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(株)ファンケル
データベース・マーケティングを駆使し
個々の顧客に最適な情報の提供を目指す
1980年の創業以来、
「"不"のつく言葉を解消する仕組み作り」を経営の基本姿勢として、業界の"常識"を破り続け
てきた(株)ファンケル。業界トップクラスの研究開発力を活かし、2002年より美容と健康を身体の内と外から考
える「内外美容」理論に基づく、化粧品と栄養補助食品を融合させた全く新しい視点からの商品を提案している。
同社では、新ポイントプログラムを導入し、2008年4月1日にリニューアルする。これまで以上にデータベース・マー
ケティングを駆使して、顧客一人ひとりに最適な情報の提供を目指す。
通 販
【本社所在地】〒231-8528 横浜市中区山下町89-1
【設 立】1981年8月18日
【資 本 金】107億9500万円
【売 上 高】746億2,800万円(2006年3月期)
【U R L】http://www.fancl.co.jp/
( 1 ) 企業の概要
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け、
“美”と“健康”をテーマに、顧客に付加価値
の高い商品を届けている。
“生活の身近にある不の解消”を
売上高(連結)は堅調に推移し、2006年3月期に
次々と実現し、事業領域を拡大
は953億2,200万円を計上。その構成比は、化粧品
化粧品・健康食品の製造販売を手掛け、「“不”
43.3%(412億8,600万円、前期比11.3%増)
、栄養補
のつく言葉を解消する仕組み作り」を経営の基本
助食品34.9%(332億4,600万円、前期比6.8%増)
、そ
姿勢に業界の“常識”を打ち破ってきた、
(株)フ
の他(発芽米事業、青汁事業他)21.8%(207億
ァンケル。同社は、1982年に、肌トラブルの原因
8,900万円、前期比5.5%増)である。
である防腐剤を一切排除した無添加化粧品の通信
販売を開始した。その原点は、
「肌を美しくするは
主要チャネルは、店舗および通信販売。店舗は、
「ファンケルハウス」
「ファンケルハウスJ」
「ファン
ずの化粧品が、肌を傷つけている。そんな悩みを
ケルガーデン」ほかの名称で、2006年12月現在、
抱える女性が安心して使える化粧品をつくりたい」
全国に207店舗を展開する。2006年12月のFHJゆめ
という想いにあった。
タウン佐賀店(佐賀県)の出店をもって、47都道
以来、1994年には栄養補助食品の通信販売を開
府県すべてに直営店が設置された。通信販売は、
始して健康食品事業を立ち上げ。1999年から2000年
カタログ情報誌『エスポワール』を発行。電話、
にかけては発芽玄米事業、青汁事業など、後にメ
ファクス、インターネットで注文を受け付けてい
イン商材となる新商品を次々と打ち出し、事業領
るほか、オンライン・ショッピング・サイト「フ
域を拡大してきた。
ァンケルオンライン」も開設している。
現在は、化粧品関連事業と栄養補助食品(サプ
事業別チャネル別売上構成比は、化粧品関連事業
リメント)関連事業の2事業を“収益を目指す「コ
は、通信販売58.3%(売上高240億6,000万円、前期
ア事業」
”と位置付ける一方、発芽玄米事業および
比5.4%増)
、店舗販売33.2%(売上高137億2,100万円、
青汁事業を“成功を目指す「成長事業」
”と位置付
前期比19.4%増)
、その他(コンビニエンスストア
CRM年鑑2007
177
など)8.5%(売上高35億400万円、前期比26.2%増)
。
客のスイッチ防止が重要な命題となった。市場の
一方、栄養補助食品関連事業は、通信販売50.6%
ポテンシャルから言っても、新規顧客の大量獲得
(売上高168億2,200万円、前期比0.7%増)
、店舗販売
は難しく、既存顧客の囲い込みが必要になってき
25.2%(売上高83億9,300万円、前期比17.0%増)
、そ
たのだ。こうして、ポイントプログラムのニーズ
の他24.2%(売上高80億3,000万円、前期比10.8%増)
が、再び台頭してきたのである。
となっている。
4大チャネルの顧客を
ひとつのポイントプログラムでつなぐ
( 2 ) CRM への取り組みの背景
直営店展開は1996年に開始している。当時、す
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でに販促の一環で直営店が独自にポイントプログ
顧客との関係づくりでは
ラムを展開していたが、CRMの考え方を明確に根
「リレーションシップ」と
底に据えたポイントプログラムを導入したのは、
「ロイヤルティ」を重視
2000年のことである。同プログラムのコンセプト
同社では、
「顧客の継続化が第一義であり、収益
は、
「携帯で買って蓄積したポイントを翌日店舗で
はその結果である」という考えのもとに、顧客と
使える」といった具合に、カタログ、インターネ
の関係づくりにおいて、
「リレーションシップ」と
ット、モバイル、直営店という4大チャネルの顧客
「ロイヤルティ」の2つの言葉を重視してきた。一
をひとつのポイントプログラムでつなぐことであ
般に、「管理」や「システム」の意味合いが強い
った。顧客情報は、システム上ではすでに一元化
「CRM」よりも、関係性の構築(リレーションシッ
されていたが、この仕組みを導入することで、顧
プ)とそれによるロイヤルティ向上を、社内で推
客がどのチャネルを使おうが横断的に顧客情報を
進してきたわけである。
把握できるようになったわけである。
しかし、競争環境が激化する中、1990年頃より、
そして、2006年2月、さらにリレーションシップ
かねてより展開していた顧客継続化のためのプロモ
の強化を狙って発行したのが、
「ファンケルプレミ
ーション施策のコストパフォーマンスを向上するた
アムカード」である。
(株)ジェーシービーとの提
めに、個々の施策の改廃を進めることとなった。例
携によるクレジット機能を付帯したメンバーズカー
えば、1995年には、ポイントプログラムのように購
ドで、一般カードとゴールドカードの2種類を用意
入額の一定割合を積み立てて、次回以降の購入で利
した。汎用非接触IC決済サービス「QUICPay(クイ
用できる仕組みの「割引積立制度」を廃止。米国小
ックペイ)
」も標準搭載する多機能ICカードである。
売業のウォルマートのような「エブリデーロープラ
同社ではこれまでも折に触れて、自社のカード導
イス」を前提にした価格訴求ではなく、サービスで
入を検討してきたが、想定されたデメリットを払拭
付加価値を高めていくことを目指したのだ。
することができず、導入は見送っていた。しかし、
そして昨今、健康食品市場は、折からの健康ブ
カードに対する顧客の認識の高まりや、異業種間の
ームとバイオテクノロジーの進展を追い風に急成
ポイント共有が活発化する中で、同社としても、顧
長を遂げてきたが、その一方で、新規参入企業の
客便益を向上する方向で有効活用できないか、再
増加により競争が著しく激化。同市場のリーディ
度検討。トライアルに踏み切ったのである。
ング・カンパニーである同社においては、既存顧
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CRM年鑑2007
同プログラムは、営業企画室が企画し、販促部