アビターレ厚南中央地質調査 調 査 報 告 書 平成 27 年 2 月 常盤地下工業株式会 社 2 【目 次】 調査地案内図(S=1:25,000) ボーリング位置図(S=1:600) 1. 業務概要 ---------------------------------------------- 1 2. 主要機材の仕様と調査方法 ------------------------------ 2 3. 地形および地質概要 ------------------------------------ 4 4. 調査結果 ---------------------------------------------- 6 5. 土質定数の推定 --------------------------------------- 10 6. 考察 ------------------------------------------------- 12 <添付資料> 土質柱状図 現場状況写真 1 1.業務概要 業 務 名 アビターレ厚南東須惠地質調査 実 施 場 所 宇部市大字東須惠 地内 工 着手 平成 27 年 2 月 13 日 期 完了 平成 27 年 2 月 17 日 業 務 内 容 機械ボーリング 1 箇所、 掘進深度 No.1=16m(住宅団地造成地盤調査) 掘削孔径(φ66mm) 標準貫入試験 合計 16 回 土質名称 沖積層⇒岩盤(第三紀層) 発 注 者 ㈱エム・エス・コーポレーション 請 負 者 常盤地下工業株式会社 山口県宇部市大字西岐波 4374-1 TEL(0836)51-9224 FAX(0836)51-0200 管理技術者 田中 盛正 担当技術者 同 (技術士;建設部門;土質及び基礎) 上 ボーリング標高は、平面図に図示された数値を参考にした。 2 2.主要機材の仕様と調査方法 2-1 主要機材 この業務においては、調査および試験の内容と精度に応じた機材および試験機器の仕様 を計画している。本案件の基礎地盤調査の調査および試験に必要な機材を表 2-1 の一覧に 示す仕様で実施している。 表 2-1 主要機材一覧表 種 別 機 械 ボーリング 名称 製造先/型式 試 錐 機 YBM(吉田鉄工所)製 YSO-1型 穿孔能力150m 地盤の掘削 試錐ポンプ YBM(吉田鉄工所)製 GP-5型 吐出量50l/min 泥水の循環 エンジン ヤンマー製 NDF9-K MAX6.6kW(9.0PS) 掘削機械の原動機 掘削用具 YBM(吉田鉄工所)製 ロッド,コアチューブ,ビット,その他器具 掘削・コア採取 角材・足場板・その他 作業ヤードの足場 足場仮設材 原位置試験 標準貫入試験 YBM(吉田鉄工所)製 性能/仕様 地盤工学会(JGS)の基準に準拠した機材 ボーリングで使用する機械、機器を図 2-1 に概略図として記載する。 図 2-1 ボーリング概略図 利用方法 地盤の工学的性質の把握 3 2-2 調査方法の解説 標準貫入試験は、レイモンドサンプラーの打込みに要する打撃回数を求め、基礎地 盤を構成する地層の硬軟を判定するものであり、ボーリングの掘進に並行して実施し、 原則として深度 1.00m 毎に行うものである。 使用する器具はレイモンドサンプラー外径 51mm・内径 35mm・全長 810mm、総重量 8kgf(78N)の標準貫入試験サンプラーとハンマーは重量 63.5kgf(0.62kN)で鋼製のもの を用いる。また、ロッドは外径 40.5mm のボーリング用のもので、継手部は打撃に対し て十分耐えられるものでなければならない。(2 <目 的> ①.採取した試料の土の判別と分類 ②.原位置における土の硬軟と締まり具合の判定 ③.試料採取及びN値の測定 ④.地盤の総合的な判断並びに概略的な土の物性値の推定 <結果の利用方法> ①.