Ⅱ.小児等の在宅医療が抱える課題の抽出と対応方針の策定

Ⅱ.小児等の在宅医療が抱える課題の抽出と対応方針の策定
1. 福岡県による取り組み
①協議会等の開催(福岡県の在宅医療)
福岡県 医療指導課
●福岡県在宅医療推進協議会(2回/年)
地域在宅医療支援センター
(県域の全保健福祉環境事務所9か所)
●地域在宅医療推進協議会(2回/年)
●事例検討会等
●福岡県周産期母子医療センター連絡会
福岡県 障害者福祉課
●レスパイト県庁内連絡会議
小児等在宅医療連携拠点事業
●政令市・中核市との会議(3回/年)
●地域在宅医療支援センターとの会議
(4回/年)
●在宅医療多職種連携推進のあり方検
討会(2回/年)
●福岡県医師会診療情報ネットワー
ク(とびうめネット)
●福岡県内全郡市区医師会(30箇所)
地域在宅医療推進事業
●訪問看護支援事業(コールセン
ター)
●訪問看護管理者等相互研修
●NPOボランティアボランティア養成
●デイホスピス
4
福岡県在宅医療推進協議会については、年度当初に事業の趣旨を説明し、3 月に報告を予定しており、
多機関の代表からの御意見をいただくこととしている。
2.九州大学病院による取組
2.1
課題抽出、体制整備に向けた連絡会議等
(1)連絡会議の開催
平成 26 年 7 月より福岡県周産期医療連絡会議等、院内外でこれまで 13 回の会議にて福岡県小児等在
宅医療連携拠点事業や進捗状況について説明を行った。
以下に主な会議の詳細を記す。
福岡都市圏新生児医療連絡会議(FMNN)
福岡都市圏で新生児医療に取り組んでいる医療機関で構成された福岡都市圏新生児医療連絡会議
(FMNN)を不定期で開催。平成 26 年度は7月、9月の2度実施。小児等在宅医療連携拠点事業説明、及
び各施設の長期入院患児や在宅療養児の現況について報告があった。
病棟連携・在宅診療体制・医療連携センター合同会議
毎月 1 回、九州大学病院内の小児に関わる部署の医師、看護師により構成されている定例会議であり、
NICU/GCU における長期入院児、今後在宅療養が必要になる見込みの児の情報共有等を行っている。また、
当院から訪問診療を依頼する事の多い在宅療養支援診療所の医師にも参加して頂き、在宅療養児の現況、
課題について情報共有を行っている。
福岡県小児等在宅医療連携拠点事業院内会議
平成 26 年 12 月までは、不定期で小児等在宅医療連携拠点事業に関わるスタッフ間の連絡会議を開催
していたが、平成 27 年1月より小児等在宅医療連携拠点事業院内会議を 1 週間に1度定期化し、更なる
情報共有、今後の方針の策定に向けた話し合いを進めている。
(2)相互訪問について
2度の他県相互訪問を行い、互いの県の進捗状況や県独自の取り組み等についての情報交換を行った。
長野県・神奈川県、福岡県との相互訪問
平成 26 年 10 月 22 日(水)に福岡県庁にて平成 26 年度小児等在宅医療連携拠点事業相互訪問を開催
し、前年度から小児等在宅医療連携拠点事業に参加している長野県、また今年度から福岡県同様、事業
に参入した神奈川県と情報交換を行った。
三重県への訪問
平成 27 年 3 月 6 日(金)に三重大学病院小児トータルケアセンターへ訪問し、三重県の
小児等在宅医療連携拠点事業の活動内容や、小児トータルケアセンターの活動内容について情報交換予
定。
(3)他県での研修会への参加
今年度、福岡県小児等在宅医療連携拠点事業の今後のための知見を増やすために、他県への研修会へ
参加した。
1)平成 26 年度千葉県小児等在宅医療連携拠点事業
「医療的ケアのある子どもと家族に対する相談支援を語ろう!」
期日:平成 27 年 1 月 18 日(日)
場所:千葉県教育会館大ホール
内容:・介護保険と障害者総合支援法における相談支援事業の共通点
・千葉県内における医療的ケアのある子どもの相談支援の現状
・事例紹介
