誘導加熱装置とガス加熱装置の比較

資料 J01001-1
誘導加熱装置とガス加熱装置の比較
ロー付け等加熱装置の導入に伴う、誘導加熱方式とガス加熱方式の比較検討を述べます。
ガス加熱方式
方式
誘導加熱方式
可燃性ガス(LPG,AC,LNG 等)と酸素の混
対象物の近傍に設置した加熱コイルに発生し
合ガスにて得られる、燃焼炎にて対象物の温 た高周波磁界によって、対象物内に誘導された
度を、外部から必要な温度にまで上げ、ロー 高速分子運動による摩擦で、対象物自体が加熱
付け等熱処理を行う。
し、必要温度に達した後ロー付け処理を行う。
加熱
ガスの炎の範囲ということで、狭い範囲は
コイルの形状によりいろんな箇所に対応、狭
範囲 不得意。大きな範囲はガス火口を増やすこと い範囲、一点集中などは得意。大きな箇所をや
で可能
るには、コイルの形状や移動焼きなど加熱方法
に工夫がいる。
周波数の選択によりより小さいもの、大きい
ものに対応可能。
火力
マスフローコントローラを用いることによ
調節 り微調整可能。一般的に大まかな調節になる
火口穴の選定で火力が上がる。
出力コントロールにて、連続的に調節可能。
安定
入力側のガス供給が不安定な場合、マスフ
電源の安定度は3%(弊社製品)で非常によ
度
ローコントロール等が必要。直接加熱のため い。冷却水を使用するため、水管理が安定度に
外来の影響を受けやすい。
影響する場合がある。
再現
ガス供給安定度による。火口の劣化により
対象物の位置が変わらない限り、再現性は非
性
再現性が乱れる場合がある。
常によい。
効率
対象物との距離。炎の調節がマスフローコ
電源自体の効率は95%(弊社製品)と非常
ントローラがない場合、経験と目視によるた によい。加熱コイルと対象物とは結合度(距離、
め影響を受ける。
位置等)による。
消耗
火口は消耗品のため、日頃の確認が必要。
特にないが、加熱コイルは使用状況により破
品
状況により交換。
損したりする場合がある。
メン
火口、トーチ、ガスホース、ガス圧、流量
冷却水の管理がメンテの主となる。あとは加
テ
等確認必要。毎日のこまめな点検、交換が必 熱コイル。本体部品寿命は半永久的である。
要。
危険
ガスを使うので、管理に注意が必要。状況
電気を使うので感電に注意が必要。ちゃんと
性
によっては逆火が発生する場合があるので、 アースが接地されているか(設置時)確認。高
爆発や火災につながる恐れがあり注意が必要。周波の場合、ペースメーカ等使用者は近づいて
はならない。(3m以上離れる)健常者は加熱
動作中は25cm以上加熱コイルから離れる(1
2 KW 機器の場合)
資料 J01001-2
導入
単品ロー付け(半)自動機の場合、約40
以前は誘導加熱は高いという認識が有ったが、
コスト 0万前後の費用がかかる。
現在、価格も下がり、よりコンパクトになって
最近、ガス料金の大幅な値上げに伴うコスト る。出力12 KW 程度以下であれば、ガス自動
アップが懸念される。
機よりも安い場合がある。
(ガス自動機と同仕
様の場合)また、リングロー材を使用した場合、
ロー材使用量の管理が容易。場合によっては差
しロー材の無駄が削減されコストダウンになる。
設置
ガス配管電気設置必要。装置本体はそこそ
電気設置必要。本体設置はガス装置より一般的
こ大きい。ガスの為換気設備必要。
に省スペースとなる。設置移動の際も電気設備
さえ有れば移設が容易である。
操作
ガスの使用法、調整法のある程度の知識、経
(半)自動機で行う場合、対象物のセッティ
性
験が必要で、その為の人員の育成、確保が必 ングと、機器(加熱)スタート/ストップの方
要。
法さえトレーニング(短時間で可能)すれば誰
でも操作可能となる。その為の特別なスキルを
必要とせず、人員の確保が容易。
環境
直接炎加熱のため、周囲の温度も高く、燃
加熱はロー付け(加熱)箇所に限られ、周囲
対策 焼雰囲気も悪く、環境性は良くない。ワーカ の雰囲気への影響も最小限に抑えられる。良い
ーにとって作業環境が良くなく、アメリカの 作業性を実現でき、ISO等の対策に有利。
自動車工場では、ガス装置の仕様が認められ
ない動きが広まっている。
ランニン
比較のため下記同仕様の装置で試算する。 左記に相当する誘導加熱装置を想定すると
グ
コスト <仕様>ディストリビューターロー付け装置 <仕様>10 KW ロー付け装置(シングルタイプ)
1.20mm Φ、6mm Φチューブ6本ロー付け
2.15 秒加熱ロー付け+ 15 秒冷却移動+
30 秒セットと取り出し=合計1分/1個
8 時間稼働として 480 分、480 個生産
3.火口:00 スリット三割#140-200、M6 x4本
4.ガス圧力:LPG=0.5kg/cm2
Ox =5.0kg/cm2
<試算>
火口1本あたりを試算すると
1.ガス混合比 2.80 とするとガス流量は
LPG =3.5 L/min.
