報 告 書 - とやま総合診療イノベーションセンター

講演会
「君はグッとくる医者に
なれるか?」
報告書
山中克郎先生
(諏訪中央病院 院長補佐)
日時 2015年3月19日(木)18:00~19:00
場所 富山大学杉谷キャンパス臨床講義室2
研修医・若手医師・学生のみなさまへ
ドクターG 山中克郎先生講演会
君はグッとくる
医者になれるか?
・最初の1分間の出会いで心をつかむ
・診断力をアップする問診法
・実演を含んだフォーカスを絞った診察
についてお話をいただく予定です
3月19日(木)18:00~19:00
場所:臨床講義室2
参加費無料・登録不要
是非皆様お越し下さい!
主催:
・総合診療部
後援:卒後臨床研修センター
<略歴>
1985年 名古屋大学医学部卒業
1985年-1987年 名古屋掖済会病院 研修医
1987年-1994年 名古屋大学医学部大学院
1989年-1993年 バージニア・メイソン研究所(米国シアトル)研究員
1995年-1998年 名城病院 内科
1998年-2000年 国立名古屋病院 血液内科
1999年-2000年 カルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF) 一般内科
2000年-2006年 名古屋医療センター 総合診療科
(旧 国立名古屋病院 総合内科)
2006年-2010年 藤田保健衛生大学 一般内科/救急総合診療部 准教授
2010年-2014年 藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授 2014年12月−現在 諏訪中央病院 内科 院長補佐 <著書・DVD>
「ERの哲人」(CBR)
「救急・総合診療スキルアップ」(CBR)
「ダ・ヴィンチのカルテ」(CBR)
「外来を愉しむ 攻める問診」(文光堂)
「UCSFに学ぶ できる内科医への近道」改訂4版(南山堂)
「逆引き みんなの医学書」(祥伝社)
「Dr.山中の攻める問診」DVD(ケアネット)
<専門> 研修医教育、救急総合診療
平成27年3月19日(木) 講演会
「君はグッとくる医者になれるか?」
山中克郎先生(諏訪中央病院)
<総合診療部 北先生から講師の山中克郎先生をご紹介>
<患者さんと同位置または下から目線を合わせることの大切さを説かれる山中先生>
<ときにはジョークも交えながら>
<手のひらのどこを診れば良いか赤色マーカーで印付け>
<熱心にメモを取る参加者の学生・若手医師のみなさん>
1
<診察の実演>
<熱心に講演に聞き入られる学生、研修医、指導医、
他病院の先生方。 ビデオを撮られる先生方も。>
<飛び交う質問>
<実演後、ユーモアで沸く会場>
<講演終了後も先生の指導の周りに集まる皆さん>
<講演終了後も続く熱い指導>
<山中先生と患者役の先生。
2
胸部には説明時のマーカーが。>
君はグッとくる医者になれるか
諏訪中央病院
内科総合診療部
山中克郎
3/19/2015
優秀な内科医は 80%の診断を問診だけでつけるそうです。残りの 10%は身体所見、
10%は血液/尿検査・画像などの検査が診断に寄与するようです
1)
。医学教育の基礎を
築いた William Osler 先生(1849-1919)も次のように述べています。
If you listen carefully to the patient, they will tell you the diagnosis.
患者さんの言葉に耳を傾けなさい。そうすれば自ずと診断は見えてくる。
問診は大切ですが、患者さんの話をそのまま聞いていてはだめです。症状や既往歴を
聞きながら、どこが責任病巣でどのような疾患の可能性が高いのか、鑑別診断をどんど
ん絞り込んでいくことが重要です。診断に必要なことをズバッと聞きこむ問診技術の習
得が必要なのです。
① 心をつかむ
不安を持って訪れる患者さんに対しては「それは大変だったですね。今日来ていただ
いて本当によかったと思います」と心から共感を持って接し手を握りしめます。最初の
3 分間で患者さんの心をグッとつかむことが大切です。心が通わなければ重要な情報は
聞きだせなくなります。患者さんは全てを医者に話すわけではありません。ただ手を握
るだけでは不十分です。患者さんに話しかけながら意識レベルをチェックします。橈骨
動脈に触れながら血圧、心拍数(不整脈の有無)、呼吸回数、体温を推定します。プレ
ショック状態なら何とも言えない嫌な冷汗を感じます。
② 腹痛の問診
【内臓痛か体性痛か】
内臓痛とは『管の痛み』です。消化管、尿管が詰まったため管が収縮し詰まったもの
