シンセティックジェットの研究に活躍 学生からも使いやすいと好評 活用

活用事例インタビュー ― ソフトウェアクレイドル
工学院大学 工学部 様
シンセティックジェットの研究に活躍
学生からも使いやすいと好評
工学院大学の流体機械研究室では、流体特性の理解に熱流体シミュ
レーションソフトウェアSCRYU/Tetra®を活用している。実験と計算
の両輪で進める同研究室において欠かせないツールであるとともに、
使い勝手やサポートの柔軟さにより学生の研究への関心を高めるのに
も役立っているという。
▲ 工学院大学 新宿キャンパス
工学院大学 工学部 機械工学科
http://www.kogakuin.ac.jp/another/hp/ge/
設立
学校種別
教授
所在地
1949年
私立
佐藤 光太郎
東京都新宿区
工学院大学 工学部 機械工学科の流体機械研究室では、小型化・簡易化が可能なアクチュ
エータで生成可能なシンセティックジェットをはじめ、軸流ファンやヒートポンプといった
流体機械の流動特性に関する研究に取り組んでいる。同研究室の佐藤光太郎教授に、研究内
容やSCRYU/Tetraの活用例、同ツールを用いる場合のメリットなどについて話を聞いた。
通常のジェットエンジンでは、前方から空気を取り込んで燃焼室に送り込み、燃料を燃や
して後ろにジェットを噴出し、ターボファンエンジンでも燃焼室下流のタービンで前方にあ
るファンを駆動し、後方へ噴射することで推力を得て飛んでいく。ジェットエンジンは大型
化は得意で、例えばボーイング777のエンジンのファンは直径3mにもなる。一方で小型化
は苦手であり、現在研究中のものでも数cm程度が最小だという。
シンセティックジェットは流体を前方から吸入して後方に放出するのではなく、振動に
よって渦対を生成し、下流にジェットと同様の流れをつくり出す。駆動源にはスピーカーや
写真1 工学院大学 工学部 機械工学科 教授
博士(工学)
佐藤 光太郎 氏
ピエゾ素子、ダイアフラム、プラズマなどを利用する。例えば段ボールで作る空気砲は側面
を叩くと穴から渦輪が出るが、それを周期的に放出するイメージだ。渦輪は周囲の流体を
巻き込みながら、自己誘起によってより速く進もうとする。それを周期的に放出すると輪がたくさん連なり、速度分布が噴流構造、つ
まりジェットと同様の流れを得ることができる。
シンセティックジェットでは流体の出入口(スロット)の時間平均流量はゼロとなる。噴出時には指向性を持つ噴流となるが、吸引
する時は指向性を持たない。そのため吸引の運動量はカウントしなくてよくなり、噴流形成にいたる。
この方式の利点の一つは、小型化が可能ということだ。駆動源はスピー
カーやイヤホン、インクジェットのインク吐出機構といった振動を発生
するものであればよい。同研究室ではスロット幅0.3のシンセティック
ジェットも研究しており、原理的にはさらなる小型化も可能だ。外部か
らの非接触エネルギー供給も可能であり、電池などを搭載しなくても動
かすことができる。これも小型化の上でメリットとなる。もう一つの利
点は、ジェットエンジンのファンなどのように機械的に動作する箇所が
少ないことである。これは耐用年数やメンテナンスの点で非常に有利と
なる。
写真2 佐藤教授と学生の皆さん
活用事例インタビュー
ばならない。こういったものを輸送する
場合は、効率は劣るが触れる部分に駆動
部がないジェット方式が有効だ。シンセ
ティックジェットは駆動部分や外部に触
れたりすることがない。佐藤氏らはシン
セティックジェットを使って、どういう
振動条件などであれば最適に送液できる
かなどを研究しているそうだ。
図1 スピーカー駆動式シンセティックジェット装置
下部にスピーカーがあり、スロットから手前に
ジェットが噴出される
図2 スモークワイヤ法によるシンセティック
ジェットの可視化観察例
スピーカー方式で実験と解析を回す
流れの向きのコントロールも目指して
同研究室の基礎研究の一つが、スピー
方向をコントロールできれば、装置の簡
カーを利用したシンセティックジェットであ
る。図1の装置の下部にスピーカーが入っ
いるという。周波数の変化のみで流れの
易化にも貢献する。ここでも実験とともに
SCRYU/Tetraを活用しながら研究を進め
ており、スロットで振 動 流が生 成される。 ているそうだ。
スロット幅は5㎜である。図2が煙を入れて
可視化した図、図3がSCRYU/Tetraで解析
