自校史教育に資する茨城県立医療大学アーカイブズの在り方

○平成24年度奨励研究
「自校史教育に資する茨城県立医療大学アーカイブズの在り方」
看護学科 准教授 富田美加
1.研究目的
自校史に対する理解を深めることは,学生にとって初年次教育という観点からも重要であり,さらに大学構成
員(学生・教職員)全体のアイデンティティを高めることが期待できる。近年,伝統ある大規模校を中心に自校史
教育に取り組む大学が増え,同時に自校史教育の礎となる大学アーカイブズの整備が進んできている。
そこで,本研究ではこれまでに明らかにした大学アーカイブズに関する種々の要素をもとに,本学がアーカイ
ブすべき資料の特定や,それら資料の形態・収集保存の必要性基準・収集保存の方法等をさらに具体化し,自
校史教育に資する茨城県立医療大学アーカイブズの在り方について課題を整理することを目的とした。
2.結果及び考察
1)他大学における自校史教育ならびに大学アーカイブズに関する調査
文献調査に加え,日本赤十字看護大学歴史展示コーナー,三重県立看護大学附属看護博物館,大阪大学
総合学術博物館,大阪大学アーカイブズ,東海大学学園史資料センターについて訪問調査を行った。
2)自校史教育の意義
寺﨑1)によれば,自校史教育は,学生たちの学習意欲の向上に直結するため,初年次教育としての意義が高
い。特に不本意入学への対応をも念頭に置いて入学直後に実施することにより,個々の学生の学ぶ姿勢への
効果を期待できる。また,大学の個性について,在学する学生や教職員のみならず,卒業生や退職した教職員
と共有していく作業は,すなわち,大学の自己点検といえるものである。それら一連の過程には,大学の歴史の
確認が不可欠であり,データベースとしての大学アーカイブズの存在が重要となる。
3)茨城県立医療大学における自校史教育の試案
初年次教育の一環として,平成25年度から導入予定のIPE(多職種連携教育)コースや自由科目での実施な
ど,実現可能性について今後さらに検討が必要である。
4)茨城県立医療大学における大学アーカイブズ整備の方向性
自校史教育に資する大学アーカイブズとして整備していくために,次の資料について収集が必要と考える。
・初代学長関連資料
・学内刊行物:学生便覧,シラバス,時間割,大学案内,学生募集要項,各種広報刊行物,年報,自己点検
評価報告書,調査統計報告書その他の行政資料,公開講座等のプログラム,記念行事等における配布印
刷物,記念誌 ほか
・県議会議会録・県報
・他の大学や機関等との交流に関する記録
・各種写真・映像(入学式をはじめ各種行事等)
・卒業生からの各種寄贈資料や,教職員や卒業生など関係者によるオーラルヒストリー ほか
3.成果の発表
論文による発表を準備中である。
4.参考文献
1)寺崎昌男.大学は歴史の思想で変わる.東信堂.2006年
2)全国大学史資料協議会編.日本の大学アーカイヴズ.京都大学学術出版会.2005年
3)鈴木秀幸.大学史および大学史活動の研究.日本経済評論社.2010年