No.11 2010.9 姿勢と学力の関係について考える 先日,筑西市教育委員会教育長の上野先生が今後の課題として 13の課題をあげられたそうです。その中の1つに「授業中の姿勢と 体力・運動能力の向上」というお話があったそうです。 そこで今回の夢っ子通信では,「姿勢と学力の関係」について考えてみたいと思います。 ある教育機関が,東京都内の小学校 4 年生から 6 年生において,「平均点以上」と「平均点未満」に分け,それぞれのグ ループの姿勢のいい人と悪い人の割合を調べたところ,以下のような結果がでたそうです。これは,あくまでも一部の 小学生のデータに過ぎませんが,姿勢と学力には密接な関係があるのではないでしょうか。 子どもに“勉強しなさい”といくら言っても,長時間,机に向かうことができない子どもが増えていま す。その主な理由は,正しい姿勢で座ることができないからです。姿勢の悪いまま机に座り続ければ, 集中力が低下し,ただ時間だけが過ぎるだけで効率も悪く,その結果,学力低下にも結びついてしま います。 脳は,血液中から運ばれるブドウ糖をエネルギーとして活動しているのですが,なんと,全身を流れている血液中のブ ドウ糖を,脳だけで40~50%も消費しているのです。脳にブドウ糖を送る上で,最も大切な役割をしているのが,酸素を 多く含んだ新鮮な血液を心臓から直接送り込むけい動脈。このけい動脈は,首筋を通って脳に到達しますので,姿勢が 悪いとけい動脈を圧迫してしまっている可能性があります。椎(首の骨)の歪みや肩凝り・首筋の凝りなどを改善するこ とによって,脳へ送られる血流量は最大30%も改善されるとのデータもあります。また,血流量が増えると,同時に酸素 の供給量も増え,体に有害な乳酸(疲労物質)の濃度が下がりますので,長時間勉強しても疲れにくい状態になるので す。 日常的に悪い姿勢をとっていると,筋肉がアンバランスに発達したり衰えたりします。これが骨に影響を与え,背骨や 肩甲骨,骨盤などが自然な形からズレてしまい姿勢が悪くなります。その大きな原因をいくつか挙げてみます。 ① 運動不足 前かがみの姿勢は,心臓や肺などを圧迫して,血液やリンパ液の流れを妨げます。さらに消化器系の内臓器官にも影 響を及ぼし,消化・吸収が正常に行われないことにもつながってしまいます。さらに自律神経の減弱にもつながると言 われています。筋力の低下が引き起こす姿勢の悪さは,腰痛や肩こり, 頭痛, だるさ等様々な症状を生み,さらには背 骨が左右に曲がる“湾曲”など,悪化すれば整形外科的な手術を要する深刻な事態を招くことさえあります。つまり,運 動と姿勢が強く結びついているわけです。普段から悪い姿勢をしている子供に,急に姿勢を正せと言ってもなかなか そうは簡単にいかないものです。それは,正しい姿勢を保つための充分な筋力が不足していることと,やったことがな いことには適応できないという人間の性質によるのです。運動をすることは正しい姿勢を保つのに必要なのです! ② テレビゲーム 最近特に気になるのがテレビゲームをしている子どもたちです。その姿勢を見ると,かならずと 言っていいほど猫背になっているはずです。背筋は弱い筋肉です。前かがみの状態を長く続けて いると,その分,椎間板に負担をかけ,痛みや張り,ゆるみを起こしてしまう可能性があります。テレ ビゲームやパソコンなどは,1日1時間以内におさえたほうがよいでしょう。 ③ 学習机・いすが体に合わず,前かがみで勉強している 養蚕小学校では,学期が始まるたびに児童 の姿勢をよくするために机の高さ,イスの高さ 調節を行っています。これらは,目を悪くしな いためだけではなく,姿勢をよくするために 行っています。 イスの高さは座ったときにかかとが床につ き,ひざが直角に曲がっている状態が最適で す。イスが高く,足がブラブラしている状態で は,その調整ができず疲れてしまい,注意力が散漫になってしまいます。 家庭でも座るときは深く腰掛け,首筋を伸ばす姿勢をとれるよう心がけてください。また,背筋と腹筋をバランスよ く付けることが大切なので,できるだけ背もたれを使わない方がよいと思います。 姿勢がいいと学力が上がる事例・・・ 以前,私の先輩にすごい先生がいました。中学3年の数学の授業で,「手は膝の上,背筋は90度」と言っていつも授業 を行っていました。中学3年生でも,誰一人としてそのきまりを破る生徒はいませんでした。今考えただけでもすごい先 輩でした。初めて赴任した中学校で,いきなりの3年担任だった私にとっては,その先輩が「数学の平均点の低いクラス は俺が教える」と言っている姿に『何てすごい先生なんだ』と驚きました。実際に授業を見てみると,本当に手は膝の上, 背筋は90度で授業を受けている自分のクラスの生徒たちがいました。4月当初の実力テストで平均点が低かった我が クラスの生徒でしたが,2月の最後の実力テストでは平均点が大幅に上回ったのを覚えています。「手は膝の上,背筋は9 0度」というのは聞く姿勢を言っていたのかも知れません。『姿勢がいいと学力が上がるというのは本当だ。』と思った 瞬間でした。 公立図書館を有効に活用してみませんか・・・? 夏休みに茨城県立図書館や市立図書館に行ってみました。驚いたことに,多くの親子連れが図書館で本を読んだり, 一緒に勉強したり,本を借りたりする姿が見られました。筑西市にも大きな市立図書館があります。暑い休みの日に,涼し い図書館で読書したり,一緒に勉強したり,本を借りてみてはいかがでしょうか。 夏休みの研修から 夏休みに千葉経済大学名誉教授の飯田先生の講演を聞きました。最近の世界の教育事情のお話の中で,最近よく耳 にするモンスターペアレンツのお話がありました。養蚕小学校には,そのような保護者の方はいらっしゃいませんが,参考 までに載せてみたいと思います。 <日 本> モンスターペアレンツ 自己中心的,自分の子(自子)中心的な考えをし,理不尽な要求をする。 <アメリカ> ヘリコプターペアレンツ 子どもや学校の上空を旋回していて,何か問題を見つけると直ちに舞い降り,教師を非難したり,訴訟を起こす。 <イギリス> フーリガンペアレンツ ※フーリガンとは,サッカーの試合会場の内外で暴力的な言動・行動を行う集団 自分の意に反することがあると,教師につばを吐く,殴る,蹴るなどの暴行を行う。
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