北信濃里山通ä

北信濃里山通信
vol.19
2015年 2月 10日 発 行
巻頭言
「オオルリシジミの保護活動と学校連携」
田下 昌志
福本 匡志
一 昨 年 、 飯 山 市 の 生 物 多 様 性 保 全 計 画 が 策 定 さ れ 、「 意 識 」、
「 自 慢 」、「 課 題 」、「 未 来 」 の 共 有 を 掲 げ 、 地 域 連 携 活 動 を 強 化
す る 方 針 が 示 さ れ ま し た 。 そ の 取 り 組 み を 進 め る た め 、「 知 ろ
う!つなごう!飯山流自然づきあいの作法」
( 右 の 写 真 )を 発 行 、
市民の方々へ生物多様性保全の啓発のほか、市内の小学生に配
布され、子供たちに飯山の自然環境のすばらしさとその保全の
た め に で き る こ と を 掲 示 、環 境 教 育 を 進 め る ね ら い も あ り ま す 。
この冊子には、井田会長始めそれぞれの執筆者の自然に対す
る想いが込められており、小学校の学習教材として活用される
ことを期待するものです。
ま た 、 2012年 に 策 定 さ れ た 第 2次 飯 山 市 基 本 計 画 に は 、 環
境教育や環境学習の推進が謳われており、当会でもオオルリシ
ジミをシンボルとした環境教育・学習を小中学校と連携してで
きないものかと模索している最中です。
他 地 域 で の オ オ ル リ シ ジ ミ 保 護 活 動 と 学 校 連 携 の 取 り 組 み と し て 、東 御 市 の「 北 御 牧 の
オ オ ル リ シ ジ ミ を 守 る 会 」で は 、会 か ら の 呼 び か け に よ り 、2003年 か ら 地 元 の 北 御 牧 小
学校理科クラブでオオルリシジミの累代飼育(種の保存)が行われています。
会 の 援 助・先 生 の 指 導 を 受 け な が ら ク ラ ブ 員 が 協 力 し て 飼 育 の 世 話 と 観 察 記 録 に 取 り 組
み 、有 意 義 な 総 合 学 習 、郷 土 教 育 、理 科 教 育 が 続 け ら れ て い る そ う で す 。ま た 、会 で は オ
オ ル リ シ ジ ミ に つ い て 理 科 の 特 別 授 業 や 、パ ネ ル 展 示 を 行 っ た り も し て お り 、会 員 の 環 境
教育への積極的な関与により功を奏していることがうかがえます。
幸 い に し て 、飯 山 の オ オ ル リ シ ジ ミ 保 護 活 動 も 周 知 さ れ て き た お か げ で 、飯 山 小 学 校 な
ど 関 心 を 持 っ て い た だ い て い る 先 生 も お ら れ る よ う で 、今 後 は 学 校 側 の 意 向 も 聞 き な が ら
方法を検討し、環境教育に寄与していきたいと考えます。
2年前から戸狩地区で行っているオオルリシジミの試行的放蝶は、
放 さ れ た 蝶 が 産 卵 す る 様 子 が 観 察 さ れ( 右 写 真 ・ 昨 年 6月 10日 の も
の )、軌 道 に 乗 り つ つ あ り ま す 。こ ち ら に つ い て も 定 着 を 安 定 化 さ せ
るため、是非、地元の住民の方々や小学生にこのような取り組みを
知 っ て も ら い 、皆 で オ オ ル リ シ ジ ミ が 舞 う 姿 を 楽 し み な が ら 、食 草・
クララの植栽など環境整備を協働して行っていければと思います。
当会の来年度事業として、これから調整を行っていきますが、学
校との連携には、平日に行う観察会の運営など、会員の協力が必要
不可欠となってきます。オオルリシジミを始め北信濃の豊かな自然
環境が子々孫々と守り伝えられるよう、みなさんの積極的な参加を願うところです。
お知らせ
「定期総会」と「いいやまの郷土食とブナ利用を考える会」の開催
本年度の当会の事業実績の承認と来年度の事業計画を協議いただくため、以下のとおり「定
期総会」を開催します。地域の方々と連携を深めながら、オオルリシジミの保全活動のほか、
生息地のカヤ場草原、ブナをはじめ森林の地域資源としての利用など、幅広い里山保全活用に
つなげたいと考えます。
会員のみなさんからも、御要望・意見をお寄せください。
