【ビジネスニュースレター2015年3月号】「海外現地法人経営不振の真因」

ビジネスニュースレター
2015 年 3 月号
日頃は「ビジネスニュースレター」をご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今月号は、【海外現地法人経営不振の真因】 と 【資本金の多寡による有利・不利について~平成 27 年
税制改正より~】 をテーマにとりあげています。
海 外 現 地 法 人 経 営 不 振 の真 因
現地法人経営不振の真因は、「適切な現地経営責任者が不在であること」が最大要因。加えて、日本
本社による放置・チェックの放棄、調査不足も挙げられます。場当たり的でなく、仕組みを作った
上での「人材育成」が重要です。
最近、弊社に寄せられるご相談の中で、現地
(3) 日本本社による現地法人経営の放置
法人の短期調査が増加しています。業績不振や
「現地や法律のことは日本からはよく分からな
資金不足、労働問題等による現地法人の経営不
い」「海外進出は社長案件なのでアンタッチ
振を理由として、日本本社から依頼をいただくケ
ースが多いのですが、実際に現地調査を行って
みると、その根本原因は根深いもので、以下が
主要な真因と考えられます。
ャブル」「関わると、自分が赴任させられるか
出世に響く」等の意識。
(4) チェック機構の不在
「現地法人の役員会は開催されたことがない」
「本社の監査役が現地に行ったことがない」
(1) 現地経営責任者が不在
例としては、「本社から現地法人社長がたま
に出張で来るだけ」「資金は本社任せで、資
等の日本本社による現地法人の経営状況の
把握・チェック機構の不在。
(5) 調査不足
金繰りに責任を持つ(現地で調達する)現地
「現地はこう処理するもの」「この国のルール
責任者がいない」「本社からの質問も答えら
は日本と違う!」等と言われたことを本社が
れず、経営の全般を分かっている人が現地
鵜呑みにし、日本から各国の法令、税制、労
にいない」。
務規制等を確認せず、誤った情報で経営判
(2) 不適切な現地経営責任者の任命
断をしてしまう等。
現地赴任者に現地法人を「経営」する能力
これらの真因を解決する策は、やはり「現地で経
が無く 、何より本人に「現地法人の 経営に
営にあたる『人材』を重視する」ということです。赴任
責任を持つ」「自分の責任で資金を回す」
者の権限・責任の明確化、帰国後のキャリアプラン
「黒字化する」という断固たる覚悟がない。
の提示、赴任候補者の育成計画の運用等により日
また、本社は「赴任者に経営を任せていた」
本本社による現地法人の支援・チェック体制を整え、
つもりでも、本人は「経営について責任を
必要な仕組みをしっかりと作り・運用し、人材を育て
負っている」つもりはない。
ることが、現地法人を育てることにつながります。
資 本 金 の多 寡 による有 利 ・不 利 に ついて
~平 成 27 年 税 制 改 正 より ~
平成 27 年税制改正により、外形標準課税適用法人(資本金1億円超)と外形標準課税が適用されな
い法人(資本金 1 億円以下)との実効税率の差が拡大する見込みです。また、大法人について欠損金の
利用制限が強化される予定です。
平成 27 年税制改正では、法人税(国税)の税率が 25.5%から 23.9%に引下げられる予定ですが、資
本金1億円超の法人については事業税の所得割(地方税)の税率も引き下げられる予定です。
*
現在は外形標準課税が適用されない法人(資本金 1 億円以下)の実効税率 (37.1%)と、外形標準
課税適用法人(資本金 1 億円超)の実効税率(35.6%)との差は 1.5%ですが、外形標準課税適用法人
については所得割の税率が段階的に引き下げられる予定のため、両者の差は 3.1%にまで拡大する見込
みです(外形なし:35.4%、外形あり:32.3%)。
よって資本金 1 億円以下で多額の課税所得が発生する場合には、資本金を 1 億円超として外形標準
課税の適用を受けることで、上記の税率差により税負担が軽減される可能性があります。
ただし所得割の税率の引下げは、付加価値割や資本割の税負担を増加させる(現行の 2 倍に引上げ)
こととの見合いで実施されるため、人件費割合の高い法人や多額の家賃支払いがある法人については必
ずしも有利とならないので注意が必要です。
一方で資本金を 1 億円超とすることが不利なケースもあります。
平成 27 年税制改正では欠損金の繰越控除について資本金 1 億円超の法人の控除限度が 80%から
65%、50%と段階的に引き下げられる予定です。資本金が 1 億円以下であれば欠損金の利用制限はあ
りませんが、資本金を 1 億円超とすると欠損金を十分に利用できない可能性があります。
資本金の金額は、対外的な信用力や運転資金の状況に応じた借入金とのバランス等を考慮して決定
すべきですが、資本金の多寡による税負担の違いも大きいため、将来の長期的な税負担も考慮して検討
する必要があります。
なお、大規模法人の子会社については資本金が 1 億円以下でも資本金 1 億円超として取り扱われる
ケースがあるなど税務上の取り扱いは複雑であり、また、資本金を増減させる場合は法務的にも慎重な対
応が必要なため、ご不明な点は弊社担当までご相談下さい。
* 実効税率:東京都、所得金額 2,500 万円超かつ法人税額 1,000 万円超として算定
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