砂の内部摩擦角の検討 ②.粘性土における粘着力の推定 ③.地盤の変形係数の検討 ④.地盤支持力の検討 図 2-2 標準貫入試験機の模式図と作業状況写真 「半自動型落下装置」 4 3.地形および地質概要 3-1 地形概要 調査地は、厚南中学校の東方に位置し、JR 宇部駅の南方に位置する。調査地周辺の地形 概観は、標高 2m~3m 程度の田園である。 3-2 地質概要 調査地周辺の地質は、新生代・沖積層(1 万年前頃~現在までに堆積した地層)が分布 し、その下位は、新生代・第三紀層(4000 万年前に堆積した岩盤)である。 次頁の図 3-1 には、山口県の地質図(縮尺 1:150,000)を示している。 住宅の基礎として地質を考える。 (1)GL~3.3m(非常に軟弱な沖積層:シルト層) N 値→0 の軟弱地盤で、構造物の基礎となる部分は杭基礎が必要となる。杭基礎について は詳しく後述する。 (2)3.3m~5.8m(緻密な砂礫層:沖積層) N 値 50 以上の緻密な砂礫層で、杭基礎の支持層として十分耐えられる。 (3)5.8m 以深(硬質な第三紀層:岩盤) N 値 50 以上の硬質な岩盤である。この岩盤は、宇部層群、宇部夾炭層と呼ばれ、石炭を 採掘していた経緯がある。今回のボーリング調査では、石炭採掘跡の空洞は見当たらなか ったが、周辺では存在する可能性がある。 この空洞(古洞)についても詳しく後述する。 以上、当地の地形および地質条件を鑑みた上で、支持層の分布や基礎地盤の状態及び 基礎形式について後述する。 5 図 3-1 地 質 図 6 4.調査結果 4-1 ボーリング位置と結果 図 4-1 に、今回のボーリング位置を示している。 ボーリング位置 図 4-1 調査地のボーリングの位置図 図 4-1 に示すとおり、ボーリングは敷地の北端になっているが岩盤の傾斜(3°~5°) を考慮して全体の地盤を検討する。 7 下表は、ボーリング柱状図である。 5.80m までが「沖積層」で 5.80m 以深は、「硬質砂岩」の岩盤である。 上表のように、3.30m までが N 値の小さい軟弱層である。3.30m 以深は杭基礎の支持層 として有効な砂礫層である。岩盤は 5.80m 以深となる。石炭層が存在しても 10m 以深にな ると想定される。従って、石炭採掘に伴う「古洞」は存在しても地表面の住宅基礎荷重が 影響する圏外になる。従って、石炭鉱害の想定は考えなくても良い。 宇部夾炭層の地盤傾斜は、南に向かって「3°」傾いている。従って、造成地は南北に 170m 拡がっている。170m×tan3°=8.9m となる。杭基礎までの深度→3.3m+8.9m=12.2m となる。即ち、北端で杭長が 3.3m であっても南端では 12.2m 必要となる。 岩盤の傾斜は、推測値なので、実際に宅地造成が完了した時点で、サウンディング試験 で簡易的な杭長調査の実施を推奨する。 8 4-2 ボーリング結果(追記) 硬質砂岩 4.10m の下位に古洞が存在する場合を考えて、杭の接地面に作用する応力を岩 盤のせん断強度と比較検討し安全性を照査する。 4-3 地下水位調査 ボーリング掘削作業中、地下水位の情報を得るために、孔内水位を測定したが、ボーリ ング孔に被圧された孔内水位は見当たらなかった。作業中の水位のみであった。従って、 掘削に伴う湧水はないものと思われる。 9 4-4 標準貫入試験 造成予定敷地内の地層は、N 値→0 から始まり下位になるに程大きくなる。 砂礫層は、換算 N 値 150 からその支持力度は 150t/m2 程度あるものと考えられる。 N 値と支持力度の関係は、参考図書 4)「N 値および C・φ」P75 の式 支持力度 Qa=N(tf/m2)より抜粋した。本層は粒度分布の良い密実な砂礫層である。 