「サ高住 」制度の概要 - 東京海上日動WINクラブ

2013 September Special
東京海上日動 WINクラブ
http://www.tmn-win.com/
サービス付き高齢者向け住宅ビジネス入門 ②
「サ高住」制度の概要
新規参入をご計画の事業者様・オーナー様向け
に「サ高住」ビジネスのポイントを解説致します!
東京海上日動ベターライフサービス株式会社
http://www.mizutama-kaigo.jp/
Ⅰ.「サービス付き高齢者向け住宅」は有料老人ホームとここが違う!
1. 「サ高住」は有料老人ホーム等に比べて新規参入がしやすい
「高齢者住宅」と聞くと多くの人は有料老人ホームを思い浮かべるかも知れませんが、有料老人ホーム以外にも高齢者住宅
にはさまざまな種類があります。なかでも最近、特に注目されているのが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
」です。
「サ高住」には他の高齢者住宅と異なる点が数多くあります。例えば「サ高住」と有料老人ホームを比べてみた場合、最大
の違いは「サ高住」の方が規制や基準が緩やかで、補助・融資・税による支援策が充実しており、介護ビジネスの経験のな
い中小企業にとって新規参入がしやすい点にあり(表1)
、実際にさまざまな業界から「サ高住」ビジネスへの新規参入が近
年急増しています。
2.「サ高住」の自由で安心な暮らしと費用の安さは大きなセールスポイントになる
「サ高住」と有料老人ホームの比較でさらに目立つのが、入居者の立場で見た場合の相違点です(表2)
。有料老人ホーム
は居室が病院の個室タイプで、浴室やトイレ、食堂等を共同で使用することが多いのに対し、
「サ高住」の居室は生活に必要
な設備が完備されたワンルームタイプが一般的で、入居者は必要なサービスを自分で選んで、自分の意思に基づいた自由な暮
らしを送ることができます。
また、
「サ高住」は賃貸借契約なので、借主の住む権利が借地借家法や民法などの法律で保護されており、不都合があれば
自分の意思でいつでも解約できるので安心できます。さらに費用の面でも「サ高住」は入居金が必要ないなど、かなりお得に
なっています。こうした生活の自由度や安心度の高さ、費用の安さが大きなセールスポイントとなるので、
「サ高住」は有料
老人ホームよりも入居者の募集が容易といえます。
表1 「サービス付き高齢者向け住宅」と「介護付き有料老人ホーム」の比較 ①
届出か登録か
建築基準
スタッフの
配置基準
補助金・
税制優遇
サービス付き高齢者向け住宅
補助金を受け取るのでない限り、基本的に基準に合致
してさえいれば登録することができる。
居室の広さ(原則 25 ㎡以上)等構造・設備が一定の基
準を満たせば共用部・設備の設置は求められない。
事業者が直接サービスを提供しないので、スタッフ配
置に関する基準はなく、管理者の配置も必要ない。
一定の基準を満たせば補助金・優遇税制措置を受ける
ことができる。
介護付き有料老人ホーム
「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」が定めら
れており、この指針に基づき指導を受け届出を行う。
居室の大きさは 13 ㎡と比較的小さくて済むが、ス
プリンクラー・消火設備等の設置が求められる。
事業者が直接提供するサービス内容に応じた職員の
配置が求められ、管理者の配置が義務付けられる。
補助金・優遇税制等の制度はない。
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表2 「サービス付き高齢者向け住宅」と「介護付き有料老人ホーム」の比較 ②
環 境
行 動
生 活
介 護
提 供
サービス
利用権か
借家権か
サービス付き高齢者向け住宅
プライバシー重視、各居室で生活が営める。
自立的・自律的
介護付き有料老人ホーム
浴室やトイレ、食堂等は主に共同で使用。
協調的
(個々人の生活スケジュールに合わせて行動)
(食事時間をはじめ入浴や排せつ管理等自由に決定できない)
基本的に自由に生活できる(自己責任)。
多種多様な地域コミュニティを活用しながら暮らす。
様々なサービスから選択可能(任意)
。
少なくとも生活相談・状況把握(安否確認)サービスを
提供。希望により介護、家事、医療、看護など。
原則、賃貸契約に基づく借家権(でなければ補助金・
優遇税制措置を受けられない)
。
規定人員(職員)等により管理的であるが安心。
主に施設内で生活が完結する。
事業者(施設)で一体的に提供。
生活相談、安否確認、健康相談、掃除、洗濯、食事、看
護、介護、レクリエーション、医療(通院・往診)など。
介護や食事等のサービス、居室や共用部分の設備等の「利
用権」を購入する独自の契約。
表1・表2出典:東京海上日動ベターライフサービス㈱セミナー資料を基に作成
Ⅱ.「サ高住」の登録基準
