ファイナンス・カンパニーの グローバル格付手法 Finance

FINANCE COMPANIES
NOVEMBER 6, 2015
RATING METHODOLOGY
ファイナンス・カンパニーの
グローバル格付手法
Finance Companies
目次:
はじめに
1
はじめに
ファイナンス・カンパニーの格付要因
10
付録 1:ファイナンス・カンパニーの
27
スコアカードのウェイト
付録 2:ファイナンス・カンパニーの
異なるクラスの負債を格付するため
の枠組み
28
ムーディーズの関連リサーチ
32
本格付手法は、ムーディーズが世界のファイナンス・カンパニーを格付する上で
考慮すべきと考える事業上、財務上、および環境面での主要な特性を説明する
ものである。これは、ムーディーズが 2012 年 3 月から用いてきたファイナンス・カ
ンパニーの格付手法 “Finance Company Global Rating Methodology”(ムーディー
ズ・ジャパン版「ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法」)を代替するも
のである。今回の更新は、銀行格付手法および幾つかのクロス・セクター格付手
法の更新、ムーディーズの格付記号と定義の変更に伴う調整である。それ以外
の大きな変更はない。
コンタクト:
東京
03.5408.4100
This rating methodology is based on Moody’s Investors Service’s rating methodology “Finance Companies (October 30,
2015).” The rating approach described in the Moody’s Investors Service report was adopted on November 6, 2015.
ムーディーズ・ジャパン株式会社
FINANCE COMPANIES
本セクターにおいて付与される信用格付は基本的に本信用格付手法によって決定される。ま
た、幅広い格付手法(1 つ以上の副次的に適用される格付手法またはクロスセクター格付手
法)における考慮事項が、本セクターの発行体および債券の信用格付の決定時に重要となる
こともある。
業界の定義
本格付手法は、事業ファイナンス、消費者ファイナンス、および関連サービスを提供する様々
な金融サービス会社を対象としている。ムーディーズは現在、以下に挙げる多様なサブセクタ
ーに属する世界のファイナンス・カンパニー約 70 社に格付を付与している。
»
自動車ファイナンス・カンパニー:消費者向けプライムローン、サブプライムローンおよびリ
ース、ならびにディーラー向け在庫ファイナンスを提供するメーカー系および非メーカー
系のファイナンス・カンパニー
»
ビジネス・ディベロップメント・カンパニー:中小企業に投資し、経営支援を行う米国のファ
イナンス・カンパニー
»
総合的商業金融会社:主として企業にローンやリースを提供するファイナンス・カンパニー
»
消費者金融会社:消費者に多様な金融商品を提供するファイナンス・カンパニー
»
ペイデイ・ローン会社:比較的信用力の低い消費者を対象に、小切手換金サービスや短
期ローン商品を提供するファイナンス・カンパニー
»
住宅ローン会社:住宅ローンのオリジネーターおよびサービサー
»
学生ローン会社:政府保証付き学生ローンおよび民間学生ローンのオリジネーターおよ
びサービサー
»
商業リース会社:鉄道車両、航空機、可動倉庫、その他の耐用年数の長い資産のリース
に特化したファイナンス・カンパニー
»
ファクタリング会社:規模の大きい流通業者や小売業者に対する売掛債権を製造業の中
小企業から買取り、あるいはそれらに代わってサービシングを行う会社
ここに挙げたサブセクターは、説明を目的としたものであり、全てのサブセクターを含んでいる
わけではない。格付対象が上記のカテゴリーに属さない企業であっても、企業固有の特性に
鑑み、アナリストがムーディーズのクレジット・ポリシー部門と協議した上で、ファイナンス・カン
パニーの格付手法が格付の枠組みとして最も適切であると判断した場合、ファイナンス・カン
パニーの格付手法を用いて格付を行う場合がある。
本件は信用格付付与の公表では
ありません。文中にて言及されて
いる信用格付については、ムーデ
ィ ー ズ の ウ ェ ブ サ イ ト
(www.moodys.com)の発行体のペ
ージの Ratings タブで、最新の格
付付与に関する情報および格付
推移をご参照ください。
2
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ファイナンス・カンパニーと銀行の一体化と格付上の考慮事項
信用危機を契機として、ファイナンス・カンパニーと銀行のビジネスモデルの一体化が進展し
た。銀行子会社を持つ米国の大手ファイナンス・カンパニーの多くが、銀行持ち株会社に転
換した。その結果、これらの金融機関は信用危機下で米国政府が銀行業界向けに提供した
様々なサポートを利用できた上、厳しい規制を受ける金融機関になったことで安定性が高ま
ったと認識されるようになった。米国でも他地域でも、銀行ライセンスまたは銀行子会社を持
つこれらのファイナンス・カンパニーは、預金基盤からの資金調達を増やすことに注力してい
る。このようなトレンドによって、銀行かファイナンス・カンパニーかを判断しにくくなった企業が
ある。資金調達源として預金基盤を確立し、資産と事業を銀行子会社に移すという、「ハイブリ
ッド」化の段階にあるファイナンス・カンパニーもある。また、完全に銀行に移行し、ムーディー
ズの銀行格付手法(2015 年 3 月)に基づいて格付されるファイナンス・カンパニーもある。
一般的に、次にあげる特徴がみられない場合、主要格付手法としてファイナンス・カンパニー
の格付手法を適用する。
»
銀行免許を保有している
»
銀行格付に用いられる比率を算出するための規制上の情報が入手可能:リスク加重資産、
Tier I 資本
»
自己資本比率とオンサイト監査を含む規制を受ける
»
決済システムに属する
»
預金調達比率 > 調達総額の 20%
»
銀行と同じ方法で中央銀行または他の政府の制度から資金調達できる
»
所在する地域の基準からみて資産/事業内容が「銀行に類似」
ある発行体に格付を付与するために、どの格付手法を主要な格付手法として用いるべきかが
明確でない場合、アナリストは最も適切な格付を決定するために他の格付手法を検討する場
合もある。
ファイナンス・カンパニーの格付の枠組みとスコアカードの役割
概要
従来からファイナンス・カンパニーに対するムーディーズの格付アプローチの基礎を構成して
きた要因が、今回更新した格付手法においても分析の枠組みの中核となっている。しかし、本
格付手法では、この枠組みを構成する様々な要因の体系化の方法と提示方法を変更した。
最も顕著な変更点は、本格付手法では、アナリストが個々のファイナンス・カンパニーの単独
ベース(サポートを考慮しない)の推定信用評価(単独での信用プロファイル)の導出に用いる
スコアカードを掲載したことである。スコアカードには、格付委員会がファイナンス・カンパニー
の単独での信用プロファイルを決定する際に考慮する可能性の高い主要要因が含まれてい
る。そのため、本格付手法は、ムーディーズの格付の全体的な枠組みを考察する手段として、
スコアカードの要素に対応するセクションから構成されている。
しかし、スコアカードは単独での信用プロファイルに反映され得るすべての要因を含んでいる
わけではないことをムーディーズは認識している。そのため、格付委員会が決定する単独で
の信用プロファイルは、スコアカードから推定される単独での信用プロファイルと異なる可能性
があるが、通常その差は 1-3 ノッチにとどまるとみられる。スコアカードから推定される単独での
信用プロファイルと格付委員会が決定する単独での信用プロファイルの間に相違を生じさせ
る要因となる状況や検討事項については、後述する。
3
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ファイナンス・カンパニーの最終的な格付(投機的等級の発行体に対するコーポレートファミリ
ー・レーティング(CFR) 1、または投資適格等級の発行体に対するシニア無担保債務格付)は、
単独での信用プロファイルに加えて、可能であれば親会社またはその他の関連会社によるサ
ポートも織り込んでいる。後述するように、一部のメーカー系ファイナンス・カンパニーの分析
に、特別な検討事項を織り込む場合がある。アナリストと格付委員会は、必要に応じてムーデ
ィーズの他の格付手法や格付ツールを用いて、サポートや他の必要な要素を最終的な格付
に織り込む。
要因とサブ要因
ムーディーズのファイナンス・カンパニーの格付分析とスコアカードを構成する要因とサブ要
因は次の通りである。
財務以外の要因:
1. 営業基盤の位置付け
a)
市場地位と持続可能性
b)
事業の分散
2. リスクポジショニング
a)
資産および/またはキャッシュフローの潜在的変動性
b)
コーポレートガバナンスと経営陣の質
c)
リスクマネジメント
d)
主要取引先の集中
e)
流動性管理
3. 事業環境
a)
経済力
b)
制度の頑健性
c)
イベントリスクに対する感応度
4. 財務要因:
5. 収益性
6. 流動性
7. 自己資本の充実度
8. 資産の質
要因とサブ要因の段階評価
アナリストは、次に述べる定性・定量基準に基づき、要因とサブ要因を 5 段階(A/Aa, Baa, Ba,
B, Caa)で評価する。非定量サブ要因の評価は、経験に基づく観察と予想による判断を必要と
するが、定量サブ要因の評価は、比率の算出と他の客観的な評価基準に基づいている。
財務要因のサブ要因は、財務比率で構成され、可能な限り開示情報を用いて算出する。大
半の財務比率は、監査済の財務諸表に掲載された情報から得られるものと想定している。比
率の分析を行うにあたり、アナリストは過去(3 年平均)、現在(直近の財務報告期間)、および
将来の予想データを評価する。格付委員会が結果を比較し、どの財務データがファイナンス・
カンパニーの予想パフォーマンスを最も適切に示しているかを決定する。会計基準と開示基
1
4
NOVEMBER 6, 2015
ムーディーズのコーポレート・ファミリー・レーティング(CFR)は、長期債務格付と同様、期待信用損失率(様々な期間に
おけるコーポレート・ファミリーのデフォルト確率に平均推定損失時デフォルト率(LDG)を乗じた数値)に関する意見であ
る。CFR は、コーポレート・ファミリーが単一クラスの債務をもち、連結された法人であると仮定して付与される。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
準は地域により異なるため、比率の国際比較ができない場合もあることをムーディーズは認識
している。
要因とサブ要因の段階評価
各サブ要因の段階評価を、理想化されたデフォルト確率に対応する数値スコアに変換する
(表 1 参照) 2。各要因のスコアは、サブ要因のスコアの平均である。
表 1 からわかるように、ムーディーズの理想化されたデフォルト率は非線形である。つまり、段
階評価の低いサブ要因をスコアに変換する際に、段階評価の高いサブ要因よりも高いウェイ
トを付加する。これは、少数の特に弱い信用属性が、信用基盤を悪化させ、ファイナンス・カン
パニーの全体的な信用力の最も重要な決定要因になるというムーディーズの見解と一致して
いる。
図表 1
サブ要因の段階評価/スコアへのマッピング
サブ要因の段階評価
スコア=
非線形のウェイト
Aa/A
0.13%
Baa
1.20%
Ba
6.80%
B
18.13%
Caa
43.88%
要因スコア
=
サブ要因のスコアの平均
要因スコアのウェイト付け
要因スコアの決定後、推定される単独での信用プロファイルを決定する上での各要因の相対
的な重要性に基づいて、そのスコアにウェイトを付加する(表 2、付録 1)。要因によってウェイ
トが異なるのは、一部の特性が他の特性よりもファイナンス・カンパニーの信用力に大きく影響
するというムーディーズの見解を反映させるためである。そのような重要な要素には、事業部
門と事業地域の集中(営業基盤の位置付けの要因)、主要取引先の集中(リスクポジショニン
グの要因)、ホールセール調達への依存(リスクポジショニングの要因)、資産および/またはキ
ャッシュフローの潜在的変動性(リスクポジショニングの要因)が含まれる。これらの要素につ
いて懸念されるファイナンス・カンパニーは、スコアカードによる総合スコアが高く(弱く)なる。
図表 2
要因のウェイト
財務以外の要因
スコアカードのウェイト
15.0%
収益性
8.8%
リスクポジショニング
36.0%
流動性
13.6%
事業環境
9.0%
自己資本の充実度
8.8%
資産の質
8.8%
2
NOVEMBER 6, 2015
財務要因
営業基盤の位置付け
財務以外の要因合計
5
スコアカードのウェイト
60.0%
財務要因合計
40.0%
非線形のウェイトは、ストラクチャード・ファイナンス取引に使用されるムーディーズの理想化された 4 年デフォルト率を使
用している。ムーディーズのファンダメンタル部門の格付は、絶対的なデフォルト率を目指すものではないが、本セクター
における過去のデフォルト事例に個々の要因がいかに作用してきたかをみれば、ムーディーズでは本格付手法におい
ては段階評価の低いサブ要因に高いウェイトを付加することが適切であると考えており、理想化されたデフォルト率をスコ
アカードの非線形のウェイトの基準としている。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
推定される単独での信用プロファイルの決定
財務以外の要因と財務要因の加重スコアの合計を、マッピング表(表 3)にマッピングし、財務
以外の要因の段階評価、財務要因の段階評価、推定される単独での信用プロファイルを決
定する。マッピングは、ムーディーズの従来の債務格付スケールに基づいており、格付委員
会が付与するファイナンス・カンパニーの単独での信用プロファイルはその大部分が A から
Caa のレンジ内に納まるとのムーディーズの予想を反映している。
図表 3
要因スコア/単独での信用プロファイルのマッピング
推定される単独
理想化されたデフォルト率 でのプロファイル
財務以外の要因と財務要因の
加重スコアの合計
0.19%
A1
0.35%
A2
0.54%
A3
0.83%
Baa1
1.20%
Baa2
2.38%
Baa3
4.20%
Ba1
6.80%
Ba2
9.79%
Ba3
13.85%
B1
18.13%
B2
24.04%
