めまい 目次 めまいの原因・種類 めまいの診察(問診・身体診察・検査) 末梢性めまいの症例 中枢性めまいの症例 まとめ めまいの原因 めまい=頭か耳?ではない! 他にも、低血糖、起立性低血圧、頚椎症、疲労やストレスなど原因は様々。 めまいの種類 末梢性めまい(内耳) 40% 中枢性めまい(小脳・脳幹) 5% 失神性めまい(貧血や丌整脈など) 25% 心因性めまい 15% 原因丌明 15% 中枢性めまい めまいを主訴とする患者の中で5%ほどとされるが・・・ しかし、見逃したくない疾患は多数存在。 ex 小脳出血・梗塞 脳幹出血・梗塞 wallenberg症候群 椎骨脳底動脈解離 等 中枢性めまいのほとんどが脳血管障害による。 →高血圧、糖尿病、脂質異常症などがrisk factor めまいの診察 病歴聴取(めまいの性状、持続時間、起きた状況等) 身体診察(脳神経学的所見、神経学的所見等) 検査(血液検査、心電図、頭部CT、頭部MRI等) →帰宅させても良いか否か!?致死的疾患ではないか!? 病歴聴取 めまい診断の大きな決め手は病歴を聴取すること。 病歴聴取で最重要なのはめまいの発症様式、経過 『突然』 『持続』・・・中枢性めまいの可能性を考慮 心疾患の既往 動悸や胸痛などの前駆症状 黒色便 食事状況 生活状況 など 病歴聴取 めまいの性状 ①回転性めまい(ぐるぐる回る、など) 内耳(前庭)・小脳・脳幹 ②浮動性めまい(ふわふわする、など) 視覚・脊髄路・神経筋・内耳(前庭)・小脳・脳幹 ③失神性めまい(目の前が真っ暗になる、など) 心血管性、起立性低血圧、血管迷走神経反射 注意点 回転性めまいと訴える場合でも、内耳(前庭)由来と結び付け ない。→中枢性めまいのこともある。(特に小脳梗塞) 小脳、脳幹病変では、回転性めまい、浮動性めまい、失神性 めまいのいずれをも訴えることがある。 身体診察 中枢(小脳・脳幹)には体の平衡に 関する神経経路の他、手や足の運 動、感覚など様々な神経経路が存 在する。 末梢(前庭)には近くに聴覚の受容 器(蝸牛)がある以外に他の神経経 路はない。 中枢性めまいは出血・梗塞の範囲によるが、めまい以外の神経症状を伴っている。 よって神経所見をとって異常所見を見つけることが大切。 身体所見 脳神経学的所見 眼球運動 眼振 顔面知覚 額の皺寄せ・睫毛徴候・口角挙上 聴覚 カーテン徴候 舌の偏移 神経学的所見 四肢麻痺 上肢・下肢バレー徴候 指鼻指試験 膝踵試験 等 急性の心血管性疾患や脳血管障害が否定できるまでは仰臥位を保った 状態で行う。 眼振 眼振:律動的に動く眼球の丌随意運動 自発眼振 注視眼振 頭位眼振 頭位変換眼振 Frenzel眼鏡 前庭(耳鼻科疾患)による病的な眼振は 固視により抑制される。 患者を非注視にさせて病的眼振の性状 を調べることができる。 自発眼振 患者に何の刺激も不えていない状態で自発的に起こる眼振。 正面を注視してもらい眼振が減弱するか増強するかで末梢(前庭)由来か 中枢(小脳・脳幹)由来か判別できる。 正面注視眼振 自発眼振 a a 減弱:末梢性(一側前庭障害) b b 増強:中枢性 ←:右向き眼振 ◯:眼振なし 注視眼振 1つの指標(検者の指)を患者から50cm程度離して上下左 右に動かして患者の目の揺れを見る。 患者の顎等を固定して顔を動かないようにする。 上方注視 右方 注視 正面注視 下方注視 左方 注視 ←:右向き眼振 →:左向き眼振 ↑:上向き眼振 ↓:下向き眼振 ◯:眼振なし 注視眼振の種類 どういう眼振が見られたら中枢性めまいが疑わしいか? 注視性の方向交代性眼振 (注視により方向が交代する眼振:左向き注視で左方向に、右向き注視で 右方向に眼振が出現する。病変が広範囲であると、上下方向にも同様の 現象が起こることがある。) 注視眼振の種類 他にも・・・ 純回旋性 下方垂直性 上方垂直性 中枢性のときは様々な性状の眼振が起こりうる! 注視眼振の種類 ちなみに、末梢性(前庭由来)のときは・・・ 定方向性の眼振 方向固定性(右or左) 小脳由来では様々な性状の眼振が起こりうる。 前庭由来で眼振が起こるときは定方向性。 頭位眼振 Frenzel眼鏡をつけてゆっくりと仰臥位、左右に頭を傾ける左右下頭位、頭を後ろに 反らせて(懸垂)正面頭位、懸垂状態で左右に頭を傾ける懸垂左右下頭位と頭を 動かして、眼振を観察する。 懸垂 懸垂頭位 右下頭位 懸垂 左下頭位 右下頭位 左下頭位 仰臥位 頭位変換眼振 Stenger法:Frenzel眼鏡をつけて、座位から懸垂頭位、懸垂頭位から再び座位へと急 速に頭位を変換させたときの眼振を観察する。 Dix-Hallpike法:Frenzel眼鏡をつけて、首を右もしくは左に曲げた状態で座位をとらせ、 懸垂右もしくは左下頭位と急速に頭位を変換させたときの眼振を観察する。 脳圧亢進や脳出血、頚椎損傷などの危険があると考えられるときは行わない。 