新築または改修した高齢者向け賃貸住宅を「サ高住」として売り出し、入居者を募集するためには、その住宅が所在する
都道府県・政令市・中核市の窓口への登録申請が必要です。その手順は次のような流れになります。
① (一社)すまいまちづくりセンター連合会が運営するWebサイト「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」(「登録申請に
ついて」 www.satsuki-jutaku.jp/apply.html)にアクセス
② 画面上で登録マニュアルに従いアカウントを取得し、申請書式に登録情報(事業所の名称や所在地、居住面積、構造及び設備、サ
ービス内容、受領する金銭、契約形態、入居者資格など)を入力
③ プリントアウトした申請書と必要な添付書類(契約の約款、住宅の図面など)を都道府県・政令市・中核市の登録窓口に提出
「サ高住」を登録するためには、登録する物件が国の定める次の基準に合致している必要があります。
1.規模・設備
●各専用部分の床面積は、原則 25m2 以上
(ただし、居間、食堂、台所そのほかの住宅の部分が高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は 18m2 以上)
●各専用部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること
(ただし、共用部分に共同して利用するため適切な台所、収納設備または浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等
以上の居住環境が確保される場合は、各戸に台所、収納設備または浴室を備えずとも可)
●バリアフリー構造であること (○段差のない床 ○手すりの設置 ○廊下幅の確保)
2.サービス
安否確認サービスと生活相談サービスが必須のサービスです。ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐し、これらの
サービスを提供します。これらのサービスの他に介護・医療・生活支援サービスが提供・併設されている場合があります。
〔ケアの専門家〕 ○社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員 ○医師 ○看護師 ○介護福祉士
○社会福祉士 ○介護支援専門員 ○介護職員初任者研修課程修了者
3.契 約
●書面により契約を締結します。
●専用部分が明示された契約でなければなりません。
●賃貸借方式の契約と利用権方式の契約がありますが、いずれの場合も、長期入院などを理由に事業者から一方的に解約
できないことになっている等、居住の安定が図られた契約内容になっていなければなりません。
●受領することができる金銭は、敷金、家賃・サービスの対価のみです。権利金やその他の金銭を受領することはできま
せん。
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●家賃・サービスの対価の前払金を受領する場合は、
○前払金の算定の基礎、返還債務の金額の算定方法が明示されていなければなりません。
○入居後 3 月以内に、契約を解除、または入居者が死亡したことにより契約が終了した場合、「契約解除までの日数×日割計
算した家賃等」を除き、前払金を返還しなければなりません。
○返還債務を負うことになる場合に備えて、前払金に対し、必要な保全措置が講じられていなければなりません。
●サービス付き高齢者向け住宅の工事完了前に、前払金を受領することはできません。
※都道府県知事が策定する高齢者居住安定確保計画において別途基準を設けられる場合があります。
Ⅲ.登録事業者の義務と行政による指導・監査
表4 高齢者住まい法の定める登録事業者の義務
〔第14条〕 登録以外の住宅について「サービ
ス付き高齢者向け住宅」または類似の名称
を使用することはできません。
〔第15条〕 提供サービスの内容など登録事
項について誇大な広告をすることはできま
せん。また、定められた表示方法で広告を
行うことが義務付けられます。
〔第16条〕 登録事項の情報開示が義務付け
られます。
〔第17条〕 契約前に書面交付により入居者
に重要事項(契約方式・契約内容、介護サービ
ス情報、家賃等の前払金の返還期間など)の説
明をしなければなりません。
〔第18条〕 契約内容に沿ったサービスの提
供を行わなければなりません。
〔第19条〕 登録住宅の管理に関しての内容
を記録するための帳簿を備え付け、保管し
ておかなければなりません。
〔第20条〕 登録事業の広告を行う場合、国土
交通省・厚生労働省の定める表示方法を順
守しなければなりません。登録事項に変更
が生じたときは変更の届出を行い、書面交
付により入居者に変更内容の説明をしなけ
ればなりません。
