介護支援専門員の倫理と基本姿勢 利用者の権利擁護・社会資源 介護

介護支援専門員の倫理と基本姿勢
利用者の権利擁護・社会資源
介護支援専門員の役割
平成27年度
京都府介護支援専門員更新研修・再研修
公益社団法人 京都府介護支援専門員会
2
ケアマネジメント過程における基本姿勢
介護支援専門員がケアマネジメントを展開する上で必要な
基本姿勢や大切な視点を理解しておくことは重要。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
利用者の自立支援への多様な視点
家族も自立支援の対象者の一人として考える視点
サービスの総合的提供の視点
チームケア、チームアプローチ(総合的合意と協働)の実
践
資源の開発
苦情への対応
支援状況の記録
3
① 利用者の自立支援への多様な視点




居宅生活は誰一人として同じ環境では無いし、遭遇する困難や
課題もその背景なども異なる。
利用者自身の権利と責任のもとで自らの生活を方向づけること
は画一的なものではないし、居宅における日常生活の維持と向
上を図ることは一人ひとりの差異にも注目しなければならない。
利用者の生活全体を多面的に、かつ総合的に理解することに
より、利用者やその家族が自立した生活を営む上で何が必要
なのかを明らかにすることができる。
利用者の生活に影響を及ぼしている生活機能の障害を把握す
る。
② 家族も自立支援の
対象者の一人として考える視点

家族の心身の状況の変化は利用者の生活に影響を及ぼす。

介護に関する身近で主要な資源の一つとしてとらえられがちな家
族は、日々の生活において精神的・身体的な責任を負うことがあ
る。

家族を含めた日々の生活のリズムを把握し、家族の生活の質の
向上や予防的対応に配慮した介護サービスの効果的な組み合
わせを検討することが必要となる。
4
5
③ サービスの総合的提供の視点

利用者が生活を営んでいく上で、複雑で総合的な生活機能の
障害や困難に出会うことがある。

これらの困難は、保健や医療に関する課題、福祉に関する課題、
介護に関する課題、生活環境に関する課題などさまざまである
が、同時に、相互に関係しあい、新たな課題となっていく。

そのため、個々のサービスを単一に利用するだけでは生活の目
標に達するにはいたらず、より複雑化する。

介護サービスなどが総合的に提供され、利用されるように、チー
ムアプローチや適切な資源活用等が必要となる。
6
④ チームケア、
チームアプローチ(総合的合意と協働)の実践




多くの援助機関・サービス提供者がそれぞれの役割を認め、所
属的領域を越えて、合意し、協働していかなければ利用者の自
立支援をすすめることは出来ない。
個々バラバラにそれぞれの判断のみで利用者に関わっていくな
らば、利用者の生活の全体性と統合性は失われる。
ケアマネジメントでは、複合した課題を解決していくためにチーム
アプローチは不可欠のものであり、各専門職が利用者や家族と
ともに合議し、協働していくことが必要。
それぞれの役割を効果的に発揮する上で、介護支援専門員は
リーダーシップをとっていくことが求められる。
7
⑤ 資源の開発

利用者が必要としているサービスがコミュニティにない場合は、
それらを発掘したり、開発していくことや行政に働きかけていくこと
も必要。

そのためには、利用者自身が自ら必要としているサービスは何で、
現状はどのようになっているのか、どのようにすれば利用できるの
かなどを理解できるようにしていくことも大切。

介護支援専門員だけでは困難なことであっても、多職種のチー
ムとして協働することにより糸口が見つかることもある。それは、
利用者だけでなくコミュニティ全体の福祉の向上にもつながって
いく。
8
⑥ 苦情への対応




介護サービスの利用で不満があったとき、利用者がそのことを
表明することはまだまだ難しい状況。
利用者の権利として介護サービスを利用するという意識がまだ
まだ定着していないことや、介護する者、介護される者という関
係が言いにくい状況をつくっている。
利用者の不満や苦情に適切に対応しなければ、利用している
介護サービスが効果的でなくなるだけでなく、関係者の信頼関
係や他の部分にまで影響を与えていく。
利用者にとって最も身近な存在である介護支援専門員は、
サービス利用状況の確認においてもそのことを十分理解する必
要がある。
9
⑦ 支援状況の記録

