為 替 換 算 調 整 勘 定 の 会 計 処 理 上 の ポ イ ン ト

今期の重要論点を押さえる
在外子会社の取得・処分など
為替換算調整勘定の
会計処理上のポイント
富田 真史
計処理に関する実務指針」(以下、「外
貨建実務指針」という) 項)
。
親会社の保有 する外貨建て子会社
株 式は取 得 時レートで換 算され、円
貨 額が固 定されることから、為 替 換
算 調 整 勘 定は親 会 社が行った子 会 社
投資に関 する未実現の為替差損益を
示しているともいえる。 在外子会社の
資 産 および負 債はともに、決 算日の
為替相場により 換算され、非支配株
主に帰属する為替換算調整勘定は非
支配株主持分に振り替えられる。 そ
の結 果、親 会 社の投 資に係る為 替 相
目 と な っ て い る こ と が 考 え ら れ る。
トで換算された在外子会社の諸資産
為替換算調整勘定は、決算日レー
為替換算調整勘定は、在外子会社
定として連結財務諸表に計上される。
から発生したものが為替換算調整勘
為替換算調整勘定
の概要
PwCあらた監査法人
公認会計士
る為替換算調整勘定の金額が多額と
なるケースも多く、特に近時のよう
な変動の大きい為替環境下において
したがって、その発生メカニズムや
および諸負債の純額と、純資産勘定
の経 営 成 績とは直 接 的な因 果 関 係が
場の変動リスクのうち親会社持分のみ
取崩しの会計処理・タイミング等に
の構成要素ごとに取得日レート、期
な く 変 動し、どれだけ 在 外 子 会 社で
は、財務上の影響も無視できない項
ついて、十分に理解しておくことが
中平均レートまたは決算日レートで
利益が生じていても、通常、円高局面
月の第2次安倍政権発
望まれる。
換 算 さ れ た 差 額 と し て 算 定 さ れ る。
ではマイナス
(差損)
が大きくなり、円
年
あった為替相場の水準は、急激に円
本稿では、為替換算調整勘定につい
したがって、為替換算調整勘定は純
安 局 面ではプラス
( 差 益 )が大 き く な
平成
安へと推移した。直近の1年間を振
て、特に在 外 子 会 社 を 取 得・処 分し
資産全体を決算日レートで換算した
る。 また、直 近の為 替 変 動が大 き く
年3月末の1ドル
年2月には110円台ま
り返ると、平成
ち、平成
円前後で
120円前後の水準から、夏には一
年
ものと、純資産の各構成要素をそれ
間、 同 年 秋 に は 1 ド ル
時125円台まで円安が進んだの
4月1日以降開始 する連結会計年度
た場合の会 計 処 理に関し、平 成
で円高が進行した。米国の利上げ観
なくとも、過去に極端な円高や円安の
には、多 額の為 替 換 算 調 整 勘 定が発
タイミングで在外投資を行っていた場合
また、為替換算調整勘定は在外子
ものの差額ともいえる。
ぞれに適用すべきレートで換算した
号「 企 業 結 合に関 する
会計基準」(以下、
「改正企業結合会計
うな為替情勢では、在外子会社持分の
など時々での要因は多岐にわたるも
換 算 手 続 の 結 果 生 じ る も の で あ り、
投資時と処分時の為替レートの差も大
生する可能性がある。 特に、近時のよ
純資産の部の独立項目として累積さ
き く なり、想 定 外の差 額が生じる可
会社等の貸借対照表項目の円貨への
響も踏まえたうえで解説する。
れ る( 日 本 公 認 会 計 士 協 会 会 計 制 度
基準」という)
や企業会計基準 号「連
いえる。
22
なお、文中の意見にわたる部分は
能性もあるため、留意が必要である。
委員会報告
4
在外子会社の比率が高い多国籍企
筆者の私見である。
号「 外 貨 建 取 引 等 の 会
のの、短期間のうちで為替相場に大
業会計基準
27
結財務諸表に関する会計基準」等の影
不安、わが国のゼロ金利政策の影響
25
きな変動がみられているのが特徴と
21
27
80
足から3年余りが経過したが、その
75
から適用されている平成 年改正の企
12
測や、中国経済の失速、中東の政情
24
28
業の場合、連結財務諸表に計上され
経理情報●2016.3.20
(No.1441)
31
Ⅳ
はじめに
3月決算総特集