路線価と相続対策 - PRINCE-LAND

路線価と相続対策
1.路線価について
毎年7月に国税庁が公表している「路線価」。路線価は、相続税を計算する
時に土地の評価を算出するために使われる価格です。相続の際は、保有する預
貯金や不動産など全資産の価値(評価額)を算出しなければなりません。
土地は時価(実勢価格)で計算するのが望ましいのですが、実務上、すべて
の土地の時価を計算するのは困難です。そこで毎年、国税庁が公示価格や実際
の売買実例価格などをもとに、専門家の意見を聞きながら決めています。一般
的に路線価は3月に発表される公示価格の約8割、実勢価格の約7割、といわ
れています。
経済情勢で変わる路線価
現金の場合、相続税法上は 100 万円は常に「100 万円」、つまり評価額が
時期によって変化することはありません。一方、土地は路線価で評価されます。
路線価の決定にあたっては、売買の実勢価格も考慮されることから、経済状況
によっては、不動産の評価も高くなるおそれがあります。所有する不動産の評
価額が思わぬ値上がりをし、課税対象となっていた、とならないよう、都市部
を中心に価格の変動には注意を払う必要があります。
まずは資産の把握から
今年1月に相続税法が改正され、基礎控除額が大幅に縮小。所有資産が課税
対象になるおそれのある人が増えています。いざ相続が発生したときに後悔し
ないためにも、土地や住宅など不動産を持っている人は一度、評価額を計算し、
預貯金や有価証券など他の資産と合わせた保有資産の総額を把握しておく必
要があります。
国税庁のホームページから路線価図を見ることができます!
「路線価」に「補正率」と「面積」を掛けます!
路線価は、その道路に面した宅地の1m²あたりの価格を千円単位で表して
います。たとえば「200C」と表示されていたら、1m²あたり 20 万円。数字
の後ろのアルファベットは借地権割合を示し、借地権の評価を計算するときに
使います。
借地権のついていない土地の評価額を計算してみましょう。路線価が「200C」
の場合、150m²の土地の評価額は 20 万円×150m²=3000 万円ということに
なります。これに補正率を乗じます。これは間口や奥行など、土地の形状等と
地区区分によってあらかじめ定められています。たとえば、普通商業・併用住
宅地区の奥行き 10m の土地の奥行価格補正率は 0.99。計算する際は、20 万
円×0.99×150m²=2970 万円となります。
〈路線価を使った土地価額の算出例〉
もう一つの土地の評価法
倍率方式
土地の値段を算出する方法には、路線価をもとに計算する「路線価方式」
のほかに「倍率方式」があります。対象は路線価が定められていない地域。
倍率方式の場合、固定資産税評価額にその地域ごとに決められている一定の
倍率を掛けて計算します。固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産
税明細書のほか、都税事務所や市区役所または町村役場で確認できます。倍
率は毎年見直され、公開もされているので、国税庁のホームページなどで確
認を。
一つとして同じものはない土地
面している道路が違ったり、その地域の地目が違ったり、形状や面積が違
ったり……。日本全国、一つとして同じ土地はありません。そんな土地の値
段を公平に算出するため、様々なルールがあります。たとえば二つの道路に
面した角地の場合、側方路線影響加算率で計算された金額が加算されるた
め、その分評価は高くなります。逆に傾斜地や崖地など利用しにくい形状の
土地は補正率で低く評価されます。評価額の計算方法は複雑なので、税理士
など専門家に相談しましょう。
2.不動産で考える相続
日本人の相続財産の5割は、土地や住宅などの不動産だといわれています。
しかし、不動産は価値が把握しにくく、分割しにくい財産。路線価から所有し
ている土地の大まかな評価額がわかったら、次は不動産を活用した相続対策を
考えましょう!
節税対策 1
不動産を購入し、資産評価額を圧縮
不動産を活用した相続対策の最大の特徴は「評価額を下げる」ことです。現
金や有価証券はその金額や額面がそのまま評価額になりますが、不動産は時価
よりも低く評価されることが多く、相続対策として活用されます。
その一つが資産の組み替えです。例えば郊外の一戸建てに住んでいる場合。
その売却した資金と現預貯金を使って都心のマンションに住み替えると、相続
税評価額が圧縮できる場合があります。一戸建ては敷地の面積がそのまま路線
価を計算する土地の面積となりますが、戸数の多い大規模なマンションでは土
地の持ち分も少なくなります。さらに現金をそのまま持っているよりも建物の
方が相続税評価が低くなるのです。子どもが独立し生活にも不便、というなら
思い切って住み替えを考えてみてはいかがでしょうか。
また、余剰資金があるなら、自宅の他にマンション等を購入して他人に賃貸
するという方法も。賃貸にすればさらに相続評価が引き下げられるのです。た
だし、このようないわゆるマンション投資は空室などのリスクが伴います。事
前に立地や収支計画などもよく聞いて判断しましょう。
節税対策 2
住宅取得資金などは生前贈与を活用
両親などから資金を援助してもらった場合、「相続時精算課税制度」や「住
宅取得等資金の非課税制度」といった贈与税の特例制度の適用を受けることが
できます。
「相続時精算課税制度」は、贈与のうち 2500 万円までは贈与税が非課税に
なり、それを超えると一律 20%で課税されます。相続が発生した際には生前
に贈与された財産も含めた金額に相続税が課税されますが、先に払った贈与税
分は相続税額から控除される制度です。
使用目的が住宅取得に限定されるなら、贈与した金銭の「住宅取得等資金の
非課税制度」を利用しましょう。住宅取得資金として直系尊属(父母や祖父母)
から金銭を贈与された場合、一定の金額が非課税となる制度。契約締結時期に
よって非課税額が異なり、平成 27 年中の契約締結なら最高 1500 万円までが
非課税枠となります。また、住宅の取得に充てるための金銭の贈与のため、実
際にその金銭を住宅の取得資金に充てた証明が必要です。建物の条件は、不動
産会社等に相談しましょう。
納税対策
納税を見越した余裕資金の準備を
相続税は、現金で納めるのが原則です。また、その納付期限は、申告期限と
同じ亡くなってから 10 カ月以内。資産が不動産に偏り手持ちの現金が少ない
と、相続税の納付が難しいケースも考えられます。残された家族も不動産の売
却を検討するなどの負担が。あらかじめ納税を見越した資金を準備しておきた
いものです。
ここで知っておきたいのが、相続発生後に土地を売る際の譲渡所得税の計算
方法が変更されたことです。相続の申告期限から3年以内に、相続した土地を
売却した場合、相続税相当額のうち一定額が経費と見なされ譲渡所得税が軽減
されます。昨年までは相続した全ての土地の相続税相当額が対象となりました
が、今年の税制改正で譲渡した土地のみとなりました。土地資産を複数持って
いて相続発生後に売却した方がよいだろう、と思っていた人も、一度確認をし
てみるとよいでしょう。
三井住友トラスト不動産より引用致しました