記録は、ケアマネジメントのプロセスのすべてにわたって必要。

一人ひとりの利用者の状況を把握するだけでなく、ケアカンファレ
ンス(サービス担当者会議)での検討資料、連絡・調整状況の確
認や把握のほかに、利用者の出会っている問題の個別性と普遍
性を明らかにするためにも必要。

介護支援専門員がスーパービジョンを受ける際の課題整理など
にも必要。

ケアマネジメントのプロセスのそれぞれの時期における記録に求め
られる内容を十分認識しておくことが必要。
10
ケアマネジメント過程における基本姿勢

介護支援専門員の技能は、①・②・③の能力が総合的に発揮され
なければならない。
① 専門性に基づく活動への価値の認識や意思など利用者
支援に関する考え方(倫理・価値)
② 問題解決場面での実践的・応用的知識と情報など利用
者支援実践に関する基本的な知識と情報(知識)
③ 基準に基づいた行動など問題解決場面での実際的な技
術・技能(技術)

知識、技術はイメージできる。しかし、倫理・価値って・・・
11
「倫理」とは何でしょうか?

私たちは、普段の業務の中で、どれぐらい「倫理」のことを意識し
ているのでしょうか?

各自、「倫理」と聞いて思い浮かべることをノートに書き出して下
さい。イメージ、エピソード、キーワードなど、何でもかまいません。

隣同士(2人1組)で、お互いが書き出した「倫理」と聞いて思い
浮かべたことを共有してください。
12
「倫理」とは何でしょうか?

りん‐り【倫理】
1 人倫のみち。道徳の規範となる原理。人として守り行うべき
道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。道徳。
モラル。「―にもとる行為」「―感」「政治―」 2 「倫理学」の略

生命倫理、企業倫理、放送倫理、技術倫理、新聞倫理、宗教
倫理・・・

介護支援専門員としてやらなければならないこと、介護支援専
人としてやらなければならないこと、人としてやってはいけないこ
門員としてやってはいけないこと
と
13
介護支援専門員資格登録簿からの消除事例

(株)Cに対して実施した実地指導において虚偽の答弁を行っ
たこと。
(平成14年7月31日)

(有)Aにおいて、実際に利用されていない通所リハビリのみを
要素とする居宅サービス計画に基づく不正な介護報酬の請求
に関わったこと及び行政庁に虚偽の申述を行うよう利用者に対
して依頼する等、同事業所と同一施設内にあるK診療所におい
て、通所リハビリに係る不正な介護報酬の請求を助けたこと。
(平成14年8月6日)
14
介護支援専門員資格登録簿からの消除事例

(有)Aにおいて、実際に利用されていない通所リハビリのみを
要素とする居宅サービス計画に基づく不正な介護報酬の請求
に関わったこと。
(平成14年8月13日)

医療法人Rにおいて通所介護サービスを受けていない者につ
いて、同サービスを要素とする居宅サービス計画を作成し、同
事業所の不正な居宅介護サービス計画費の請求に関与したこ
と。
(平成14年11月7日)
15
介護支援専門員資格登録簿からの消除事例

K診療所開設者(管理者)及び(有)A取締役として、介護報酬
の不正請求等不適切な事業運営を行い、それぞれ事業者指
定取消処分を受けたこと。
(平成14年12月24日)

自らが管理者である(有)A居宅介護支援事業所が事業者指
定取消処分を受けたこと。
(平成15年1月24日)
16
介護支援専門員資格登録簿からの消除事例

平成11年度実施の介護支援専門員実務研修受講試験にお
いて虚偽の記載内容の実務経験証明書を共謀して作成し、こ
れを行使し介護支援専門員に関する省令第1条に定める要件
を満たしているように装って受験したこと。
(平成15年5月7日)

平成14年度実施の介護支援専門員実務研修受講試験にお
いて虚偽の記載内容の実務経験証明書を共謀して作成し、こ
れを行使し介護支援専門員に関する省令第1条に定める要件
を満たしているように装って受験したこと。
(平成15年6月19日)
17
介護支援専門員資格登録簿からの消除事例