・成田市が実践した基本相談・相談支援事業の内容・結果・成果
・相談支援事業を利用した保護者の意見 初めての相談支援専門員との連携・協働
・相談支援専門員の現状を踏まえ、現在実施している小児等在宅医療連携拠点事業報告
千葉県は、昨年度から小児等在宅医療連携拠点事業に取り組んでおり、小児に対応
可能な相談支援専門員の育成研修の実施等、先行的に実施されている。本研修にて、事例をもとに
小児の相談支援の現状についての報告があり、相談支援の現状のみでなく多職種との連携について
も把握することができた。
福岡県小児等在宅医療連携拠点事業でも今後、小児に対応可能な相談支援専門員の育成・強化、
相談支援専門員の意識の統一、普及活動等を進めていく必要があると考えている。
2)重症児の在宅支援を担う医師等要請事業キックオフ会議
~笑顔あふれる重症児在宅医療を目指して~
期日:平成 27 年 2 月 28 日(土)
場所:米子全日空ホテル
内容:・事業概要説明
・各大学の現状・取り組みの紹介
・特別講演①「重症児の在宅支援の必要性について」
・特別講演②「やさしいまち、やさしい人」
鳥取大学にて今年度より採択された文部科学省課題解決型高度医療人養成プログラム
「重症児の在宅支援を担う医師等育成事業」キックオフ講演会に参加した。文科省担当
技官より事業概要の基調講演に引き続き、鳥取大学、秋田大学、大阪市立大学より事業
報告、ならびに鳥取県行政と患者支援団体より特別講演を拝聴した。急性期高度医療か
ら地域への医療支援は保健行政の一つの重要事項であり、鳥取大学の取り組みは小児在
宅医療に関連する医療人育成事業として高い評価を受けていることが確認された。
3)NICU 入院児ソーシャルワーク研修 主催 公益社団法人 日本医療社会福祉協会
期日:平成 27 年 2 月 28 日(土)〜3 月 1 日(日)
周産期・新生児医療は進歩により救命率は向上したが、生存児の後遺症やその後の障害の発生へ
の対応、長期入院児による空きベッド不足の問題などがあり、周産期医療整備指針による NICU 入
院児支援コーディネーターの配置が重要視されている。その中で社会保障制度等を活用した支援
を行う専門職である医療ソーシャルワーカーへの期待が高まっている。本研修はその期待に応え
るために、ソーシャルスキルの向上及び自己研鑽を目的とした研修内容となり、NICU の実践に役
立つスキルを身につけることができる内容だった。
4)
(参加予定)第1回東海三県小児在宅医療研究会
「東海三県における障がい児者在宅医療の現状と課題」
期日:平成 27 年 3 月 8 日(日)
場所:じゅうろくプラザ 2 階ホール
内容:・基調講演「生きてゆく訳とその方法~医療と福祉と教育を同時に必要とする
子どもたちのこと~」
・シンポジウム①「各県における重症心身障がい児者の実態と支援施策」
・シンポジウム②「在宅障がい児者を支える地域の取り組み」
5)
(参加予定)第 8 小児在宅医療実技講習会
期日:平成 27 年 3 月 21 日(土)
場所:大宮ソニックシティ 4 階
内容:・NICU と開業医の連携について
・在宅酸素療法について
・胃ろう管理について
・小児在宅医療における診療報酬請求
・在宅酸素と胃ろうに関する実習
・在宅人工呼吸ケアの実際
・気管切開カニューレについて
・在宅人工呼吸ケアと気管切開カニューレの実習
2.2
小児等在宅医療資源調査と解析
(1) 医療福祉資源情報の収集方法
① 調査票の作成
前年度より事業が施行されている自治体(東京・三重・長野・群馬・埼玉)の調査票を基に、事業
部にて調査票を作成した。各医療資源の特徴を考慮して、病院版(周産母子センターおよび中核病院
小児科、在宅療養支援病院)
、診療所版(小児科診療所と在宅療養支援診療所)、訪問看護版(訪問看
護ステーション)
、および行政版(行政支援窓口)を作成した。行政版は東京都事業部版を全国展開す
