2015年度 数式処理実習 [第9回] 極限と微分積分 1 極限

June 11, 2015
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2015 年度 数式処理実習 [第 9 回] 極限と微分積分
極限
1
sin 3x
を考えよう.x ̸= 0 の時には,f (x) はきっちり定義されているが,f (0) は定義
x
されていない (分母は 0 にできないので).
そこで極限の概念を思いだそう.一般に,x が限りなく a に近づくとき,f (x) が限りなく α (有限
確定値) に近づくとする.この時,α を「x が a に近づく時の f (x) の極限」といい, lim f (x) = α と
x→a
書く.
上の f (x) に対して,x → 0 の時の極限値 lim f (x) を求められる人は多いと思いますが,
「極限値に
関数 f (x) =
x→0
近づく様子」を図示したことがある人はあまりいないと思います.そこで,maxima でグラフを描い
てみましょう.
3
2.5
1.5
1
0.5
(%i1) plot2d(sin(3*x)/x,[x,-5,5]);
2
sin(3*x)/x
いつも通り,~/su-shiki ディレクトリに移動し
てから,maxima を起動し,次のように打ち込み
ます.
maxima 右のグラフから,答えは 3 になりそうです.
0
-0.5
-1
-4
-2
0
x
2
4
実際に maxima で確認してみよう.極限値を求めるコマンド limit を用います.limit は,limit(関
数, 変数, 近づける値); という書式になっています.
maxima x → 0 の時の極限値を計算
(%i1) limit(sin(3*x)/x,x,0);
(%o1)
3
答えが 3 であることが確認できました.
次に,右極限及び左極限という概念も思い出しましょう.x が右側から a に近づく時に,f (x) が α
に近づくとします.この時,α を右極限といい, lim f (x) = α と書きました.(なお,a = 0 の場合
x→a+0
には「x → 0 + 0」と書く代わりに,簡単に「x → +0」と書くことが多い.)
同様に,x が左側から a に近づく時に,f (x) が α に近づくとします.この時,α を左極限といい,
lim f (x) = α と書きました.(a = 0 の場合には「x → 0 − 0」と書く代わりに,簡単に「x → −0」
x→a−0
と書くことが多い.)
上の例では,右極限も左極限も 3 になりますが,念のため maxima で確認してみましょう.右極限
sin 3x
を求めます.maxima で右極限を求めるには,オプション plus をつけます.同様に,左
lim
x→+0
x
極限はオプション minus をつけます.
maxima (%i1) limit(sin(3*x)/x,x,0,plus);
(%o1)
3
x → +0 の時の極限を計算
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June 11, 2015
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sin 3x
も計算してみましょう.
x→−0
x
左極限 lim
maxima
x → −0 の時の極限を計算
(%i1) limit(sin(3*x)/x,x,0,minus);
(%o1)
3
やはり,右極限も左極限も 3 になることが確認できました.
20000
1
を考えましょう.
x−2
1
まず,
を 1.9 ≤ x ≤ 2.1 で図示してみると
x−2
maxima 次に lim
15000
x→2
10000
1/(x-2)
5000
0
(%i1) plot2d(1/(x-2),[x,1.9,2.1]);
-5000
右図から,x = 2 の部分でグラフは上下にちぎれ
てしまい,右極限と左極限は異なっていることが
分かります.
-10000
-15000
-20000
1.9
1.95
2
x
2.05
1
を計算してみると,
x→2+0 x − 2
2.1
実際,右極限 lim
maxima
(%i1) limit(1/(x-2),x,2,plus);
(%o1)
inf
inf は infinity の略で,無限大 (∞) を表しています.
1
左極限 lim
を計算してみると,
x→2−0 x − 2
maxima
(%i1) limit(1/(x-2),x,2,minus);
(%o1)
minf
1 変数関数の微積分
不定積分
積分の計算には integrate というコマンドを用います.不定積分を計算するには,
integrate(関数, 積分する変数);
∫
2
とします.例えば,ax + bx + c の変数 x による不定積分
ます.
minf は minus infinity の略で,マイナス無限大 (−∞) を表しています.