B3
32.48%
Caa1
43.88%
Caa2
66.24%
Caa3
格付プロセスにおけるスコアカードの利用
スコアカードはアナリストと格付委員会が格付を決定するために用いる支援ツールの一つであ
るが、アナリストと委員会の判断に代わるものではない。全てのファイナンス・カンパニーにつ
いて、信用に関する全ての側面を考慮したり、それらの側面を適切にウェイト付けすることは
期待できない。ファイナンス・カンパニーのビジネスモデルは多岐にわたるため、各社固有の
リスク特性を把握し、ウェイト付けすることは特に難しい。アナリストは、特定のカテゴリーのファ
イナンス・カンパニーの相対的な強み、あるいは弱点をより正確に反映するために適切と考え
られれば、スコアカードへの財務要因の入力値とサブ要因の段階評価を調整する場合がある。
調整を行った後においても、スコアカードがファイナンス・カンパニーの信用リスクプロファイル
の見通しに関する意見を正確に反映していないと考える場合、格付委員会とアナリストはスコ
アカードに拘束されるものではない。
アナリストと格付委員会は、スコアカードでは捕捉できず、スコアカードの財務要因では調整
できない要因が、ファイナンス・カンパニーの単独での信用プロファイルに与える影響も評価
する。次に例示するような考慮事項を理由として、格付委員会はスコアカードの推定値と異な
る単独での信用プロファイル異を付与する場合がある。
6
NOVEMBER 6, 2015
»
特定の弱点から生じる脆弱性が、標準的なスコアカードのウェイト付けが示唆するより、深
刻である可能性がある。
»
事業上の弱点を持つ企業が財務パフォーマンスを容認可能な水準まで回復させるとの見
方の根拠となるような特定の強みが、スコアカードでは過小評価される可能性がある。
»
最低所要自己資本のガイドライン遵守や、定期的なオペレーション(たとえばリスク管理の
プロセス)のオンサイトでの検査など、成熟した規制環境下での当局による監督は、ファイ
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ナンス・カンパニーの信用力にプラスになるとみられるが、スコアカードではそれを十分に
捕捉することができない。
»
利ざやに依存しない金融以外の安定的な事業(例:フリート・リース会社が提供する物流
サービス等の業務サービス提供手数料)から得られる収益は、スコアカードの評価以上に、
ファイナンス・カンパニーのリスクの分散と緩和に寄与する場合がある。
»
強固な親会社による安定的な持分保有は、ファイナンス・カンパニー固有の特性となるよ
うな事業や資金調達における優位性をもたらし得るが、それがスコアカードには十分に織
り込まれない場合がある。これは、別途検討する親会社のサポートとは異なる点に留意さ
れたい。
»
金融投資家による限定的な期間の出資は、ファイナンス・カンパニーの見通しに関するリ
スクを高める可能性がある。債券保有者にとっての利益と投資期間の短い株主にとって
の利益は異なることが、債券保有者に対するリスクを高める可能性がある。
スコアカードによる推定とは異なる格付評価を行う場合、ムーディーズのアナリストと格付委員
会は、特定のファイナンス・カンパニーに関するスコアカードへの入力値が、その企業の信用
プロファイルの見通しを正確に織り込んでいるかどうかを検討する。ムーディーズは、スコアカ
ードに含まれない他の定性的な考慮事項や財務比率を用いて、単独での信用プロファイルと
最終的な格付を決定する場合がある。ムーディーズは、今後発行するファイナンス・カンパニ
ー別のリサーチレポートの中で、主要要因の分析と、スコアカードによる推定格付と実際の格
付が異なる理由を説明していく。
サポートの格付への織り込みと最終格付の決定
ファイナンス・カンパニーの最終的な格付(例:投機的等級の発行体に対する CFR または投
資適格等級の発行体に対するシニア無担保債務格付)は、単独での信用プロファイルのみな
らず親会社またはその他の関連会社によるサポートを考慮したものである。アナリストと格付委
員会は、非メーカー系ファイナンス・カンパニーに対する関係者からのサポートの影響を評価
する際に、子会社の信用力と事業の存続可能性を支えることで関係者が得る自己利益を考
慮する(メーカー系ファイナンス・カンパニーについては後述する)。評価に織り込まれる要因
は、長期的戦略からみた関係者にとっての子会社または被出資対象の重要性、関係者と子
会社または被出資対象の事業が結び付いている度合い、子会社または被出資対象のデフォ
ルトが親会社に与える事業上、財務上の影響などである。サポートが保証されている場合、関
係者とファイナンス・カンパニー子会社または被出資対象の格付は等しくなり得る一方で、保
証されていないサポートや黙示的なサポートしか期待できない場合、関係者とファイナンス・カ
ンパニー子会社または被出資対象の格付にノッチ差をつける可能性が高い 3。ファイナンス・
カンパニーの関係者が金融機関である場合、アナリストと格付委員会は、親会社のサポートが
ファイナンス・カンパニーの格付に及ぼす影響を評価するための追加的なツールとして、ムー
ディーズの複合デフォルト分析に基づく、銀行分析における関係者からのサポートを考慮す
るアプローチを用いる可能性もある。
メーカー系ファイナンス・カンパニーの格付
この独特な格付の検討手法は、親会社の事業に関連した事業目的および関係性から派生し
たメーカー系ファイナンス・カンパニーに適用される。メーカー系ファイナンス・カンパニーの
主要な事業目的は、ディーラーとその親会社の製品のエンドユーザーに対して融資(ローン・
リース)および関連サービス(例えば保険の販売など)を提供することである。メーカー系ファイ
ナンス・カンパニーは、時として親会社の製品およびサービスに関連のない事業を行うことも
あるが、これらの事業活動は、親会社の製品の販売を促進するための中心的な任務という重
要性を有するものではない。親会社は当該メーカー系ファイナンス・カンパニーの持分の全部
または大部分を保有していることが一般的であり、金融投資家が他の持分を保有し、当該メー
カーが少数株主となるケースはほとんど存在しない。ムーディーズは、メーカーである親会社
がその持分を保有しているものの、その事業活動全体に占める親会社のために行う事業の割
3
7
NOVEMBER 6, 2015
2010 年 11 月発行の “Moody's Identifies Core Principles of Guarantees for Credit Substitution" 及び 2003 年 12 月発行の
“Rating Non-Guaranteed Subsidiaries: Credit Considerations in Assigning Subsidiary Ratings in the Absence of Legally Binding
Parent Support"参照。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
合が比較的小さいメーカー系ファイナンス・カンパニーを、非メーカー系ファイナンス・カンパ
ニーとして扱うこともできる。メーカー系ファイナンス・カンパニーの格付に対するムーディーズ
のアプローチは、本格付手法の適用対象となる他のファイナンス・カンパニーと大きく異なる。
1. 重要な違いは、メーカー系ファイナンス・カンパニーの格付は通常、親会社からのサポー
トの可能性と親会社の信用力に大きく影響されることである。サポートの評価においては、
親会社が子会社にサポートを提供する上での経済的インセンティブや風評面でのインセ
ンティブや、保証およびキープウェルアグリーメントの契約書を評価する。メーカー系ファ
イナンス・カンパニーは、連結ベースでの製品やサービスの販売戦略において、重要な
役割を果たしている場合がある。そのため、メーカー系ファイナンス・カンパニーの格付は、
信用プロファイルが等しい独立系ファイナンス・カンパニーよりも数ノッチ高くなる可能性
がある。
2. メーカー系ファイナンス・カンパニーの信用評価は、必ずしも単独ベースで行えるとは限
らない。ファイナンス・カンパニーと親会社や関連会社の事業が密接に結びついていたり、
ファイナンス・カンパニーの単独ベースの特性について、十分に開示されていない場合が
ある。そのようなケースでは、主として、あるいは専ら親会社によるサポートを前提として、
ファイナンス・カンパニーを格付する可能性がある。そのような場合、親会社の信用基盤
やファイナンス・カンパニーの戦略上の重要性、ならびにサポート契約の評価が、格付を
左右する要素となる。これらの要素の強さに応じて、ファイナンス・カンパニーの格付は親
会社と等しくなる場合もあれば、親会社より低くなる場合もある。あるいは、ファイナンス・カ
ンパニーのスコアカードを用いてメーカー系ファイナンス・カンパニーについて推定した単
独での信用プロファイルを導出する場合もあるが、単独ベースでの開示情報が限られて
いるため、推定または近似値によって一部要因の段階評価を行うことが必要となる可能性
がある。この場合、戦略上の重要性や親会社のサポートの度合いに応じて、メーカー系フ
ァイナンス・カンパニーの格付を、推定した単独での信用プロファイルから引き上げる可
能性がある。
3. メーカー系ファイナンス・カンパニーが親会社の総合的な事業戦略と切り離せない形で組
み入れられている場合、ファイナンス・カンパニーの単独での信用プロファイルは信用指
標として限定的な意味しか持たないとみられる。ファイナンス・カンパニー子会社の営業
基盤とリスクポジショニングや財務プロファイルは、連結ベースの企業戦略に基づいて形
成されている場合がある。たとえば、ポートフォリオのリスク特性は、親会社の連結ベース
のマーケティング戦略による顧客への融資条件の変更に伴い、大きく変化する可能性が
ある。また、ファイナンス・カンパニー子会社の流動性管理が親会社と一体化しているた
め、単独べースの流動性が弱いこともある。
4. メーカー系ファイナンス・カンパニーの単独での信用プロファイルを公表しないケースもあ
る。特に、親会社の事業に高度に組み入れられているファイナンス・カンパニー子会社の
単独での信用プロファイルが、必要以上に厳密になりすぎたり、親会社とファイナンス・カ
ンパニー子会社を分離して意味のある評価を行うには情報が不十分である場合、BCA を
公表しない可能性が高い。
5. 単独での信用プロファイルを公表する場合、格付カテゴリー(例・Baa、Ba、B 等)で表す。
特に、ファイナンス・カンパニーが相当程度親会社に統合されており、かつ(または)、開
示財務データが限定されている場合には、格付カテゴリー以上に厳密な英数字の格付
記号(例・Baa1、Baa2、Baa3 等)で表さない可能性がある。
6. 一定の事情のもと、メーカー系ファイナンス・カンパニーは、親会社よりも高く評価される
可能性がある。このような結果が発生する可能性が最も高いのは、(1)メーカー系ファイナ
ンス・カンパニーの親会社の信用プロファイルが大幅に弱まっている、そして(2)メーカー
系ファイナンス・カンパニーの債権者に対する資産保護が親会社の債権者に対する資産
保護よりも推定損失の程度を軽減している場合である。一般的に、メーカー系ファイナン
ス・カンパニーに対し、親会社を 2 ノッチ以上上回る格付が付与されることはないであろう。
8
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ファインナンス・カンパニーの負債のクラス別格付
単独での信用プロファイルおよび最終格付を決定した後、ムーディーズは、個々の負債クラス
に対する格付を付与する。投機的等級の CFR を付与されたファイナンス・カンパニーに対し、
アナリストは分析の枠組みを用いて、期待されるデフォルト時損失率(LGD)における相対的
な差異に基づく、ファイナンス・カンパニーの異なるクラスの負債証券やシニア無担保発行体
格付(あれば)に CFR を基準として適用する格付ノッチング幅を決定する。ノッチングの枠組
みではとりわけ、(1)ファイナンス・カンパニーの資本構成に占める各負債クラスの比率、(2)
各負債の相対的順位、および (3)各負債クラスに関連した資産担保の相対的な質と適切性
(詳細については付録 2 を参照)を考慮している。負債クラスは、優先順位、担保差し入れ、
保証あるいは他のサポート、コベナンツに基づいて定める。ノッチング幅の決定においては、
アナリストはファイナンス・カンパニーのファミリーレベルの資産カバレッジ比率を決める必要が
ある。これは、ファイナンス・カンパニーの負債の異なるクラス間の相対的なカバレッジの違い
を決定するための参照指標として用いられる(「ウォーターフォール」アプローチ)。
この枠組みは、ムーディーズが一部の地域の事業法人の投資適格を下回る格付に関して用
いている、デフォルト時損失率(LGD)に関する格付手法 4と同様の一般原理に従うものである
が、ファイナンス・カンパニーの枠組みはそこまで定量的ではなく、寧ろより定性的である点で
異なるものである。一般的に、ファイナンス・カンパニーの枠組みでは、CFR から最大 2 ノッチ
高い、あるいは低い格付が付与されることになり、最大 3 ノッチを許容する LGD に関する格付
手法と比較すると、上下のノッチ幅はより狭くなっている。大半のファイナンス・カンパニーの収
益資産がサービシングを中心とする特殊な性質を有しており、それがサービシングの成果と
発行体/サービサーの将来を関連付けていることを前提とすれば、この枠組みは適切であると
考えている。なお、この枠組みは、他のムーディーズの格付手法に基づいて評価されている
証券化商品には適用されないことにも注意されたい 5。
ファイナンス・カンパニーの枠組みにおいて、ファイナンス・カンパニーの総負債の大部分
(2/3 以上)を構成する単一クラスの負債は、通常、当該ファイナンス・カンパニーの CFR と同
じ格付が付与される。総負債に占める割合が小さい負債クラスは、額面および他の負債と比
較した債権者保護の度合いに応じて、CFR より最大で 2 ノッチ高い、あるいは低い格付が付
与され得る。
ムーディーズは、このノッチングの枠組みを投機的等級の発行体に対してのみ用いる。投機
的等級の発行体は、相対的にデフォルトリスクが高いがゆえに、ムーディーズは、現存する負
債構成に基づいて、当該発行体のデフォルト時の負債構成を合理的に見積もることができる。
それゆえ、非投資適格のファイナンス・カンパニーに対してムーディーズは、上述した通り、各
負債クラスの違いを考慮しつつ、デフォルト時損失における予測された差異に応じて個々の
負債クラスの格付を付与する。
投資適格等級のファイナンス・カンパニーの個々の負債のノッチングに対するムーディーズの
