久万山だより第1号

久万山だより No1
中予山岳流域林業活性化センター
ごあいさつ
このたび、久万高原町中予山岳流域林業活性化センターでは、久万林業の更なる発展と
域内外の皆様との森林を通じた交流を促進するために情報誌を発刊することといたしまし
た。この情報誌では、活性化センターの取り組みや森林に関わる様々な情報をご提供させ
て頂きたいと考えております。
トピック1「林内作業車をつかった木質バイオマス搬出について」
全国各地で木材(木質バイオマス)を燃料とした発電所が建設されています。四国島内
でも高知県や徳島県をはじめとして、愛媛県でも建設が計画されており 2018 年の稼動を
予定しています。
一方で木材を燃料として冷暖房を行う取り組みにも注目が集まっています。
「木質バイオ
マスの熱利用」という取り組みです。この方法では、木材を発電に使用したときと比べて、
熱の利用が効率的に出来ます。発電では熱量全体の 20%程度しか使用できませんが、熱利
用であれば 80%程度の利用が可能です。
特に標高が高く寒冷な久万高原町では、木材を燃料とした暖房は、石油や電気といった
今までの方法と比較して、安定的に安価で熱を利用できる方法といえます。また、石油や
電気で熱を作る場合、燃料は海外から輸入されることになります。つまり、せっかく稼い
だお金を地域の外に支払うことになるわけです。対して、地元で育った木材の中で使い道
の無いものを燃料として使用すれば、
「ゴミとして捨てていた残材」が「燃料としての価値」
を持ちます。
また、愛媛県は全国有数の製紙工場群を東予地域に抱えています。現在、製紙業界では
「国産材チップ」に対する需要が高まっており、この需要も見逃すことは出来ません。
こうした動きの中で、国産材の木質チップ需要が高まりを見せつつあります。久万高原
町内でも、愛媛県森林組合連合会や今治加工が林地残材の買い付けを始めています。
しかし、今まで「お金にならない」
「お金になっても合わない」という理由で山において
きた残材が本当に「儲かる」のでしょうか。中予山岳流域林業活性化センターでは、この
疑問を解消するために、バイオマス搬出の実証試験を行っています。
(1)バイオマスの搬出方法
今回の実証調査では、①根元部分を切り落として搬出②根元部分を切り落とさず、一部
を残した状態で搬出し土場で切断、の 2 つの方法を行いました。また、③土場に集積した
根元部分を軽トラック及び 1t 車で近隣のチップ工場に出荷し労力と金額の算定も行いま
した。
(2)調査方法
今回の調査は、作業工程をビデオで撮影をし、その作業内容を秒単位で分析をする「時間
観測功程調査」という方法を用いました。この調査方法は、作業内容を明らかにすると同時
に、作業を遅らせる(早める)要因などを把握し作業効率を高めることも可能になります。
(3)調査結果
①根元部分を切り落として搬出
この方法では、一度切断した根元部分を再度回収し搬出をするため、積み込みで余分な
時間と労力が発生しました。また、搬出の際に短い根元部分が作業車にきちんと収まらず
落下し、これを回収するために労力と時間がかかる等の問題も生じました。バイオマス回
収の全体作業に占める割合は7%程度になり作業効率を悪化させる結果となりました。
②根元部分を切り落とさず、一部を残した状態で搬出し土場で切断
この方法では、根元部分を切断せず軽く伐り込みを入れるにとどめ、そこから検尺をは
じめるため、伐り込みを入れる作業以外は、通常作業と同じ作業工程になりました。搬出
についても同様に通常の施業と作業内容に変わりはありませんでした。
土場に着いてから先に入れた伐り込みに合わせて切断を行うのですが、この作業を林内
作業車に積載したまま行うため、時間的なロスは殆ど発生し
ませんでした。また、切り落とした残材は、土場の一部に集
積されるので整理の手間などもありません。
根元部分を切り離した丸太は、土場の別の位置に通常作業
と同じ要領で集積しました。
この作業では、バイオマス回収の全体に占める割合は 1%
未満と推計されました。また 1 回の作業で回収できるバイオ
マス(残材)は概ね 80kg(1t 積み林内作業車)でした。金額に換
算すると 360 円/回の収入向上となります。
③出荷作業
今回の作業で収集した根元部分(バイオマス)は、3,550kg でした。これらを a.軽トラック、
b.1t 積みトラックで現地から 15km のところにあるチップ工場に出荷しました。
a.軽トラックへの積み込み時間は概ね 5 分でした。軽トラックの荷台部分からはみ出さな
い程度に積載した場合、適正荷重の 350kg になりました。これを出荷した場合、ガソリ
ン代と消費税を差し引いて 1,227 円/1 回の収益となりました。
b.1t 車への積み込みは概ね 10 分でした。1t 車の荷台部分より少し出る程度に積載した場
合、適正荷重の 1t になりました。これを出荷した場合、ガソリン代を差し引いて 3,739
円/1 回の収益となりました。
まとめ
