C60修飾Au(111)電極のイオン液体中における 多段階電子移動反応制御

The Murata Science Foundation
C60修飾Au
(111)電極のイオン液体中における
多段階電子移動反応制御
Multi-step Redox Control of C60-modified Au(111) Electrode in Ionic Liquids
H26海自08
派遣先 第4回アジア太平洋イオン液体・グリーンプロセス国際会議
第6回オーストラリアイオン液体シンポジウム2014
(オーストラリア・シドニー)
期 間 平成26年9月25日~平成26年10月3日(9日間)
申請者 熊本大学 大学院自然科学研究科
博士後期課程2年 上 田 博 幸
分離工学・溶液化学・バイオマス・理論化学・
海外における研究活動状況
材料化学・触媒化学と幅広く網羅されており、
研究目的
イオン液体の応用用途に関して多方面で知見
国際会議参加の目的は、2つある。1つは、
「大
を得、議論をする機会が設けられている。本
学を中心として各研究機関が現在精力的に研
会議は、2年に一度のペースで開催されてお
究を進めているイオン液体の研究分野における
り、中国における3度の開催を経た後、今年の
最新情報を得る事」であり、もう1つは「自身の
会場はオーストラリア(シドニー)となった。ま
『常温におけるイオン液体中のフラーレンの6段
た、今回は、オーストラリアで隔年開催してい
階電子移動反応制御』に関する発表やその後の
たイオン液体会議6th Australian Symposium on
議論を通して、研究に対するフィードバックを
Ionic Liquidsと合同で開催された。本会議で
獲得する事」である。どちらも、自身が進めて
は、約20の国・地域から研究者が集まり、基
いる研究を飛躍的に発展させるために重要で
調講演・招待講演を含む口頭発表が72件、ポ
ある。
スター発表が104件行われた。
海外における研究活動報告
II.発表内容
I.参加した国際会議の紹介
私は、本会議A07にて、
“Multi-step Redox
4th Asia-Pacific Conference on Ionic Liquids
Control of C 60 -modified Au(111)Electrode in
and Green Processesは、イオン液体に関する研
Ionic Liquids”という題目で口頭発表(15分、
究全般の国際会議である。著名な研究者で構
質疑応答を含む)を行った。発表内容は、適
成される本会議の実行委員会に加え、イオン
切なイオン液体を用いる事で、これまで困難で
液体研究で数々の業績を成し遂げられた研究
あった常温におけるフラーレン薄膜の理想的な
者の方々が集まり、議論を交わす貴重な会議
6段階電子移動反応の達成が可能になった事に
である。発表の分野は、電気化学のみならず、
加え、その電子移動反応がイオン液体のカチオ
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Annual Report No.29 2015
ンに依存する事を報告した。以下に、今回の
ス反応間の電位差は、
[C 4 mim]
[PF 6]の方が小
発表の元となった研究内容を具体的に述べる。
さかった。一方、ピロリジニウム系イオン液体
(
[Cn mpyrr]
[TFSI], n = 3,4)中では、
[C3mpyrr]
[TFSI]に対して5段階、
[C4 mpyrr]
[TFSI]に対
【研究背景】
分子電子デバイスの構築は、電子デバイス
して6段階のC60由来のレドックスが観測された。
を極限まで最小化するための構想として魅力的
また、各レドックス反応のピーク電流値は、掃
である。その中では、酸化還元反応を行う個々
引を繰り返す毎に減少した。従って、C 60 薄膜
の分子がそれぞれの機能を形作るため、分子
–
は掃引によりC60z(z
= 1-6)アニオンに還元され
電子デバイスの実現には、それらの分子の酸
た後、徐々にイオン液体へ溶解して行く事が
化還元状態を精密に制御する事が求められる。
示された。以上の結果から、C 60 薄膜の多段階
フラーレン(C 60 , C 70 など)は、6電子受容可能
レドックス反応がイオン液体の粘度の影響を
であり、電極表面に規則構造を構築可能であ
受け無い事、また、広い電位窓及びC 60 アニオ
る事から、分子デバイスの構成素子としての使
ンとイオン液体のカチオンとの相互作用が室温
用が期待される。しかし、電解質の電位窓が
におけるC60薄膜の6段階レドックス反応を観測
狭い事やフラーレンアニオンの有機溶媒に対す
するための重要な要素である事が示唆された。
る高い溶解性が原因となり、これまでフラーレ
ンの6段階レドックス反応の制御は、フラーレ
III.得られた成果
ン薄膜/電解質界面及び室温下において達成
発表後には、C 60 薄膜の電気化学挙動に関す
されていなかった。そこで我々は、イオン液体
る質問があり、その中で、界面における化学
を用いてフラーレン薄膜の6段階レドックス反
種間の電子の授受を考えるための有力なご助
応の制御を試みた。イオン液体は、一般的に
言を頂いた。
蒸気圧が殆ど無く、高い熱的安定性・広い電
他の講演では、イオン液体/電極界面のナ
位窓を有しており、またC 60 アニオンのイオン
ノ構造に関する研究成果に興味を惹かれた。
液体に対する溶解性が低い事が既に報告され
走査型トンネル顕微鏡を用いたEndres教授の
ていたため、上記の問題解決のための最適な
研究グループ(Clausthal University of Technol-
電解質として期待されていた。
o g y)の成果、及び原子間力顕微鏡を用いた
A t k i n准教授の研究グループ(U n i v e r s i t y o f
Newcastle)の成果を聴講し、従来の電気二重
【研究成果】
C 60 修飾Au(111)電極の各イオン液体におけ
層モデルが適用出来ないイオン液体/電極界面
るサイクリックボルタンメトリー(CV)を行っ
のナノ構造の複雑さを理解した。
たところ、C60 薄膜のレドックス反応がイオン液
これらの知見は、イオン液体/電極界面にお
体のカチオンに依存している様子が明瞭に観測
ける有機分子の電子移動反応の制御や電解合
された。イミダゾリウム系イオン液体(
[C4mim]
成、延いてはそれらを応用した有機エレクトロ
[PF6]
)及びアンモニウム系イオン液体(
[N1,4,4,4]
ニクスのために有力な情報となる。今後、本国
[TFSI]
)中では、どちらもC60由来のレドックス
際会議を通して得た知識を存分に活かし、日々
が4段階観測された。これら2つのイオン液体
の研究へ果敢に励む所存である。
は、粘度がほぼ同じにも関わらず、各レドック
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The Murata Science Foundation
IV.最後に
of Ionic Liquids,”Electrochemistry Communications,
本国際会議への参加を助成して頂いた村田
学術振興財団のご厚意に対して、心より感謝
致します。
Elsevier, 43, pp. 102-104, 2014
[報告書の書名・講演題目]
Hiroyuki Ueda, Katsuhiko Nishiyama, Soichiro
Yoshimoto,“Multi-step Redox Control of C60-modified
この派遣の研究成果等を発表した
Au(111)Electrode in Ionic Liquids,”4th Asia-Pacific
著書、論文、報告書の書名・講演題目
Conference on Ionic Liquids and Green Processes / 6th
[論文]
Hiroyuki Ueda, Katsuhiko Nishiyama, Soichiro
Yoshimoto,“Multiple Redox State Control of Fullerene at
Room Temperature through Interfacial Electrochemistry
Australian Symposium on Ionic Liquids(APCIL-4/ASIL6 2014), A07, Sydney(Australia)(29th
,
September
2014)
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