アプローチは、そのような企業すべてに適用する標準的な慣行と区別されていない 6。
9
NOVEMBER 6, 2015
4
2009 年 6 月発行の “Loss Given Default for Speculative-Grade Non-Financial Companies in the U.S., Canada, and EMEA"
参照。
5
ハイブリッド証券については、"Moody's Guidelines for Rating Bank Hybrid Securities and Subordinated Debt" (November
2009) (ムーディーズ・ジャパン版. 「銀行のハイブリッド証券および劣後債務の格付けに関するムーディーズのガイドライ
ン」2010 年 9 月)参照。
6
クロス・セクター格付手法「企業が発行する債券、優先株、ハイブリッド証券に対する最新のノッチング・ガイドライン概要」
(ムーディーズ・ジャパン版 2010 年 9 月 30 日)を参照されたい。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ファイナンス・カンパニーの格付要因
次のセクションでは、ファイナンス・カンパニーの主要格付要因とサブ要因を、スコアカードに
織り込まれた形に沿って説明する。
財務以外の要因
財務以外の要因は、営業基盤の位置付け、リスクポジショニング、事業環境である。財務以外
の要因の総合スコアがスコアカードに占める比重は 60%である。営業基盤の位置付けに 25%、
リスクポジショニングに 60%、事業環境に 15%のウェイトを付加して、財務以外の要因の総合
スコアを算出する(詳細については付録 1 を参照)。
要因 1:営業基盤の位置付け
この要因を重視する根拠
営業基盤の位置付けとは、競争力に基づくファイナンス・カンパニーの市場地位の強固さを
示す。強固で安定した営業基盤は、ファイナンス・カンパニーが経常的に利益を生成し、維持
していく能力を支える重要な要素である。ファイナンス・カンパニーの営業基盤の価値の分析
では、ファイナンス・カンパニーが事業を行う市場全体と、その市場における地位を検討する。
高い価値を持つ営業基盤を確立している企業は、一般的に、貸出市場で高いシェアを有して
おり、独自の価値あるいは確立された価値を提供する商品と、事業の分散および/または地理
的分散が、そのシェアを支えている。ムーディーズは、ある企業特有の強みを特定した後、そ
れらの競争優位性が強固で維持可能かどうかを分析する。営業基盤の位置付けが強固なフ
ァイナンス・カンパニーは厳しい市場環境の長期化にも対応できるため、債権者に利益をもた
らす。
評価方法
営業基盤の位置付けは、次の 2 つのサブ要因から構成される。
1. 市場地位と持続可能性
2. 事業の分散
市場地位と持続可能性
大半のファイナンス・カンパニーは細分化された業界で事業を行っており、市場シェアは限定
的である。しかし、一部のファイナンス・カンパニーはニッチ市場で強固な地位を確立し、他社
にとって参入障壁となる先端的なノウハウとブランド力を蓄積しながら、取引機会を拡大し、価
格交渉力とローン組成力を強化している。このような特性は、景気がストレス下にある時期に、
収益の安定性と回復力を支える。複数のセグメントで高い市場地位にあるファイナンス・カン
パニーは、単一のセグメントで強固な地位を有するファイナンス・カンパニーよりも高く評価さ
れる。
ムーディーズは、市場地位が長期的に変化する可能性も認識している。ムーディーズは、各
市場の最近のトレンドとともに、その市場に固有の特徴も考慮する。市場シェアが長期的に緩
慢に変化する「定着性」の高い市場もあれば、安定性が低く、市場シェアの変動性が高まる可
能性のある市場もある。安定性の低い市場では、市場地位が変動する可能性があるため、現
在の市場リーダーの地位の持続可能性が低いとみられる。
10
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
市場地位と持続可能性
Aa/A
市場地位と 複数の事業部門
持続可能性 で重要な地位を占
め(市場シェア 5
位以内)、顧客の
事業の高い割合を
占める、または、
ニッチ事業で主導
的地位(市場シェ
ア 50%以上)を占
める。強力なブラ
ンド力を有し、極
めて高い持続可
能性を示す。
Baa
Ba
B
Caa
複数の事業部門
で良好な市場地位
を占めるが、支配
的でも重要でもな
い、または、ニッチ
事業における重要
なファイナンス・カ
ンパニー。
複数の事業部門
を持つが重要性が
低い、または、ニッ
チ事業で良好な地
位を占めるが支配
的でも重要でもな
いファイナンス・カ
ンパニー。
複数の事業部門
を持つが市場シェ
アが低い、また
は、ニッチ事業で
良好な地位を占め
るが、その事業が
縮小、中断しがち
である。
主要事業における
市場地位が非常
に弱い、または急
速に悪化しつつあ
る。
事業の分散
事業の分散の分析では、地理的側面および事業部門の数と相対的な規模からみたファイナ
ンス・カンパニーの事業の範囲を考慮する。一般に、経済的多様性が比較的低い単一の地
域に事業が過度に集中していれば、ファイナンス・カンパニーの信用リスクプロファイルは高ま
る。逆に、事業が経済的多様性の高い複数の地域にまたがって高度に分散しているファイナ
ンス・カンパニーは、地域経済の不確実性の影響を受けにくく、景気サイクルを通した収益の
安定性を高めることができる。大規模なファイナンス・カンパニーは複数市場で事業を展開す
ることが多いため、地理的分散の恩恵を受けることが多い。
単一の事業部門への依存度が高いファイナンス・カンパニーは、突然かつ予想外に発生し得
る市場ダイナミクスの変化の影響を相殺し、支払能力を維持するための収益源を持たないた
め、そのような変化からの影響を受けやすい。事業の分散度の不足は、大半のファイナンス・
カンパニーにおける信用上の弱点である。ファイナンス・カンパニーの純利益の 80%以上が
一つの事業活動から生み出されていれば、モノラインのファイナンス・カンパニーとみなす。モ
ノラインのファイナンス・カンパニーは、エクスポージャーが十分に分散され、海外事業を展開
し、ターゲット市場で高いシェアを維持し、一つの事業部門の中で複数の商品を提供してい
れば、事業の分散のサブ要因で Ba の格付を付与される可能性がある。しかし、大半のメーカ
ー系ファイナンス・カンパニーの評価は、B スコアになるとみられる。
事業部門とは、個別の事業内容または商品のことである。たとえば、建設機械ファイナンス、
運送設備ファイナンス、テクノロジー・ファイナンス、住宅ローン、商業用不動産ローン、自動
車ファイナンス、フリート・リース、ファクタリング、学生ローン、クレジットカード、中小企業ファイ
ナンス、コーポレートファイナンス、消費者ファイナンス、ベンダーファイナンス、小切手換金サ
ービス、保険サービスなどがある。相関性の高い業務も、一つの事業とみなす。たとえば、サ
ブプライムローンと小切手換金サービスを提供する会社は、モノラインとみなされる。
11
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
事業の分散
事業の分散(1)
Aa/A
Baa
Ba
B
Caa
(i)1 つ以上の
主要市場また
は(ii)複数の大
規模市場で、複
数の重要な事
業を展開してお
り、利益の 25%
以上が主要市
場以外で発生。
市場の相関度
は低く、経済の
多様性は非常
に高い。
(i)1 つの大規
模市場または
(ii)複数の中規
模市場で、複数
の重要な事業
を展開してお
り、利益の 25%
以上が主要市
場以外で発生。
市場の相関度
は低く、経済は
多様性に富ん
でいる。
1 つの中規模市
場または複数
の地域市場で
複数の重要な
事業を展開して
いる。市場の相
関度は低く、経
済はある程度
の多様性を持
つ。あるいは、
海外事業を展
開し、エクスポ
ージャー(資
産、顧客など)
が分散され、あ
らゆる種類の商
品を揃えている
モノライン・カン
パニー(2)。
経済の多様性
に欠ける 1 つの
中規模市場で
複数の重要な
事業を展開して
いる。または、1
つ以上の大規
模市場または
複数の中規模
市場で重要な
事業を展開し、
エクスポージャ
ーがある程度
分散され、ター
ゲット市場の幅
が狭く、商品の
種類が限定的
なモノライン・カ
ンパニー(2)。
単一の地域市
場で複数の事
業を展開。また
は、単一の中規
模または小規
模市場で事業
を行い、エクス
ポージャーの分
散度が低く、タ
ーゲット市場が
限定的で、単一
商品に依存す
るモノライン・カ
ンパニー(2)。
(1) 「地理的分散」における地域市場の定義は経済圏に基づいており、政治的境界線のみに基づいているわけではない。1 つの市場があ
る国の一地域から構成される場合もあれば(米国西部など)、1 カ国または複数の小規模な国から構成される場合もある(北欧諸国な
ど)。主要市場は GDP が 1 兆ドル超、大規模市場は GDP が 3,000 億-1 兆ドル、中規模市場は GDP が 1,000 億‐3,000 億ドル、地方市
場は GDP が 1,000 億ドル未満の市場を指す。ある市場での事業が「重要」とみなされるには、その市場全域で高い利益を上げ、強力
な存在感(形だけの存在以上のもの)を有する必要がある。経済の多様性が低いために、ある市場が要件を満たしていない場合、当
該ファイナンス・カンパニーには 1 段階低いスコアが付与される。
(2) モノライン・カンパニーとは、収益の 80%以上が単一の事業または商品から生み出される企業。
12
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
要因 2:リスクポジショニング
この要因を重視する根拠
リスクポジショニングは、ファイナンス・カンパニーのリスク選好や様々な種類のリスクを管理す
る能力を示す戦略、組織および構造の要素を示すものである。ファイナンス・カンパニーは通
常、信用リスク、流動性リスク、市場リスク、事業リスク、風評/ヘッドライン・リスクなどを管理して
いる。ファイナンス・カンパニーの大半が、リスクの高まりにつながる次の 2 つの特徴を有して
いる。
1. 主要な顧客やサプライヤーとの取引への集中度が高い。取引先が集中していれば、ファ
イナンス・カンパニーは(1)ファイナンス・カンパニーに対するカウンターパーティーからの
信認が失われる可能性、および(2)カウンターパーティーの事業見通しが悪化する可能
性から影響を受ける。こうしたことが現実化すれば、ファイナンス・カンパニーの収入、資
産の質、及び収益力は大きな打撃を受ける。
2. ホールセール市場からの資金調達への依存度が高い。大半のファイナンス・カンパニー
は預金受入金融機関の子会社を保有していないため、事業資金を主にホールセール調
達に依存している。ホールセール調達は本質的に市場の信認から影響を受けやすいた
め、ファイナンス・カンパニーのビジネスモデル、資産タイプ、事業を行う地域にかかわら
ず、不安定性が高いことが示されてきた。2008-2009 年の信用危機下では、担保付きの資
金調達でも、担保による信用補完があることから期待されていたほどの安定性を示すこと
はできなかった。
このようなリスクを管理するため、ファイナンス・カンパニーは資産の質と収益の変動を示す兆
候に適切かつ迅速に対応できるよう、強固なガバナンス、リスクマネジメント、内部統制の機能
を備えていなくてはならない。事業のリスクの高さに十分相応する質のリスクマネジメントとガバ
ナンスを行っているファイナンス・カンパニーでも、本質的に低リスクのニッチ事業を行うファイ
ナンス・カンパニーより低くランク付けされる場合がある。これは、ムーディーズが分析の要素と
して資産および/またはキャッシュフローの潜在的変動性を重視しているためである。予期しな
い資産の質と収益の変動は、投資家の信認が低下した場合、ファイナンス・カンパニーの資
金調達に突然かつ深刻な影響を与える。高リスクの事業を手掛け、かつ/またはリスク許容度
が高いファイナンス・カンパニーは、このようなネガティブな事態からの影響を受けやすい。
評価方法
ムーディーズは、リスクポジショニングを評価する際に、次の 5 つのサブ要因を考慮する。
1. 資産および/またはキャッシュフローの潜在的変動性
2. コーポレートガバナンスと経営の質
3. リスクマネジメント
4. 主要取引先の集中
5. 流動性管理
資産および/またはキャッシュフローの潜在的変動性
ムーディーズはファイナンス・カンパニーの事業の中で、資産の質および/またはキャッシュフ
ローの変動性を高める可能性を持つ事業の特徴の特定に努める。この変動性は、企業の債
務履行能力と、必要な場合に資本を調達する能力に大きなマイナスの影響を与える。一部の
ファイナンス・カンパニーは、これまで高い変動性を示してきた。しかし、これまで安定性を示
してきたファイナンス・カンパニーでも、商品やビジネスモデルに高いリスクが内在すると考え
られる場合、このサブ要因のスコアが低くなる可能性がある。このリスクを評価するために、特
に次の要素を考慮する。
»
13
NOVEMBER 6, 2015
ターゲット市場の信用プロファイルと人口動態の特徴
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
»
政治家、地域社会の指導者、一般大衆の認識
»
資本提供者の認識
»
商品・サービスの普及度(「主流」要因)
»
顧客にとっての商品/サービスの重要性
»
商品の陳腐化または汎用商品化の可能性
ムーディーズは、企業の最近の成長トレンドも考慮する。急速な成長は、リスク選好の高まりを
示す可能性があり、変動性を高める。急成長している企業は、自社のリスクマネジメント能力と
内部統制のプロセスとシステムを超えたリスクをとる可能性がある。これは、信用力を毀損する
重大なリスクマネジメントと内部統制の失敗を招く可能性がある。
資産および/またはキャッシュフローの潜在的変動性
資産および/
またはキャ
ッシュフロー
の潜在的変
動性
Aa/A
Baa
Ba
B
Caa
総体的に資産/キ
ャッシュフローの
潜在的変動性が
低い。高い変動性
を示唆する特徴を
持つ事業の割合
が小さい。資産/
キャッシュフロー
総額からみて、そ
のような事業は変
動性にほとんど影
響しない。
総体的に資産/キ
ャッシュフローの
潜在的変動性が
比較的低い。高い
変動性を示唆す
る特徴を持つ事
業の割合が小さ
い。資産/キャッシ
ュフロー総額から
みて、そのような
リスクが変動性に
与える影響は比
較的小さい。
総体的に資産/キ
ャッシュフローの
