No38 合同株主総会

Vol.38
合同株主総会
―SCPアジア大会に進出かー
平成27年3月8日(日)
(株)翔の役員4名は東京都品川区立小中一貫校「品川学園」に集合した。
(経理
部長は都合により欠席)学校の敷地内にジュニア・アチーブメント日本の事務所や
中学生向けの生涯設計体験学習の場であるファイナンスパークが開設されている。
ここで全国のSCP実施校による合同株主総会が開催された。
今年度はスケジュー
ルの関係で学校行事や定期考査と重なった学校が多かったため、合同株主総会に招
待された学校は3校にとどまったようだ。 それでも、会場には合同株主総会の視
察にやってこられた高校の先生や高校生たちがあつまり、場内は熱気で満ちあふ
れていた。SCPで社外取締役を務められた企業の方や、ジュニア・アチーブメン
ト日本を支援しておられる企業の方々も会場の前列に陣取られ、発表を楽しみに
しておられるようだ。
ジュニア・アチーブメント日本の高橋智子様の開会宣言と発表に関する注意事
項が告げられると、いよいよ合同株主総会の発表が始まった。トップバッターは立
命館慶祥高校(北海道江別市)
。今年は「江別市をアピールする」をテーマに事業
を展開。地元の食材を使った「チーズフォンデュ」と間伐材を使った「箸」を販売。地元酪農家から乳製品
を格安で仕入れることはできたが、味付けや調理の工夫、販売場所の確保、
保健所への許可申請など苦労したようだ。
二番手は東京都立戸山高校(東京都新宿区)
。SSH指定校であり、難関大
学進学でも有名な伝統校だ。SCP実施2年目のようで、今年は1年生社長
が奮闘。ゴミを再利用したキーホルダーを開発。ただSCPの歴史が浅いた
め、学校内の共通理解がまだ十分でなく、社員に給料を支払うことが許可さ
れなかったようだ。株の出資者も81名にとどまっていたり、SSH指定校
であるために課題研究で忙しく、放課後のSCP活動に社員がなかなか集ま
らない、さらに給料が支払われないために社員のモチベーションが上がらない、商品は若者向けのキーホル
ダーであるため新宿、原宿、渋谷と販売場所を検討したものの出店料が高額すぎて確保に困ったという苦労
がある中、1年生社長が大奮闘したようだ。
休憩を挟んでいよいよ「(株)翔」の順番。20分の制限時間が事前に通告されており、時間をオーバーす
れば途中でも打ち切る、というジュニア・アチーブメント日本の厳しい条件だ。卒業式を終えてしばらくた
った 3 月 4 日に役員たちが学校に集まってリハーサルを何度も繰り返していた。5分オーバー、3分オー
バー、1分オーバーと回を重ねる毎に時間は縮まったが、早口になってしまう欠点が表面化していた。話す
言葉をいかに簡略化しながら説明するかが課題として残った。一番長く説明する青山営業部長は発表がは
じまるまでにスマホに記録したメモを何度も見ながらブツブツとつぶやいていた。
堀越社長の挨拶に始まり、中島生産部長、青山営業部長とスムーズに発表が進んだ。心配していた青山部
長の台詞も簡略化されて、すっきりとした発表となった。井上人事部長の発表が終わると、彼が経理部の発
表をそのまま引き継いだ。損益計算書と貸借対照表の数字を読み上げている途中に、終了1分前のベルの音
が鳴り響いた。一瞬、井上部長の体が固まったように見えたが、動揺を表面に見せずにそのまま最後まで数
字を読み上げた。最後は堀越社長の利益処分の提案。すでに60秒を切っている中での提案だった。途中で
打ち切られるか?と心配したが、そこは場慣れした社長。残り時間をイメージしていたのか、最後まで議案
を提案し、
「株主様のいままでのご支援、ありがとうございました!」の最後の言葉で締めくくり、役員全
員が頭を下げたと同時に終了のベルが乱打された。
『完璧だ!』授業担当者は思わず心の中で叫んだ。最前
列の社外取締役の方々も、身を乗り出すようにして発表に聞き入っているようだった。そして質疑応答。今
まで何度も厳しい質問に対応してきたので、かれらは自信に満ちた表情を
していた。
「目標が達成できなかったのは、目標が高すぎたのか、価格なのか、商品
の魅力なのか分析はどうだったのか?また売上目標が達成していないの
に、従業員にボーナスを支給したのはいかがなものか?」
「経営理念の“少
し”とは何を基準に少しなのか。理念に至った理由と会社のビジョンはど
うだったのか?」
「組織を作らない中で、指揮命令系統で工夫したところ
は?」
「委託販売の手数料は損益計算に入っているのか?」
「特別利益とは?」
「組織がないと責任の所在が
曖昧では?」など5分の質疑応答時間を超えるほどの質問が出た。堀越社長は今までにない初めての質問も
あったが、すべての質問に見事なほど落ち着いて回答した。自分たちが悩み、苦し
んできた体験に基づく回答だった。会場の社外取締役の方からは「楽しく発表を聞
かせて頂きました。
」とお褒めの言葉も頂戴した。
ジュニア・アチーブメント日本の理事、高木正明様からSCP修了書が手渡され
たあと、場所を変えて意見交換会。参加している高
校生や社外取締役、教員が3つのグループに分かれ
て発表ではいえなかったエピソードなどの情報交換
を行った。会社内でこじれた人間関係を修復する上での苦労話、商品生産に
まつわる苦労話など、リラックスしながら意見を交換した。
すべてのプログラムが終了し、軽食を囲んでの懇親会でSCP各校の役員
たちとの交流も深めることができた。その懇親会で(株)翔の役員たちが 2016
年2月に開かれる「SCPアジア大会」に参加してはどうか、という話がわ
いてきた。
「SCPアジア大会」はアジア各国のジュニア・アチーブメント支部が持ち回りで行っている大会で昨年
度はタイで行われた。
(次回開催国は未定)タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールなどのSCP
参加者が英語で4分間プレゼンテーションを行い、各社ブースを設けて自社商品をPRする場も設けられ
る。審査員にPRするパフォーマンス度も重要のようだ。渡航費や滞在費は無償で招待され19歳まで資格
があるので、かれらが大学生になっても参加は可能だ。ジュニア・アチーブメント日本の黒木様から兵庫県
立大附属は参加する意思はあるか?と問われ、堀越社長は「意思有り」の返答をおこなった。但し、まだS
CP活動中の学校もあるのですべての学校が終了してから
代表を選考するという。
もし、(株)翔が日本代表に選出されれば、SCP実施9年
目にして初めての海外進出だ。夏休み前に代表校が決定し、
翌年2月まで事前準備に取りかかる。合同株主総会が終了
してほっとしたのもつかの間。(株)翔の役員たちは海外進
出に向けて新たな闘志を再び燃やしながら、会場をあとに
した。
(文責 坂本好明)