中国経済論 東京女子大学2015年 第2回 丸川知雄 清朝での経済発展 • オランダなどによる仲介貿易によって絹織物、 陶磁器を輸出し、銀が流入。それにより商品 生産が活発化。 • 1820年の時点で中国(清)は世界の人口の 37%、世界のGDPの33%を占める世界で最も 経済と人口の規模が大きい国であった。 中華帝国の衰亡(1840~1949年) • アヘン戦争(1839~1842年) • 太平天国の乱(1851~1864年) 人口が4.4億 人(1852年)から3.58億人(1870年)に激減。 • 洋務運動の展開:上海機器紡織局、国営漢 陽鉄廠 • 日清戦争(1894~95年)に敗れたあと外国資 本に門戸を開いたことがかえって近代工業の 発展をもたらした。 アヘン戦争で清朝がイギリスを砲撃 するのに使った大砲 輸入品 中国製 1890年頃、GDP世界1位の座をアメリカに 奪われた 図1-2 中国とアメリ カの国内総生産 1 7 0 0-2030年 (1990年価格の百 万ドル ) 100 000 000 10 000 000 アメリカ 1 000 000 中国 100 000 10 000 1 000 203 0 200 0 197 0 194 0 191 0 188 0 185 0 182 0 179 0 176 0 (出所)Maddison(2007)p.94 173 0 170 0 0 100 内乱と戦争の中華民国時代 • • • • 1911年辛亥革命、12年中華民国成立 軍閥どうしの争いが続いた北京政府 国民革命(1924~28年) 関税自主権回復、通貨の統一を成し遂げた南京政 府 • 製糸業、綿紡織、タバコ、製粉などの工業が上海、 天津、広州など沿海部の都市で発展。重工業では 中国資本による化学工業が発展したものの、鉄鋼 業などではみるべきものなし。むしろ満鉄が建設し た鞍山製鉄所、日本の大倉財閥による本渓湖製鉄 所が有数の鉄鋼メーカーだった。 日中戦争と内戦 • 満州事変(1931年)、満州国建国(1932年)、 日中戦争(1937~45年)、国共内戦(1945-49 年) 中華人民共和国期の経済成長率 図1-3 中華人民共和国期のGDP成長率 30.0 20.0 % 10.0 0.0 -10.0 -20.0 -30.0 (出所)国家統計局国民経済核算司編『中国国内生産総値核算歴史資料1952-2004年』中国統計出版社、2 006年、国家統計局編『中国統計年鑑』中国統計出版社、2014年、「修正 GDP成長率」は『中国統計年鑑』各年版を用いて筆者推計 公式統計 のGDP成 長率 修正GDP 成長率 計画経済期(1949-1978年)の経済成長の 特徴 • 起伏が極めて大きい。度重なるマイナス成長 (1960-62年、67-68年、76年)。政治情勢に よって大きく影響された。 • 年平均6.1%で成長、1人当たりでは年率4.0% の成長 改革開放期(1978年~)の経済成長 図1-4 中国の経済成長率と各産業の寄与度(1978~2013 年) 18.0 16.0 14.0 4.7 3.8 3.7 12.0 3.3 4.6 6.6 3.2 3.9 3.7 3.6 5.7 2.9 4.9 2.8 3.0 6.6 3.1 3.1 1.9 2.4 6.0 9.2 9.2 2.6 4.7 6.5 2.2 7.0 0.9 3.5 第2次産業 3.5 3.6 4.8 4.4 6.3 5.9 5.3 5.8 5.1 3.9 7.2 4.7 4.8 4.5 5.9 4.8 3.7 3.7 1.9 2.6 -2.0 (出所)国家統計局編『中国統計年鑑2014』 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2004 2003 2002 2001 2000 1997 1996 1995 1994 1993 1989 1988 1987 1986 1985 1984 1.6 1.2 1.2 1.1 0.9 1.0 1.0 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.4 0.4 0.4 0.4 0.3 