自らが管理者である(有)Iが開設する居宅介護支援事業所に
おいて、介護報酬の不正請求に関与し、かつ、京都府が事業
者に対して行った検査において虚偽の報告に関与するとともに、
京都府が事業者に対して行った実施指導において虚偽の答弁
を行ったこと。
(平成17年11月24日)
18
車購入費着服認める ケアマネ5200万流用疑惑

「明舞中央病院」(明石市)のケアマネジャーだった職員の男性(61)=懲
戒解雇=が高齢の姉妹の口座から約5200万円を引き出したとされる問題
で、明石署は5日、元職員が購入した住宅や土地の契約書について、姉妹
側代理人弁護士から任意提出を受け捜査に着手した。

病院などによると、元職員は引き出した現金をもとに、住宅や土地、中古
車を購入。元職員は神戸新聞社の取材に対し、中古車の購入費として100
万円を引き出したことは姉妹に無断で、着服だったことを認めた。

一方、姉妹宅から約600メートルの位置に購入した木造2階建ての住宅
は「姉妹の体調が悪くなれば、すぐ駆け付けるため」と自己所有が目的では
ないと説明。しかし、登記や権利書は元職員名義で、姉妹側代理人弁護士
によると、姉妹は購入を知らされていなかったという。元職員は購入のため
姉妹の口座から800万円を引き出したという。
19
車購入費着服認める ケアマネ5200万流用疑惑

明石市西部の約550平方メートルの土地は540万円で購入。姉妹宅から
約6キロ離れていたが、「散歩など姉妹のリハビリのためだった」と話した。
元職員名義だったが、売却し姉妹に返還する資金に充てたという。

同署は今後、元職員からも事情を聴き、横領にあたるのかなどを判断する
とみられる。

また、元職員は5日、報道関係者の取材に「信頼を裏切ってしまったことを
謝りたい」などと姉妹にあてた謝罪文を読み上げた。
(2010/01/06 10:27)
ケアマネジメントにおける知識・技術・倫理(価値)の関係
利用者・家族
知識
技術
対人援助・介護・マネジメントの
技術等
法令・制度・介護・医療・資
源等に関する知識等
介護支援専門員
どこまで、何を、どのように、ど
の程度まで、誰を・・・支援する
のか?
倫理・価値
知識や技術があっても、その知
識や技術をどのように使うの
か?は結局は介護支援専門員
の倫理・価値次第・・・。
21
例えば、社会資源の活用において
利用者
社会資源
結びつける支援=ケアマネジメント?
結びつければ、それだけで良いのか?
 ショートステイの予約にどれだけの労力をつかっているか?
 新しいサービス事業所の情報を、どれだけ収集し、情報提供して
いるか?
 他の分野の施策(障害関連、生活保護、年金・・・)をどれだけ学
び自分のものとしているか?
 施設入所後の関わりを継続して行っているか?
などなど・・・
22
ケアマネジメント過程における倫理

介護支援専門員は、ケアマネジメントの全プロセスにおいて利用
者の自立支援を進めていく立場にあり、利用者が効果的かつ効
率的に保健・医療・福祉サービスを利用して、自立した日常生活
を営むことができるように調整していかなければならない

そのためには、利用者の権利擁護をしっかりと認識した倫理や基
本姿勢が問われる。

専門職であれば、それぞれの専門性に立脚した倫理綱領などを
遵守しているが、介護支援専門員はそれぞれ専門職としての基
礎資格の上に、制度的専門性をもっている存在。
23
ケアマネジメント過程における倫理




ケアマネジメントを展開していく上で、「利用者や家族との関係」
「ケアマネジメントを展開する基本原則」「関係者(介護サービス
事業者など)との関係」「社会との関係」「専門職としての責務」
などの基本倫理を持つことは当然求められる。
基本倫理は、利用者や他の人々に向かっての約束ではなく、
自分自身に対して、常に「誓う」もの。
介護支援専門員の役割には、利用者の権利としての自己決
定・自己実現(empowermet)を支える仲介(agent、media
te)と代弁(advocate)が基礎となる。
そこで、介護支援専門員には、次のような基本倫理が求められ
る。
24
ケアマネジメント過程における倫理
①
人権擁護(利用者の権利、尊厳を護る)
②
利用者主権(利用者主体の生活支援)
③
公平性(介護支援専門員の自己覚知)
④
社会的責任(制度的専門性からコミュニティの力
を高める)
⑤
秘密保持(個人情報保護)
25
① 人権擁護(利用者の権利、尊厳を護る)

