世界経済の構造転換と新興経済 Structural Shift of the World Economy

世界経済の構造転換と新興経済
Structural Shift of the World Economy and the Emerging Economies
平川均(国士舘大学)
今世紀に入って、世界経済の構造転換が大きく進んでいる。アジア通貨危機が起った 1997 年か
ら約 10 年、アメリカを震源地として勃発した世界金融危機が再び世界に広がった。アメリカの
リーマン・ブラザーズの破綻を契機にしたサブ・プライム・ローン危機は様々な経路を通じてヨ
ーロッパ、そして日本へ拡散し、しかもそれは震源地のアメリカを上回る深刻な危機となった。
危機は言うまでもなく、世界の製造拠点となった東アジアにも打撃を与えた。だが危機後の世界
経済では、危機直後における新興経済に対する厳しい予想にも拘らず同経済の影響力はむしろ高
まった。
何よりも大きな変化は、過去半世紀にわたって先進経済を軸に展開されてきた発展構造が新た
な構造に移りつつあるということである。確かにそれは一直線の現象ではない。そのため、新興
経済に対する評価は極めて流動的で浮き沈みが激しい。しかし、ジグザグの道を辿りながら幾つ
かの画期を経て、徐々にしかし確実に新しい構造に変わりつつあるように思われる。東アジア経
済の発展という分析視角から、今回の世界金融危機を含めて過去数十年間の世界経済の変化をみ
るとき、それが浮き彫りになる。
本報告では、まず 1980 年代以降の先進経済と新興経済の動向を考察し、その関係における大
きな変化を確認する。次いで、この構造変動を引き起こした主要な主体であった新興経済の発展
メカニズムについて考察する。第 2 次世界大戦後の新興経済の劇的な発展は NIES 型発展に始ま
るが、今世紀に入って新しい発展メカニズムに代わりつつあることを確認する。
続いて、この構造変動に伴う東アジア経済の自律性とそれが生み出す新らたな地域的課題につ
いて考察し、最後に、今日の世界的不況下、先進経済が採る諸政策の東アジア新興経済への影響
について論じる。アメリカ、EU、日本の主要な先進経済が世界金融危機後に採り始めた経済刺
激策としての中央銀行による量的緩和の新興経済への影響について考える。
ちなみに、報告者は、今日の構造転換を引き起こしている主要な主体である新興経済をポブメ
ス(PoBMEs: Potentially Bigger Market Economies、潜在的大市場経済)と呼ぶ。そうするこ
とで、21 世紀初頭の世界経済の中での新興経済の発展メカニズムを明らかにし、資本主義の今日
的特徴を浮かび上がらせることができると思うからである。