ることで、自治体間の対比を含めた調査解析が可能となるため、
「都立小児総合医療センター多摩小児
在宅医療連携連絡会版」を使用した。
②調査票の送付
福岡県医療資源データベースを基に各施設に調査票を送付した。病院群としてデータベースより周
産母子センターおよび小児診療科設置の有無、在宅療養支援病院届出を基に施設を抽出して送付した。
診療所版は同様に小児科標榜、在宅療養支援診療所の有無を基に抽出と送付を行った。
③調査票の回収率
調査票を送付した各施設群と回収率を表 1 に示す。
表 1.各施設群の送付数と回収率
調査版
施設群
送付数
回収数
回収率(%)
病院版
周産母子センター
12
12
100.0
中核病院小児科
36
18
50.0
在宅療養支援病院
54
13
24.1
小児科診療所
777
259
33.3
在宅療養支援診療所
664
173
26.1
訪看版
訪問看護ステーション
335
261
77.9
行政版
行政支援窓口
60
51
85.0
診療所版
(2) 調査結果:病院群(周産母子センター・中核病院小児科・在宅療養支援病院)
①平成 26 年 6 月時点で 6 ヵ月以上入院している 18 歳未満の症例数
A)入院期間別
6 ヵ月以上の長期入院児は福岡県全体で 55 例であった。地区別で福岡 44 筑後 1、筑豊 0、北九州
10 例であった(図 1)
。また入院 2 年以上は 15 例(福岡 14 と北九州 1)であった。6 ヵ月以上 55
例のうち、新生児集中治療室 NICU あるいは回復治療室 GCU に 22 例、小児科病棟その他に 33 例
収容されていた。長期入院児は福岡と北九州地区に集中しており、NICU/GCU だけでなく小児科病
棟にも多く収容されていた。
図 1.福岡県全体での地区別 6 ヵ月以上長期入院症例数
B)主要病名内訳
長期患者 55 例の疾患内訳を図 2 に示す。その他 16 例(29%)に引き続いて、先天奇形 15 例(27%)
が多く、続いて新生児仮死 8 例(15%)、神経筋疾患 5 例、溺水事故 4 例、低出生体重児 4 例(それ
ぞれ 9%)
、気道疾患 2 例、社会的事情が 1 例であった。
図 2.福岡県全体における長期患者疾患内訳(円グラフ、例数とパーセント)
C)平成 26 年 6 月時点 30 日間以上連続で人工呼吸管理をしている患者数
この統計は 6 ヵ月以上長期入院児が母数ではない。福岡県全体で 18 歳未満 35 例、18 歳以上 40 歳
未満 14 例が 30 日間以上人工呼吸を受けていた。病院群および地区別の例数を図 3 に示す。
図 3.福岡県全体における 30 日間以上人工呼吸管理症例数
D)上記 6 ヵ月以上入院児が退院できない理由
福岡県全体での長期患者 55 例の退院できない理由は、患者の病状が不安定のため自施設で治療中が
16 例、療養施設への転院待機が 13 例、在宅医療への準備中が 9 例、他院もしくは他病棟への転棟
待機が 1 例、無回答 6 例であった。そして、退院の目途が立っていないが 10 例であった。
E)上記退院の目途が立ってない主要な理由
福岡県全体での長期患者 55 例のうち、退院の目途が立っていないが 10 例であった。その主要な理
由は在宅医療への家族の受け入れ体制の不備が 7 例、患者の病状が不安定もしくは重症が 2 例、転
院への家族の同意が得られないが 1 例であった。
F)退院の目途が立っていない患者が、在宅医療に移行できない理由(印象で上位 3 位)
福岡県全体で 1 位が「患者の病状が不安定もしくは重症」が回答数 6 で最も多く、続いて「家族へ
の人的支援の不備」
(回答数 5)
、
「在宅医療への移行施設(療養施設)が不備(回答数 4)」であった。
②在宅医療を必要とする児の移行体制
A)各施設で行っている取り組み(複数回答)
福岡県全体では 102 のうち 43 施設(周産母子センター12、中核病院小児科 18、在宅療養支援病院