介護支援専門員の最も重要な倫理は人権の尊重。利用者が
コミュニティや家庭などにおいて日常生活を営む上で、基本的
な権利が侵害されないように配慮する姿勢が必要。

特に利用者が自分の権利や意見を表明したりすることが困難で
あったり、周りの人が理解しにくい場合には、利用者の代弁者(a
dvocate)として権利擁護の立場を守ることが大切。成年後見
制度や日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)な
どの制度活用も必要。
26
② 利用者主権(利用者主体の生活支援)

利用者の主体性の尊重は、「自己決定の原則」。

利用者や家族の参加と意思表明は、生活しているのは、利用
者自身、自立した生活を営むために取り組むのは利用者自身
であることを前提にしたケアマネジメントの基礎となっている。

利用者自身が望む生き方をしていくためにはどのような方法が
あるのかを助言し、自己決定をすすめることにあり、決して自分
の意見を押しつけるものではない。

利用者の主体性を尊重するということは、利用者と介護支援専
門員、介護サービス提供者は対等な関係である。
27
③ 公平性(介護支援専門員の自己覚知)

公平性には、「利用者と介護支援専門員との相互関係」と、「介
護サービスの利用での適正さ」がある。

自分の価値観と異なる利用者や家族がいたとしても、公平に専
門的支援関係を築かなければならない。そのためには、常に自
己覚知が不可欠であり、自己研鑽・適切なスーパービジョンを受
けることが大切。

地域全体の保健・医療・福祉のフォーマルサービスをはじめとす
るさまざまなサービスの適正配分や利用者の個別性を十分に配
慮したサービス調整が必要。
28
④ 中立性(利害関係からの中立)
中立性には、「利用者をめぐる家族や関係者の間」と「利用者とサー
ビス提供者との間」がある。
 「利用者をめぐる家族や関係者の間における中立性」
→介護をめぐっての生活不安や葛藤、対立など生じるが、その家庭に
とって今後どのような生活の将来像を描いていくのがよいのかを協働
で確認しながらすすめていくことが必要。
 「利用者とサービス提供者との間での中立性」
→利用者の希望や要望に反して、自分の所属や関係の介護サービス
事業者の利益のために働くのではない。利用者の代弁者としての立
場にあることを忘れずに、利用者が自立した日常生活を営むことが
できるよう、効果的・効率的なサービスを適切に提供することを専門
的立場から助言する。

29
⑤ 社会的責任
(制度的専門性からコミュニティの力を高める)

介護支援専門員の専門性は、ケアプランをたてることだけでは
ない。

ケアマネジメントには、コミュニティにおけるシステムをつくりあげ
ることも含まれる。

利用者の自立支援のための活動は、コミュニティ全体の保健・
医療・福祉を向上させることにつながる。
30
⑥ 秘密保持(個人情報保護)