0.8 0.6 0.6 0.4 0.6 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.6 0.9 1982 -0.4 1980 1979 1978 0.0 1981 2.1 1.2 1.6 5.6 1.6 3.9 1983 2.0 4.1 4.0 4.0 2.8 6.3 1.5 0.6 5.8 4.8 4.3 第3次産業 8.9 7.0 1992 4.1 6.8 1991 4.0 8.3 1990 7.3 4.1 4.2 2.9 1999 1.4 3.8 4.0 1998 % 2.7 8.0 2005 10.0 第1次産業 高度成長の改革開放期(1978年~2013年) • 年平均9.9%の経済成長のうち、5.4%ポイントは第2次産 業(うち工業が4.9%)の寄与であった。 • 1981~84年の期間だけは第1次産業が経済成長に対し て2~3%ポイントも寄与している。その後、第1次産業 の寄与は小さくなっている。 • 第2次産業の寄与度は1991年以降は安定的である。 • 第3次産業の寄与度が第2次産業の寄与度を上回った ことはほとんどないし、第3次産業の成長率は第2次産 業の成長とかなり相関している(R=0.55)。第1次産業・ 第2次産業はr=-0.21、第1次産業・第3次産業はr=0.32. (テキスト要訂正)。 様々な生産要素の経済成長に対する貢 献 • 経済成長は労働者や労働時間の増加、生産設備 (資本)の増加、技術進歩など生産効率の向上に よって成し遂げられる。 • 中国の就業者数は1952年の2.4億人から2010年に は7.6億人へと3.2倍に拡大。その間に国内総生産 (GDP)は94倍に拡大。 • 生産設備の拡大。1952年に1800億元の資本があっ たと推計し、それに毎年の固定資本投資額を足し、 資本は3%ずつ減耗するとしたところ、資本は1952年 から2010年に148倍に拡大。 • 生産効率の向上は、 A Y L (1 ) K 1952~2010年の経済成長の要因分解 表1- 1 経済成長の要因分解 ( 年平均) 全要素生 成長に対する寄与率 GDP成 資本増 就業者 産性 全要素 長率 加率 増加率 (TFP)成 資本 労働 生産性 長率 1952 -57年 1957 -62年 1962 -65年 1965 -70年 1970 -75年 1975 -80年 1980 -85年 1985 -90年 1990 -95年 1995 -2000 年 2000 -05年 2005 -10年 9.2% -2.0% 15.1% 6.9% 5.9% 6.5% 10.7% 7.9% 12.3% 8.6% 9.6% 10.8% 8.6% 9.7% 4.5% 6.8% 9.5% 7.8% 8.2% 9.5% 10.0% 9.9% 10.7% 11.7% 2.8 % 1.7 % 3.4 % 3.7 % 2.1 % 2.1 % 3.3 % 2.4 % 1.0 % 1.2 % 0.7 % 0.4 % 4.6% -6.8% 11.3% 2.0% 0.6% 1.8% 5.3% 2.3% 6.9% 3.1% 3.4% 4.0% 50 % 75 % 29 % 9% 27 % 49 % 29 % 56 % 36 % 35 % 37 % 30% 10% 38% 71% 55% 33% 54% 40% 58% 61% 62% 20% 15% 33% 20% 17% 18% 17% 4% 7% 3% 2% 労働分配 率( 推計) 0.68 0.62 0.65 0.61 0.56 0.54 0.57 0.55 0.51 0.5 0.45 0.43 ・資本の増加率が終始高い。 ・TFPが大きく伸びたのは1962~65年、80-85年、90-95年など。 ・TFPの伸びにより、2010年には1980年と同じ数の労働者、同じ額の資 本を使って3.3倍も多くの生産ができるようになった。TFPのなかには労働 移動による生産性向上、労働者の教育水準や経験の蓄積などの要素も 含んでいる。
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