13)からの複数回答である。
「地域を含めた多職種によるカンファレンス」は 16 施設で開催されて
いた。また、
「退院前に自宅訪問(9 施設)」、
「退院後に自宅訪問(2 施設)」
、
「退院後に訪問診療・
往診(2 施設)
」
、
「外出(外泊)時に病院スタッフが同行(1 施設)
」されており、病院スタッフが在
宅療養児の自宅で相談や診療を行っていた。その他、
「退院後に家族支援として面談(7 施設)」など
が取り組まれていた。
B)在宅移行体制のコーディネーターに関し
回答のあった 43 施設(周産母子センター12、中核病院小児科 18、在宅療養支援病院 13)の内、担
当医師(7 施設、50%)や担当看護師(4 施設、33%)だけでなく、院内 MSW(6 施設、50%)や
連携部門スタッフ(5 施設、42%)など多職種による連携体制が浸透しつつある。
C)多職種によるカンファレンスで参集したことがある職種(複数回答)
福岡県全体では 102 のうち 43 施設(周産母子センター12、中核病院小児科 18、在宅療養支援病院
13)からの複数回答(図 4)である。院内スタッフだけでなく、訪問看護ステーション看護師、訪
問診療所医師、地域保健師、行政担当や学校教諭など多職種が参画されている。
図 4.福岡県全体における多職種カンファレンス参集職種
D)各施設における MSW を含む相談支援専門員の人数
43 施設のうち 19 施設で専門員は配置されており、残りは無回答であった。16 施設で 3 名以上配置
されており、小児在宅コーディネーターとして育成できる可能がある。
③気管切開児の急性増悪時の入院体制
A)入院受入れ
福岡県全体では 18 施設で入院受け入れ可能・条件付きで可能(福岡 9、筑後 3、筑豊 1、北九州 5)
であった。18 施設のうち 12 施設で条件付き可能であった。
B)受け入れ可能の条件(複数回答)
条件付きで受け入れ可能な 12 施設で可能となる条件を示す(複数回答)。自施設で診療している児
のみ、または優先が 9 施設、親の付き添いが 7 施設であった。その他として、人工呼吸管理が必要
でない場合のみが 3 施設、年齢制限が 1 施設であった。
④人工呼吸管理児(持続陽圧呼吸を含む)の急性増悪時の入院体制
A)入院受入れ
福岡県全体では 17 施設で入院受け入れ可能・条件付きで可能(福岡 8、筑後 2、筑豊 2、北九州 5)
であった。17 施設のうち 11 施設で条件付き可能であった。
B)受け入れ可能の条件(複数回答)
条件付きで受け入れ可能な 11 施設で可能となる条件を示す(複数回答)。自施設で診療している児
のみ、または優先が 10 施設、親の付き添いが 5 施設であった。その他として、空床がある場合のみ
が 1 施設であった。
C)人工呼吸児の入院受入れに必要な条件(複数回答)
福岡県全体での複数回答となる(図 5)
。医師の増員(回答数 18)、看護師の増員(回答数 16)
、医
師スタッフのトレーニング(回答数 17)であった。その他、在宅療養児に対応した病床の増設(回
答数 11)
、病床の拡張(回答数 10)であった。
図 5.福岡県全体での人工呼吸児の入院に必要な条件(複数回答)
⑤院内レスパイト
A)現況
福岡県全体で 7 施設がレスパイトを実施されていた。うち 5 施設では養育者の付き添いなしで、2
施設が自施設で診療している児のみで実施されていた。5 施設で条件が整えば実施したいとの回答で
あった。
B)レスパイト実施に必要な条件(複数回答)
福岡県全体での複数回答となる。医師スタッフの配置、医師スタッフの教育と経験、補助金などの
財政支援、児の医療安全管理(モニター設置)、病床の設置、いずれも必要であるとの回答であった。
⑥在宅療養児の往診
福岡県全体で、3 施設が緊急時に往診を実施されていた。
