.
1982.
sp.の 増 殖 を きた しや す い こ とも知 られ て い る.
の抗 生 物 質 の 使 い 過 ぎ が 指 摘 され て い る.藤 井 に
東 京,
常 診 療 (久 保 政 治 編).
使 用 は 鼻 咽 頭 にHaemophilus
欧 米 とわ が 国 との 大 きな 違 い の1つ に,わ
ウ イ ル ス ・ク ラ ミジ ァ ・
酵 素 免 疫 法 に よ るRSウ
小 児 科,
の 決 め 方.
使用 さ
対 す る抗 菌
目黒 英 典:
検 出.
れ て い た者 に二 次 感 染 が 多 か った 点 を 説 明 す る も
の で あ る.ま た,Haemophilussp.に
イ ル ス.
日本 公 衆 衛 生 協 会,
て い る事 はす で に知 られ て い る16).αstreptococciは 一 般 的 にPCsやMLsに
RSウ
リ ケ ッチ ア 検 査 (厚 生 省 監 修) 第3版.
s Man-
Vol.1,
2,
1984•`1986.
細 菌 感 染 症 の 血 清 診 断.
東 京,
C-Reactive
1985.
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14) Faden, H. and Ogra, P.: Neurtrophils and
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15) Soyka,
Monaco,
L. F., Robinson,
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The
D. S., Lachant,
misuse
of antibiotics
感染症学雑誌 第63巻
N. &
for
第3号
小 児 のRSV感
treatment
of upper
in children.
Pediatr.,
respiratory
tract
55: 552-556,
染 症 に お け る細菌 性二 次 感染
infection
17)
日本 に 於 け る 抗 生 物 質 使 用 の 動 向.
床 と 研 究,
16) 増 田真 理 子: 口腔 内 鎖球 菌 の 病原 細 菌 に 対す る発
18)
56:
目黒 英 典,
1829-1834,
有益
修,
白 石 裕 昭,
菅 又 久 美 子,
井 良 知:
気 道 ウ イ ル ス と 細 菌 の 重 感 染.
成績.感 染症 学 雑 誌, 59: 559-599,
イ ル ス,
15:
Studies
Secondary
(RSV)
infection
bacterial
infection
possibly
pyothorax
Dual
than
gram-negatives
Branhamella
years
to secondary
infections
6
months.
in
infants,
catarrhalis
was
10
(2), pneumonias
bacterial
younger
due
the
otitis
more
The
and
studied
since
on
main
in children
over
Of
children
the
invasion.
media
(7),
frequent
Haemophilus
231
1987.
bacterial
(41),
were
藤
臨床 と ウ
1987.
in Respiratory
Osamu ARIMASU
of Pediatrics, Teikyo University School of Medicine
infection
in
159-163,
on the Secondary
Bacterial
Infection
Syncytial
Virus Infection
of Children
Department
virus
1985.
臨
1979.
育 阻止 作 用: 急 性 気 道感 染 症 患 児 の咽 頭 に お け る
Clinical
(2),
藤 井 良 知:
1975.
255
in
etiologic
231
The
admitted
agents
influenzae,
56
diagnoses
nasopharyngitis
infants
and
were
with
children,
of
(2)
children
had
bacterial
and
over
Staphylococcus
Streptococcus
Respiratory
(24.2%)
Syncytial
dual
disease
urinary
tract
6 months
aureus
sepsis
infection
than
pneumoniae, ƒÀstreptococci
bacterial
were
in
and
(2).
infants
enteric
and
1 year.
The incidence of secondary bacterial infection was compared according to the usage of antibiotics
just before admission. Patients who had been administered with penicillins or macrolides before
admission had a significantly higher percentage of secondary bacterial infection (21/56, 37.5%) than
those of no previous antibiotic therapy (11/64, 17.2%, p<0.025). The results indicate that the RSV
infection itself sometimes predisposes to secondary bacterial infections, but indiscriminate use of
antibiotics further increases the risk of secondary bacterial infections.
平 成 元 年3月20日