総 会 終 了 後 は 、 昼 食 と し て 、 北 信 濃 の 里 山 が 育 ん だ 郷 土 料 理 を い た だ き 、「 い い や ま 食 文 会 」
の 方 々 か ら お 話 し を お 聞 き し な が ら 、意 見 交 換 を 予 定 し て い ま す 。
「 い い や ま 食 文 化 の 会 」は 今
回の会場となる「月あかり」を営まれ、郷土食の継承や地産地消の推進、子供たちへの食育活
動に取り組んでおられます。
その後は、井田会長をはじめ信州大学の教員の方々で進めている「ブナの実プロジェクト」
( 地 域 貢 献 プ ロ ジ ェ ク ト と し て 実 施 中 )を 紹 介 し て い た だ き ま す 。
「 ブ ナ の 実 」を 食 材 や 草 木 染
め の 素 材 と し て の 活 用 方 法 を 検 討 中 と の こ と で 、 当 日 は 研 究 成 果 の 一 つ 、「 ブ ナ の 実 よ う か ん 」
の試食を予定していますので、お楽しみに・・・。
里山の「食」と「地域資源」について理解を深めていただければと思いますので、是非、御
参加ください。
1
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開催期日
会 場
平 成 27 年 3 月 1 日 ( 日 ) 11:00~
「味蔵 月あかり」
飯 山 市 大 字 飯 山 2941-1( 高 橋 ま ゆ み 人 形 館 前 )
TEL 0269-67-0188
http://www.ningyoukan.net/tsukiakari/index.html
右下の地図参照
3 日程
( 1)「 北 信 濃 の 里 山 を 保 全 す る 会 定 期 総 会 」
10:30~ 受 付
11:00~ 開 会 、 あ い さ つ
議事(当年度事業報告・収支決算、
次年度事業計画・収支予算など)
12:00
閉会
(2)「 昼 食 と 意 見 交 換 」
12:00~ 昼 食
12:30~ 「 飯 山 の 郷 土 食 の お 話 し 」
「ブナの実プロジェクト」について
14:00
閉会
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参加費
1,000円(昼食費として)
申し込み方法
参 加 を 希 望 さ れ る 方 は 、 飯 山 市 公 民 館 ・ 飯 山 市 教 育 委 員 会 生 涯 学 習 課 ( TEL :
0269-62-3342) へ 2 月 2 3日 ま で に 申 し 込 ん で く だ さ い 。
活動報告など
・戸 狩 カ ヤ 刈 り ワ ー キ ン グ「 わ た し を カ ヤ 刈 り に 連 れ て っ て in 戸 狩 温 泉 ス キ ー 場 」
11月 9 日 、戸 狩 ス キ ー 場 と ん だ い ら ゲ レ ン デ に て 実 施 し ま
し た 。参 加 者 は 、井 田 会 長 の 研 究 室 の 学 生 さ ん を あ わ せ 、15
名ほど。講師に茅葺き職人でもある小谷屋根の松澤さんにお
越しいただき、カヤのお話しと刈り方のお手本をお見せいた
だいて作業を行いました。
カヤ刈りは刈り払い機を使わず、専用の鎌で行います。さ
すがに、職人の松澤さんは鎌さばきも見事で、みるみるとカ
ヤを刈り進んでいかれました。
こ こ の カ ヤ の 種 類 は 、主 に は ス ス キ の「 大 茅( オ ガ ヤ )」で
す が 、 中 に は カ リ ヤ ス の 「 小 茅 ( コ ガ ヤ )」 も 見 ら れ ま す 。
コ ガ ヤ は 草 丈 が 低 く 茎 が 細 い も の の 、し な や か で 長 持 ち( 茎
の中が空洞で、通気性がよい・・・)するそうです。
カリヤス(小 茅 ・コガヤ)
小 谷 屋 根 ・松 澤 さんの刈 り取 り
業
カヤ刈 り作 業
刈り取ったカヤは束ねて保管場所まで運搬、作
業終了近くになって雨が降り始めましたが、何と
か予定していた作業を終え、おにぎりとキノコ汁
の昼食をいただき、解散しました。
今 回 採 取 し た カ ヤ は 買 い 取 っ て い た だ き 、来 夏 、
近隣村の古民家の修復に使われる予定です。
さて、イネ科のカヤ類はやせた火山灰土でも育