潜在的変動性が
平均並み。高い変
動性を示唆する
特徴を持つ事業
の割合が中程
度。かつ/または、
資産/キャッシュフ
ロー総額からみ
て、そのようなリス
クが変動性に与え
る影響は比較的
大きい。
総体的に資産/キ
ャッシュフローの
潜在的変動性が
平均を上回る。事
業の 5 割以上が
高い変動性を示
唆する特徴を持
つ。かつ/または、
資産/キャッシュフ
ロー総額からみ
て、そのようなリス
クが変動性に与え
る影響は大きい。
または、過去 2 年
で総資産が著しく
増加(年間増加率
25%以上)。
総体的に資産/キ
ャッシュフローの
潜在的変動性が
極めて高い。大半
の事業が高い変
動性を示唆する
特徴を持つ。かつ
/または、資産/キ
ャッシュフロー総
額からみて、その
ようなリスクが変
動性に与える影
響は非常に大き
い。または、過去
2 年で総資産が急
増(倍増)。
コーポレートガバナンスと経営陣の質
コーポレートガバナンスと経営陣の質が高ければ、将来、事業上の課題が発生する可能性や
その際の負の影響を低下させ、問題が発生しても迅速に対応できる。一般に金融機関は事
業会社に比べ、特に資金調達において、投資家や顧客の信認に左右されやすいため、ムー
ディーズはファイナンス・カンパニーのガバナンスと経営陣の質については高い基準を設定し
ている。
コーポレートガバナンスに関しては、取締役会、経営陣、株主の関係のみならず、取締役会と
経営陣が、株主と債権者の利益を実質的にどの程度均衡させているかに注目する。コーポレ
ートガバナンスと経営陣の質の分析では、相反する利益をどのようにバランスさせているかを
検討し、優先順位の変化を示す兆候を分析する。ムーディーズは、事業戦略や会計方針の
微小な変化や経営陣と投資家や市場アナリストとの討議から、その手がかりを得る。
アナリストは、コーポレートガバナンスと経営陣の質を分析する上で、次の側面に特に注目す
る。
1. 所有構造および組織の複雑さ:ファイナンス・カンパニーの持分や支配が企業内で集中
している、あるいは所有構造が複雑な場合(多数の少数株主による所有やピラミッド構造
など)、取締役会が支配株主に対して独立した監督権を行使することが難しくなり得る。こ
れは特に、メーカー系ファイナンス・カンパニーのように、取引関係が大株主に集中して
いる場合にみられる。
大株主、特に同族株主は、長期的な見地からの意思決定を促す。とはいえ、支配下にあ
る企業の取締役会は、支配株主、少数株主(少数株主の利益はガバナンス上、債権者の
利益と類似すると考えられる)、および債権者の間の複雑な利益相反を管理しなければ
14
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ならない。組織構造が極めて複雑、且つ/あるいは支配株主が経営上の主要な地位にあ
る場合、取締役会の責務はさらに難しいものになる。
2. 取締役会の独立性:取締役会が適切に機能するためには、経営陣と主要株主に拮抗で
きる独立した立場になくてはならない。ムーディーズは、ファイナンス・カンパニーの取締
役会は、その 3 分の 1 以上を独立した社外取締役が占めるべきであると考えている。アナ
リストと格付委員会は、当該企業または関連会社の信用上の特性、かつ(または)、当該
企業が拠点を置く当該地域における一般的な水準を考慮した場合に、より多数の独立し
た取締役が必要であると判断することがある。取締役が次の条件に当てはまる場合、独立
した取締役とはみなされない。(1)当該企業またはその関連会社の幹部であるか、過去に
幹部であった、(2)大株主の関係者であるか、過去に関係者であった、(3)現在、当該企
業、その関連会社の幹部、または大株主である者の家族、または過去にそのような立場
にあった者の家族、(4)大株主によって指名された場合、(5)当該企業またはその関連会
社と取引関係にある、または過去 5 年以内に取引関係にあった、(6)当該ファイナンス・カ
ンパニーまたはその関連会社から、通常の役員報酬以外に、コンサルティング料その他
の対価を受け取っている、または過去 5 年以内に受け取っていた。
また、ムーディーズは、十分な頻度での取締役の交代は、独立性を示しているとみなし、
在職期間の長い(10 年以上)取締役が多数存在することは、独立性の欠如を示している
と考えている。
「インサイダー」に対する多額の貸出(いわゆる関連当事者貸出 7)も、独立性が欠如して
おり、引受基準が適用されていないことを示している、あるいは引受基準が一律に適用さ
れていないとみられる状況を作り出すものと考えられる。そのような貸出は、利益相反の可
能性が内在するため、他の種類の貸出の集中よりも、取締役会または経営陣による対応
が困難な貸出集中を生む可能性がある。支配株主や幹部(またはどちらかの関連会社)
向けの貸出は、特に懸念される問題であるとムーディーズはみている。
3. 経営陣の質:経営陣の質と事業に関する専門知識は、最終的には他の分析上の側面、
特に経営陣の「実績」から形成される財務ファンダメンタルズに反映される。とはいえ、ム
ーディーズは、企業の長期的なパフォーマンスに直接的な影響を与えると考えられる経
営陣の質の定性的な側面についても、別途検討する。重要な検討項目は次の通りである。
»
経営陣の経験の幅と厚み(上級および中間レベルの経営陣)
»
キーマンリスク‐1-2 名の個人が経営を支配
»
経営陣の固定化、特に取締役会の権限が弱い、あるいは独立性にかける場合
»
リスクマネジメント慣行や事業部門とサポート部門とのバランス
»
経営陣の継続性/交替
»
承継の計画
»
事業目標を策定、実行する経営陣の能力と手腕
経営陣の質の項目では、幹部報酬に関する方針も考慮する。信用力を強化すると考えら
れる報酬体系とは、次のようなものである。
»
7
15
NOVEMBER 6, 2015
業績に連動している。
関連当事者貸出の定義は国によって異なるが、(a)役員(上位 5~10 位の上級幹部を含む)とその家族、および当該役員
やその家族が 5%超の持ち分を有する企業、(b)取締役(役員以外の取締役および監視委員((a)に含まれない役員お
よび取締役を含む))とその家族、および当該取締役が勤務するか、5%超の持ち分を有する企業、(c)大株主(発行体の
持分の 5%超を有する企業または個人を含む)、(d)非支配関連会社(少数株主、または 5%以上の持ち分を有する非連
結関連会社または子会社を含む)(e)政府が所有または支配するファイナンス・カンパニーの場合、政府系企業/地方自
治体に対する貸出が含まれる。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
»
過度のリスクテーキングを抑制するよう適切に設計されている。
»
株主と債権者の利益のバランスをとるよう配慮されている。
»
十分に長期的な要素が織り込まれている。
»
基本的な透明性を持つ。
»
過大な退職手当が規定されていない。
コーポレートガバナンスと経営陣の質
Aa/A/Baa (1)
Ba
B
Caa
所有構造および組織 安定的な所有構造と 所有構造が複雑(例:
一般的なレベルの組 多数の少数株主、株
の複雑さ
織の複雑性、一法人 式持合い、ピラミッド
の株式保有率が
構造、循環的出資な
ど)。または、一法人
50%未満。
(政府を含む)または
家族が 50%超の株
式を保有。
Ba と同様の複雑な
所有構造や個人によ
る株式保有に加え、
(i)複雑な組織構造
(取締役会や外部か
ら把握することが困
難)または(ii)家族に
よる株式保有または
政府関係者が経営
を支配。関連当事者
貸出が有形普通株
主資本の 25-50%。
無秩序な企業の売
却、譲渡、解散の可
能性があるため、所
有構造が極めて不
安定。関連当事者貸
出が有形普通株主
資本の 50%以上。
取締役会の独立性
独立した社外取締役
が取締役会の 3 分
の 1 以上、組織の規
模/複雑性からみて
適切な資質を有する
十分な数の独立した
社外取締役がおり、
その内 1 名以上が
会計/財務に関する
深い直接的経験を有
する。適切な頻度の
取締役交代により、
新たな視点を導入、
取締役会を適切な頻
度で開催(少なくとも
四半期に一度)。
独立した社外取締役
が取締役の 3 分の 1
未満。組織の規模/
複雑性からみて十分
な数の独立した社外
取締役がいるが、資
質が疑問視される場
合がある、適切な頻
度の取締役交代、取
締役会を適切な頻度
で開催。
独立した社外取締役
が取締役の 3 分の 1
未満。組織の規模/
複雑性からみて独立
した社外取締役の数
が不十分、あるいは
取締役の資質が劣
る、取締役の過度の
固定化がみられる、
取締役会の開催が
不定期。
独立した社外取締役
の数が不十分、頻繁
な取締役の交代が
事業戦略と財務状況
の不確実性を高め
る、取締役会が十分
な頻度で開催されな
い。
経営陣の質
重要なレベルにある
経営陣の経験の幅と
厚みが十分である。
キーマンリスクが低
い。慎重な承継の計
画。経営陣の報酬体
系が強力なリスクマ
ネジメントと整合し、
リスクマネジメントを
促進するよう設定さ
れている。透明性と
高い質の確保に対
する強力なコミットメ
ント。適切なタイミン
グでの財務報告。
重要なレベルにある
経営陣の経験の幅と
厚みがそれほど大き
くない。1-2 名の個人
が経営を支配。承継
計画が十分ではない
ため、経営の継続性
が不確実。事業上の
優先事項を実施する
には、経営陣の能力
と手腕を強化する必
要がある。経営陣の
報酬体系が強力なリ
スクマネジメントと十
分に整合していな
い。良好な透明性。
財務報告は適切なタ
イミングで行われ、
質も高いが、開示内
容が Aa/A/Baa に比
べ総合性、詳細性に
欠ける。
重要なレベルにある
経営陣の経験の幅と
厚みが不足してい
る。1-2 名の個人が
経営を支配。経営陣
の交代が差し迫って
いるが、承継計画が
不十分。実行可能な
事業計画を立案、実
施するための経営陣
の能力と手腕が疑問
視される。経営陣の
報酬体系が強力なリ
スクマネジメントと十
分に整合していな
い。財務報告は十分
な透明性と許容可能
な質を持ち、適切な
タイミングで行われ
ているが、一部の開
示内容が完全ではな
い。
経験不足、無秩序な
指導権の譲渡、人材
の流出、背任などに
よる非効率な経営。
財務状況を評価する
ために十分な質の財
務情報が適切なタイ
ミングで開示されな
い。
(1) 評価は A スコア。
16
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
リスクマネジメント
効果的で組織に深く組み込まれたリスクマネジメントのシステムは、ファイナンス・カンパニー
の全般的なリスクを低減する。リスクマネジメントが企業の全般的な事業理念に深く組み込ま
れるほど、事業部門がその規律を事業管理における不可欠な要素として組み入れる可能性
が高くなる。リスクマネジメントは、日常的なリスク(日常の業務リスク)であれ、サイクル性あるい
はイベントに起因するリスクであれ、企業が直面するリスクを低減あるいは抑制することや、利
益に結び付けられる場合はそれを利用することを目的とすべきである。総合すれば、これらの
リスクはコアの収益性と収益の予測可能性に影響を与え、極端な場合、リスクマネジメントが適
切に行われていなければ、企業の信用基盤は数日で深刻に毀損される可能性さえある。
リスクマネジメントの評価は、4 つの主要な柱、すなわちリスクガバナンス、リスクマネジメント、リ
スクの計測、リスクインフラおよびインテリジェンスに基づいている。主に検討するのは、組織
におけるリスク管理部門の重要性、独立性、権限である。ムーディーズは、上級経営幹部と取
締役会、およびリスクマネジメント部門と事業部門の間に抑制と均衡が効果的に作用している
ことを示す証左を探す。クォリティリスクマネジメントも、リスク制限を確立し維持する健全なシス
テム、ストレステストの定期的な実施、また特に重要な要素であるチーフ・リスク・オフィサー
(CRO) およびリスク管理部門の完全な独立性を特徴とする。
また、完全な独立性を有し、必要なノウハウを持つ取締役によって構成される、リスクマネジメ
ントの監督を担当する専門委員会(監査委員会またはリスクマネジメント委員会が担当する場
合が多いだろう)を通して、取締役会はリスクマネジメントに関与すべきだとムーディーズは考
えている。
リスクマネジメントは、ファイナンス・カンパニーの規模、構造、リスク選好とリスクプロファイルに
適したリスク情報システム、リスク計測ツール、リスクマネジメント慣行によって支えられていな
ければならない。
スコアカードでは、リスクマネジメントのスコアが他のリスクポジショニングのサブ要因の加重平
均スコアを上回ることはできない。これは、企業のリスクマネジメント慣行の質が、(1)全社的な
ガバナンスとマネジメントの質を上回る可能性は低く、(2)資産とキャッシュフローの潜在的変
動性、取引先の集中、流動性管理によって明示される実証されたリスク許容度から判断する
のが最も適切である、というムーディーズの見解を反映している。
17
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
リスクマネジメント
Aa/A
優れたリスクマネジメント慣行
取締役会も上級経営幹部も主要なリスクを非常によく認識しており、年次ベースでリスク選好を設定
し、少なくとも四半期ごとに全てのリスクに関する問題点を議論している。経営幹部はリスクに関す
る問題点を毎月継続的に議論している。専任のチーフ・リスク・オフィサー(CRO)が独立して取締役
会に対する報告を行っている。リスク管理部門は業務管理から完全に独立しており、拒否権を持
つ。リスクマネジメントが企業の意思決定の重要な要素となっている。非常に質が高く頑健な情報シ
ステムおよびリスクマネジメント慣行がある。全てのリスクが個別に計測されているほか、総合的な
リスク指標(エコノミック・キャピタルなど)によっても計測されている。貸出ポートフォリオの見直しが
四半期ごとに行われ、問題のある顧客または業種向けの貸出の見直しが定期的に行われている。
全てのリスクについてストレス分析が定期的に行われている。リスク調整後ベースのパフォーマンス
指標(RAROC 等)が全社で用いられている。
注:A のスコアを付与されるためには、上記の全ての要件を満たさなければならない。
Baa
非常に良好なリスクマネジメント慣行
取締役会も上級経営幹部も主要なリスクをよく認識しており、年次ベースでリスク選好を設定し、少
なくとも四半期ごとに全てのリスクに関する問題点を議論している。経営幹部はリスクに関する問題
点を毎月継続的に議論している。専任のチーフ・リスク・オフィサー(CRO) が、独立して取締役会に
