反応拡散系に対する大域的分岐構造の数値計算法とその応用 矢留 雅亮 (金沢大学 大学院自然科学研究科) 長山 雅晴 (金沢大学 理工研究域数理科学系, JSTさきがけ研究員) 上田 肇一 (京都大学 数理解析研究所) 反応拡散系に現れる遷移ダ イナミクスを力学系の視点から解析するためには系の大域 的分岐構造を求めることが重要である [1 など ]. 数値的に大域的分構造を求めるソフトウ エアとして AUTO[2] が知られており,常微分方程式の分岐解析に対して非常に強力なソ フトウエアである.しかし,偏微分方程式の離散化によって得られる高次元常微分方程 式系の分岐解析に対しては,計算量が多くなるために実用可能な時間で分岐解析を行う ことは困難となる.我々が対象とする反応拡散系を空間離散化することによって得られ る常微分方程式系は高次元となるために,AUTO を用いて分岐解析を行うことが困難と なる.そこで,反応拡散系に現れるパルス波の遷移ダ イナミクスを力学系の視点から理 解するために,反応拡散系に現れるパルス波に対する大域的分岐構造を数値的に求める ためのソフトウエアを開発することにした( 現在も開発中).反応拡散系には異なる4 種類のパルス波が知られており,それらは Standing Pulse(SP),Travelling Pulse(TP), Standing Breather(SB),Travelling Breather(TB) と呼ばれるものである.TP と TB は 動座標変換を行うとそれぞれ動座標系での SP と SB の解とみなすことができ,SP と TP, SB と TB に対する大域的分岐構造はそれぞれ同じ数値計算法によって求めることができ る.SP や TP の数値解は空間を離散化して得られる差分方程式を Newton 法で解くこと によって求めることができ,また,SB と TB は Newton (Multipule) Shooting Method[3] を適用することによって求めることができる. 本講演では数値計算法について詳しく説明を行い,発熱反応モデルなどに現れるパル ス波に対する大域的分岐構造の数値結果を報告する.応用例としてして,Gray-Scott モ デルを拡張した3変数反応拡散系に対する分岐構造を求め,系に現れる遷移パターンの 解析を行う. 参考文献 [1] パターン形成とダ イナミクス 非線形・非平衡現象の数理4,三村昌泰,東京大学 出版会,2006. [2] E.Doedel,H.B.Keller,J.P.Kernevez,Int.J.Bifurcation and Chaos,1(3),493–520, 1991,1(4),745–772,1991. [3] K.Lust,Improved Numerical Floquet Multipliers,Int.J.Bifurcation and Chaos, 11(9),2389-2410,2001.
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