個人情報の保護は、社会性のある分野のすべてにわたって共
通の基礎。介護支援専門員と制度に対する信頼の要。

専門家同士の間でも、利用者の納得と了解のもとに必要な情報
を提供する。

利用者が「自分の情報を誰が持っているか?」を知ることも重要。
31
専門職と倫理綱領

「京都府介護支援専門員会」の倫理綱領

「京都府介護支援専門員会」の倫理規程

「全米ソーシャルワーカー協会」の倫理綱領

「フレデリック・リーマー」の倫理的判断基準
32
京都府介護支援専門員会の倫理綱領
私たちは利用者の人権を尊重し、介護保険制度の要であ
る介護支援専門員として、その基本理念である「自立支
援」「利用者本位」を忘れることなく、次の事項を常に念頭
に置き、職務を遂行する。
一.私たちは、利用者が主体的に「生活の質」の維持・向上を目
指すことを支援するため、介護支援サービスの専門職として、
関連する知識、技術、職業倫理の向上に努める。
一.私たちは、利用者の生活や身上に関する秘密を守り、利用者
の個別性に十分配慮し、公平・公正かつ適切な対応を行う。
33
京都府介護支援専門員会の倫理綱領
一.私たちは、利用者が地域社会や家庭において自分の権利や
意見を主張できるように配慮するとともに、援助を通して利用者
及び家族等との信頼関係を培う。
一.私たちは、介護支援専門員や他の専門職と知識や経験を交
換し、自己の専門性や技術の向上に努めることによってサービ
スの質の向上を図る。また、常に相互評価の必要性を認識し、
必要ある場合は適切、妥当な方法で行う。
一.私たちは、利用者の利益のため有効な活動をし、所属する事
業所あるいは特定の事業所の利益のために不当に偏ることの
ないよう中立的な立場から支援を行う。
34
京都府介護支援専門員会の倫理綱領
一.私たちは、利用者が最も効果的に保健・医療・福祉のサービ
スを利用できるよう、サービス提供事業者、主治医、保険者等
との適切な連携を図る。
私たちは、上記の事項に反し、利用者の利益を侵害したり、
専門職としての声価を損なう介護支援専門員に対して、そ
の事実を本人に指摘すると共に、所属する事業所に対し
て必要な処置を求める。
京都府介護支援専門員会
35
京都府介護支援専門員会の倫理規程
第1条(目的)
■本規定は定款及び倫理綱領に違反する行為に対して、会員もしくは会員以外か
ら苦情あるいは是正の申立てがあった場合、職能団体の責務において、その内
容を審理し、是正処置あるいは処分等を行い、もって介護支援専門員の倫理を
遵守することを目的とする。
第2条(倫理委員会)
■本会に倫理委員会を設置する。
■倫理委員会は、第5条により申立てを受理した場合は案件を審査し、必要であれ
ば是正処置あるいは処分に関する案を決定し、理事会に報告する。
■倫理委員会の委員は8名とし、理事会において選出され、会長が任命する。
■委員の任期は2年とする。
■倫理委員会の委員長は、委員が互選する。
36
京都府介護支援専門員会の倫理規程
第3条(倫理委員会の開催)
■倫理委員会は、会長の要請に基づき、委員長が召集する。
■倫理委員会は、委員の過半数の出席がなければ開催することができない。
■申立案件に利害関係を有する委員は、審査に加わることができない。
第4条(申立て)
■苦情あるいは是正の申立ては、会長に対して書面で行わなければならない。
■申立てには、苦情あるいは是正の対象者(以下「被申立人」という。)が会員であ
り、かつ個人として特定できなければならない。
■申立てには、申立てた者(以下「申立人」という。)の氏名又は団体名、連絡先等
が特定できなければならない。
37
京都府介護支援専門員会の倫理規程
第5条(申立ての受理)
■倫理委員会が申立てを受理するか否かは、出席委員の過半数をもって決する。
可否同数の場合は、委員長が決する。
■申立てが受理されない場合は、理事会の承認を経て、会長より申立人に文書で
通知する。
第6条(審査)
■倫理委員会は、審査において申立人と被申立人の双方、あるいはその代理人か
ら意見を聴取することができる。
■倫理委員会は、審査に必要と判断される場合は、参考人等の意見聴取を行うこ
とができる。
■是正処置あるいは処分に関する案の決定は、出席委員の3分の2以上の賛成を
要する。
38
京都府介護支援専門員会の倫理規程
第7条(是正処置、処分)
■是正処置あるいは処分は、倫理委員会の報告に基づき、理事会において決する。
■是正処置あるいは処分の内容は、是正勧告、厳重注意、除名とする。
■是正処置あるいは処分が決定した場合は、その内容を会長より被申立人に文書
で通知するとともに、申立人に文書で報告する。
第8条(不服審査)
■是正処置あるいは処分に対して、申立人あるいは被申立人は異議を申し立てる
ことができる。
■異議の申立ては、是正処置あるいは処分の通知のあった日の翌日から30日以
内に、会長に対し文書で行わなければならない。
■前項の申立てを会長が受理した場合は、会長は不服審査会を設置する。
■不服審査会の開催、運営については、第2条、第3条、第3条、第3条の規定を準
用する。
39
京都府介護支援専門員会の倫理規程
第9条(秘密保持)
■審査・決定に関わった者は、その審査上知り得た秘密を、正当な理由なく他に漏
らしてはならない。
第10条(公表)
■第5条に基づき審査を開始しなかった場合又は審査は開始されたが是正処置あ
るいは処分が行われなかった場合は、申立人、被申立人、申立て内容を公表し
てはならない。
■是正処置あるいは処分が決定した場合は、その内容を会報等で公表する。
(附則)
この規則は、平成20年9月1日より施行する。
40
倫理的葛藤とは?