⑦他院より在宅移行のための転院受け入れ
A)転院受入れ
福岡県全体では 14 施設で入院受け入れ可能・条件付きで可能(福岡 8、筑後 1、筑豊 1、北九州 4)
であった。14 施設のうち 12 施設で条件付き可能であった。
B)転院受け入れに必要な条件(複数回答)
福岡県全体での複数回答となる。在宅医療への家族の同意が得られている場合が 11 施設であり、親
の付き添いが 4 施設、他の適切な施設がない場合は 4 施設であった。その他年齢制限(15 歳以上あ
るいは未満のみ)が 3 施設であった。
(3) 調査結果:診療所群(小児科診療所・在宅療養支援診療所)
① 在宅療養児の外来診療
福岡県全体で回答あり 432 のうち 78 施設(18.1%)において、外来診療を一部対応あるいは対応可
能との回答であった。地域別で福岡 41、筑後 14、筑豊 4、北九州 19 施設であった(図 6)
。
図 6.在宅療養児の外来診療が対応可能な診療所数
②外来診療が困難である診療所
A)理由(複数回答)
福岡県全体で回答あり 432 のうち 329 施設(76.2%)において、外来診療が困難であるとの回答で
あった。その理由を複数回答で図 7 に示す。スタッフの経験不足(180 施設)、ニーズがない(177
施設)
、時間的余裕がない(172 施設)
、との回答が多かった。その他、基礎疾患を診療している中
核病院との連携が困難(42 施設)
、緊急時の受け入れ病院が近隣にない(39 施設)の順に続いた。
図 7.診療所において在宅療養児の外来診療が困難である理由(複数回答)
B)外来診療の可能性
外来診療が困難であると回答された 329 施設のうち、117 施設(35.6%)で状況が整えば外来診療
で対応が可能であるとの回答であった。地区別では福岡 48、筑後 29、筑豊 9、北九州 31 施設であ
った。また 37 施設(11.2%)が今後も対応困難である、との回答であった(図 8)
。
図 8.在宅療養児の外来診療が困難な施設で状況が整えば対応可能な診療所数
C)外来診療が可能となる条件(複数回答)
在宅療養児の外来診療が可能となる条件を複数回答で示す(図 9)
。スタッフの経験が最も多く(108
施設)
、続いて基礎疾患を診療する中核病院との連携(77 施設)
、入院対応や電話連絡など地域中核
病院小児科との連携(75 施設)
、訪問看護師との連携(61 施設)、地域保健師や相談専門員との連携
(42 施設)
、気管切開または人工呼吸以外の医療ケアなら可能(35 施設)であった。
図 9.在宅療養児の外来診療が可能となる条件
D)外来診療が行われている診療所において往診の可能性
条件が整えば在宅療養児の外来診療が可能であると回答された 117 施設のうち、78 施設(66.7%)
で条件が整い外来診療が可能となれば訪問診療または往診が可能(福岡 31、筑後 26、筑豊 4、北九
州 17)との回答であった(図 10)
。内訳は 47 施設で訪問診療が可能(福岡 23、筑後 12、筑豊 2、
北九州 10)で、31 施設が往診も可能(福岡 8、筑後 14、筑豊 2、北九州 7)であった。
図 10.外来診療が行われている診療所において訪問診療または往診の可能性
③在宅療養児への施行処置
A)施行可能な処置
在宅療養児の外来診療を一部対応あるいは対応可能な 78 施設において、施行している
(可能を含む)
処置、条件付きで実施可能な処置、未実施または実施不可な処置の一覧を図 11 に示す。比較的侵襲
的な処置から、緩和ケアや理学療法・作業療法などさまざまな処置に取り組まれている。
図 11.福岡県内の診療所で在宅療養児に施行可能な処置
B)訪問診療の可能性
在宅療養児の外来診療を一部対応あるいは対応可能な 78 施設において、36 施設(46.2%)で訪問
診療(福岡 21、筑後 5、筑豊 1、北九州 9)