を行った図である。さらに出口からの各距
離における流速について実験とシミュレー
ションを比較した結果が図4である。 実験
とシミュレーションで、流速の大きさや位
液体と駆動機械が直接触れない用途
にも
シンセティックの応用例として佐藤氏
らが研究しているのがポンプ装置である
相もほぼ一致していることが確認できる。
(図5)。通常のポンプは羽根車が流体と直
さ ら に 同 研 究 室 で は、 周 波 数 に よ る
液や食品だとベアリングの潤滑油がどう
接接触して送液する。その際、流体が薬
いう影響を及ぼすのかにも注意しなけれ
カプセル内視鏡などにも応用が可能
シンセティックジェット駆動の応用先
の一つとして想定されるのが、カプセル
内視鏡だという。現在、自分で姿勢制御し、
推進力を持つ自走式カプセル内視鏡も研
究されている。現在研究されているのは、
非接触で外部から磁力を変化させ尾びれ
を動かすタイプだが、これをシンセティッ
クジェットに置き換えるための基礎的研
究にも取り組んでいる。
一方、シンセティックジェットは自動
車の抵抗を減らすのにも使われていると
いう。車体から流れの剥離が起きると抵
抗になるため、ジェットを噴出して強制
的に流れをボディに付着させ、剥離点を
後ろにずらすという。
シ ン セ テ ィ ッ ク ジ ェ ッ ト は15年 ほ ど
前から本格的に研究されはじめた現象で、
それ以前は音響流と混同して議論されて
きたと佐藤氏は言う。駆動部がないこと
や小型化が可能なことにより、これから
いろんなところに使われていくだろうと
いうことだ。
図3 シンセティックジェットの数値解析例
振動周波数20Hz、スロット幅5㎜、代表速度毎
秒3m/s
速度ベクトル図(上)、圧力分布図(中)、渦度
分布図(下)
図4 実験結果と数値解析結果の比較
流速変動の振幅や位相はほぼ一致している
図5 シンセティックジェットを利用したジェットポ
ンプ装置
活用事例インタビュー
当たり前に使われる軸流ファンで
予想外の挙動
佐藤氏らは軸流ファンの流体特性につ
いても研究している。電子機器に組み込
まれたりされるような汎用ファンは、一
定の理想条件の元で開発される。だが、
「理
a
想的でない状態でも、良い性能を発揮す
るようなファンがあってもよいのではな
いか」(佐藤氏)ということから研究を始
めたという。
実際のところ、ファンが理想的な環境
で使用されていることはあまりないとも
いえる。コンピュータであれば壁際にず
らりと並べられたり、換気扇のフィルタ
があまり交換されないまま使われること
もあり得る。自動車の空調など組み込み
専用品を除けば、通常はそれぞれの状況
に専用のものを開発すると割高になって
しまうため、汎用品を使わざるを得ない。
そこで障害物をどの距離まで近づけられ
るかのデータがあったり、障害物があっ
ても性能低下を最小限にするようなファ
ンがあらかじめあれば便利だろうという。
そのような研究を進めていく中で、想
定外の振動や、出口に障害物があった方
がよく流れる、また入り口に障害物があ
ると逆流が発生するといった「非常識な」
(佐藤氏)現象が見られたという。
図6は想定外の振動が起こった際の条
件で解析した例だ。図6(a)は直径130㎜の
ファンを2,500rpmで回転させ、ファンか
ら5㎜離れた位置に直径320㎜の円形障害
物を置いた場合の、翼表面圧力分布と速
度ベクトル図で、図6(b)は障害物表面の
圧力分布図、およびファンと障害物の中
間における速度ベクトル図である。圧力
分布をみると、周方向に圧力の高い部分
と低い部分が交互に並ぶようなセル構造
の擾乱が発生していることが分かる。そ
してこの擾乱はファン周速の0.1から0.2
倍程度の速さで回転している。不安定流
れははじめは実験によって見つかったが、
b
図6 (a)ファンから20㎜離れた位置に直径320㎜の障害物を置いた場合の、翼表面の圧力分布と速度ベク
トル分布図 (b)障害物上の圧力分布図および、ファンと障害物の中間位置における速度ベクトル図
SCRYU/Tetraによっても再現できたこと
会に参加したり、特殊な使用方法に関す
から、実験装置固有の振動ではなく、一
る質問にも柔軟に対応してもらえたりと
般的に発生し得る現象だということが分
助かっているとのことだ。
かった。小型のファンなら騒音や寿命だ
けの問題だが、大型ファンになれば、ベ
アリングが焼き付いて壊れるような大事
今後は気液二相流や連成に取り組み