当然ではあるが、倫理綱領があっても様々な場面で悩むのが
現場での実践。

利用者・介護者(家族)などの当事者間での思いや価値観の相
違、同僚や上司等の様々な関係者や関係機関の思いや価値
観が一致せず、それぞれが対立する場面も非常に多い。そうし
た際に、介護支援専門員は何を優先して支援を行えば良いの
かに迷い、様々な葛藤を感じながらも、最終的に専門職として
判断をしなければならない。

このように、専門職として選択しうる選択肢が複数ある中で、一
方を選択すれば、もう一方を無下にすることになるという、判断
するのが困難な板挟みの状況を倫理的葛藤という。
空閑浩人「 ソーシャルワーク入門 -相談援助の基盤と専門職- 」ミネルブァ書房, 2009年
41
倫理的葛藤とは?

担当する利用者が脳死状態。
長男は延命を希望、長女は延命処置を拒否した場合。

ADLが大幅に低下、医療依存度の高い利用者が退院するに
当たり、在宅でのサービス利用を拒否。主治医や病院関係者
はサービス利用無しでの在宅復帰はありえないと反対。

同系列のデイサービスの施設長が経営的視点(収入減)から、
利用者がショートステイを利用することに反対する。
など・・・
42
全米ソーシャルワーカー協会の倫理綱領(一部)
「利益の対立(d) ソーシャルワーカーが互いに関係を持つ
二人以上の人々(例えば夫婦や家族員)にサービスを提
供するときには、その内の誰がクライエントであるかを全
員に明白に告げ、サービスを受ける様々な個人に対して、
ソーシャルワーカーとしての専門職上の義務が何であるか
を明言するべきである。」
(ソーシャルワーク実務基準および業務指針」p.8)
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
43
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準
全米ソーシャルワーカー協会の倫理綱領を作成した中心
的人物であり、倫理的葛藤に関する研究の第一人者とい
えるリーマーの提案。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
44
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準①
担当している利用者が次回の
サービス利用時にヘルパーに暴力
を振るおうとしているので事業
所に連絡をする。
•
>
利用者の情報は常に承諾を
得ない限り秘密にしておかな
ければならない。
基本的な幸福とは、人間が生きていくために不可欠なもの。これを侵害するこ
とを防止する義務のほうが、守秘義務よりも優先する。
基本的な幸福(生命、健康、
食物、住居などの人間行動に
必要な前提条件)への侵害に
反対する義務
>
守秘義務または付加的なもの
(レクリエーション、学習、富な
ど)への侵害に反対する義務
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
45
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準①
身体的虐待を受け、在宅での
生活が困難な高齢者が施設
への入所を希望。
•
>
囲碁サークルへの参加を望む
高齢者が施設への入所を希
望。
基本的な幸福とより豊かな社会生活を営むために必要な付加的なものとが同
時に侵害される場合、基本的な幸福への侵害に反する義務のほうが優先され
る。
基本的な幸福(生命、健康、
食物、住居などの人間行動に
必要な前提条件)への侵害に
反対する義務
>
守秘義務または付加的なもの
(レクリエーション、学習、富な
ど)への侵害に反対する義務
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
46
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準②
•
•
別々の人の権利。
必要な介護が受けられていない高齢者にサービスを紹介したところ、高齢
者はサービスを希望したにも関わらず、同居する長男がサービス利用を拒
否した場合。
長男はサービスの利用を拒否
したい。
他人の自己決定権
<
高齢者の希望にそって健康や
幸福のためにサービスを提供
する。
<
基本的な幸福に対する個人
の権利
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
47
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準③
•
ひとりの人間の権利の優先順位。
周囲から見ると、一人での生
活の維持が困難であるため、
強制的にサービスを利用させ
る。
•
<
一人暮らしの高齢者がサービ
スを利用せずに生活をしてい
くと決めた。
サービス利用しないでひとり暮らしを続ける危険性やサービス利用に関する
情報などにその高齢者が納得したうえで、自分で下した決断である必要が
ある。
基本的な幸福に対する自分の
権利(同一人物)
<
個人の自己決定権
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
48