対する報告を行うことができる。CRO は必ずしも経営委員会に参加していない。リスク管理部門は
業務管理から独立しているが、助言者的な役割が大きく、拒否権を持たない。リスクマネジメントが
企業の意思決定の重要な要素となっている。質の高い情報システム、リスク計測ツール、およびリ
スクマネジメント慣行がある。貸出ポートフォリオの見直しが半年ごとに行われ、問題のある顧客ま
たは業種向けの貸出の見直しが定期的に行われている。ストレス分析とリスク調整後ベースのパフ
ォーマンス指標(RAROC 等)が主要な業務で用いられている。
注:Baa のスコアを付与されるためには、これらのほとんどの要件を満たさなければならない。
Ba
十分なリスクマネジメント慣行
取締役会は主要なリスクを認識しているが、リスク選好の設定における役割は限定的である。取締
役会は少なくとも正式には年に 2 度、全般的なリスクに関する問題点を上級経営幹部と議論してい
る。経営幹部は毎月リスクについて議論している。必ずしも導入されているとは限らないが、チーフ・
リスク・オフィサー(CRO) の役割の重要性が認識され始めている。経営幹部へのエクスポージャー
に関する報告が定期的に行われており、リスク管理部門が経営幹部から権限委譲を受けている。リ
スク管理部門は業務部門から独立している。十分な情報システムおよびリスクマネジメント慣行が
あるが、一層の統合あるいは高度化が必要である。貸出ポートフォリオの見直しは少なくとも年に 1
度行われ、規模の大きい貸出先およびエクスポージャーについてはより頻繁に行われている。リス
ク調整後ベースのパフォーマンス指標(RAROC またはこれに相当するもの)が用いられている場合
がある。ストレステストは規模の大きいエクスポージャーについてのみ、必要性に応じて行われる。
B
やや有効性の低いリスクマネジメント慣行
取締役会も上級経営幹部も主要なリスクをある程度認識しているが、ガバナンス構造は十分とはい
えない。リスク選好の設定への取締役会の関与は限定的である(上級経営幹部の役割となってい
る)。リスクに関する問題点が取締役会で議論されるのは年 2 回未満である。リスクガバナンス体制
が発展途上で、専任のチーフ・リスク・オフィサー(CRO)は存在しない。リスク管理部門の独立性が
完全ではなく、業務部門に報告を行う。正式に定期化された年次の貸出ポートフォリオの見直しは
行われていない。情報システムは開発途上。リスクに関するデータの質、提示、適時性にばらつき
があり、リスクの計測およびモニタリングが弱い。リスク調整後ベースのパフォーマンス指標
(RAROC またはこれに相当するもの)は用いられていない。ストレステストの実施も限定的。
Caa
有効性の低いリスクマネジメント慣行
取締役会も上級経営幹部も主要なリスクをあまり認識しておらず、ガバナンス構造は弱い。リスク選
好や戦略の決定に取締役会が関与していない。経営幹部がリスクに関する問題点を議論すること
もあるが、議論は表面的で、議論の頻度も低いため有効とはいえない(年に 1 度またはそれ以下で
ある)。全ての業務リスクを包括的に監視する専任のチーフ・リスク・オフィサー(CRO)は存在しな
い。リスク管理部門は業務部門から独立していない。信用リスク委員会の会合は不定期。情報シス
テムが弱いため、リスクに関するデータの質、提示、適時性が低い。ストレステストおよびリスク調整
後のパフォーマンス指標(RAROC またはこれに相当するもの)は用いられていない。
18
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
主要取引先の集中
大半のファイナンス・カンパニーが持つ特徴の一つは、顧客(ファイナンス・カンパニーが顧客
ファイナンスや他の金融サービスを提供する対象を含む)やサプライヤーなど主要取引先の
集中度が高いことである。メーカー系ファイナンス・カンパニーのように、所有構造がその要因
となっている場合が多い。顧客の集中度が高い企業は、ローン、リース、受取債権を回収でき
るかどうかが問題になった場合、多額の評価損を計上する可能性がある。主要顧客を失えば、
多額の収入と利益を失う。主要サプライヤーを失えば、業務上重大な問題が生じる。主要取
引先の集中に伴うリスクは、顧客やサプライヤーの財務力によって緩和できる場合がある。た
とえば、売上が高格付の顧客に集中しているファイナンス・カンパニーは、売上が低格付の顧
客に集中しているファイナンス・カンパニーに比べ、顧客が財務面で苦境に陥る懸念が少な
い。しかし、顧客の財務力は、顧客やサプライヤーの戦略の方向性の変更や、競合他社との
取引開始による顧客との関係の悪化など、取引先の集中に関連して他の問題が発生するリス
クを排除することはできない。
主要取引先の集中
Aa/A
主要取引先 資産および/また
はキャッシュフロ
の集中
ーの源泉が高度
に分散されてい
る。上位 20 のエ
クスポージャーが
有形普通株主資
本の 80%未満、
且つ、同 10%を超
える個別エクスポ
ージャーがない。
上位 10 顧客が総
収入に占める割
合が 25%未満、
且つ、単独で総収
入の 10%超を占
める顧客がいな
い。
Baa
Ba
B
Caa
資産および/また
はキャッシュフロ
ーの源泉が十分
に分散されてい
る。上位 20 のエ
クスポージャーが
有形普通株主資
本の 100%未満、
且つ、同 15%を超
える個別エクスポ
ージャーがない。
上位 10 顧客が総
収入に占める割
合が 30%未満、
且つ、単独で総収
入の 15%超を占
める顧客がいな
い。
資産および/また
はキャッシュフロ
ーの源泉の分散
が平均並み。上
位 20 のエクスポ
ージャーが有形普
通株主資本の
200%未満、且
つ、同 30%を超え
る個別エクスポー
ジャーがない。上
位 10 顧客が総収
入に占める割合
が 40%未満、且
つ、単独で総収入
の 20%超を占め
る顧客がいない。
あるいはメーカー
系ファイナンス・カ
ンパニー(親会社
の格付が Baa 以
上)。
資産および/また
はキャッシュフロ
ーの源泉がある
程度分散されてい
る。上位 20 のエ
クスポージャーが
有形普通株主資
本の 300%未満、
且つ、同 50%を超
える個別エクスポ
ージャーがない。
上位 10 顧客が総
収入に占める割
合が 50%未満、
且つ、単独で総収
入の 20%超を占
める顧客がいな
い。あるいはメー
カー系ファイナン
ス・カンパニー(親
会社の格付が
Ba/B 以上)。ある
いは主要取引先
への集中度が
40%超。
資産および/また
はキャッシュフロ
ーの源泉の分散
度が低い。上位
20 のエクスポー
ジャーが有形普
通株主資本の
300%超、且つ/ま
たは、同 50%を超
える個別エクスポ
ージャーがある。
上位 10 顧客が総
収入に占める割
合が 50%超、且
つ/または、単独
で総収入の 20%
超を占める顧客
が存在する。ある
いはメーカー系フ
ァイナンス・カンパ
ニー(親会社の格
付が Caa 以下)。
あるいは主要取
引先への集中度
が 70%超。
流動性管理
ファイナンス・カンパニーが継続的に現金を調達できる能力は、事業モデルの不可欠な要素
である。ファイナンス・カンパニーは、市場の信認への感応度が高いホールセール調達への
依存度が高い。この点で、市場要因のストレスに対し耐性を持つ安定的で低コストのリテール
預金を有する銀行に比べ、ファイナンス・カンパニーは極めて不利である。企業固有の要因あ
るいは市場イベントによって流動性危機が発生すれば、たとえ最も強固なファイナンス・カン
パニーでも深刻な影響を受ける。一方、流動性が潤沢であれば、ファイナンス・カンパニーは
厳しい状況下で十分な資金を確保できる。本格付手法では、財務以外の要因の分析でも、
財務要因の分析でも、流動性を検討する。これは、ファイナンス・カンパニーの分析において
流動性が最も重要であることを示している。
ムーディーズはファイナンス・カンパニーの流動性を、市場イベントに対処する柔軟性と、スト
レス下でのオリジネーションのための資金調達能力という面から評価する。ムーディーズのスト
レスシナリオは、(a)24 ヶ月間、無担保でも担保付でも資本市場から調達できない、(b)負債
は全て満期時に返済しなくてはならず、債務証書に含まれるプットオプションは行使される、
(c)全ての配当と利息を支払う、(d)全ての営業費用を支払う、(e)ポートフォリオを営業基盤
19
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
の維持に必要な水準まで補充できるように、新規事業の資金調達が継続的に行われる、とい
う想定を織り込んでいる。様々なストレス状況下で必要となる現金を調達するための詳細な計
画と、手元流動性に加えて確実な代替流動性源を有するファイナンス・カンパニーは、ムーデ
ィーズのストレスシナリオ分析とこのサブ要因の分析において、最も高く評価される。
極めて確実な流動性源とみなされるオンバランスの項目は、現金と Aaa 格の政府債務および
政府機関債である(低率のヘアカットを適用する)。偶発事象に備えた極めて確実な流動性コ
ミットメントとみなされるのは、銀行が提供する満期 2 年以上の無担保のコミットメントラインであ
る。ここでいう負債には、オンバランスとオフバランス、有担保と無担保、リコースとノンリコース
のいずれの負債も含まれる。ノンリコース負債(証券化商品など)を分析に含めるのは、ファイ
ナンス・カンパニーがこれらの負債の返済に自社のキャッシュフローを用いる必要はないとは
いえ、これらの負債は主要な調達源としての役割を果たすとみられ、これらの調達源が利用で
きなくなれば、取引量が減少し、ファイナンス・カンパニーの営業基盤が毀損されるからである。
また、資産の質のパフォーマンスと利ざやの不確実性を反映させるため、営業キャッシュフロ
ーとポートフォリオのキャッシュフローについても、ストレスケースを用いたストレステストを行う。
さらに、信用市場の力学の地域差も、必要に応じて分析に織り込む。
現実に流動性が逼迫する期間に、使途に制約のない質の高い金融資産を持つファイナンス・
カンパニーは、資産売却や、正味ポートフォリオの減少につながる新規事業の縮小によって、
流動性を生成できる可能性がある。このような手段での流動性の確保は、キャッシュフローの
タイミングと金額が不確実であることや、新規事業から実質的に撤退した場合、営業基盤が毀
損することから、分析においては二次的で重要性の低い考慮事項である。
ファイナンス・カンパニーの向こう 24 ヵ月の流動性の分析に加え、ムーディーズはより長期的
な分析も行い、どの時期にも多額の借り換えの必要性が生じないように満期が適切に構成さ
れているかどうかを判断する。また、流動性モニタリングとコントロール体制の厳密さ、ならびに
偶発事象発生時の対応策と流動性ストレステストの評価も行う。
流動性管理
Aa/A
流動性管理 向こう 24 ヶ月のいかな
る時点においてもネット
資金の黒字を維持し、負
債の満期構成は全体的
に効率的。調達源のタイ
プ、資金提供者の性質、
地理的市場が高度に分
散している。タイムリーで
十分に詳細な情報を提
供する優れた情報システ
ムに基づく効率的な取締
役会と上級経営幹部に
よる監督に支えられた、
企業固有あるいは市場
関連の危機において必
要とされる正味調達額の
分析を織り込んだ極めて
優れた偶発事象発生時
の流動性対応策が策定
されている。
20
NOVEMBER 6, 2015
Baa
Ba
B
Caa
向こう 24 ヶ月のいかな
る時点においても、事業
縮小を最低限にとどめな
がら(営業基盤が悪化す
るリスクはない)ネット資
金の黒字を維持できる。
全体的に効率的な負債
の満期構成。調達源のタ
イプ、資金提供者の性
質、地理的市場が十分
に分散している。効率的
な取締役会と上級経営
幹部による監督とタイム
リーで十分に詳細な情報
を提供する優れた情報
システムに支えられた、
企業固有あるいは市場
関連の危機において必
要とされる正味調達額の
分析を織り込んだ優れた
偶発事象発生時の流動
性対応策が策定されて
いる。
向こう 24 ヶ月のいかな
る時点においてもネット
資金の黒字を維持する
ためには、かなりの事業
縮小が必要(営業基盤
が悪化するある程度のリ
スク)。全体的に良好な
負債の満期構成。調達
源のタイプ、資金提供者
の性質、地理的市場が
ある程度分散している。
効率的な取締役会と上
級経営幹部による監督と
適切な情報システムに
支えられた、企業固有あ
るいは市場関連の危機
において必要とされる正
味調達額の分析を織り
込んだ十分な偶発事象
発生時の流動性対応策
が策定されている。
向こう 24 ヶ月のいかな
る時点においてもネット
資金の黒字を維持する
ためには、大幅な事業縮
小が必要(営業基盤を維
持できても、毀損するリ
スクが大きい)。負債の
満期の集中度が高い。
調達源の分散が限定的
で、銀行および/または
民間機関に集中。企業
固有あるいは市場関連
の危機において必要とさ
れる正味調達額の分析
を織り込んだ偶発事象発
生時の流動性対応策は
現実性が低く、それを支
える取締役会と上級経
営幹部による監督ならび
に情報システムが疑問
視される。
向こう 24 ヶ月においてネ
ット資金の黒字を維持す
るためには、営業基盤の
毀損につながる事業と収
益資産の大幅な縮小を
余儀なくされる。負債の
満期の集中度が極めて
高い。単一のファシリティ
または資金提供者への
依存度が極めて高く、継
続的な調達が疑問視さ
れる。取締役会と経営陣
の監督が非効率で、情
報システムが弱いため、
偶発事象発生時の流動
性対応策が不十分。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
要因 3:事業環境
この要因を重視する根拠
ファイナンス・カンパニーの業績は事業環境に影響される。景気サイクルの悪化、不安定な政
治情勢、脆弱な法制度は、それ自体で、あるいは重なることにより、事業機会を制約し、事業
計画の実施を阻害し、財務パフォーマンスを悪化させる。高度に発達し、変動性の低いシス
テムは、安定的で予測可能な事業パフォーマンスにつながる。事業環境は多くの側面で地域
によって異なるが、ファイナンス・カンパニーにとって最も関わりの深い特性は、経済の活力と
変動性、法の支配と法制度の効率性、社会・政治制度の安定性、競争力学、金融システムと
業界の構造である。
評価方法
ファイナンス・カンパニーの事業環境の評価では、ムーディーズのソブリン格付手法 8に含ま
れるマクロレベルの指標である「経済力」「制度の頑健性」「イベントリスクに対する感応性」を
考慮する。
1. 経済力:ムーディーズのソブリン格付グループは、経済力を評価する要因スコアを公表し