注)換算 N 値:N 値は、地層 30 ㎝貫入する時の打撃回数を表わしている。50 回貫入し ても 30 ㎝地層に到達しない時には、N 値を換算する。例えば、50 回打撃して 10 ㎝しか貫 入しない場合は、換算 N 値=50 回×30 ㎝÷10 ㎝⇒150 となる。 杭以外の地耐力(砂質土、粘性土)は、建築基準法に準じた支持力度の求め方を次ペー ジに記述する。 10 5.土質定数の推定 各地層の土質定数については、標準貫入試験で得られた N 値を用いて推定する。 <砂質土のせん断強度> 建物基礎の計算用 砂質土のせん断強度は、小規模建築物基礎設計指針 P-40 に引用されている式(5・1)(大 崎)(1 より推定した。同様に、粘着力は式(5・2)より推定した。 地表面をマサ土で盛土したような場合。N 値=3 として計算する。粘着力 C=0 として考 える。 φ = √(20N)+15° (5・1) C=qu/2→qu=12.5N⇒C=(12.5N)/2 ∴C=6.25N (5・2) 以上より、砂質土のせん断強度を表 5-1 に示すとおりとした。 表 5-1 砂質土のせん断強度(3 地層 表土 せん断強度 土質 N値 式 砂質土 3 粘性土 - Cu(kN/m2) φ(°) √(20N)+15° 0 23 C=6.25N - - 備考 (注)N 値から許容地耐力の推定(文献:N 値および C・φ:旧土質工学会 P-75)(4 砂質土 Qa=10N(KN/m2) =30KN/m2(N 値=3 の場合) 粘性土 Qa=25N(KN/m2) =75(KN/m2)(N 値=3 の場合) 但し、本調査地は、1m 以深から N 値 0 の軟弱地盤なので、住居の基礎は杭基礎で、その 他の基礎は、コマ基礎等の補助工法で施工されることを推奨する。 11 <地盤の単位体積重量> 住宅基礎の計算用 地盤の単位体積重量は、建築基礎構造設計指針より東京における地盤の単位体積重量を 示す表 5-4(1 を参考にした。 軟岩(砂岩)の単位体積重量については、ボーリングコアから直接測定した。 表 5-4 東京における地盤の単位体積重量 以上より、調査地の地盤の単位体積重量は表 5-5 に示すとおりとした。 表 5-5 地盤の単位体積重量 単位体積重量 地層 土質 平均N値 粘性土 0~5程度 15.0 表5-7より 礫混じり粘土 8 16.0 表5-7より 砂質土 30<N 18.0 表5-7より 砂質土 30>N>60 19.0 表5-7より 軟 岩 60>N 21.1 実測 (kN/m3) 摘 要 盛土 風化砂岩 砂 岩 12 6.考察 6-1 基礎形式 GL-3.3m までは、N 値ゼロの軟弱層なので杭基礎を推奨する。塀や水路は、コマ基礎の 設置を推奨する。コマ基礎は、インターネットなどで施工方法や支持力計算が浸透してい るのでここでは省略する。 住居の基礎は、コマ基礎では将来不当沈下等の危険性があり杭基礎を推奨する。杭基礎 について凡例を記述する。 6-2 杭基礎(凡例) 1.使用機械:杭打機(マルスドライバーMD-60) 2.使用鋼管:φ165.2mm、t=7.1mm 3.機械削孔能力:回転トルクの限界、N 値=50 程度、削孔能力から考えられる地盤は 砂礫層の表面(境界面)に支持させる。 4.以上の考え方から、N 値 50 程度の砂礫層に支持させ、杭本数を決定することを 推奨する。以下に、N 値 50、深度 4m~13m、に支持させた場合の支持力度を照査する。 5.計算は、マイヤーホッフの公式を使用する。 Qs=40×50×Ap Ap:先端拡底翼の断面積=0.0214m2 =40×50×0.0214 注)周面摩擦抵抗力は無視する。 =42.8t/本 ∴安全率 3 を採用すると、Qa=14.3t/本(143KN/本)となる。 注)杭周長に作用する摩擦抵抗は無視する。 