、44 施設で条件が整えば対応可能(福岡 20、筑後 10、
筑豊 2、北九州 12)であった(図 12)
。
図 12.在宅療養児の外来診療が診療所において訪問診療の可能性
C)訪問診療が可能となる条件(複数回答)
在宅療養児の外来診療が可能となる条件を複数回答で図 13 に示す。時間的余裕(62 施設)に続い
て、基礎疾患を診療する中核病院との連携(61 施設)、入院対応や電話連絡など地域中核病院小児科
との連携(58 施設)
、訪問看護師との連携(49 施設)、医師または看護師の増員(33 施設であった。
図 13.在宅療養児の外来診療が可能な診療所において訪問診療が可能となる条件
D)往診の可能性
在宅療養児の訪問診療に対応または可能である 36 施設において、34 施設(94.4%)が緊急時に往
診も可能であった。
(4) 調査結果:訪問看護(訪問看護ステーション)
①訪問看護ステーションの現況
A)スタッフ
福岡県全体で看護師の常勤平均 3.9 名、非常勤 2.6 名であった。
B)訪問看護認定看護師
福岡県内で訪問看護認定看護師は 6 名(福岡 2、筑後 2、筑豊 0、北九州 2)であった。
C)小児看護を経験した看護師がいる訪問看護ステーション
回答あり 261 か所の訪問看護ステーションのうち、小児看護を経験した看護師がいるステーション
は 117 か所(44.8%)であった(図 14)。地区別で福岡 57(48.7%)
、筑後 19(41.3%)
、筑豊 12
(32.4%)
、北九州 29(47.5%)であった。
図 14.小児看護を経験した看護師がいる訪問看護ステーション
D) 24 時間対応
回答あり 261 か所の訪問看護ステーションのうち、24 時間訪問可能なステーションは 151 か所(福
岡 58、筑後 30、筑豊 25、北九州 38)
、必要時訪問可は 59 施設(福岡 35、筑後 5、筑豊 5、北九州
14)であった。
E)利用者の地区の制限
回答あり 261 か所の訪問看護ステーションのうち、利用者の地区の制限なしのステーションは 24 か
所(福岡 8、筑後 5、筑豊 5、北九州 6)であった。
②在宅医療児の訪問看護
A)看護対応
回答あり 261 か所の訪問看護ステーションのうち、在宅療養児の訪問看護を対応または対応可能な
施設は 112 か所(42.9%)であった(図 15)。地区別で福岡 52、筑後 20、筑豊 21、北九州 29 であ
った。
図 15.在宅療養児に対応可能な訪問看護ステーション
B)対応困難なステーションの現況
ア)その理由(複数回答)
対応困難なステーション 119 か所に対して、その理由を複数回答で調査した。小児看護経験者がい
ない 78 か所(65.5%)
、マンパワー不足 72 か所(60.5%)
、小児看護知識がない 63 か所(52.9%)
で多く、続いて緊急時に対応できない 44 か所(37.0%)
、小児に特有な問題に対応困難または苦手
意識 42 か所(35.3%)
、地域中核病院小児科との連携が不備・困難 39 か所(32.7%)、小児科診療
所との連携が不備・困難が 39 か所(32.7%)であった。
イ)在宅療養児の訪問看護の可能性
対応困難なステーション 119 か所のうち、52 施設(43.7%、福岡 23、筑後 8、筑豊 7、北九州 12)
で状況が整えば在宅療養児の訪問看護が可能であるとの回答であった。
③ 在宅療養児に対する処置
在宅療養児の訪問看護を対応または対応可能な施設は 112 か所において、実施または施行可能な看
護処置を図 16 に示す。ほとんどの処置が実施可能、あるいは条件付きで実施可能であった。
図 16.在宅療養児に対する処置
④ 在宅療養児の訪問看護が可能あるいは拡大する条件
すべての回答あり 261 か所に対して、在宅療養児の訪問看護が可能あるいは拡大する条件を順位付
けで回答を得た(表 2)