ている。この要因は、ある国の経済構造を評価するもので、一人当たり GDP、経済の多様
性/規模、長期トレンドを考慮する。経済力は、「非常に強い」「強い」「中位」「弱い」「非常
に弱い」というスコアによって評価する。 に含まれるマクロレベルの指標である「経済力」
「制度の頑健性」「イベントリスクに対する感応性」を考慮する 9。
2. 制度の頑健性:ムーディーズのソブリン格付グループは、制度の頑健性を評価する要因
スコアを公表している。この要因は、ある国の制度の強固さと政策の予測可能性を評価し、
法の支配、ガバナンス、透明性などの要因を考慮する。制度の頑健性は、「非常に強い」
「強い」「中位」「弱い」「非常に弱い」というスコアによって評価する。
3. イベントリスクに対する感応性:ムーディーズのソブリン格付グループは、イベントリスクに
対する感応性を評価する要因スコアを公表している。この要因は、ある国の信用プロファ
イルが突然、直接的な脅威に晒されるリスクを評価するもので、財政ストレス、経済ストレス、
政治ストレスへのエクスポージャーを考慮する。イベントリスクに対する感応性は、「非常に
高い」「高い」「中位」「低い」「非常に低い」というスコアによって評価する。
事業環境の評価は、同一のシステムに属する全てのファイナンス・カンパニーに一律に適
用される。アナリストは必要に応じて、事業環境の評価にサブソブリンに関する考慮を織り
込む。資産または利益の大きな部分(20%超)を他国で保有する(直接的に、あるいは子
会社を通じて)ファイナンス・カンパニー、あるいは、国内システムの特性が事業活動にと
ってさほど重要性を持たないファイナンス・カンパニーについては、資産と収益の地域構
成に基づいて、全体的な事業環境を反映する融合的なサブ要因スコアを用いることを検
討する。
スコアカードでは、事業環境のスコアが他の財務以外の要因に付与されたスコアの加重
平均で示される水準を超えることはない。これは、良好な事業環境が企業の本質的な特
性を緩和できる度合いには限界があるというムーディーズの見方を反映している。
事業環境(ムーディーズのソブリン格付グループが公表している要因スコア)
21
NOVEMBER 6, 2015
Aa/A
Baa
Ba
B
Caa
経済力
非常に強い
強い
中位
弱い
非常に弱い
制度の頑健性
非常に強い
強い
中位
弱い
非常に弱い
イベントリスクに対する感応性
非常に低い
低い
中位
高い
非常に高い
8
2013 年 10 月発行のムーディーズの “Sovereign Bond Ratings"(日本語版「ソブリン債の格付」)
9
経済力、制度の頑健性、イベントリスクに対する感応性の要因スコアには、簡略化のため、「+」「-」の付加記号は付されな
い。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
財務要因
ムーディーズの格付は、リスクの相対的なランク付けでありグローバルな比較ができることを意
図している。そのために、ファイナンス・カンパニーのスコアカードは、信用リスクの評価に有意
義で、世界の大半のファイナンス・カンパニーについて入手可能なデータに基づく比率を重
視している。過去データに基づく比率(3 年平均と直近の報告期間)と見通しに基づく比率を
分析し、どちらの財務データがファイナンス・カンパニーの継続的な業績をより適切に反映し
ているかを判断する。アナリストは、シナリオ分析(ストレスケース)も行う。また、ファイナンス・
カンパニーの財務データを分析する際には、グローバル格付の一貫性を高めるため、標準的
調整手法を適用する。会計基準と開示基準は地域により異なるため、比率の国際比較ができ
ない場合もあることをムーディーズは認識している。アナリストと格付委員会は、スコアカードへ
の比率の入力値を調整した方が、特定の要因またはサブ要因に関するファイナンス・カンパ
ニーの単独ベースの位置付けをより正確に表せる場合、自己の判断に基づいて入力値を調
整する。
次に述べるように、スコアカードの財務比率には、全てのファイナンス・カンパニーの評価に用
いられるものと、特定のタイプのファイナンス・カンパニーのみに用いられるものがある。スコア
カードでは、ファイナンス・カンパニーを(1)伝統的なファイナンス・カンパニー(企業・消費者
向けローン、ファイナンスリース)、(2)リース資産の貸し手(耐用期間が中長期の資産のオペ
レーティングリース)、(3)ビジネス・ディベロップメント・カンパニー(企業向けファイナンスと投
資を主要事業とする登録投資会社)およびキャッシュフロー・ベースのビジネス(回転期間が
短い受取債権、サービシング収益、付帯的金融サービス)、の 3 タイプのビジネスモデルに分
類する。
スコアカードでは、財務要因の総合スコアに 40%のウェイトを付加する。財務要因の総合スコ
アは、「収益性」「自己資本の充実度」「資産の質」にそれぞれ 22%のウェイトを付加し、分析上
の重要性が高い「流動性」には 34%のウェイトを付加して算出する(付録 1 参照)。
要因 1:収益性
この要因を重視する根拠
収益力は金融機関の長期的な成功または失敗を左右する重要な決定要因である。これは、
ファイナンス・カンパニーが経済価値を創造し、それを経営資源に投入することで、債権者の
リスクからの保護を維持、改善する能力を評価するものである。コア収益または経常収益は、
信用関連損失や市場リスク、オペレーショナルリスク、事業リスクによる損失を吸収する最初の
防衛手段となる。また、ファイナンス・カンパニーは高い頻度で多額の借り換えを行う必要があ
り、そのために投資家の信認を維持する必要があるという観点からも、強固な収益性は非常
に重要な要因である。
評価方法
税引前・貸倒引当前利益/平均管理資産 [PPI/AMA]:税引前・貸倒引当前利益は、ファイナン
ス・カンパニーのコアの収益力を反映しており、将来の信用コストに対する主要なバッファーと
なる。ここでは、平均管理資産に対する収益の比率を評価する。この比率は、証券化資産や
セール・リースバック資産などのオフバランス資産を反映するため、オンバランスの総資産に
対する比率よりも、リスクをより的確に測定できることが多い(しかし、会計規則の変更に伴い、
これらの項目の多くは現在ではバランスシートに計上されている)。
純利益/平均管理資産 [NI/AMA]:信用コストや税金を含む全ての費用を差し引いた後のボト
ムラインの収益性を示す指標である。ここでも、上述した理由から、分母には平均管理資産を
用いる。
利息・税・減価償却費控除前利益/支払利息・優先株配当 [EBITDA/支払利息・優先株配
当]:営業キャッシュフローによって債務返済をカバーする能力を測定する比率である。この比
22
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
率を用いるのは、キャッシュフロー・ベースのビジネスモデルを採用しているファイナンス・カン
パニーのみである。
税引前利益の標準偏差/平均税引前利益 [税引前利益の変動係数]:ファイナンス・カンパニ
ーの定期的な税引前利益の変動性を測定する。この比率の算出にあたっては、ファイナン
ス・カンパニーの財務報告の頻度(毎四半期、毎半期、毎期等)に従い、過去(最低 3 年、最
長 10 年)において最も有意義と思われる全てのデータを用いる。
収益性
PPI/AMA
純利益/AMA
EBITDA/支払利息・優先株配当
税引前利益の変動係数
Aa/A
Baa
Ba
B
Caa
>
><
><
><
<
5%
2.5% - 5%
1% - 2.5%
0.5% - 1%
0.5%
2.5%
1% - 2.5%
0.5% - 1%
0% - 0.5%
0%
6x
5x – 6x
3.5x – 5x
1.0 – 3.5x
1.0
<
><
><
><
>
15%
15% - 40%
40% - 55%
55% - 70%
70%
要因 2:流動性
この要因を重視する根拠
ファイナンス・カンパニーは資産のオリジネーションを維持するために、調達市場から継続的
に資金調達を行う必要がある。ホールセール市場からの調達は不確実性を伴うため、流動性
の指標として、直ちに利用できるオンバランスの資金と偶発事象に備えた流動性コミットメント
の、満期を迎える負債に対する比率を考慮する。また、有担保負債によって調達された資産
の金額も考慮する。この分析は、「財務以外の要因」のセクションで検討した「流動性管理」の
サブ要因を補完するものである。
評価方法
(使途に制約のない現金+使途に制約のない Aaa 格のソブリン債の 98%+使途に制約のない
Aaa 格の政府機関債の 95%+利用可能な無担保の銀行コミットメントライン)/ 向こう 24 ヵ月以
内に満期となる負債(証券化を除く)[24 ヵ月有利子負債カバレッジ比率]:ムーディーズが極
めて確実性が高く、即座に使用可能と考える流動性源によって、向こう 24 ヵ月以内に満期と
なる負債をカバーする能力を測定する。この流動性源には、使途に制約のない現金、Aaa 格
の政府証券および政府機関証券(低率のヘアカットを適用)、および P-1 格付の銀行が提供
する満期 2 年超の無担保のコミットメントラインが含まれる 10。負債には、全ての借入債務(タ
ーム物証券化などのノンリコースの自己回収構造の負債を除く)が含まれる。
有担保負債/総有形資産:有担保負債によって調達したグロス有形資産(貸倒損失引当前)
の金額を評価する指標である。有担保負債に大きく依存することは、ファイナンス・カンパニー
の財務の柔軟性を低下させる。有担保負債は資産の使途を制約するため、予期しない資金
の必要性が生じた場合に資産を流動性源として利用できないからである。有担保負債の水準
が高い場合、あるいは、ファイナンス・カンパニーの資本を構成する有担保負債の割合が上
昇している場合、この比率はシニア債権者の構造的劣後を示す指標にもなる。この比率を分
析する上で、アナリストは、アセットクラスと市場ごとの定性的な相違点を、投資需要の底堅さ、
市場の厚み、資産の流動性などの面から検討する。
10
23
NOVEMBER 6, 2015
格付委員会は、Aaa 格ではないソブリン債や、適切な投資適格等級の格付を有する相手方からの複数年のバックアップ
コミットメントラインについて、高率のヘアカットを適用して選択的に流動性源に含む権限を有する。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
流動性
Aa/A
Baa
Ba
B
Caa
>
><
><
><
<
24 ヵ月カバレッジ比率
100%
85% - 100%
70% - 85%
50% - 70%
50%
<
><
><
><
>
有担保負債/総有形資産
10%
10% – 20%
20% - 35%
35% - 60%
60%
要因 3:自己資本の充実度
この要因を重視する根拠
自己資本は、格付上の重要な検討事項である。十分な自己資本(および流動性)がなければ、
ファイナンス・カンパニーはシステミックな危機や個別の危機を乗り切ることができない。十分
な自己資本があれば、ストレス状況下でも資本市場から有利な条件で資金調達でき、経営陣
は財務の柔軟性によって好機を生かした買収、売却、評価減を伴う事業撤退などを有利に実
施することができる。他の大半の業界に比べ、金融機関はレバレッジの高い事業体である。ス
コアカードには、全てのファイナンス・カンパニーに関し、銀行と同じ手法で算出したレバレッ
ジ比率が含まれるが、伝統的なファイナンス・カンパニー、設備リース会社(主としてオペレー
ティングリース)、ビジネス・ディベロップメント・カンパニー、キャッシュフロー・ベースのビジネ
スモデルを採用するファイナンス・カンパニーなど、事業モデルによって評価の基準値は異な
る。また、キャッシュフロー・ベースのビジネスモデルを採用しているファイナンス・カンパニー
については、有利子負債/EBITDA も指標として用いる。
評価方法
有形普通株主資本/有形管理資産:有形普通株主資本は、総株主資本から優先株、少数株
主持分、公正価格剰余金/売却可能有価証券評価差額金、資産(再)評価差額金、ヘッジ準
備金/キャッシュフロー・ヘッジの調整、営業権、関連する繰延税金債務を控除した他のすべ
ての無形資産を差し引き、ハイブリッド証券と優先株式のエクイティ部分 11を加えて算出する。
ここでは、有形管理資産に対する自己資本の比率を評価する。この比率は、証券化資産やセ
ール・リースバック資産などのオフバランス資産を反映するため、オンバランスの総資産に対
する比率よりも、リスクをより的確に測定できることが多い(しかし、会計規則の変更に伴い、こ
れらの項目の多くは現在ではバランスシートに計上されている)。
負債/利息・税・減価償却費控除前利益 [負債/EBITDA]:ファイナンス・カンパニーが営業キャ
ッシュフローによってレバレッジを引き下げる能力を評価する。この比率を計算する際に、無
担保負債は必ず負債に含める。ノンリコース負債も含めた有担保負債については、担保とな
るキャッシュフローが EBITDA に含まれる場合は、負債に含める。支店をベースとするビジネ
スモデルを採用しているファイナンス・カンパニーについては、資本化されたオペレーティング
リースとオフバランスのファイナンスリースを負債に含めるという調整を行う。オペレーティングリ
ースの資本計上額は、年間リース料の 8 倍とする。この比率を用いるのは、ペイデイ・ローン会
社や住宅ローン会社等のキャッシュフロー・ベースのビジネスモデルを採用しているファイナ
ンス・カンパニーのみである。
11
24
NOVEMBER 6, 2015
“Hybrid Equity Credit" (March 2015)(日本語版「ハイブリッド証券のエクイティクレジット」)参照。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
自己資本の充実度
Aa/A
Baa
Ba
B
Caa
>
><
><
><
<
伝統的なファイナンス・カンパニー
16%
12% - 16%
8% - 12%
4% - 8%
4%
リース資産の貸し手
27%
20% - 27%
14% - 20%
11% - 14%
11%
ビジネス・ディベロップメント・カンパニー
67%
60% - 67%
55% - 60%
50% - 55%
50%
<
><
><
><
>
2.5x
2.5x – 3.0x
3.0x – 4x
4x – 5.5x
5.5x
有形普通株主資本/有形管理資産
負債/EBITDA
要因 4:資産の質
この要因を重視する根拠
資産の質は、伝統的なファイナンス・カンパニーの収益と自己資本の生成を左右する主要要
因である。したがって、強固かつ予測可能な資産の質は、そのようなファイナンス・カンパニー
