[迫り来る法改正の荒波-17:悪法も無法に勝る?] <序文>賄賂の横行を招き、モラルハザードを蔓延させた元凶として、何かと評 判が悪い「田沼政治」 。この田沼政権と現政権には、幾つかの共通点がある-と いわれています。公共事業中心の施策展開と増税政策がその主な理由のようで すが、同じ増税でも、その姿勢には大きな隔たりがあるように感じられます。 確かに田沼意次には、寄せ集めの家臣団が実質的に統治に当っていたその領地 において、袖の下問題が多発していたという事実があり、悪評もまんざら的外れ ではなさそうですが、行おうとした改革には寧ろ、優れた先見性があったのでは ないかと思われる節が、随所に見受けられます。 税源を、一元的に年貢(農業課税)に頼っていた当時、特権的立場の商人に対し その特権を認める代わりに、徴税を開始するという画期的な税制改革に着手、御 用金(今で云う国債買入)制度を導入しつつ、集まった資金を公金貸付として運 用、現代金融でも実施されている返済繰り延べ措置や利子引き下げ=リスケ= にも先鞭を付ける等、財界等の要望に沿って法人税減税を行いながら、消費税増 税で一般庶民に付けを回そうとする現政権とは、正反対の姿勢を貫こうとして いたのではないか、として評価する向きもある程です。 因みに、現政権(日本再興戦略)のシナリオは、中小事業者に対する返済繰り延 べ措置=リスケ=に終止符を打ち、返す刀で銀行には債権カットを実施させる -リスケを受けているとされる40万社の内、仮に6万社がデフォルトとなり、 これらがみな全て債務免除となった場合、1社当り借入額平均5千万(6千5百 万という説も)と仮定して、これがそっくり債務免除益になるとすれば、40% 課税でも1社2千万、6万社で1兆2千億円の増税効果がある-という、真に官 僚的で冷ややかな代物です。 要は、瀕死の事業者から取立てを進める一方、国民に対しては個人番号を割り当 て、徴税網を張り巡らせて一網打尽=未納者を炙り出し、網を掛けて残らず税を 掬い取ろう=という寸法なのでしょうが、田沼ならずとも、個人・法人を問わず、 富裕層からより多く徴税し或いは貿易収支において稼ぎを得、無駄な支出を抑 えつつこれを財政運営に充てる-それが、時代を超えた王道の筈。 処が現状は、市民や中小事業者から取り立てた砂金を、まるでザルで運ぶような 野放しの財政運営が罷り通るという実態。目下進行中の施策や法改正には、この 様に首を傾げたくなるものが少なくなく、中でも派遣法改正は、その最たるもの と云って良さそうです。 本文では、派遣法を通して「悪法も無法に-」の本質が、支配統制する側にとっ ての論拠である所以に、迫ってみたいと思います。
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