第1章 計画策定にあたって 1 計画策定の背景と趣旨 近年、特定健康診査(注)(以下「特定健診」という。)の実施や診療報酬明細書(注)等(以 下「レセプト」という。)の電子化の進展等により、保険者(注)が健康や医療に関する情 報を活用して被保険者(注)の健康課題の分析、保健事業の評価等を行うための基盤の整備 が進んでいます。 こうした中、「日本再興戦略(注)」(平成25年6月14日閣議決定)においても、「全ての 健康保険組合に対し、レセプトのデータの分析、それに基づく加入者の健康保持増進の ための事業計画として『データヘルス計画』の作成・公表、事業実施、評価等の取組を 求めるとともに、市町村国民健康保険(以下「国保」という。)が同様の取組を行うこと を推進する。」とされ、保険者はレセプト等を活用した保健事業を推進することとされま した。 こうした背景を踏まえ、国民健康保険法第82条第4項の規定に基づき厚生労働大臣が 定める「国民健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」の一部が改正されま した。保険者は健康・医療情報を活用してPDCAサイクルに沿った効果的かつ効率的 な保健事業の実施を図るための保健事業の実施計画(データヘルス計画)を策定した上 で、保健事業の実施及び評価を行うものとされました。 これまでも、桑名市国民健康保険においては、レセプトや統計資料等を活用すること により、桑名市国民健康保険特定健康診査等実施計画書(注)の策定や見直し、その他の保 健事業を実施してきたところですが、今後は、さらなる被保険者の健康保持増進に努め るため、保有しているデータを活用しながら、保健事業の展開やポピュレーションアプ ローチから重症化予防について網羅的に保健事業を進めていくことや、医療費適正化を 推進することが求められています。 桑名市国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画)は、 「国民健康保険法に基 づく保健事業の実施等に関する指針」に基づき、健康・医療情報を活用して、健康課題 を明確にし、効果的かつ効率的な保健事業を計画し被保険者の健康の保持増進を図り、 市民一人ひとりが自分らしく健康で心豊かに生活できることを目的に策定するものです。 【図1-1】PDCAサイクル 1 2 計画の位置づけ 本計画は、桑名市総合計画の目指す施策を実現するための個別計画の一つに位置付ら れるとともに、桑名市地域福祉計画、桑名市健康づくり計画、桑名市国民健康保険特定 健康診査等実施計画書、桑名市地域包括ケア計画(介護保険事業計画・老人福祉計画)、 桑名市子ども・子育て支援事業計画、桑名市障害者計画及び桑名市障害福祉計画との整 合性を図るものとします。 3 計画の期間 本計画の期間は、第2期桑名市国民健康保険特定健康診査等実施計画書との整合性を 勘案し、平成27年度から平成29年度までの3年間とします。 4 計画策定に向けた体制及び取組 計画策定にあたっては、医師会、歯科医師会、薬剤師会、被保険者代表、公益の代表 者等から構成される「桑名市国民健康保険運営協議会」や、保険年金課や地域保健課を はじめ保健福祉部全課が横断的に健康や医療の課題について協議・検討する「ワーキン グ会議」、「三重県国民健康保険団体連合会の保健事業・評価委員会」の助言を受け、ま た、本市の国民健康保険に加入されている世帯で、平成26年度中に医療機関等の受診を されていない方で、特定健診の受診結果に異常がない方に、健康維持のために、日頃取 り組まれていることや気を付けていることなどをグループ形式でインタビューを実施し、 市民の声を反映するなど全員参加型の計画づくりに努めました。 ワーキング会議 桑名市国保運営協議会 2 【図 1-2】データヘルス計画策定における組織体系 3 第2章 桑名市国民健康保険を取り巻く状況 1 年齢別人口の推移 本市の人口は、平成27年3月末現在では、142,544人となっています。年齢3区分別で みると、0~14歳(年少人口)や、15~64歳(生産年齢人口)は、減少傾向にあります が、65歳以上人口は増加傾向にあります。(図2-1) 【図 2-1】年齢区分別人口 ※各年度末現在の住民基本台帳人口及び外国人登録人口 2 国民健康保険被保険者数の推移 本市の平成24年度から平成26年度の被保険者数は、国保データベース(以下「KDB」 という。)の資料では減少傾向にあり、減少幅は年々大きくなっています。