にとって重要な成功要因である。資産の質に関する予想外の問題の発生は、ファイナンス・カ
ンパニーが直面するリスク要因の中で最も重要なものの一つである。また、資産の質は、ファ
イナンス・カンパニーの流動性プロファイルの中で、特に注目される要因でもある。予想外の
資産の質の悪化に対して投資家がネガティブに反応すれば、企業が必要な資金を調達する
能力が損なわれる。一方、高い質を維持する資産があれば、企業が他の要因に関連した一
時的な不振に陥った場合の代替流動性源となる。
リース資産の貸し手であれば、評価損計上が資産の質の問題を警告するサインとなるが、こ
の種の費用は何らかのイベントに起因することが多いため、将来の資産の質の問題を予測す
るものではない。そのような企業の将来の資産の質を予想するためには、残存価値エクスポ
ージャーの方がより有用な指標である。
一部のキャッシュフロー・ベースのビジネスモデルを採用しているファイナンス・カンパニーは、
伝統的な貸出と収益資産のリースを収益源としていないため、資産の質の指標はスコアカー
ドに含まれていない。
評価方法
不良債権/総貸出:不良債権は、(1)IFRS またはそれに概ね類似した会計基準に基づいて財
務報告を行うファイナンス・カンパニーについては、IAS 39 号パラグラフ 59 が定義する「減損
貸出金」、または(2)未収利息計上停止債権と 90 日以上延滞の未収債権から構成される。フ
ァイナンス・カンパニーによる不良債権の開示は統一されていないため、ムーディーズは必要
に応じて調整を行う。
不良債権/(株主資本+貸倒引当金):不良債権(定義は前述の通り)は、株主資本と貸倒引当
金との対比で評価する。
なお、不良債権のマッピングは、90 日以上延滞債権の開示に基づく。60 日以上延滞債権し
か開示されない場合、マッピング結果を 3 分の 1 引き下げる。
リース残存価値/有形普通株主資本:リース会社については、残存価値の集中と、予想外の残
存価値の減少に備えた準備金の役割を果たす株主資本の水準を評価する。リース残存価値
は、正味リース投資額から将来の最低リース料の現在価値を差し引いて算出する。この残存
価値のエクスポージャーを評価する際には、アセットクラス間の定性的な相違点を考慮に入れ
る。
25
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
資産の質
Aa/A
Baa
Ba
B
Caa
<
><
><
><
>
不良債権/総貸出
0.7%
0.7% - 1.7%
1.7% - 4%
4% - 6.7%
6.7%
不良債権/(株主資本+貸倒引当金)
6.7%
6.7% - 10%
10% - 16.7%
16.7% - 23.3%
23.3%
リース残存価値/有形普通株主資本
50%
50% - 100%
100% - 200% 200% - 300%
300%
財務諸表分析における標準的調整
ムーディーズは、取引および事象の根底にある経済的実態をより反映させるため、また、地域
間や会計基準が異なる財務諸表間の比較可能性を高めるために、財務諸表の調整を行う。
本格付手法に示された財務指標はほとんどの場合、調整後データを用いて算定されている。
各ファイナンス・カンパニーについて行う必要のある標準的調整に加え、根底にある経済的実
態をより反映し、同業他社との比較可能性を高めるため、財務諸表に非標準的な調整を加え
ることがある。例えば、信用分析上、より適切とムーディーズが考える推定または想定を反映
するために財務諸表を調整することもある。また、特定の国・地域の会計基準や IFRS の解釈
が、分析に影響を与える領域において標準的なものと異なる場合も、非標準的な調整を加え
ることがある 12。
ストレステストおよびシナリオ分析
予想ケース、およびストレスケースにおける、ファイナンス・カンパニーの将来的な財務実績評
価の想定は、全般的な信用力評価において重要である。予想ケースは、現在の市況につい
てのムーディーズの意見を反映した、ファイナンス・カンパニーの中期的な実績を予想するも
のである。
ムーディーズは通常、付与した格付は、ある程度のストレスに耐え、格付変更の必要がないも
のと想定している。そのシナリオが実現すれば発行体の信用プロファイルが大幅に悪化する、
深刻なストレスシナリオについても、そうしたストレスケースが中期的に実現した場合、付与し
た格付を数ノッチ以上引き下げることはなく、従って格付の安定性が維持される。
財務実績が浅いファイナンス・カンパニーの格付
一定の状況下で、財務実績が浅い(スタートアップ)企業に銀行格付を付与することがあるが、
そうした企業は不確実性が高く、従って、分析上の課題がある。クロス・セクター格付手
法”Special Rating Considerations for Financial Institutions with Limited Financial History”におい
てこうした状況・課題について議論しており、公表財務諸表や、事業が確立された企業と比べ
た事業・財務上の強みを示す実績がない場合に、アナリストが考慮する調整について述べて
いる。
12
26
NOVEMBER 6, 2015
ムーディーズの調整については、クロス・セクター格付手法「金融機関の分析における財務諸表調整手法」(ムーディー
ズ・ジャパン版、2015 年 7 月)参照。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
付録 1:ファイナンス・カンパニーのスコアカードのウェイト
要因
60%
財務以外の要因
営業基盤の
位置付け
リスクポジシ
ョニング
事業環境
40%
財務要因
収益性
流動性
自己資本の
充実度
資産の質
カテゴリー内
のウェイト
全体におけ
るウェイト
25.0%
15.0%
60.0%
15.0%
22.0%
34.0%
22.0%
22.0%
36.0%
9.0%
8.8%
13.6%
8.8%
8.8%
サブ要因の
ウェイト
全体における
ウェイト
市場地位と持続可能性
50.0%
7.5%
事業の分散
50.0%
7.5%
資産/キャッシュフローの潜在的変動性
20.0%
7.2%
コーポレートガバナンスと経営陣の質
20.0%
7.2%
リスクマネジメント
20.0%
7.2%
主要取引先の集中
20.0%
7.2%
流動性管理
20.0%
7.2%
経済力
33.3%
3.0%
制度の頑健性
33.3%
3.0%
イベントリスクに対する感応度
33.3%
3.0%
税引当前利益/平均管理資産
25%
2.2%
純利益/平均管理資産
25%
2.2%
EBITDA/支払利息+優先株配当 (1)
25%
2.2%
税引前利益の変動係数(3 年)
25%
2.2%
24 ヵ月カバレッジ比率
50%
6.8%
有担保負債/総有形資産
50%
6.8%
有形普通株主資産/有形管理資産
50%
4.4%
負債/EBITDA
50%
4.4%
不良債権/総貸出
33.3%
2.9%
不良債権/(株主資本+貸倒引当金)
33.3%
2.9%
リースの残存価値/有形普通株主資本 (2)
33.3%
2.9%
サブ要因
(1) この比率は、キャッシュフロー・ベースのビジネスモデルを採用しているファイナンス・カンパニーのみに適用。これを用いない場合は、他のサブ要因のウェイトを 33.3%に調整。
(2) この比率は、設備リース会社(オペレーティングリース)のみに適用。これを用いない場合は、他のサブ要因のウェイトを 50%に調整。
27
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
付録 2:ファイナンス・カンパニーの異なるクラスの負債を格付するための枠組み
投機的等級の格付(例:CFR)を付与されたファイナンス・カンパニーに対して、ムーディーズ
は予想されるデフォルト時損失率(LGD)に基づくノッチング手法を用いて、様々なクラスの債
務に格付を付与する。ムーディーズは、ファイナンス・カンパニーが発行する様々な債務クラ
スに関して、資本構成に占める各負債クラスの比率、各負債の相対的順位、および 資産カバ
レッジの水準を考慮する。この枠組みは、ムーディーズのアナリストが事業法人の投資適格を
下回る格付に関して用いている、デフォルト時損失率(LGD)に関する格付手法 13と同様の一
般原理に従うものであるが、ファイナンス・カンパニーの枠組みはそこまで定量的ではなく、寧
ろより定性的である点で異なるものである。ファイナンス専業会社と事業会社の双方の財務特
性を持つ「クロスオーバー」の発行体については、LGD 分析をファイナンス・カンパニーのた
めの枠組みと組み合わせて用いる場合がある。ファイナンス・カンパニーへのアプローチに含
まれる要素は次の通りである。
1) コーポレートファミリーレーティング(CFR)が付与されていない場合、CFR を決定する。単
一クラスの負債と単一の連結企業構造を想定する。同様に、入手可能な(すなわちオフ
バランスされていない)資産に対してヘアカットを実施することによって、コーポレートファミ
リーの資産カバレッジ比率についても決定する。ヘアカット率は、流動性、資産の質のパ
フォーマンス、及び市場価値といった各資産の特性を反映する。
2) 優先順位、担保差し入れとカバレッジ、保証または他の信用補完、コベナンツ等に関する
条件に基づいて、負債を異なるクラスに分類する。負債クラスによるランクづけは、別の格
付手法によって格付される証券化商品やハイブリッド負債証券には適用されない。優先
順位および債権者保護の水準が類似していれば、個別の条件が異なっても、一つの負
債クラスとみなす。
3) 各クラスの負債に対する資産カバレッジの質と適切性は、前述した資産のヘアカット率を
用いて、資産カバレッジ分析(「ウォーターフォール」アプローチ)により評価する。
4) 各クラスの負債の負債総額に占める割合と、優先順位と、資産カバレッジと保護の相対的
な質および適切性に基づいて、各クラスの負債の格付を推定する。次の頁のディシジョ
ン・ツリーはこの決定プロセスを示す。ムーディーズは資本構成順位に従って、最優先ク
ラス(シニア有担保・無担保)債務から始めて最劣後の債務クラスまでを順番に検討する。
5) ムーディーズの格付委員会は、CFR の根拠となるトレンド、予想される資本構成の変化、
評価対象のサブセクターの他の担保付取引との比較を考慮した上で、最終的な格付を
負債クラスに付与する。
6) ムーディーズは通常、CFR は各負債クラスに付与される格付の「加重平均」を表すという
考え方にしたがって、負債に格付および推定格付を付与する。
一般に、ある企業の総負債の大部分(66.7%以上)を占める負債クラスには、その企業の CFR
と等しい格付を付与する。総負債に占める割合が低い負債クラスには、企業の CFR より最大
2 ノッチ高い、あるいは低い格付が付与される可能性がある。相対的な規模や資産保護の水
準からみた負債クラス間の違いが大きいほど、このレンジ内でノッチ差をつける可能性が高ま
る。一般に、CFR より 2 ノッチ高い格付を付与される負債は、発行時の資産カバレッジが高く、
且つ、負債の満期まで強固な資産カバレッジを維持できるよう考えられた条件や構造を持つ
ことにより、優れた資産保護が提供される。資産保護の強固さは、各負債ファシリティの条件
に反映されており、その条件には担保差し入れとカバレッジ、新規借入れの制限、借入れ基
盤の制限、財務コベナンツおよび他のコベナンツなどが含まれる。たとえば、資産保護の強固
さを示す指標として、担保価値の定期的な評価を伴った借入金比率(LTV 比率)、追加担保、
準備金勘定、及び強制的な負債の償却あるいは一部償還等が挙げられる。
13
28
NOVEMBER 6, 2015
2009 年 6 月発行の “Loss Given Default for Speculative-Grade Non-Financial Companies in the U.S., Canada, and EMEA"
参照。
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ムーディーズは、このノッチングの枠組みを投機的等級の発行体に対してのみ用いる。投機
的等級の発行体は、相対的にデフォルトリスクが高いがゆえに、ムーディーズは、現存する負
債構成に基づいて、当該発行体のデフォルト時の負債構成を合理的に見積もることができる。
それゆえ、非投資適格のファイナンス・カンパニーに対して、ムーディーズは、各負債クラスの
違いを考慮しつつ、デフォルト時損失における予測された差異に応じて個々の負債クラスの
格付を付与する。
これに対し、投資適格の発行体からはデフォルトイベントまでの距離がはるかに離れており、
デフォルト時の債務構成を見積もることは困難である。投資適格の事業体によって発行された
債券に対する LGD の見積もりは、ファイナンス・カンパニーおよびそれに類する非ファイナン
ス・カンパニー全ての、各クラスの債券の横断的な時系列平均に基づいたものが最適である。
したがって、個々の投資適格等級のファイナンス・カンパニーに対するムーディーズのノッチ
ングアプローチは、そうした発行体全体に対するムーディーズの標準的な手法と異ならない。
今後、ムーディーズはこのアプローチをより広範で統一的な枠組みに修正または統合する可
能性がある。
ムーディーズのノッチングの枠組みは、以下にあるディシジョン・ツリーに示される通りである。
ただし、この図表は全ての格付の結論に関する予告を意図するものではない。
29
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
最も上位のクラスの債務 (1)
当該債務が総債務の
66.7%以上を占める1
No
Yes
ヘアカット後の資産カバ
レッジ比率が125%以上、
かつ、コーポレート・ファミ
リーの資産カバレッジ比
率よりも実体として高い
格付=CFR
Yes
No
当該債務が無担保、か
つ、全ての収益性資産
が実質的に担保となっ
ている
(定期的に更新される)評価
額によるヘアカット、ローン
債務のアモチ、かつ(また
は)一部償還、かつ(また
は)資産差し替え条項等に
基づく、資産カバレッジ比率
要件が当該債務の契約条
件に含まれている
Yes
No
上位の請求権、あるい
は、より優先度の高い
弁済順位を有する債務
が存在する
Yes
Yes
No
格付=CFR-1
格付=CFR
格付=CFR+1
No
格付=CFR+1
格付=CFR+2
(1) ムーディーズは各負債クラスを個々に検討し、資本構成上は最上位に位置づける。この図表は、最も上位のクラスの債務のみに当てはまる。
30
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
