個人事業と法人成りの 有利・不利の分岐点

個人事業と法人成りの
有利・不利の分岐点
税理士法人総合会計 下関事務所
かねこ いさお
所長税理士 金巨 功
法人成りを考える場合
• 法人を設立した場合、
登記代などの費用がかかる。
• 均等割(最低でも71,000円)のように必ずかかる税金がある。
• 経理についても個人事業者より厳密さが求められる。
• 社会保険に加入する必要がある。
•
• ※しかし、売上規模が拡大し、利益が一定規模を超えたら法
人成りしたほうがメリットがあります。
個人事業から法人成りを選択するときの考
え方
• 《ポイント1》
• 課税所得をもとに、個人事業と法人成りした場合の税負担を
比較してみる
• 《ポイント2》
• 法人成りすると、経営者本人に会社の費用として役員給与を
支払うことができる。
• 《ポイント3》
• 法人の場合、役員退職金の支給や消費税の免除といったメ
リットもある。
個人事業と法人成りの課税のしくみ
個人事業
必要経費
青色申告特別控除 65万円
所得控除 200万円
成りすると、経営者本人に会社の費用と
して役員給与を成りすると、経営者本人
に会社
収入金額費用としてことが
でああきる。
支払うことができる。
1,200万円
課税所得
×所得税率(所得税率参照)
×住民税率(1律10%)
(収入金額-必要経費-事業主控除290万円)×個人事業税率=事業税
個人事業と法人成りの課税のしくみ
役員個人
必要経費
給与所得控除230万円
所得控除200万円
役員給与
1,200万円
収入金額
770万円
265万円
課税所得
×所得税率(所得税率参照)
×住民税率(一律10%)
課税所得
×法人実効税率(別紙税率参照)
所得税の税率表
課税される所得金額
税率
控除額
1,000円以上 195万円以下
5%
0円
195万円超
330万円以下
10%
97,500円
330万円超
695万円以下
20%
427,500円
695万円超
900万円以下
23%
636,000円
1,800万円以下
33%
1,536,000円
40%
2,796,000円
900万円超
1,800万円超
※上記の所得税にさらに復興特別所得税(所得税×2.1%)が加わります。
法人の表面税率と実効税率対比表
税目区分
所得区分
法人税
表面税率
(%)
年400万
円以下
年400万
円超800
万円以下
年800万
円超
事業税
実効税率
(%)
表面税率
(%)
実効税率
(%)
14.8
4.89
4.66
15.5
25.5
住民税
表面税率
(%)
合計
実効税率
(%)
表面税率
(%)
実効税率
(%)
2.9
23.44
22.36
2.84
25.79
24.04
4.58
40.11
36.6
3.05
14.45
7.24
6.75
23.27
9.59
8.75
5.02
※1 均等割は計算上除外しています。
※2 実効税率は、事業税が所得の計算上損金に算入されることを考慮した
税率です。
個人事業と法人の負担税額比較
• 【個人事業の場合】
•
•
•
•
•
•
•
•
課税所得を1,200万円、所得控除額を200万円とする。
所得税 1,200万円×33%-1,536,000円=2,424,000円
住民税 1,200万円×10%=1,200,000
事業税 1,200万円+200万円+65万円-290万円=1,175万円
(青色申告特別控除前の所得金額) (事業主控除額)
1,175万円×5%=587,500
(事業税率)
合計 4,211,500円
• ※事業税率については、以下の区分によります。
• 第1種事業(商工事業いわゆる営業に属するもの) 5%
• 第2種事業(畜産業、水産業等) 4%
• 第3種事業(医業等、自由業に属するもの) 5%
• 上記のうち あん摩等、装蹄師業
3%
個人事業と法人の負担税額比較
• 【法人成りした場合】
•
•
•
•
•
•
役員給与を1,200万とする。
①法人の課税所得と税負担
1,200万円+200万円+65万円-1,200万円=265万円
(青色申告特別控除前の所得金額) (役員給与)
法人税等の概算
265万円×22.36%=592,540円
• ②役員個人の課税所得と税負担
•
•
•
•
•
•
課税所得金額 1,200万円-230万円-200万円=770万円
(役員給与) (給与所得控除) (所得控除)
所得税 770万円×23%-636,000円=1,135,000円
住民税 770万円×10%=770,000円
役員個人の税負担 1,905,000円
①法人の税負担と②役員個人の税負担の合計 2,497,540円
法人成りのメリット 1
!役員退職金を支払うことが可能!
退職金は、老後の生活費であり一時に収入するものであると
いう理由から、所得税は軽減されているので、税負担の面から
も役員退職金は活用したほうが有利です。
※税法上、退職金相当額として認められる金額は?
①功績倍率法
退職時の適正報酬月額×勤続年数×功績倍率
②1年当たり平均額法
類似法人の1年当たりの退職給与の平均額×勤続年数
法人成りのメリット 1-2
• (参考)具体的な退職金の税額
•
•
•
•
•
•
•
退職金1,200万円、勤続年数10年の場合
(1,200万円-400万円)×1/2=400万円
退職所得控除
所得税 400万円×10%-97,500円=302,500円
住民税 400万円×10%=400,000円
合計 702,500円
※給与1,200万円の場合の税額(1,905,000円)と比べ有利
• ☆退職所得控除とは
•
•
勤続年数20年未満
勤続年数20年以上
40万円×勤続年数
70万円×(勤続年数-20年)+800万円
法人成りのメリット 2
• !消費税の免税が2年間受けられる!
• 消費税法上、2年前の売上が1,000万円を超えていると、消費
税の納税義務者となりますが、法人設立当初は、2年前の売
上がありませんので、消費税の納税義務はありません。
• ※資本金が1,000万円未満でないと適用は受けられません。
• ※事業年度開始から6か月間で、売上及び人件費が1,000万
円を超える場合は、免税期間が短縮されますので注意が必
要です。
法人成りのメリット 3
• !給与課税されない経済的利益がある!
• 会社が役員に経済的な利益を供与したとしても、それが所得
税法で経済的な利益として課税されず、給与として取り扱わな
くてもよいものがあります。
• 1)出張者の出張旅費および通勤手当
• 2)会社契約の保険に係る経済的利益
• 3)社員旅行等
• 4)役員の社宅等
法人成りのメリット 4
• !社葬費用について!
• 役員や社員が死亡したために社葬を行い、その費用を負担し
た場合には、その社葬を行うことが社会通念上相当と認めら
れるときは、会社の費用として差し支えありません。
•
社葬の一般的な費用としては、死亡通知の新聞掲載料、取
引先等への通知費用、葬儀場使用料、僧侶へのお布施など
があげられます。
•
なお、会葬者からの香典等については、会社の収入としない
で、遺族の収入として認められ、遺族が収受した香典につい
ては、常識的な金額であれば税金は非課税となります。