13 6. 鋼管の許容圧縮応力度と許容曲げ応力度について 6-1.許容圧縮応力度 使用鋼管φ165.2mm、t=7.1mm→鋼管の断面積=1802.8mm2 許容軸方向圧縮応力度(小規模指針 7-2-8 式)→細長比を考慮したもの。 σa=1/1.5×F×Ac×(1-α) KN F:基準強度、F=231N/㎜ 2(STK400 材の場合)★ =1/1.5×231×3011×1 Ac:鋼管の有効断面積 Ac=3011 ㎜ 2 =463694N/mm2 α:細長比による逓減率 =463.6KN/本 杭長 L/有効杭径 D が 100 以下なのでα=0 とする。 注)★:鋼材の設計基準強度の求め方(小規模指針 7-2-8 式)参照 0.01<te/r<0.08・・・te:腐食しろ 1 ㎜引いた肉厚、r:杭の有効半径 Te=6.1 ㎜、r=82.6 ㎜、te/r=0.074 の時 F=基準強度 235N ㎜(0.8+2.5×te/r) F=231N/㎜ 2 6-2.許容曲げ応力度(Y.Lchang の杭軸直角方向許容応力度照査)参考書 5)P88~89 σma=Mmax/Z・・Mmax:杭深度 1/3 付近で生じる最大曲げモーメント(kg・cm) Z:杭の断面係数(cm3)、Z=132cm3 農業土木ハンドブック P-1277 参照 Mmax=-0.2079(H/2β)・H:地震時に建物に作用する水平力 H=杭軸力×0.2 杭軸力 14.3t/本×0.2=2860kg β={(K×d)/(4EI)}0.25 ・K:横方向地盤反力係数 P62 福岡・宇都の式、K=0.68N 0.352 N:8m 付近の平均 N 値、N=1 K=0.68 d:杭外径 d=16.32 ㎝ (腐食考慮) E:鋼材のヤング係数、E=2100000kg/cm2・・P-115 I:杭の断面 2 次モーメント、1090cm4、 農業土木ハンドブック P-1277 参照 β=0.0065 Mmax=-0.2079×{2860/(2×0.0065)} =45738kg・cm σmax=45738/132 =346.5kg/cm2→34.65N/mm2 (小規模指針 7-2-8)による長期許容曲げ応力度=156Nmm2 (235/1.5)となっている。 従って、杭荷重 14.3t/本の応力度を照査した結果は「OK」である。 杭の軸荷重や杭長、杭径が変化すると許容応力度も逐次変化する。 14 7. GL-10.9mの深度に古洞があった場合の地盤強度について GL-3.3m の深度を杭基礎の支持層とした場合、 GL-3.3m~10.9m までの砂礫層+砂岩の地耐力は 3.3m~5.8m→砂礫層 L=2.5m 耐力=2.5m×150t×0.513m 打ち抜き耐力=192.4×0.01→1.9t(せん断強度) 5.8m~10.9m→硬質砂岩 L=5.1m 耐力=150t×周長 周長:円錐状に伝播すると考える。 A=π×r×{(r2+h2)0.5+r}層厚h→5.1m、半径r=h/2 A=3.14×2.55×{(2.552+5.12)0.5+2.55} =66m2 (1:2 の割合で下位に荷重が伝播したと考える) 硬質砂岩の耐力=150t×66×0.01 =99t/本 (せん断強度) ∴10.9m の位置の古洞が空洞であっても杭の先端の砂礫層は 充分耐えられると考えられる。 【参考文献】 1) 建築基礎構造設計指針,および小規模建築物基礎設計指針,日本建築学会 2) 地盤調査の方法と解説,地盤工学会 3) 設計要領第二集,日本道路公団(JH) 4) N 値および C・φ「考え方と利用法」旧土質工学会(現:地盤工学会) 5)新しい基礎工法の設計 八島 忠、中島 武、近代図書
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