(図2-2) 【図 2-2】年次別被保険者数 ※KDB データ 4 3 国民健康保険加入率の推移 平成 26 年度の本市、三重県、本市と同規模の自治体(以下「同規模自治体」という。)、 全国における国保加入率を比較すると、本市の国保加入率は、23.2%となっており、他の 団体よりも低い数値となっています。(図 2-3) 本市の被保険者数を、年齢階級別及び男女別に比較すると、全国や三重県に比べ 65 歳 以上の人数は多くなっています。(図 2-4) なお、本市以外の三重県、同規模自治体、全国は、それぞれ国民健康保険組合を含み ます。 【図 2-3】国保加入比率 総人口(人) 被保険者数(人) 加入率 桑名市 135,974 31,541 23.2% 三重県 1,805,488 500,056 27.7% 同規模 12,554,591 3,257,429 25.9% 全国 124,852,975 32,318,324 25.9% ※KDB データ(総人口は平成 22 年度国勢調査) 【図 2-4】被保険者数の比較 (平成 26 年度) ※KDB データ ※75 歳以上は後期高齢者医療制度。ただし、一定の障害があり認定を受けた方は 65 歳以上 5 4 平均寿命と健康寿命 平成 26 年度の本市、三重県における平均寿命は、男性が三重県よりやや高く、女性は ほぼ同程度となっています。健康寿命については、男女共に三重県よりやや高い傾向に あります。 【図 2-5】三重県と比較した桑名市の平均寿命及び健康寿命(平成 26 年度) ※三重県庁ホームページ 三重県健康福祉部 医療対策局 健康づくり課 三重県の健康寿命 三重県及び本市の「健康寿命」は、 「日常的に介護を必要とせず、自立して心身ともに健康的な日常生 活を送ることができる期間」 【参考】全国の平均寿命及び健康寿命(平成 22 年度) 男性 平均寿命 79.6 歳 健康寿命 70.4 歳 女性 平均寿命 86.3 歳 健康寿命 73.6 歳 全国の「健康寿命」は、 「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」であり、三 重県及び本市の算出方法と違いがあります。 6 5 死亡の状況 年齢や性別の異なる集団の死亡率を比較する場合に、標準化死亡比(SMR)が用いられ ます。100 を上回れば三重県より高い死亡比となります。 平成 22 年度~26 年度の本市の標準化死亡比は、女性の肝疾患や糖尿病、悪性新生物 (がん)が県平均より高い状況です。 悪性新生物(がん)では男女ともに胃がんや大腸がん、肝がんが県平均より高い状況 です。 【図 2-6】標準化死亡比/SMR 平成22年度~26年度 男性 150 150 98 100 交通事故 72 107 交通事故 心 疾 患 50 心 疾 患 100 98 0 87 76 肝 疾 患 122 肝 疾 患 脳血管疾患 60 98 糖 尿 病 150 101 100 女性 胃がん 胃がん 150 脳血管疾患 118 三重県の累計が100 糖 尿 病 子宮がん 102 100 50 0 男性 女性 悪性新生物 悪性新生物 116大腸がん 50 子宮がん 悪性新生物内訳 118 100 93 大腸がん 106 50 0 0 104 乳がん 97 乳がん 肝がん 91 101 肝がん 103 肺がん 肺がん ※桑名保健所管内の現状 ※標準化死亡比(SMR) 死亡率は通常年齢によって大きな違いがあることから、異なった年齢構成を持つ地 域別の死亡率を、そのまま比較することはできないことから、標準的な年齢構成に合わせて、地域別の年齢 階級別の死亡率を算出して比較する必要がある。 標準化死亡比は、基準死亡率(人口 10 万対の死亡数)を対象地域に当てはめた場合に、計算により求めら れる期待される死亡数と実際に観察された死亡数とを比較するものである。国や県等の平均を 100 とし、標 準化死亡比が 100 より大きい場合は、国や県等の平均より死亡率が多いと判断され、100 より小さい場合は 死亡率が低いと判断される。 7 第3章 これまでの取組と課題 本市の平成 26 年度の保健事業の実施状況については以下のとおりです。 【図 3-1】平成 26 年度保健事業の実施状況 事業名 事業の目的及び内容 評価・課題 桑名市国民健康保険被保険者を対象に、内臓脂肪 型肥満に着目した生活習慣病の発症・重症化予防及 働き盛りの 40 歳、50 歳代の受診率が他年 特定健診、 び医療費の適正化を図ります。 代に比べ低い状況です。