その他のクラスの債務(最も上位のクラスの債務以外) (2)
当該債務が総債務の
66.7%以上である1
Yes
No
CFRより高い格付を付与
された、上位の請求権、
あるいはより優先度の
高い弁済順位を有する
債務が存在する
ヘアカット後の資産カバ
レッジ比率が25%以上、か
つコーポレート・ファミリー
の資産カバレッジ比率と
ほぼ等しい
Yes
格付=CFR
Yes
No
CFR-1よりも高い格付を
付与された、上位の請求
権、あるいはより優先度
の高い弁済順位を有す
る債務が存在する
当該債務よりさらに劣
後する債務が存在する
No
格付=CFR-1
Yes
No
格付=CFR-1
格付=CFR-2
Yes
No
両負債クラスの資産カ
バレッジに重大な差異
がある
格付=CFR-2
Yes
No
資産カバレッジ比率の
より高い債務にCFR-1、
低い方の債務にCFR-2
の格付を付与
どちらのクラスの債
務に対してもCFR-2の
格付を付与
(2) ムーディーズは各負債クラスを個々に検討し、資本構成上は最上位に位置づける。この図表は、最も上位のクラスの債務以外の全ての債務に当てはまる。
31
NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ムーディーズの関連リサーチ
本セクターにおいて付与される信用格付は基本的に本信用格付手法によって決定される。ま
た、幅広い格付手法(1 つ以上の副次的に適用される格付手法またはクロスセクター格付手
法)における考慮事項が、本セクターの発行体および債券の信用格付の決定時に重要となる
こともある。副次的に適用される格付手法およびクロスセクター格付手法となりうるものについ
ては、ムーディーズ・ジャパンのウェブサイトを参照されたい。
本格付手法を用いて付与された信用格付の過去の精緻度および予測能力をまとめたデータ
は、link に掲載されている。
格付手法:
32
NOVEMBER 6, 2015
»
「ハイブリッド証券のエクイティクレジット」(2015 年 3 月)
»
「可変約定債務の格付」(2014 年 6 月)
»
Moody’s Global Short-Term Ratings, August 2015
»
「ソブリンの信用力はどのように他の格付に影響しうるか」(2015 年 3 月)
»
Mapping Moody’s National Scale Ratings to Global Scale Ratings, June 2014
»
「金融機関の分析における財務諸表調整手法」(2015 年 7 月)
»
「企業が発行する債券、優先株、ハイブリッド証券に対する最新のノッチング・ガイドライン
概要」(2010 年 9 月)
»
Special Rating Considerations for Financial Institutions with Limited Financial History, March
2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法
FINANCE COMPANIES
ムーディーズ・ジャパン株式会社
〒105-6220
東京都港区愛宕 2 丁目 5-1
愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 20F
Report Number:
著者
Brian Harris
185666 (Japanese)
185014 (English)
プロダクション・アソシエイト
高瀬 美紀
著作権表示(C)2015 年 Moody' s Corporation、Moody's Investors Service, Inc.、Moody’s Analytics, Inc. 並びに(又は)これらの者のライセンサー及び関連会社(以下、総称して「ムーディーズ」といい
ます)。無断複写・転載を禁じます。
Moody's Investors Service, Inc.及び信用格付を行う関連会社(以下「MIS」といいます)により付与される信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の相対的な将来の信用リス
クについての、ムーディーズの現時点での意見です。ムーディーズが発行する信用格付及び調査刊行物(以下「ムーディーズの刊行物」といいます)は、事業体、与信契約、債務又は債務
類似証券の相対的な将来の信用リスクについてのムーディーズの現時点での意見を含むことがあります。ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行で
きないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、流動性リスク、市場価値リスク、価格変動性及びその他のリスク
について言及するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物に含まれているムーディーズの意見は、現在又は過去の事実を示すものではありません。ムーディーズの刊行
物はまた、定量的モデルに基づく信用リスクの評価及び Moody’s Analytics, Inc.が公表する関連意見又は解説を含むことがあります。信用格付及びムーディーズの刊行物は、投資又は財
務に関する助言を構成又は提供するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物は特定の証券の購入、売却又は保有を推奨するものではありません。信用格付及びムー
ディーズの刊行物はいずれも、特定の投資家にとっての投資の適切性について論評するものではありません。ムーディーズは、投資家が、相当の注意をもって、購入、保有又は売却を検
討する各証券について投資家自身で研究・評価するという期待及び理解の下で、信用格付を付与し、ムーディーズの刊行物を発行します。
ムーディーズの信用格付及びムーディーズの刊行物は、個人投資家の利用を意図しておらず、個人投資家が何らかの投資判断を行う際にムーディーズの信用格付及びムーディーズの刊
行物を考慮することは、慎重を欠く行為です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家にご相談することを推奨します。
ここに記載する情報はすべて、著作権法を含む法律により保護されており、いかなる者も、いかなる形式若しくは方法又は手段によっても、全部か一部かを問わずこれらの情報を、ムーディ
ーズの事前の書面による同意なく、複製その他の方法により再製、リパッケージ、転送、譲渡、頒布、配布又は転売することはできず、また、これらの目的で再使用するために保管すること
はできません。
ここに記載する情報は、すべてムーディーズが正確かつ信頼しうると考える情報源から入手したものです。しかし、人的及び機械的誤りが存在する可能性並びにその他の事情により、ムー
ディーズはこれらの情報をいかなる種類の保証も付すことなく「現状有姿」で提供しています。ムーディーズは、信用格付を付与する際に用いる情報が十分な品質を有し、またその情報源が
ムーディーズにとって信頼できると考えられるものであること(独立した第三者がこの情報源に該当する場合もあります)を確保するため、すべての必要な措置を講じています。しかし、ムー
ディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で又はムーディーズの刊行物の作成に際して受領した情報の正確性及び有効性について常に独自に確認することはできません。
法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、いかなる者又は法人に対しても、ここに記載する情報
又は当該情報の使用若しくは使用が不可能であることに起因又は関連するあらゆる間接的、特別、二次的又は付随的な損失又は損害に対して、ムーディーズ又はその取締役、役職員、
従業員、代理人、代表者、ライセンサー又はサプライヤーのいずれかが事前に当該損失又は損害((a)現在若しくは将来の利益の喪失、又は(b)関連する金融商品が、ムーディーズが付与
する特定の信用格付の対象ではない場合に生じるあらゆる損失若しくは損害を含むがこれに限定されない)の可能性について助言を受けていた場合においても、責任を負いません。
法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、ここに記載する情報又は当該情報の使用若しくは使用
が不可能であることに起因又は関連していかなる者又は法人に生じたいかなる直接的又は補償的損失又は損害に対しても、それらがムーディーズ又はその取締役、役職員、従業員、代理
人、代表者、ライセンサー若しくはサプライヤーのうちいずれかの側の過失によるもの(但し、詐欺、故意による違反行為、又は、疑義を避けるために付言すると法により排除し得ない、その
他の種類の責任を除く)、あるいはそれらの者の支配力の範囲内外における偶発事象によるものである場合を含め、責任を負いません。
ここに記載される情報の一部を構成する格付、財務報告分析、予測及びその他の見解(もしあれば)は意見の表明であり、またそのようなものとしてのみ解釈されるべきものであり、これに
よって事実を表明し、又は証券の購入、売却若しくは保有を推奨するものではありません。ここに記載する情報の各利用者は、購入、保有又は売却を検討する各証券について、自ら研究・
評価しなければなりません。
ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、(明示的、黙
示的を問わず)いかなる保証も行っていません。
Moody's Corporation (以下「MCO」といいます)が全額出資する信用格付会社である Moody's Investors Service, Inc.は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を含
みます)及び優先株式の発行者の大部分が、Moody's Investors Service, Inc.が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、1500 ドルから約 250 万ドルの手数料を Moody's Investors
Service, Inc.に支払うことに同意していることを、ここに開示します。また、MCO 及び MIS は、MIS の格付及び格付過程の独立性を確保するための方針と手続を整備しています。MCO の取締
役と格付対象会社との間、及び、MIS から格付を付与され、かつ MCO の株式の 5%以上を保有していることを SEC に公式に報告している会社間に存在し得る特定の利害関係に関する情報
は、ムーディーズのウェブサイト www.moodys.com 上に"Investor Relations-Corporate Governance-Director and Shareholder Affiliation Policy"という表題で毎年、掲載されます。
オーストラリアについてのみ:この文書のオーストラリアでの発行は、ムーディーズの関連会社である Moody's Investors Service Pty Limited ABN 61 003 399 657(オーストラリア金融サービス認可
番号 336969)及び(又は)Moody's Analytics Australia Pty Ltd ABN 94 105 136 972(オーストラリア金融サービス認可番号 383569)(該当する者)のオーストラリア金融サービス認可に基づき行わ
れます。この文書は 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「ホールセール顧客」のみへの提供を意図したものです。オーストラリア国内からこの文書に継続的にアクセスした場合、
貴殿は、ムーディーズに対して、貴殿が「ホールセール顧客」であるか又は「ホールセール顧客」の代表者としてこの文書にアクセスしていること、及び、貴殿又は貴殿が代表する法人が、直
接又は間接に、この文書又はその内容を 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「リテール顧客」に配布しないことを表明したことになります。ムーディーズの信用格付は、発行者の
債務の信用力についての意見であり、発行者のエクイティ証券又はリテール顧客が取得可能なその他の形式の証券について意見を述べるものではありません。リテール顧客が、ムーディ
ーズの信用格付に基づいて投資判断をするのは危険です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家に相談することを推奨します。
日本についてのみ:ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下、「MJKK」といいます。)は、ムーディーズ・グループ・ジャパン合同会社(MCO の完全子会社である Moody’s Overseas Holdings Inc.の
完全子会社)の完全子会社である信用格付会社です。また、ムーディーズ SF ジャパン株式会社(以下、「MSFJ」といいます。)は、MJKK の完全子会社である信用格付会社です。MSFJ は、全
米で認知された統計的格付機関(以下、「NRSRO」といいます。)ではありません。したがって、MSFJ の信用格付は、NRSRO ではない者により付与された「NRSRO ではない信用格付」であり、
それゆえ、MSFJ の信用格付の対象となる債務は、米国法の下で一定の取扱を受けるための要件を満たしていません。MJKK 及び MSFJ は日本の金融庁に登録された信用格付業者であり、
登録番号はそれぞれ金融庁長官(格付)第 2 号及び第 3 号です。
MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を含みます。)及び優先株式の発行者の大部分が、MJKK 又は MSFJ(のうち該
当する方)が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、20 万円から約 3 億 5,000 万円の手数料を MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)に支払うことに同意していることを、ここ
に開示します。
MJKK 及び MSFJ は、日本の規制上の要請を満たすための方針と手続も整備しています。
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NOVEMBER 6, 2015
格付手法:ファイナンス・カンパニーのグローバル格付手法