ユネスコ無形文化遺産登録に向けて

長浜の伝統が世界の宝に
小舟町組(長刀組)
長浜曳山祭を開く
初 代の曳 山は元 禄 1 2 年
(1699)長浜の曳山を作った
藤岡和泉初代の作と言われ
ています。
ほかの曳山と異な
り、舞台はなく三輪で平たい
台の上に大太刀や幟を飾り
ます。長刀組には力士のつ
ける化粧回しや武者の甲冑
が伝えられています。
日本三大山車祭の一つで、
国の重要無形民俗文化財
に指定されている長浜曳山まつり。平成28年秋には、
長浜曳山まつりを含む全国33の「山・鉾・屋台行事」が
ユネスコ無形文化遺産に登録予定となっております。
長浜信用金庫は、無形文化遺産登録を応援しています。
▲力士の化粧回し
宮町組
大手町組
シンプルな屋根を持つ最古の芸山
延享2年(1745)の修理の記
録がある12基の芸山の中で
も最古の曳山です。舞台屋
根は尖った三角の切妻造り
で唐破風(屋根の中央が膨
らんでいる)
によって強調され
ることの多い曳山の中では、
青海山とともに個性的です。
前柱の飾り金具である昇降龍
は、
国友鉄砲鍛冶 藍水堂一徳
が13年間を費やした渾身の
作品です。その下絵は、隣村、
今村の中谷求馬が描いたメイ
ドイン長浜の作品です。
なお竹
林の七賢人が描かれた胴幕
は京都の稲荷大社や大垣の
相生山と系譜を一つにします。
▲長浜らしい瓢箪の飾り金具
▲昇降龍の飾り金具
魚屋町組
船町組
大火から再建された豪華な山
亭の上に鳳凰を飾り、
舞台格
天井に種々の花々を散りばめ
た絢爛豪華な曳山です。文
化15年
(1818)
に山蔵とともに
焼失、12年後に新しい曳山
が完成しました。
舞台障子の
「花車の図」は長浜の絵師、
山縣岐鳳の作品です。
▲花車の図
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秀吉の開いたメイン通りの曳山
船の形をした唯一の個性的曳山
▲国友一貫斎充俶の手に
よる台輪鼻金具
帆を高々と上げ湖上を進
む船のイメージで作られ
た船形の曳山で胴幕に
は豪華な金糸で昇降龍を表しています。猩々とは猿に似た中国の伝説
上の生き物です。
なお猩々丸が出場する際には、米原市長沢の公家奴
振りが出演する慣わしです。
∼歴史と未 来を紐解く∼ そ の
1
ユネスコ無形文化遺産登録へ
世界に認められた「伝統」
と
「美」
長浜曳山祭の祭礼行事がユネスコの無形文化遺産
として、平成28年秋、登録の見込みです。
なぜ長浜曳
山祭がユネスコ無形文化遺産の候補になったのでしょ
う。それは人々が祭という目的を達成していくために結
束し、構成する儀式を長年に渡って守りながら現在に
伝えているということが高く評価されたのです。祭は、ユ
ネスコの提唱する「世界の平和を構築する」知恵が詰
まった具体的な姿、言い換えれば世界中で勃発する紛
争の対極的な位置にあるのが平和の象徴としての祭
礼なのです。長浜曳山祭も第二次世界大戦中、祭礼は
休 止されていま
した。この度 、長
浜曳山祭の祭礼
行 事を始 めとし
て日 本 全 国 の
「 山・鉾・屋 台 行
事」33団体が候
▲夕渡り
補に挙がりました。
先人たちがそれぞれの土地の個性を生かしながら創
意工夫し伝承してきた叡知がぎっしり詰まっているのが
祭礼=人類の遺産というわけです。候補に挙がっている
33団体はすでに国指定重要無形民俗文化財、すなわ
ち日本人の文化、生活基盤をよく示すものとして高い評
価を受けているわけですが、
この度そのエリアは世界中
に広がろうとしています。
▲ 子ども歌舞伎
∼歴史と未 来を紐解く∼ そ の
2
長浜曳山まつりの歴史
長浜曳山祭の歴史
長浜曳山祭のはじまりは、
秀吉の長浜城下町の造営、
整備とともにあるといっていいでしょう。戦国時代、荒れて
いた長浜八幡宮を整備し社領を寄進し、
太刀渡りを町年
寄に行なわせたのはほかならぬ羽柴秀吉(後の豊臣秀
吉)
でした。
その秀吉に子どもが誕生、
その喜びを分かつ
べく砂金を長浜町衆に配ったところ、
それをもとに曳山を
造って曳きまわした、
それが長浜曳山祭の始まりだと伝え
ています。
ただし現在ある曳山は、
江戸時代中期に造られ、
▲太刀渡り
当時流行していた歌舞伎、人形浄瑠璃を取り入れ、子ど
もが歌舞伎をするという独自の芸能を生み出し、山の芸
としました。曳山は江戸時代後期には亭(ちん)
と呼ばれ
る多層の屋根を持つ東屋を載せることによって完成しま
す。近代にはいってもその祭礼は継承されましたが、曳
山の出場基数は大正8年から6基(2年交替)、昭和23
年から3基(4年交替)、昭和29年からは4基(3年交替)
へ、
祭礼も10月から4月に変わっています。
▲曳山全基
(部分)
長浜市曳山博物館・中島誠一館長に監修していただきました。 写真提供:長浜観光協会
表紙は、今年度の長浜曳山まつり出番山の写真です。左上:鳳凰山、右上:高砂山、右下:猩々丸、左下:壽山 50