3
を押し出そうとする時の痛みです。痛みに波があり局在がはっきりしません。授業中、
下痢になった経験は誰にでもあるだろうと思います。急に腹痛を感じますが、お腹をさ
すっていると少し楽になります。やれやれ、もう少しで授業が終わるなと思っていると、
またお腹がキリキリ痛くなります。痛みに波がある間欠痛です。でも、今日の下痢は右
の下腹部だな・・なんて思わないですよね。内臓痛は局在がはっきりしません。振動で
響くこともありません。
同じ内臓痛でも疾患により間欠痛の性状は大きく異なります。尿管結石では高いピー
クの痛みが短い周期で生じ、痛みが収まっても痛みが完全になくなることはありません。
ベッドで痛みのために転げ回って(七転八倒)いる患者を見たら,恐らく尿路結石か卵
巣のう腫頸捻転です。腹膜炎があれば体動で痛みが響くので、ベッドで体をクルクル動
かすことはできないのです。
小腸や大腸の閉塞(イレウス)では、小腸の疝痛の方が大腸に比べて痛みのピークが
高く疝痛周期が短いです。イレウスでは痛みが引くと痛みはほぼゼロになります(これ
は下痢の時の自らの体験に一致します)。大腸イレウスの方が感染症を起こすため緊急
性は高いですが、小腸イレウスに比べて症状が出にくいことに注意する必要があります。
胆石発作は正確には間欠痛ではなく持続性の痛みです。胆石や胆泥により胆汁の流出障
害が起こると胆嚢が緊満します。その後、細菌や浸出液が胆嚢周囲に滲出し限局性の腹
膜炎が起こるためでしょう。
体性痛とは『膜の痛み』です。腹膜、胸膜の痛みです。限局性であり振動でお腹に響
きます。だから虫垂炎のため虫垂が穿孔し腹膜炎を起こした患者は、右下腹部を痛がり
絶対にベッドで動こうとしません。できるだけ腹部に振動を与えないよう、すり足でゆ
っくりと歩いて診察室に入ってきます。
③心臓の診察
視診
・ 頸静脈波
a 波は心房収縮、v 波は頸静脈に血液が満たされることで発生する。
Cannon A 波➡完全房室ブロック、v 波の増大➡TR
4
・ 腹部頸静脈逆流(abdomino-jugular reflux)
心窩部を 10 秒間圧迫し右頸静脈が怒脹すれば陽性➡左房圧の上昇
触診
・ 心拍動最強点(PMI)
1) 鎖骨中線より外側、2)2 つの肋間にまたがって触知、3)収縮期全体に拍動
していれば、左室肥大
・ スクラッチ法による心臓の大きさ測定
聴診
・ S1 は亢進しているか?(心基部で S1>S2)➡MS、高拍出性心不全、左房粘液腫
・ S2 の分裂:固定性分裂➡RBBB、奇異性分裂➡LBBB、AS
・ 収縮期雑音(多いのは AS、MR)
・ 拡張期雑音(静かな部屋で座位+前傾姿勢+最大呼気時に AR を調べる)
・ 急に起こった AR➡大動脈解離、感染性心内膜炎
・ S3/S4 は聞こえるか?(左 45°臥位で)
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心不全
【左心不全】
症状:運動時の息切れ、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難(就寝後 1−2 時間して起こ
る)、慢性の痰を伴わない咳
身体所見:①肺下部背側の crackles、②呼気時喘鳴(気管支喘息と似ている)
③S3(感度 13%、特異度 99%)
、④腹部頸静脈逆流(肺動脈楔入圧 PCWP と相関)
6
【右心不全】
症状:食欲低下/嘔気(消化管の浮腫)、右上腹部痛(うっ血肝)、下腿浮腫
身体所見:頸静脈圧上昇、肝腫大、腹水、右心系 S3
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AS
症状:自覚症状が出てからの予後は悪い。心不全(2 年)失神(3 年)狭心痛(5 年)
身体所見:右肩から心尖部にかけて帯状に最強点が広がる、ダイアモンド型の収縮期
雑音(心雑音ピークは中期〜後期)
、S2 の減弱、頸動脈の立ち上がりがゆっくり、雑音
は頸部に放散
MR
身体所見:心尖部で最強点。汎収縮期雑音。腋窩に放散。
8
講演会「君はグッとくる医者になれるか?」参加人数
日時 平成27年3月19日(木) 18:00~19:00
講師 諏訪中央病院 山中克郎 先生
場所 臨床講義室2
参加者 50人(学内43人、学外7人)
【学内】 43人
(人)
医学部2年
1
3年
3
4年
10
6年
2
研修医
9
医学科教員
15
事務
3
【学外】 7人
(人)
紺谷内科婦人科クリニック
1
かみいち総合病院
2
南砺市民病院
2
砺波総合病院
1
金沢医科大学医学科2年
1
9
10