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土地区画整理について
1. 土地区画整理事業の流れ
まず、組合施行の土地区画整理事業の流れを示しましよう。
①
組合設立準備
②
組合設立事業発足
③
事業着手
④
工事施行
⑤
仮換地の指定
⑥
保留地処分
⑦
工事完了
⑧
換地処分
(清算事務・登記) .
2.減歩
ところで、土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地について(ア)公共施
設の整備改善及び(イ)宅地の利用増進を図るための土地の区画形質の変更並びに
公共施設の新設又はその変更に関する事業をいいます。
この事業では、必然的に公共施設又は拡幅が行われるため、そのための土地が必要
となります。その結果、仮換地される土地の地積は従前の土地の地積より減少する
のが通例となります。この地積の減少を減歩とよんでいます。
3.「照応の原則」
土地区画整理事業によって公共施設が整備改善され、土地が整然と区画されるこ
とになると、その区域内の土地に無駄な形質がなくなり、土地の単位あたりの利用
価値がかえって増加することになりますので、一般に減歩による経済的損失は発生
しないといわれています。
しかし、減歩は換地の一内容ですから、仮換地によって減歩率が定められる場合
にも、いわゆる「照応の原則」(土地区画整理法第89 条)に基づき、多数の権利間
で均衡がとれた概ね公平なものでなければなりません。
4.「照応の原則」の意義
「照応の原則」とは、換地の状況と従前の土地の状況とがその位置、地積、土質、
水利、利用、状況、環境等において、ほぼ照応したものでなければならないという
ものであり、このような諸要素を総合的に判断して各換地が従前の土地とくらべて
概略同一の条件をもつことが要求されています。
5.「清算金」の制度
このような要求に、どうしても応えられない場合に、多数の権利者間に発生
する多少の不均衡を是正する為の制度として「清算金(仮清算金)」の制度(同法
第94条、第102条第1 項)等が設うけられています。
従って、若干の不均衡があっても適正な清算金等による補償をともなっているか
ぎり、その仮換地指定は原則として違法にはなりません。
しかし、減歩が、清算金による調整を加味しても不公平である場合には、その仮
換地指定は違法ということになります。
違法な仮換地処分に対しては、再審査請求及び取消訴訟という方法で争うことに
なります。
6.仮換地処分後の土地の処分について
この場合、法的観点からみた場合、「従前地」を売買するのか、あるいは、「仮
換地」を売買するのかを正確に理解する必要があります。
すなわち、仮換地指定処分がなされると当該施行区域内の土地所有者は従前地と
仮換地との2つの土地について法律関係をもつことになるからです。この場合の法
律関係としては、「従前地」については所有権中処分権を残し(使用収益権が制限
されるということです)、逆に「仮換地」については使用収益権を取得することに
なるのです(土地区画整理法第99 条第1項)。
そうだとすると売買ができるのは「従前地」に残っている所有権の処分機能に基
づくと考えらますから、仮換地自体については売買できないことになります。
しかし、実際の不動産取引では、売買当事者は仮換地の場所や範囲などに着目し
て代金額を決定し、かつ仮換地自体を目的物と表示した売買契約を締結し、従前の
土地についでは何らの取決めもされない例が多く見受けられます。
判例は、仮換地について仮換地処分がなされ当該土地の所有権を取得するまで財
産的利益を処分できないのは実際上も不都合であることから、従前の土地の売買と
解すべきであるという立場にたっています(最判昭43.9.24 判時535.
46、判タ.149)。
しかしながら、この判決は一種の救済判決とでもいうべきものであり、実際にも、
仮換地全部ではなくその一部を売買するような場合だと、この一部の土地が従前の
土地のどの部分であるか確定できず共有になってしまいます。従って、これを避け
るためには、目的物の表示として仮換地の特定の一部分だけを示すのではなく、従
前の土地について、これに対応する特定部分を指定しておくのが妥当でしよう。ま
た、全部売買の場合でも、仮換地のほかに従前地を目的物として表示しておくべき
でしよう。
7.区画整理事業中の土地の売買について
区画整理地域内の「仮換地」の売買は所有権の対象となる土地は、あくまで「従
前地」である反面、実際に使用収益するのは仮換地で行うことになります。従って
売買に際して従前地の登記簿謄本、仮換地証書を十分に吟味する必要があります。
特に従前地に対する仮換地面積の割合が平均減歩率に比べ多い場合は「過渡し」
の可能性が高く、その場合には換地段階で「清算金」が徴収されますので、その負
担を明確にしておく必要があります。
従って、組合事務所等で「清算金」などについて事前に調査、確認をする必要が
あります。
次に注意すべき点として、抵当権の設定があります。
仮換地における抵当権の設定は従前地において行うので問題はありませんが、保
留地の場合は従前地がないので、原則として金融機関等の融資を利用できません。
このような場合、区画整理事業体によっては別途の方法で融資の道を開いていま
すので確認されるとよいでしょう。
最後に区画整理事業の施行期間は予定どおり行われることは稀で、通常はかなり
延長されるものです。仮に建築等に予定期限がある場合は少し余裕をもって準備す
べきです。
◆ 保留地の売却で事業費の捻出を計画していた区画整理組合の組合員から施行地区内
の宅地を購入した買主が多額の賦課金の徴収を受けてトラブルになった事例。
最近、バブル時の組合方式の区画整理において賦課金の徴収が問題となる事例が
発生し、仲介業者の調査・説明義務違反が問題となっています。
施行地区内の宅地について組合員の有する所有権又は借地権の全部又は一部を
承継した者がある場合においては、その組合員がその所有権又は借地権の全部又は
一部について組合に対して有する権利義務は、その承継した者に移転するので(区
画整理法26 条1 項)、買主は賦課金(組合施行の土地区画整理事業で,保留地
の処分が予定価格で売れなかったりして,事業費が不足したときに組合員に賦課す
る追加の負担金)(同法40 条)を徴収されることになります。したがって、組
合事務局に対し、賦課金の徴収の可能性についても調査が必要です。
【参考法令】
(組合員の権利業務の移転)第26 条
施行地区内の宅地について組合員の有する所有権又は借地権の全部又は一部を
承継した者がある場合においては、その組合員がその所有権又は借地権の全部又は
一部について組合に対して有する権利義務は、その承継した者に移転する。2 施
行地区内の宅地について組合員の有する借地権の全部又は一部が消滅した場合に
おいては、その組合員がその借地権の全部又は一部について組合に対して有する権
利義務は、その消滅した借地権が地上権である場合にあってはその借地権の目的と
なっていた宅地の所有者に、その消滅した借地権が賃借権である場合にあってはそ
の宅地の賃貸人にそれぞれ移転する。
(経費の賦課徴収)第40 条
組合は、その事業に要する経費に充てるため、賦課金として参加組合員以外の組
合員に対して金銭を賦課徴収することができる。
2
賦課金の額は、組合員が施行地区内に有する宅地又は借地の位置、地積等を考
慮して公平に定めなければならない。
3
組合員は、賦課金の納付について、相殺をもつて組合に対抗することができな
い。
4
組合は、組合員が賦課金の納付を怠った場合においては、定款で定めるところ
により、その組合員に対して過怠金を課することができる。