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準③
基本的な幸福に対する自分の
権利(同一人物)
•
•
•
<
個人の自己決定権
同時に、その判断が他の人の基本的な幸福を侵害しない場合(高齢者の
近所の人々が悪臭や害虫などで衛生的な生活が送れないなどの状況が
存在しない)に限られる。
利用者に対する日本の保護的な文化から考えると、この指針に賛成するに
はかなり抵抗を感じるかも。
対象者の状態によっては、ケアマネジャーや所属組織の責任が問われる
可能性も高いため、この指針の活用には注意が必要。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
49
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準④
介護保険法等法令には違反
するが、利用者のためにはどう
しても必要であると判断し、同
居家族に対してもサービスを
提供した。
•
•
<
介護保険法等法令に従って、
利用者以外へのサービスの
提供は一切断った。
組織に所属した限りはその組織のルールに従うべきであり、従いたくないな
らそのルールを変えるかまたは所属組織を変えるべき。
自分が納得いかないからといって、組織のルールに違反してはならない。
同意した法律や規則に反する
ことを行う権利
(強制ではなく)
<
同意した(強制ではなく)法律
や規則に従う義務
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
50
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準⑤
•
身体的虐待を受けている高齢者を保護する必要がある場合。
特別養護老人ホームに空床
が無かったが、生命を守るため
にとりあえずベッドを置いて生
活場所をつくる。
基本的な幸福に対する個人
の権利
>
特別養護老人ホームが満床
であることを理由に入所を断
る。
>
法律や規則などに従う義務(
葛藤のケース)
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
51
フレデリック・リーマーの倫理的判断基準
これらの指針は絶対的なものではなく、賛否両論が
あって当たり前。
いくら倫理綱領よりも具体的に示された指針である
とはいえ、実践での倫理的葛藤において明らかな
解決策を示してくれるものではない。
倫理的判断を行う際に、状況に適合する指針を検
討して自分自身で考える必要がある。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
52
倫理的判断の過程
ステップ1
倫理的葛藤の明確化
↓
ステップ2
倫理的葛藤に関係する
人や組織に関する情報
収集
↓
ステップ3
可能な選択肢及び影響
の予測
↓
ステップ4
選択肢の決定
ステップ1
倫理的葛藤の明確化
・何が対立しているのか?
ステップ2
倫理的葛藤に関係する人や組織に関する情報収
集
・誰が関係しているのか?
・判断能力があるのか?
・それぞれの考え方や価値観は?
・それぞれの関係は?
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
53
倫理的判断の過程
ステップ1
倫理的葛藤の明確化
↓
ステップ2
倫理的葛藤に関係する
人や組織に関する情報
収集
↓
ステップ3
可能な選択肢及び影響
の予測
ステップ3
可能な選択肢及び影響の予測
・どのような選択肢が考えられるか?
・もしそれが現実になったら、誰に対してどのような影
響があるのか?
ステップ4
選択肢の決定
・最善の選択肢はどれか?
↓
ステップ4
選択肢の決定
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
54
アドボカシーとは




利用者の権利が侵害されている場合、自分で権利主張できない
利用者に代わってその権利を主張し、その実現に向けて援助す
ることをアドボカシーまたは代弁や権利擁護という。利用者が自
分で自分の権利を主張できるようにエンパワーすることも含む。
サービスの提供拒否や制限、虐待等、ケアマネジャーが中心と
なって利用者の権利を守るべき状況は多い。
利用者の権利を擁護しつつ、ケアマネジャー自身も不利益をこう
むらないためには、専門的な知識や技術が必要。
効果的なアドボカシーを行うには、主に3つの専門的技術が必要。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
55
効果的なアドボカシーを行うための3つの専門的技術
1.
利用者の真の希望を把握するためのアセスメント技
術
2.
人権侵害では、利用者とその権利を侵害している人
や組織との利益が対立しているため、倫理的判断
能力
3.
権利侵害をしている人や組織と話し合いをする際の、
代弁、調整、交渉技術
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
56
アドボカシーが必要と考えられる場合①
利用者の権利が侵害されることが多いと考えられるのは、
以下のような場合

