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平成 27 年度
第 13 回スポーツ講座
平成 27 年 11 月 18 日
テーマ「野球肘」
講師:島村
安則
先生
(岡山大学病院
整形外科)
報告者:岡山大学文学部 1 年
須藤弘明
内容
今回のスポーツ講座では球技の中でも上肢を痛めやすい野球に焦点を当てて、その中で最も多
いケガの一つ「野球肘」について岡山大学病院・整形外科の島村安則先生に解説していただきま
した。まず、
「野球肘」とは文字通り野球選手が投球動作において肘に痛みを感じるもので、最悪
の場合、選手生活を断念せざるを得なくなることもあるスポーツ障害の一種です。ひとえに野球
肘と言ってもいろいろな種類があります。例えば、肘内側裂離骨折、内側靱帯断裂、肘頭骨端線
閉鎖不全、離断性骨軟骨炎、関節内遊離体などです。このように具体的な病名を特定するために
はまずどこが痛いのかをはっきりさせる必要があります。重要なのは“手のひら”ではなく、
“指
先“を使ってピンポイントで示すことです。他にもいつからなのか、キャッチボールで痛いのか、
それとも普段の生活から痛いのか、などこうしたことは医師がいなくともセルフチェックできる
ことなのでぜひやってほしいとおっしゃっていました。もう一つできるのは他人に見てもらった
り、鏡で見たりしながら左右で関節の可動域が異なっていないかを確かめることです。初期の野
球肘はほんのわずかな差しかないことが多いのですが、これを見つけるか否かでその選手のこれ
からが大きく変わってきます。
専門的な内容として、肘の内側と外側でそれぞれ代表的な障害があります。内側には MCL 停止
部に結節部裂離骨折、肘頭内側に肘頭疲労骨折、肘部管に尺骨神経障害、MCL 起始部に MCL 損
傷、屈筋・回内筋群起始部に内側上顆炎、外側には肘頭窩に遊離体、上腕骨小頭外側に OCD、肘
頭先端に肘頭骨棘、疲労骨折、肘頭外側に輪状滑膜壁、遊離体、外側上顆に外側上顆炎などが代
表的な障害です。これらを診断するために外反ストレステスト(肘屈曲 30°、回外位、患健側比
較)、Milking test(肘深屈曲位、回外位、患健側比較)MVST(moving valgus stress test)、Continuous
Grip Test〔CGT〕
(全力で左右 5 回ずつの握力測定)などの疼痛誘発テスト、単純レントゲン撮影、
CT、MRI、エコーなどによる画像診断も行います。
外側型野球肘で非常に多い離断性軟骨炎〔OCD〕
(OsteoChondritis Dissecans)についてですが、
野球での発生が多いものの、サッカー、卓球、バイオリンなど楽器でも報告されています。主な
原因は上腕小頭骨への血流障害で、症状としては初期に投球後に短期間で消退する程度の肘痛、
肘外側部痛、可動域の制限など、終末期には安静時痛や腫脹からなる変形性関節症などがありま
す。また、OCD は見つかりにくいことで知られています。初期には無症状で投球後に肘痛があっ
ても翌朝にはとれていたり、少し違和感があるが投げれたりするためこれらの異常に気付かない
まま悪化していることが多いそうです。OCD を治す方法として骨釘による固定術、モザイクプラ
スティー、肋軟骨移植術などがありますが、できるだけ手術をしなければならない段階になる前
に早期発見してほしいとおっしゃっていました。
感想
私も実は小学校高学年から高校まで野球をやっていました。しかし、中学で野球肘になり以降
はだましだましプレーしていました。もし、早くにこうした野球肘に関する正しい知識を知って
いたら、パフォーマンスが向上していたかもしれないと思うと少し残念です。今回の講座で早期
発見が一番大切だということが分かったので、子どもを見てやることがあれば、そうしたことに
注意してあげたいと思いました。
島村先生の講演風景