60 歳代の受診率が 人間ドック 桑名市国民健康保険被保険者のうち 40 歳以上 同規模・県・国と比較して低くなっています。 75 歳未満の人に特定健康診査を実施しました。 受診率は前年度の 36.1%から 38.6%と上 特定健診の受診促進を目指します。 昇しましたが、第 2 期桑名市国保特定健診等 特定健診の受診勧奨 受診勧奨コールセンターの設置を委託し、3年間 実施計画の目標値である 45%は達成してお (電話、はがき送付) 未受診者の方に電話勧奨をしたほか、受診勧奨はが らず、今後も受診勧奨を継続していく必要が きを送付しました。 あります。 桑名市国民健康保険被保険者を対象に、生活習慣 病リスク保有者へ内臓脂肪型肥満解消に向けた生 活習慣(食生活及び運動習慣等)の改善を目指しま す。 実施率は平成 25 年度で 9.4%と低い状況 で、実施率がなかなか上がらないことが課題 特定保健指導 特定保健指導該当者に対し、電話や手紙による利 用勧奨を行い、希望者に特定保健指導を実施しまし です。また 40 歳、50 歳代の実施率が低い状 況です。 た。平成 24 年度より動機づけ支援を医師会に委託 し、実施率の向上を図りました。 後発医薬品(ジェネリック)の使用を促進し、医 療費の抑制を図ります。 後発医薬品 平成 26 年 11 月診療から平成 27 年8月診 後発医薬品(ジェネリック)に切り替えた場合、 療まで、後発医薬品を使用している人の割合 (ジェネリック) 被保険者あたり 200 円以上の差額があり、14 日以 で比較すると 57.6%から 59.1%と上昇して 差額通知 上の投与がある場合に通知しました。また医薬品に います。引き続き、差額通知にて使用促進を 関する問い合わせに応対するコールセンタ-の設 促していきます。 置を委託しました。 医療の受診状況を把握してもらうため、医療機関 医療費通知 引き続き、医療費通知を行います。 等受診世帯へ年に2回通知しました。 (次頁につづく) 8 事業名 事業の目的及び内容 評価・課題 対象となる方に対し、がんの早期発見・早期治療 のため検診を行いました。 各種検診: 複数のがん検診を同日に受診可能(セット また、対象となる方に対し無料クーポン券を発行 集団がん検診、 検診実施)とする他、休日に検診を行い受診 し、受診機会の向上を図ります。希望者に五大がん 個別がん検診 しやすい体制を整えました。 検診(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮が ん)を実施しました。 歯周疾患検診は受診率が低いため、検診実 対象となる方で希望する方に対し、歯周疾患の早 歯周疾患検診、 施方法を検討する必要があります。 期発見・早期治療のため歯周疾患検診を実施しまし 幼児歯科検診・ 幼児歯科検診・フッ素塗布助成において た。また、う歯予防のため、2 歳児幼児歯科検診・ フッ素塗布助成 は、う歯予防のため、ひき続き実施していく フッ素塗布の助成を行いました。 必要があります。 母子健康手帳発行時やマタニティセミナーにお いて、喫煙の影響について情報提供し、喫煙指導を 受動喫煙対策 行っています。また、赤ちゃん訪問時に乳幼児突然 引き続き啓発を実施していきます。 死症候群についてのパンフレットを配布し啓発し ています。 医療保険に加入していない方に対し、健康増進法 受診率の向上のため、周知方法を検討する 健康増進法健康診査 健診を実施し、生活習慣病の発症、重症化予防を目 必要があります。 指します。対象者に通知し受診勧奨を行いました。 市民を対象に健康に関する知識の普及啓発を図 今後も継続して、健康に関する情報を発信 健康づくり講演会 るため、健康に関する講演会を年1回行いました。 していきます。 市民を対象に、こころの健康に関する知識の普及 こころの健康づくり や啓発を図るため、こころの健康に関する講演会を 講演会 年1回行いました。また、市民を対象にこころの悩 メンタルパートナー みを抱えている人に対し、相談窓口等へつなぐこと 養成講座 ができる人の育成を目指すため、メンタルパートナ 今後も、こころの健康に関する情報発信、 メンタルパートナー養成講座を引き続き実 施していきます。 ー養成講座を開催しました。 市民を対象に、健康に関する知識の普及啓発を図 健康教育 るため、健康に関する講話等を行い、健康に関する 知識の普及啓発を行いました。 9 引き続き啓発を実施していきます。
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