1
1
= ∞, lim
= −∞ であることが分かりました.
図と maxima の計算から, lim
x→2−0 x − 2
x→2+0 x − 2
2
(ax2 + bx + c)dx は,次のように計算し
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maxima
(%i1) integrate(a*x^2+b*x+c,x);
3
2
a x
b x
---- + ---- + c x
3
2
(%o1)
なお,maxima では積分定数を付けてくれないので,自分で補わなければなりません.答は,
∫
(ax2 + bx + c)dx =
ax3 bx2
+
+ cx + C
3
2
ここで C は積分定数,となります.
定積分
定積分の場合は
integrate(関数, 積分する変数, 開始値, 終了値);
∫
という書式になります.例えば,広義積分
0
∞
∫ ∞
1
exp(−x2 )dx は次のように計算します.
2 dx =
x
e
0
maxima (%i1) integrate(exp(-x^2),x,0,inf);
(%o1)
∫
従って
0
∞
√
1
π
です.
2 dx =
x
e
2
sqrt(%pi)
--------2
微分
微分の計算には diff を用います.diff の書式は,diff(関数, 微分する変数); です.英語で微分
のことを differential と言いますが,diff はその略です.
sin 2x の x での 1 階微分は,次のように計算します.
maxima (%i1) diff(sin(2*x),x);
(%o1)
2 cos(2 x)
このように,たとえ変数が x だけしかなくても,必ず「x で微分する」ことを明示しなければいけま
せん.
2 回以上微分する時は,オプションをつけます.例えば,sin 2x の x での 2 階微分なら
(%i1) diff(sin(2*x),x,2);
(%o1)
maxima
- 4 sin(2 x)
とします.
では,sin 2x の x での n 階微分を計算してみましょう.この時は,場合分けが必要になるはずです
が,どうなるでしょうか?
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maxima
(%i1) diff(sin(2*x),x,n);
n
d
--- (sin(2 x))
n
dx
(%o1)
n
d
sin 2x という「答えといえば答えだけど…」という出力が返ってきます.残念ながら,場合分け
dxn
まではやってくれません.
2 変数関数の偏微分
3
2 変数関数 f (x, y) = xy の,x に関する偏微分は次のように計算します.
maxima
(%i1) diff(x*y,x);
(%o1)
y
同様に,f (x, y) = xy の,y に関する偏微分は次のように計算します.
maxima
(%i1) diff(x*y,y);
(%o1)
x
レポート課題
4
• http://www.cis.fukuoka-u.ac.jp/˜kawakubo/ の今日の所の sm140000 09.pdf の設問に答えよ.
• sm140000 09.tex (sm140000 09.pdf の原稿ファイル) をダウンロードし,˜/su-shiki ディレクト
リに保存せよ.
• ファイル名「sm140000 09.tex」の「sm140000」の部分は各自の学籍番号に変更すること.ま
た,Emacs でファイルの中身を編集し,上段の氏名欄に自分の学籍番号と氏名を書くこと.
• Maxima を用いて問題を解け.解答は原稿ファイルを編集して LATEX で作成せよ.
• PDF ファイルを作成し,印刷したものを提出すること.締切は 6 月 25 日.
• 疑問点等があれば,書いて下さい.
復習:PDF ファイル作成に使うもの.Maxima 用の端末とは別に,もう一つ端末を起動します.
kawakubo>
kawakubo>
kawakubo>
kawakubo>
LATEX タイプセットなど
cd⊔ ~/su-shiki
emacs⊔ &
platex⊔ sm140000_09.tex
dvipdfmx⊔ sm140000_09.dvi
← ˜/su-shiki に移動
← emacs をバックグラウンドで起動
← sm140000 09.tex を platex でタイプセット
← sm140000 09.dvi から sm140000 09.pdf を作成