Ox =9.8 L/min.
(最大流量の 80 %とする)
2.連続出力の場合
LPG = 3.5 x 480 = 1680L
Ox = 9.8 x 480 = 4704L
3.強火/弱火 併用の場合
弱火時の流量を強火時の 20 %減として
LPG = 3.5 x 0.8 = 2.8L/min.
Ox = 9.8 x 0.8 = 7.84L/min.
15 秒強火、45 秒弱火として、
強火時
LPG = 3.5 x 15/60 x 480 = 417.6L
Ox = 9.8 x 15/60 x 480 = 1176L
1.加熱物は左記と同様
2.加熱時間も左記と同様、ただし
10 秒 9KW 出力
3 秒 5KW 出力
2 秒 9KW 出力のチャートで行う
3.入力電源:220V
4.冷却水装置:4KW、220V
5.タクトは同じ 1 分/ 1 個
<試算>
1.1分あたりの使用電力量は
9KW x 12 秒= 108KWs
5KW x 3 秒= 15KWs
よって 8 時間あたりで
(108+15)x 480 = 59,040KWs
入力効率を 85 %と考えて
59,040 / 0.85 = 69,458KWs
冷却水装置は仮に 8 時間フル稼働とすると
4KW x 8 = 32KW h
試算価格は
220V の電気代を
3 THB(KWh)/unit とすると
69,458/3600 x 3+32 x 3 = 156 THB/日
資料 J01001-3
ランニン
グ
コスト
弱火時は
LPG = 2.8 x 45/60 x 480 = 1008L
Ox = 7.84 x 45/60 x 480 = 2822.4L
合計: LPG = 417.6+1008 = 1425.6L
Ox = 1176+2822.4 = 3998.4L
4.ロー付け時以外消火した場合
連続時の 1/4 となり
LPG = 1680/4 = 420L
O2 = 4704/4 = 1176L
試算価格は 4本として
LPG 価格= 11 THB/L
O2 価格= 0.00157THB/L
として
連続仕様の場合
LPG = 1680x11 = 18,480THB/日
O2 = 4704x0.00157 = 7.385THB/日
合計= 18,487x4= 73,948 THB/日
強火/弱火併用の場合
LPG = 1425.6x11 = 15,681.6THB/日
O2 = 3998.4x0.00157 = 6.277THB/日
合計= 15,687x4= 62,748 THB/日
ロー付け時以外消火の場合
LPG = 420x11 = 4620THB/日
O2 = 1176x0.00157 = 1.84THB/日
合計= 4621.8x4= 18,487THB/日
以上より装置の治具制御等、制御用電源の電力量はほぼ同じ、VAT 等は無視すると
ガス装置の場合
1ヶ月あたり(20日稼働)
73,900 x 20 = 1,478,000 THB(連続)
62,700 x 20 = 1,254,000 THB(強火弱火併用)
18,400 x 20 = 368,000 THB(ロー付け時以外消火)
誘導加熱装置の場合
156 x 20 = 3,120 THB
1ヶ月あたりのコスト差は、誘導加熱装置の方が
364,000 - 1,474.000 THB 安い
年間では
4,368,000-17、688,000 THB
誘導加熱装置の方がコスト節約できる。
これは誘導加熱装置代金が半年以内で償却でき、さらに設備増設
も可能な金額となります。
*注意)上記の結果はあくまでも設定した条件での試算です。
お客様におきましてはこれを参考に、各工場の状況に置き換えて、再計算あるい
は調整してご検討ください。
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