ち、土壌に有機物(腐植)を供給します。一方、
オオルリシジミの食草クララはマメ科特有の空中
参加者集合写真
窒素固定で土壌に養分を供給します。そんな草種
のバランスが豊かな畑の土(黒ボク土)を作ってきたのでは・・・などと草地の歴史的な意義
についても考えるこの頃です。
・オオルリシジミ生息地管理
10 月 24 日 に 保 護 区 域 の ロ ー プ 撤 収 、11 月 15 日 に 看
板 撤 収 等 の 作 業 を 行 い ま し た 。 11 月 24 日 は 通 路 整 備 の
ほか、カヤのサンプル採取も実施、当地のカヤも利用でき
る か 検 討 し た い と 思 い ま す 。12 月 上 中 旬 の 降 雪( 12 月 と
しては平年よりもかなり多い・・・)で生息地は雪に覆わ
れ、管理作業も春まで待つこととなりました。
冬 の生 息 地 (1 月 25 日 、積 雪 約 180cm)
・ 飯 山 市 の 新 名 所 に ・ ・ ・「 新 中 央 橋 」 の 開 通 と オ オ ル リ シ ジ ミ の レ リ ー フ
飯 山 市 内 中 心 部 、 千 曲 川 に 架 か る 新 し い 中 央 橋 が 12 月 14 日 に 開 通 し ま し た 。
この橋は、県内の道路で初めて採用されたエクストラドーズドという形式だそうで、低い橋
塔 と 傾 き の 緩 い ケ ー ブ ル が 特 徴 で 、 景 観 的 に も 優 れ て い ま す 。 旧 中 央 橋 の 路 面 よ り 4m ほ ど 高
く 、 幅 3m の 歩 道 が 両 側 に あ り 、 眺 望 も 楽 し め る 設 計 に な っ て い ま す 。
南 側 の 歩 道 の 欄 干 に は 「 オ オ ル リ シ ジ ミ 」「 オ シ ド リ 」「 フ ク ジ ュ ソ ウ 」 の レ リ ー フ が 飾 ら れ
ており、通行する人たちに飯山を代表する生き物たちを知ってもらうよう配慮しています。新
中央橋が飯山市の名所となり、オオルリシジミが里山の自然のシンボルとして認知されること
を期待するところです。
新 しい中 央 橋 とオオルリシジミのレリーフ
・「 全 国 草 原 再 生 ネ ッ ト ワ ー ク 」 へ の 加 入 に つ い て
当会ではオオルリシジミの保護、生息地のカヤ場利用などの草原の保全活用を進めていると
ころですが、全国的にも草原の環境や資源的価値が見直されてきており、全国で草原再生活動
を行っている方々と連携を深め、草原再生・利活用に寄与することを目的に「全国草原再生ネ
ッ ト ワ ー ク 」 が 2007 年 に 設 立 さ れ 、 活 動 を 行 っ て い ま す 。
「 全 国 草 原 再 生 ネ ッ ト ワ ー ク 」 ホ ー ム ペ ー ジ ア ド レ ス : http://sogen-net.jp/about/
当会でも全国に発信すべきような取り組みを行っており、当会の「全国草原再生ネットワー
ク」への加入について井田会長から提案がありました。本件については総会でも諮りたいと思
いますので、御意見などお願いします。
編集後記
新年度の活動に向け、会ではイベント用バナー(垂れ幕)や新しい入会案内・リーフレット
を 作 成 中 で す 。 そ し て 、 3月 14日 は い よ い よ 北 陸 新 幹 線 が 開 業 し ま す 。 市 の シ ン ボ ル ツ リ ー と
して「ブナ」を飯山駅周辺に植栽する計画が発表され、自然豊かなブナの森の中の駅舎を想定
し て い る そ う で す 。3月 1日 の 総 会 終 了 後 は 、希 望 す る 会 員 に 植 栽 予 定 地 の 見 学 ・説 明 を 行 い た
い と 思 い ま す が 、「 ブ ナ の 森 が 育 む 信 越 自 然 郷 」 を 会 と し て も 発 信 し て い け れ ば と 考 え ま す 。
発 行 者:北 信 濃 の 里 山 を 保 全 活 用 す る 会
会長 井田秀行
事 務 局 : 〒 389-2253
飯山市大字飯山1436-1
飯山市公民館内
TEL: 0269-62-3342
FAX: 0269-62-5940
E-mail: [email protected]
編集者・事務局長:福本匡志