時間分割 in-situ XRD測定法を利用した マーガリン製造工程において 冷却プロセス依存的に生じる 油脂結晶の相挙動の解明 ミヨシ油脂株式会社 食品油脂研究所 ○仲西 賢剛 御器谷 友美 石黒 隆 公益財団法人高輝度光科学研究センター 佐藤 眞直 広島大学大学院 生物圏科学研究科 上野 聡 1 目次 序論 油脂とは 飽和脂肪酸、部分水素添加油について 背景 OPO/POP 2成分系 マーガリン製造工程 実験 事前実験 DSC冷却曲線 ※油脂結晶について 実験1 A:徐冷実験 B:急冷実験 実験2 急冷後の加熱実験 結論 2 序論1 油脂とは • 液体の油と、固体の脂の総称 =O - - CH2 -O-C =O CH -O-C O = CH2 -O-C = O HO P:パルミチン酸 (飽和脂肪酸) O = 脂肪酸例) グリセリン骨格 + 脂肪酸基 3つ HO O:オレイン酸 (不飽和脂肪酸) 3 序論2 飽和脂肪酸 (SFA: Saturated Fatty Acids) • 心筋梗塞や糖尿病のリスクを高める可能性 • 油脂製品の保形性や可塑性のために必須 SFA含有量 < 食品の種類 > 有塩バター ショートニング ソフトマーガリン 鳥皮(もも肉) カマンベールチーズ 豚肉(三枚肉) ウィンナー <g/100g> 50 34 22 16 15 13 10 低減は困難 [ 香川芳子 “食品成分表 2014” ] 4 序論3 部分水素添加油脂 (PHO: Partially Hydrogenated oils) • • • • H トランス脂肪酸を多く含む アメリカのFDAによりGRAS対象外に 冠動脈性心疾患のリスクが増加 油脂製品の食感や香り、酸化安定性に必要 H H H 水素添加 C=C R2 R1 シス型 R1 C - C +H2 R2 H C=C R1 H 一部がトランス型に変化 二重結合を R2 単結合に H H 対応が必要 5 背景1 OPO/POP 2成分系の 分子間化合物 (MC) • 2鎖長β型の結晶を形成 • OPO:POP=1:1の比率でMCを形成 パルミチン鎖 オレイン鎖 MC の形成モデル 適度な硬さ、多形安定性に優れる SFAやPHOの代替として期待 MCにより SFA,PHOの低減可能か? [A. Minato et al., J. Am. Oil Chem. Soc., 74, 10 (1997) 一部改変] ※OPO: 脂肪酸基にオレイン、パルミチン、オレイン酸が結合した油脂 POP: 脂肪酸基にパルミチン、オレイン、パルミチン酸が結合した油脂 6 背景2 マーガリンの製造法 乳化 → 殺菌 → 結晶化、練り → 充填 冷媒 製品 かき取り式熱交換器 2重構造の冷却管 [Modified from SPX Home Page, 08/2013] [Modified from R-CAP Home Page, 08/2014] 冷却速度 : 100 °C/min以上 7 目的 <冷却速度> これまでの研究 : 15 °C/min以下 工業的プロセス : 100 °C/min以上 徐冷条件下と急冷条件下での MC結晶化挙動、結晶多形を比較 8 試料 高純度トリグリセリド (純度 > 99 %) OPO :1,3-dioleoyl-2-palmitoyl-sn-glycerol POP :1,3-dipalmitoyl-2-oleoyl-sn-glycerol (月島食品工業㈱製) OPO POP 測定 加熱 & 攪拌 9 事前実験 (実験0) 示差走査熱量計 (DSC) • DSC 8500 (PerkinElmer co., LTD) 冷却曲線測定 < DSC測定> 温度範囲: 100 ~ -50 °C 冷却速度: 1,5,10,15,20,25, 30,40,50,100,150 °C/min 試料 : OPO:POP = 1:1 (w/w) 10 結果0 Cooling curve measurement with OPO:POP=1:1 Cooling rate: 1 ~ 150 °C/min Low temp. peak High temp. peak (1 W/g) 〈Cooling rate〉 Exothermic 150°C/min 100°C/min 50°C/min 40℃/min 40°C/min 30°C/min 25°C/min 20°C/min MC ピーク 消失 15°C/min 10°C/min 5°C/min 1°C/min MC formation -40 -20 0 Temperature (°C)20 40 徐冷条件: MC 形成 急冷条件 : 2つの新しいピークを観察 11 本実験 事前実験より 徐冷条件: MC 形成 急冷条件 : 2つの新しいピークを観察 徐冷下、急冷下でどのような結晶多形が生じたのか? 