「サ高住」ビジネスに参入する事業者は、自らにどのような法的義務が課せ
られ(表4)
、どのような時に行政による監督が行われるか(図1)を把握し、
コンプライアンス(倫理法令順守)に十分留意することを求められます。
図1 サービス付き高齢者向け住宅に対する行政監督
出典:(一社) すまいづくりまちづくりセンター連合会 「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」 高齢
者住まい法の改正について(国土交通省) http://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_panfu_00.pdf
Ⅳ.登録事業者への補助・税制・融資による支援策
国土交通省は今後 10 年間で「サ高住」を60万戸整備するという目標を掲げ、2011 年度は 325 億円、2012 年度は
355 億円、2013 年度も 340 億円と巨額の補助金を支給するなど、登録事業者に対して手厚い支援策を実施しています。
1.補 助
「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」(http://www.koreisha.jp/)として「サ高住」の供給促進のため、住宅・施設の建
設・改修費に対して国が民間事業者・医療法人・社会福祉法人・NPO 等に直接補助を行います(図2)。
2.税制優遇
2015 年 3 月 31 日まで(所得税・法人税は 2016 年 3 月 31 日まで)の間に「サービス付き高齢者向け住宅」を新築ま
たは取得た場合、所得税・法人税の割増償却、固定資産税の減額、不動産取得税の軽減措置が適用されます(図3)。適用
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要件の詳細は、租税特別措置法及び地方税法をご確認ください。
3.融 資
住宅金融支援機構では、「サ高住」の登録を受ける賃貸住宅の建設・改良に必要な資金または「サ高住」とすることを目
的とする中古住宅の購入に必要な資金への融資を実施しています。詳しくは住宅金融支援機構のホームページ
(http://www.jhf.go.jp/keiei/yushi/info_1.html)をご覧ください。
図2 「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」による補助金
図3 税制による支援措置
図2・図3出典:
(一社)サービス付き高齢者向け住宅協会
「サービス付き高齢者向け住宅とは」
http://www.satsuki-jutaku.jp/doc/panfu.pdf
※ 次号(10 月発行予定)では、サービス付き高齢者向け住宅ビジネスへの新規参入のポイント等について解説します。
東京海上日動ベターライフサービス(BLS)メニューのご案内
(担当:斎田・斎藤)
① 社内勉強会
社員や従業員のみなさまに、介護事業の情報やサービス付き高齢者向け住宅に関する実務に即した最新情報についてご提
供します。
② サ高住セミナー
「サ高住」への新規参入をお考えの事業者様・オーナー様向けに、新規開設の準備や事業の運営についてポイントをお伝
えします。 ※個別コンサルティングも実施します。
③ リスクマネジメントセミナー
介護事業者様向けに、運営面でのリスクマネジメントについて防止策・対応策をお伝えします。
④ 仕事と介護の両立セミナー
東京海上日動ベターライフサービス株式会社
従業員の皆様が主介護者となった場合の仕事との両立のポイ
ントや不安解消に向けた基礎知識をお伝えします。
⑤ 介護セミナー
介護の知識をわかりやすくお伝えします。お客様向けイベント
のコンテンツとして、新たなお客様との接点を持つ機会を創出
できます。
⑥「介助専門士」資格取得の講習
NPO法人日本介助専門員推進協会の認定資格の取得により接
客力が向上し、お客様の満足度のアップ、
「高齢者・障がい者
に優しい企業」としてイメージの向上につながります。
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(Tokio Marine & Nichido Better Life Service Co., Ltd.)
本社所在地:東京都渋谷区初台1丁目34番地14号
初台TNビル1階
拠点数:1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)に33拠点展開
資本金:1億円
社員数:1,458名 (2013年4月末日現在)
常勤社員266名、登録型ヘルパー1,192名
※介護支援専門員(ケアマネジャー)86名
介護福祉士421名 社会福祉士19名 看護師4名
株主:東京海上日動火災保険株式会社 (100%)
URL:http://www.mizutama-kaigo.jp/