安否確認システムの出席確認への応用 - 岩手県立大学ソフトウェア情報

安否確認システムの出席確認への応用
Applying of the safety confirmation system to attendance confirmation
コンピュータアーキテクチャ学講座
0312011053 齊藤 晴樹
指導教員: 佐藤裕幸
1.
1.1.
はじめに
研究背景
平成 24 年度に行われた本校の避難訓練では,4 箇
所の避難場所で紙ベースによる安否確認が行われた.
しかしこの方法では,訓練経験に左右される集計時
間や,安否状況の把握が困難である等の問題点が挙
げられる.
平成 25,26 年度に行われた避難訓練においては,
web 上の安否確認システムで安否情報を登録するこ
とで安否確認を行っていた. この確認方法は,電話
回線等を用いたインターネット インフラが利用出来
る環境下であれば 問題は無い. しかし , 災害の規模
が大きく, インターネット インフラを利用できなく
なってしまった場合, 平成 25,26 年度の安否確認の方
法は取れない. その場合, 安否確認を紙ベースで行
わなければならないので , 平成 24 年度における問題
点を解決したことにはならない.
1.2.
先行研究
先行研究 1) では ,IC を搭載した本校の学生証に着
目し ,NFC( Near Field Communication )を用いた
安否確認システムを開発した. NFC を用いて学生証
をかざすだけで安否確認を行える機能を持たせるこ
片町健太郎
低いといざ 災害が発生し利用しようとしたときに充
電が満足に行われていない等のトラブルの発生が予
想される. そこで , 本研究で開発する安否確認シス
テムは , 安否確認に加えて出席確認も行える様にす
る. 出席確認も行えるようにすることで , 普段から
利用することが出来る為, 充電が頻繁に行われたり,
授業中であれば端末を取りに行く必要が無く災害発
生時にすぐ 利用可能な状況になる. 加えて, 日頃か
ら出席確認の作業を行うことにより, ユーザである
教員が操作方法に習熟して, 安否確認の操作も戸惑
わずに出来るようになる.
また, 別のアプ リケーションを用いて行っていた
他の端末との通信もシステムで行える様にする.
以上のことから , 本研究では以下の 5 項目を満た
す安否確認システムの構築を目的とする.
1. インターネット インフラを利用できない状況で
も利用できる
2. 訓練の練度によらず安定して素早い安否確認を
行える様にする
3. 安否状況の確認を容易にする
4. 安否確認だけでなく, 出席確認も行える様にする
5. 他のアプリケーションに頼らないで端末間通信
を行える様にする
とで , 紙ベースでの安否確認の方法に比べて高速化
を実現した. また, システムに全体の集計人数の把
握, 安否確認済みの学生あるいは未確認の学生を特
定する機能を持たせることで安否状況の確認の容易
化に成功している. ただし , 安否情報の共有のため
に Bluetooth を用いてファイル転送を行う外部アプ
リケーションを利用していた.
1.3.
研究目的
2.
システム
先行研究で採用していた NFC を本研究でも採用
する. 安否確認, 出席確認は学生証を端末にかざし
てデータ通信ですることで行うものとする.
本システムはインターネットを使用せず端末間に
おいて双方向通信出来ることが条件である. そこで ,
本システムでは Android Beam によって通信を行う
紙ベースで行われる安否確認では , 確認に時間が
ものとする. この通信方法は , 送信する相手に関す
掛かる, 集計や特定が困難である等の問題点がある.
る設定をする必要がない. つまり, 送信側の端末と
また,web サイトで行う安否確認では , 災害規模が想
受信側の端末を近付けるだけで , 端末が互いを認識
定を上回った際に利用出来ない可能性があるといっ
し 自動的にデータが送信される. NFC の メリット
た問題点がある.
であるかざすだけで通信が行えることから ,Android
先行研究ではこれらの問題点を解決する為の安否
Beam を通信手段として利用する.
確認システムを開発したが , 利用されるのが災害発
本 研 究で 使 用 す る 端 末は , 先 行 研 究と 同じ く
生時, 避難訓練時と限定されてし まう. 利用頻度が
nexus7 とする. これは ,NFC の機能を持ち, 連続使
用時間が長く, 小型の端末であるため持ち運びが楽,
などの理由からである.
2.1.
システム概要
2.2.
要求仕様
2.2.1 動作する OS の条件
androidOS4.4 の環境上で動作するものとする. 主
開発言語として java を用いる.
2.2.2 機能要求
先行研究の機能に加えて以下の機能を持つ.
• 安否確認の機能要求
– 出席情報と安否情報の照合を行うことで
授業出席者で逃げ 遅れがいないか確認出
来る機能を持つ.
– 他の端末と安否情報を共有することが出
来る機能を持つ.
図 1 システム利用イメージ
• 出席確認の機能要求
– 岩手県立大学の授業の出席確認に必要な
表 1 ファイルの送受信の実行時間
機能を持つ.
– 出席情報を表示/修正する機能を持つ.
– 出席情報を csv 形式で保存出来る機能を
持つ.
3.
評価実験
機 能 要 求に 従って 作 成し たプ ログ ラ ムを 用い
て,Android Beam によるファイルの送受信の実行
時間を計測して評価する. これは安否情報共有の際
に行うファイルの送受信にどの程度の時間が掛るか
を検証し 評価することを目的とする. また, 安否情
報共有の際のシステム利用イメージを図 1 に示す.
3.1.
最小値
平均値
最大値
本研究 (秒)
7.7
8.1
8.5
先行研究 (秒)
17.5
18.8
20.2
まとめ
本研究では , 安否確認を高速化するシステムを , 出
席確認も行える様に開発した. 普段の授業でも利用
出来るため, 教員が操作方法に習熟してより高速な
安否確認が行えることが期待できる.
また,NFC や Android Beam 等の機能を利用した
ことによって研究目的で挙げた 5 項目を満たすシス
テムの構築が出来た.
実験内容
Android Beam によるファイルの送受信のみの実
行時間の計測は ,2 台の端末を用いて行う. ファイル
サイズは 78.19KB( 本校に在籍する 2645 名の安否
情報)でファイルの送受信を 10 回行って,1 回毎に
実行時間を計測する.
3.2.
4.
通信時間
実験結果
本研究と先行研究のファイルの送受信に掛った実
行時間を表 1 に示す.
表 1 から , 本研究の通信方法は先行研究よりも 2
倍の時間でファイル通信が行えることが分かった.
また, 先行研究で外部アプ リケーションを使って
いたときと比べて送信相手に関する設定が要らない
ため, 操作が簡略になった.
参考文献
1 )岩崎 雄太:学内安否確認システムの開発, 岩手
県立大学ソフトウェア情報学部卒業論文( 2013 ).