数秒で変化してしまう相変化をその場観察し 徐冷時と急冷時の多形変化を比較 12 参考 油脂結晶について 長面:鎖長構造 2鎖長 3鎖長 約4 nm 約6 nm 短面:副格子構造 α型 : 約0.42 nm β’型 : 0.41, 0.38 nm等 β型 : 0.46 nm等 「脂質の機能性と構造・物性」 佐藤清隆、 上野聡 より転載 13 実験 装置 BL19B2 SAXS/WAXS同時測定 • • • • (SR-TXRD) X線エネルギー: 24 keV • カメラ長: 70 cm • 冷媒: N2 liquid 検出器: PILATUS 2M セル: 10 x 10 x 1 mm, Aluminum 測定時間: 3秒毎に1秒間 14 実験 時間分割X線回折測定 <SR-TXRD> A. 徐冷条件下 (5 °C/min) B. 急冷条件下 (40 °C/min) 温度範囲: 100 ~ -50 °C 試料 : OPO, POP, OPO:POP=1:1 (w/w) 15 実験 解析 一次元化されたデータ例 得られたデータ例 X軸:q値(nm-1) (q = 2π / d) Y軸:平均化された強度(Count) 等高線プロット例 円周方向に平均化して 一次元処理 下から順に重ね書き 16 結果 1-A 結晶多形解析 徐冷条件 (5 °C/min) Diffraction Intensity Weak Strong Chain Length Subcell (nm) <OPO:POP=1:1> Temperature (°C) -50 -25 DSC Exothermic→ -50 (nm) -25 0 0 2nd MC (2L, 4.2, 25 50 5.6 1 2 3 3rd 0°C) 4 MC (0.45, β) 5 12 q (nm-1) 14 16 25 (°C) 50 18 q= 2π d 徐冷条件においてMC形成 17 結果 1-B 結晶多形解析 急冷条件(40 °C/min) Diffraction Intensity Weak Strong Subcell Chain Length (nm) (nm) <OPO:POP=1:1> Temperature (°C) -50 -25 Exothermic→ -50 -18.6 -25 0.41, ~ 0.37 2nd (5.2) 0 3.4 (3L, -14.7°C) 25 50 DSC (Sub-α) 2 3 1.9 25 5.2 (2L, -4.7°C) 1 0 4 5 12 q (nm-1) 14 16 (°C) 50 18 q= MC観察できず OPOとPOPがそれぞれ単独で結晶化 2π d 18 要約 <OPO:POP=1:1> MCの結晶化は冷却速度に依存 徐冷条件下 (5 °C/min) • MC形成 急冷条件下 (40 °C/min) • MC観察できず • OPOとPOPが別々に結晶化 19 実験 2 加熱によって安定な多形に転移することで MCが形成するのでは? 時間分割X線回折結晶構造解析 急冷後加熱条件 <SR-TXRD> 温度範囲 : -50 ~ 100 °C 冷却加熱速度 : 40 °C/min 冷却後10 °C/min加熱 試料 : OPO:POP=1:1 (w/w) 20 結果 2 結晶多形解析 急冷後加熱 <OPO:POP=1:1> Temperature (°C) (nm) 3c β DSC Subcell Chain Length 50 25 Diffraction Intensity Weak Strong 2nd (4.2) (nm) ←Endothermic -50 33.8 -25 3rd (4.2) 0 -25 -50 0 MC (4.2, -21°C ) POP OPO 2 1 3 25 MC (0.45, β) 4 5 12 q (nm-1) 50 14 16 18 18 -22.6 (°C) q= 2π d 規則性の高いMCが形成 21 結論 徐冷条件下 • MCが形成 急冷条件下 • MC観察できず • OPOとPOPが個々に結晶化 急冷後の加熱条件下 • 徐々にMCが形成され、 最終的には規則性の高いMCが形成 MCの形成に必要な冷却速度や 冷却後の加熱温度が明らかに 22 謝辞 (公財)高輝度光科学研究センター支援の 産業新分野支援課題として、SPring-8の BL19B2で実施しました。「課題No.2014A1704」 本研究に、ご助力ご助言くださった、 皆様に心より感謝申し上げます。 ご清聴ありがとうございました。 End of presentation
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