。人員の確保が 1 位であり、以下に在宅療養児あるいは小児在宅医療に関す
る勉強会・講演会、技術指導が続いた。
表 2.在宅療養児の訪問看護が可能あるいは拡大する条件
順位
項目
1
人員が確保できる
2
在宅療養児の基礎疾患に関する勉強会
3
在宅療養児の技術指導
4
在宅療養児の看護に関する勉強会
5
小児在宅医療に関する勉強会・講演会
(5) 在宅指導管理料算定実績および診療実績(病院群・診療所群)
①在宅人工呼吸指導管理料 C107
福岡県内の 18 歳未満の算定総計は 79 例(福岡 54、筑後 10、筑豊 0、北九州 15)、18 歳以上 40 歳
未満が 39 例であった(表 3)
。また施設群別算定状況は、病院群で 49 例(福岡 26、筑後 8、筑豊 0、
北九州 15)
、診療所群で 30 例(福岡 28、筑後 2、筑豊 0、北九州 0)であった(表 4)
。
表 3. 在宅人工呼吸指導管理料 C107 の年齢と地区別算定状況
1 歳未満
地域
1 歳以上
6 歳以上
15 歳以上
18 歳以上
6 歳未満
15 歳未満
18 歳未満
40 歳未満
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
福岡
筑後
筑豊
北九州
1
0
0
0
0
0
0
0
45
5
0
12
34
5
0
6
17
3
0
12
17
4
0
5
3
0
0
7
3
1
0
4
30
0
0
9
33
0
0
6
福岡県
1
0
62
45
32
26
10
8
39
39
表 4. 在宅人工呼吸指導管理料 C107 の施設群別算定状況
地域
福岡
筑後
筑豊
北九州
福岡県
病院群
診療実績
39
8
0
27
74
診療所群
算定実数
26
8
0
15
49
診療実績
27
0
0
4
31
算定実数
28
2
0
0
30
②在宅気管切開患者指導管理料 C112
福岡県内の 18 歳未満の算定総計は 40 例(福岡 19、筑後 11、筑豊 2、北九州 8)
、18 歳以上 40 歳
未満が 15 例であった(表 5)
。また施設群別算定状況は、病院群で 33 例(福岡 14、筑後 9、筑豊 2、
北九州 8)
、診療所群で 7 例(福岡 5、筑後 2、筑豊 0、北九州 0)であった(表 6)
。
表 5. 在宅気管切開患者指導管理料 C112 の年齢と地区別算定状況
1 歳未満
地域
1 歳以上
6 歳以上
15 歳以上
18 歳以上
6 歳未満
15 歳未満
18 歳未満
40 歳未満
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
福岡
筑後
筑豊
北九州
0
1
1
0
0
1
0
0
26
7
0
17
14
3
0
5
14
6
2
15
4
6
2
2
3
2
1
5
1
1
0
1
24
0
1
10
12
0
0
3
福岡県
2
1
50
22
37
14
11
3
35
15
表 6. 在宅気管切開患者指導管理料 C112 の施設群別算定状況
地域
病院群
診療実績
福岡
筑後
筑豊
北九州
福岡県
診療所群
算定実数
21
14
4
34
73
診療実績
14
9
2
8
33
算定実数
22
2
0
3
27
5
2
0
0
7
③在宅小児経管栄養法指導管理料 C105-2
福岡県内の算定総計は 206 例(福岡 72、筑後 6、筑豊 4、北九州 34)であった(表 7)
。また施設群
別算定状況は、病院群で 99 例(福岡 55、筑後 6、筑豊 4、北九州 34)、診療所群で 17 例(福岡 17、
筑後 0、筑豊 0、北九州 0)であった(表 8)
。
表 7. 在宅小児経管栄養法指導管理料 C105-2 の年齢と地区別算定状況
1 歳未満
地域
1 歳以上
6 歳以上
15 歳以上
6 歳未満
15 歳未満
18 歳未満