現在の山元立木価格の平均(山林所有者が施業を委託した場合に最終的に手元に残る平
均収入)がスギ 2,968 円/m3、ヒノキ 7,507 円/m3 であることを考えれば、バイオマス収入
を見逃すことは非常に惜しいことだともいえる結果となりました。
また、往復をすると空荷で車を移動させることになり、その分ガソリン代や時間が掛か
ります。このため出荷に当たっては、まとめて出すのではなく、仕事の帰りに 1 車ずつ持
っていくほうが手取り収入は大きくなります。
トピック2
久万林業講座の御礼と勉強会開催について
平成 27 年 10 月 2 日(金)から 11 月 13 日(金)まで、毎週金曜日の 19:00 から 21:00 に
かけて、久万高原森林管理センター2 階研修室(久万広域森林組合内)で久万林業の歴史から
木材流通などこれからの森づくりに関わる勉強会を開催しました。
この講座には、全 8 回でのべ 106 人の方が参加してくださいました。また、参加者は高
校生から農家林家のかた、行政の方まで幅広い層がいらっしゃいました。みなさん、本当
にお疲れ様でした。
なお、会の最終日に受講生の皆様から「今後も月 1 回程度の勉強会を開いて頂きたい」と
いう趣旨のご提案がありました。このご提案を受け、センターでは勉強会の開催に向けて
準備を始めております。近日中に開催日をお知らせいたしますので、ご興味のある方はぜ
ひご参加下さいますようお願いを申し上げます。
なお、勉強会の内容に関しても皆様からのご意見を賜りたいと願っております。森林・
林業に関すること、木材利用に関することに限らず、久万高原町の将来に向けた様々な課
題について皆様と一緒に考える会にしたいと思いますので、ご意見・要望等がございまし
たらぜひ中予山岳流域林業活性化センターまでお知らせ下さい。
(連絡先0892-50-0075 担当 小野 Mail [email protected])
トピック3
久万材のブランド化に向けた取り組み
久万高原町から算出される木材は「久万材」と呼ばれ、無節、通直、使いやすいなど様々
な理由から木材を利用する人々に高い評価をされてきました。もっとも、木材の利用方法
が変化してきた現在、「質より量」を求める声が製材業界を中心に高まってきています。こ
のため、せっかく長年手入れをしてつくられて来た無節材の価格や需要が低迷していると
もいわれてきました。しかし、市場の販売状況を分析したところ、無節材には一定の需要
があり、価格も一般材より高く取引をされていることが分かってきました。
では、なぜ「無節材は需要がない」といわれてきたのでしょうか。この疑問を解く鍵が「久
万材って何?」という問いに、私たち山側の人間が正確に答えることが出来ないことにある
ようです。このため、「木材を作っている人」や「木材を使っている人」に改めて「久万材の
よさ」を整理して頂き、「久万材ブランド」を確立して少しでも高く木材を売る方法を検討す
ると同時に、今後の森づくりのあり方についても模索したいと考えております。
活性化センターでは、「久万材ブランド」の構築に向けて現在、様々な分野の方にお話を
伺っている最中です。皆様のご協力をお願いいたします。
トピック4
森林 GIS 実践講座の開催
森林の管理はこれまで紙の地図や森林簿、あるいは森林所有者の記憶によって行われて
きました。このため、代替わりがあると所有林の位置が不確かになったり、自分の山の境
界線が曖昧になったりするなど様々な問題を抱えています。
こうした問題を解消するひとつの手段として、パソコン上で森林に関する様々な情報を
集め管理する「GIS」と人工衛星を使って現場や自分の位置を把握し記録する「GPS」と
いう技術が開発され、現在では非常に安価にこれらを使うことができるようになっていま
す。 中予山岳流域林業活性化センターでは、この「GIS」と「GPS」の簡単な使い方を
学ぶ勉強会を企画しています。ご自分の森林をパソコンで管理がしてみたいという方、生
きものや植物の位置をパソコンで保管をしておきたいという方、
「GIS」や「GPS」には様々
な使い方があります。実践講座に参加を希望される方は、中予山岳流域林業活性化センタ
ーまでご連絡下さい。参加者が集まり次第、開講日時を調整させて頂きます。
(連絡先0892-50-0075 担当 小野 Mail [email protected])
おわりに
今回は、久万山だよりの第10 号をお届けしました。現在の森林・林業を取り巻く環境
は、急激に変化をしています。このため、常に新しい情報を集めておくことが、地域の森
林を守り育てるために不可欠であると考えております。活性化センター便りでは、今後も
センターの活動や最新情報について可能な限り早く皆様にお届けをしたいと考えておりま
す。加えて、皆様の知りたいと思うことについて、可能な限り詳しく調査や情報の収集を
行っていきたいとも考えております。久万林業だよりについて、皆様のご意見やご感想を
お寄せいただければ幸いです。今後とも中予山岳流域林業活性化センターの活動にご協力
下さいますようお願いを申し上げます。