たい
故にもつながる可能性があるだろうと佐
藤氏は言い、メカニズムになどついて詳
今後は、気液二相流や、液体と弾性体
しく研究中である。
の 連 成 解 析 な ど に 取 り 組 み た い と い う。
気液二相流としてはヒートポンプのコン
学生が流体力学のおもしろさを感じ
られるツール
プレッサ下流の流れ場について研究して
おり、冷媒中に混ざったオイルミストの
分離メカニズムを解明したいという。エ
研究室では、かつては他社製品を使用
アコンなどのヒートポンプでは冷媒に混
し て い た も の の、 操 作 の 難 易 度 が 高 く、 ざったオイルを遠心力によってきちんと
またサポート料が高額であることから利
分離できているが、詳細な分離メカニズ
用者が限られていた。そのため思い通り
ムは実は分かっていないという。原理に
の解析ができる状態ではなく、学生から
基づいた設計ができるようになれば、開
も 不 満 の 声 が 上 が っ て い た そ う だ。 そ
発期間の短縮や高性能化などにつなが
ん な 中、 ソ フ ト ウ ェ ア ク レ イ ド ル か ら
る。またヒートポンプのコンプレッサは
SCRYU/Tetraの 概 要 を 聞 き、2002年 ご ろ
10,000rpmにもなり、場合によっては運
同ツールを導入することにした。実際に
転中の事故にもつながる。連成解析が可
使用してみると解析結果が満足であるこ
能であれば、危険な周波数などを予め調
とはもちろん、サポートが丁寧であるこ
べ、その周波数は除いて運転するなど安
とから学生は短時間で自由に扱えるよう
全面に役立てたいということだ。
になり、今では奪い合って利用するよう
な状態になったという。特に研究室でツー
佐藤氏の研究室では実験と解析の両輪
ルとして使う場合には、「学生から評判が
で流体特性の研究を進める中で、効果的
いいことが一番重要」だと佐藤氏は言う。 にSCRYU/Tetraを利用していた。操作の段
ツールの使い勝手がよければ、ツール操
階で手間を取られずに、流体の可視化や
作などに時間を取られず、本来の研究の
検証を行えることから、SCRYU/Tetraは学
方に力を入れられる。また比較的容易に
生に対する研究のおもしろさを伝えるこ
可視化できることによって、流体研究の
とへの道案内にも一役買っているようだ。
おもしろさにも触れることができる。学
今後も研究室からどのような研究成果が
生はソフトウェアクレイドル主催の講習
生まれるのか楽しみだ。
関連製品のご紹介
SCRYU/Tetra®は複雑な形状の熱流体解析を簡便に行うことをコンセプトに設計した
ソフトウェアです。多くのCADネイティブデータを含む形状データに対応するイン
ターフェースを備えており、条件設定においても、ウィザードに従い、対話形式で
設定していくだけとなっています。また、従来難しいとされていたメッシュ作成に
おいても、自動化、高速化などさまざまな工夫が施されたメッシャーを有しており、
初心者の方から解析専任者の方まで、多くの方にご利用頂けます。
● この記事に関するお問い合わせは下記まで。
株式会社ソフトウェアクレイドル
本社
〒530-0001 大阪市北区梅田3-4-5 毎日インテシオ
Tel: 06-6343-5641 Fax: 06-6343-5580
東京支社
〒141-0032 東京都品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎ウエストタワー
Tel: 03-5435-5641 Fax: 03-5435-5645
Email: [email protected]
Web: www.cradle.co.jp
※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本パンフレットに記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本パンフレットに掲載されている製品の内容・仕様は2015年4月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。
また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。
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2015.12