利用者が自分の権利を知らない場合

利用者の家族がすべての決定を行う場合

利用者への情報が制限されている場合

利用者が身体的、精神的、性的に不当な扱いを受けている
場合(虐待を含む)
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
57
アドボカシーが必要と考えられる場合②

経済的に搾取されている場合

機関や専門職間の衝突のために不利益をこうむる場合

サービス提供者の都合によるサービス提供の拒否、制限、中
止が行われた場合

劣悪なサービスが提供されている場合

サービスの契約内容が不利である場合
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
58
アドボカシーの展開過程
権利侵害の明確化
①
②
ステップ1
③
④
権利侵害の状況を把握する。
ケアマネジャーがアドボカシーを行うかどうかを判断する
。権利侵害の内容に関するケアマネジャーの個人的な
価値観が利用者と違う場合などは、他の適切な人に依
頼する方法もあることを利用者に伝え、相談する。
アドボカシーによる結果や影響を予測し、継続するかど
うかを利用者や家族と相談する。
利用者の自己決定に基づき、継続するかどうかを決定
する。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
59
アドボカシーの展開過程
ステップ2
目標の設定:利用者や家族と目標を設定する
介入目標の設定:どこに対して働きかけるのかを決定する
。
ステップ3
ステップ4
権利を侵害している人や組織に直接働きかける場合と行
政などに間接的に働きかける場合がある。
社会資源の確認:アドボカシーを進めていくために利用でき
る資源を確認する。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
60
アドボカシーの展開過程
介入方法の決定
どのレベルの対決姿勢で介入するのかを判断する。利
用者及びケアマネジャーへのマイナスの影響を最低限
に抑えるため、可能な限り対決姿勢が弱い方法から始
める。
② 介入目標の誰に働きかけるのかを明らかにする。
③ 実行した結果を予測し、実際に行動を起こすだけの改
善がありうるのか、または目標を変更すべきかなどにつ
いて再確認する。
④ ケアマネジャー自身への影響を考える。
介入の実施
①
ステップ5
ステップ6
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
61
アドボカシーの展開過程
ステップ7
結果の評価:目標が達成できたかどうか、また利用者は満
足しているかどうかを確認する。また、所要時間や他への
影響などについても評価する。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
62
権利を侵害している人との話し合いでの注意点
1.
相手に対して敵意を持たない
利用者の権利を侵害している人に対してマイナスの感情を持つこ
とはとても自然なことですが、敵意を出しては話し合いが始まりま
せん。自分の感情をコントロールして話し合いに臨みましょう。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
63
権利を侵害している人との話し合いでの注意点
2.
相手の立場や視点を理解する
相手の立場や視点で考えてみると、何が相手の利益なのかが明
らかになってきます。その利益を保持する方向性を示しながら話
し合いを進めていけば、スムーズに目標を達成できるでしょう。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
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権利を侵害している人との話し合いでの注意点
3.
共通することを見つける
一時の話し合いであっても最低限の信頼関係が必要です。また、
共通点が分かれば相手と利用者との妥協点を探ることも容易に
なります。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
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権利を侵害している人との話し合いでの注意点
4.
話し合いをコントロールする
話し合いの目的を明確にし、リードしていきましょう。話は結論と理
由を順序立てて話し、論理的な話し合いができるように心がけま
す。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
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権利を侵害している人との話し合いでの注意点
5.
相手に利用者の意向を正確に伝える
ケアマネジャーはあくまでも利用者の代弁者であることを念頭に、
利用者の考えを正確に伝えます。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
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権利を侵害している人との話し合いでの注意点
6.
実例、データ、書類、資料などを活用する
利用者側の主張を具体的に理解してもらうためにさまざまな資源
を活用します。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年
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権利を侵害している人との話し合いでの注意点
7.
記録に残す
特に合意事項に関しては、話し合いのその場で書面に残し、お互
いに確認しましょう。言った言わないの水掛け論になってしまって
は、状況を悪化させるだけです。
高良麻子「実践力をつけたいケアマネジャーのためのワークブック」中央法規, 2004年