めまいの診察 検査 血液検査・・・貧血、低血糖、脱水等 心電図・・・丌整脈 頭部CT・・・脳出血 頭部MRI・・・脳梗塞 頭部CT 脳出血に対して感度が高い。 急性期脳梗塞は❌ 神経所見があるとき 患者の協力が得られず神経所見が十分にと れないとき 神経所見はないが、患者の自覚症状が軽快 しないとき 患者に頭には何も異常はないと安心させる 理由づけにもなる MRI拡散強調画像(DWI) MRIの拡散強調画像(DWI)が脳梗塞急性期に有用! DWIなら発症後30分程で高信号(白)になりうる。 CTで脳出血見られず、神経症状あるとき 脳幹部分の病変を否定したいとき (CTでは丌得手な脳幹部分の検出にも優れている) 超急性期:発症〜24時間以内 急性期:24時間〜1週間 亜急性期:1週間〜1ヶ月 慢性期:1ヶ月〜 MRI拡散強調画像(DWI) 拡散強調画像(DWI)は発症後3時間以内では感度は73%程度とされて いる。 →つまり、発症後間もない脳梗塞を疑いMRIをとっても27%は偽陰性と なってしまう。 中枢性めまいの原因となる脳幹部の梗塞では偽陰性率が更に高いとされ る。 よって、画像上問題はないが、患者の自覚症状改善せず、神経所見があ り、中枢性めまいが否定できないときは脳神経外科にコンサルトをするべ き。 帰宅可能かどうか? ①歩行可能かどうか ②神経所見を丁寧にとったかどうか ③めまいの原因として中枢(小脳・脳幹)、末梢(前庭)以外も考 慮したかどうか 受診時にめまいが消失、神経学的所見も(恐らく)ない場合は? まずは病歴の確認。現時点での神経所見の評価。 一過性脳虚血発作や狭心症、丌整脈などによる失神性めまいの 可能性を考慮。 丌整脈などによる失神性めまいである可能性が否定できない場 合、循環器科へのコンサルトが必要。 症例① 70代 女性 主訴 回転性めまい 現病歴 20XX年X月XX日朝6時頃起床後トイレに行き座っている際に 回転性めまいを自覚。横になって安静にしてもめまいは持続、 次第に嘔気も出現し、近医を受診。 回転性めまいが軽快せずずっと持続するということで小脳梗 塞の疑いあり、当院精査目的に紹介搬送。 既往歴 高血圧 糖尿病 腰部脊柱管狭窄症 腰椎すべり症 JCS 0 BT 36.2 BP 185/93 HR 75 SpO2 95%(room air) 頭痛(特に後頭部の丌快感)の訴えあり このようなめまいは今回が初めて。 本日朝はめまい、嘔気で食事摂取できず。 昨日夕はいつも通り摂取。 黒色便 なし 眼振 右方、上方注視時に右に急速相の眼振あり 構音障害 なし 回内回外試験 np 指鼻指試験 np 膝踵試験 np 蝸牛症状 左耳鳴り(ただし数十年前から自覚、今回増悪はなし) 心電図 洞調律 整 ST変化なし 頭部CT 明らかな脳出血見られず。 拡散強調画像 ADC map 発症5時間後明らかな梗塞巣は検出できず。 診察、検査後めまいの自覚症状改善。 神経所見も中枢性を疑わせる所見なし。 安静時にはめまいなくなったが、体動時にめまい、嘔気の残存 あり。右向きの注視性眼振の残存あり、末梢性めまい疑われ 同日耳鼻科紹介。 症例② 60代 男性 主訴 回転性めまい 現病歴 20XX年XX月XX日朝5時に起床した際には異常はなかった。再 び就寝し、朝9時に再度起床した際に回転性めまい、嘔気、体全体 の倦怠感を自覚。口の周囲の痺れも併発。 次第にめまいが激しくなり、動けなくなり当院に救急搬送。 既往歴 高血圧 脂質異常症 糖尿病 JCS 0 BT 36.0 BP 186/119 HR 77 SpO2 100%(room air) 嘔気 嘔吐(+) 頭痛 なし 指鼻指試験 左稚拙 膝踵試験 左稚拙 眼振 方向交代性に全方向 対光反射 両側 prompt 顔面知覚 左右差 なし 顔面神経麻痺 なし 聴覚 左右差 なし カーテン徴候 偏移 なし 構音障害 あり 舌の偏移 なし 心電図 洞調律 整 ST変化なし 頭部CT 明らかな脳出血は見られず。 拡散強調画像 ADC map 発症1時間後明らかな梗塞巣は検出できず。 拡散強調画像 拡散強調画像 発症1時間後延髄下部外側に梗塞巣認める。 アテローム性血栓性脳梗塞(Wallenberg症候群)と診断。 アルガトロバン、エダラボン投不開始。 まとめ 回転性めまいが持続、ないし増悪する2例 (末梢性、中枢性) 症例①(末梢性めまい) 回転性めまいは座っているとき、かつ持続 眼振の方向は定方向性、その他の神経所見なし 次第にめまいの自覚はなくなる 症例②(中枢性めまい) 回転性めまいは起床時、その後増悪傾向 眼振の方向は注視方向性、神経所見著名 めまい軽快せず まとめ めまいの患者がきたとき・・・ 中枢性を否定できないとき安易に帰さないことが大切 神経症状陽性 中枢性疑う 自覚症状増悪 神経所見丌明 中枢性の可能性は残っている 最後に めまいを訴える患者の中で中枢性めまいは5%程だが、積極的 に否定しにいく姿勢が大切。
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