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
福岡
筑後
筑豊
北九州
8
1
4
13
8
0
4
2
53
9
0
33
37
3
0
17
29
12
0
30
24
3
0
12
3
0
1
10
3
0
0
3
福岡県
26
14
95
57
71
39
14
6
表 8. 在宅小児経管栄養法指導管理料 C105-2 の施設群別算定状況
地域
病院群
診療実績
福岡
筑後
筑豊
北九州
福岡県
診療所群
算定実数
62
22
5
80
169
診療実績
55
6
4
34
99
算定実数
31
0
0
6
37
17
0
0
0
17
④在宅成分栄養経管栄養法指導管理料 C105
福岡県内の 18 歳未満の算定総計は 13 例(福岡 6、筑後 6、筑豊 0、北九州 1)
、18 歳以上 40 歳未満
が 34 例であった(表 9)
。また施設群別算定状況は、病院群で 13 例(福岡 6、筑後 6、筑豊 0、北九
州 1)
、診療所群で 0 例であった(表 10)。
表 9. 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料 C105 の年齢と地区別算定状況
1 歳未満
地域
1 歳以上
6 歳以上
15 歳以上
18 歳以上
6 歳未満
15 歳未満
18 歳未満
40 歳未満
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
福岡
筑後
筑豊
北九州
1
0
0
2
1
0
0
0
4
3
0
2
3
3
0
1
1
3
0
1
1
3
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
39
0
0
3
31
0
0
3
福岡県
3
1
9
7
5
4
1
1
42
34
表 10. 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料 C105 の施設群別算定状況
地域
福岡
筑後
筑豊
北九州
福岡県
病院群
診療実績
6
6
0
5
17
診療所群
算定実数
6
6
0
1
13
診療実績
1
0
0
0
1
算定実数
0
0
0
0
0
⑤在宅中心静脈栄養法指導管理料 C104
福岡県内の 18 歳未満の算定総計は 8 例(福岡 7、筑後 0、筑豊 0、北九州 1)
、18 歳以上 40 歳未満
が 7 例であった(表 11)
。また施設群別算定状況は、病院群で 6 例(福岡 5、筑後 0、筑豊 0、北九州
1)
、診療所群で 2 例であった(表 12)
。
表 11. 在宅中心静脈栄養法指導管理料 C104 の年齢と地区別算定状況
1 歳未満
地域
1 歳以上
6 歳以上
15 歳以上
18 歳以上
6 歳未満
15 歳未満
18 歳未満
40 歳未満
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
診療
算定
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
実績
実数
福岡
筑後
筑豊
北九州
1
0
0
0
1
0
0
0
5
0
0
0
5
0
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
7
0
0
0
7
0
0
0
福岡県
1
1
5
5
1
1
1
1
7
7
表 12. 在宅中心静脈栄養法指導管理料 C104 の施設群別算定状況
地域
福岡
筑後
筑豊
北九州
福岡県
病院群
診療実績
5
0
0
1
6
診療所群
算定実数
診療実績
5
0
0
1
6
2
0
0
0
2
算定実数
2
0
0
0
2
(6)調査結果:行政群(行政支援窓口)
各自治体で整備されている調査項目であるため、解析結果は示さずデータベース化を進める方針であ
る。