P- 079 岡田望 , 木村公洋 , 井上将徳 , 大西利和 , 小川英夫

P- 079
2015.01.06. 2015.01.07. 宇宙科学シンポジウム
LiteBIRD に向けた広視野アンテナ光学系の検討
岡田望 , 木村公洋 , 井上将徳 , 大西利和 , 小川英夫 ( 大阪府大 ), 関本裕太郎 , 稲谷順司 , 鹿島伸悟 ( 国立天文台 ),
羽澄昌史 ( 高エネルギー加速器研究機構 ), 大田泉 ( 甲南大 ), 松村知岳 , 村田泰宏 , 西堀俊幸 , 紀伊恒男 (JAXA), LiteBIRD working group
abstract
我々は宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) の中からインフレーションの痕跡となりうる偏光パターン B モードの観測を目的とした LiteBIRD 衛星の開発を進めている 。この観測を行うためには、広視野なアンテナ光学系が求められている。
我々はこれらの要求を満たす為クロスドラゴンという光軸が交差する光学系を候補として検討している。この光学系は主鏡、副鏡、フィード (400 × 200 mm の広い焦点面 ) から構成され、広視野かつコンパクトという利点を持つ。しかし、クロスドラゴン型光学系は上
記の特長を有する一方、迷光や多重反射の影響が現れやすいものとなっている。この迷光等の影響で、アンテナビームパターンのメインローブ付近や裾野部分において局部的に強度の強いサイドローブ成分が現れてしまう。CMB の B モード偏光は大変微弱である為、それ
らの影響を低減することが重要である。そこで物理光学手法を用いたシミュレーションによりアンテナビームパターンやスピルオーバー等を評価し、上記のサイドローブ成分の原因を追及した。また、開口部に取り付ける迷光対策用のバッフル ( フード ) の大きさを検討し、
サイドローブレベル軽減への寄与を計算した。
本講演では各周波数帯におけるアンテナビームパターンの評価および開口の設定によるサイドローブの低減について発表する。
装置概要
バッフル
表 2. 光学系主伝送経路および迷光経路
表 3 の計算で考慮した経路。また、図 3 に記載する前光学系
モデルでは表中の経路 1 4,6 8 を考慮し計算した。
LiteBIRD 光学系で期待される正規の伝送光路 ( 以下、主経路 )
は経路 3 である。
aperture
副鏡
60/78/100 GHz
[ 比帯域 : 0.23]
140/195/280 GHz
[ 比帯域 : 0.30]
焦点面
検出器
feed
(conical horn)
主鏡
sub-ref.
伝送経路
1. feed
冷却系
2. feed -> sub-ref.
mein-ref.
3. feed -> sub-ref. -> main-ref. (main path)
4. feed -> sub-ref. -> main-ref. ->sub-ref.
図 2. LiteBIRD 光学系モデルの CAD 図
表 3 記載の F3.5 モデル、フィード : 焦点中心
図 1. LiteBIRD 受信機および検出器の外観図
5. feed -> sub-ref. -> main-ref. ->sub-ref. -> main-ref.
6. feed -> main-ref.
表 1. LiteBIRD 光学系に要求されるスペック
項目
仕様
7. feed -> main-ref. -> sub-ref.
焦点面検出器
検出感度
観測周波数
約 2000 素子からなる多色超伝導検出器アレイ (TES または MKID)
2 マイクロケルビン・分角
6 周波数帯域 60/78/100 GHz [ 比帯域 : 0.23] および 140/195/280 GHz [ 比帯域 : 0.30]
8. feed -> main-ref. ->sub-ref. ->main-ref.
9. feed -> main-ref. -> sub-ref. ->main-ref. -> sub-ref.
GRASP による計算
我々は LiteBIRD 光学系方式としてクロスドラゴン光学系を検討している。本光学系方式の利点として、光学素子を畳み込んでいる為に
光学系全体の大きさが鏡面の大きさに対して比較的コンパクトであるという点が挙げられる。その反面、光学素子同士が近接している為に
feed -> sub-ref. ->
main-ref. -> sub-ref.
迷光等の影響が大きいことも懸念されている。そこで我々は物理光学手法を用いたシミュレーションソフト GRASP を用いてアンテナビーム
feed -> main-ref. ->
sub-ref. -> main-ref.
feed -> main-ref.
-> sub-ref.
パターンを計算し、迷光がどの程度影響するか等を確認してきた。( 図 3 参照。主経路+迷光経路で 7 通りを考慮。)
現在は、性能追求の為、新たに光学系設計を行い、新光学系の性能確認を行っている。新光学系は F 値が 3.5,3.0,2.5 の三モデルある。
今回、主経路 1 経路と迷光経路 8 経路を想定した計算を行った。また、今回の計算はすべて周波数 60 GHz、フィードはコニカルホーン
という条件下で行った。計算としては、まず①F 値 3.5 モデルでフィードが焦点中心にある場合、②F 値 3.0 モデルでフィードが焦点中心に
ある場合、③F2.5 モデルでフィードが焦点中心にある場合の三通りを行い、新モデル三種の性能比較を行った。この比較から、F ナンバー
が小さければ小さいほどファーサイドローブレベルが低くなる傾向にあることが分かった。( 表 3 上段参照。)
sub-ref.’s
spillover
conical horn’s spillover
そこで次に、最もサイドローブレベルの高いモデル (F3.5 モデル ) において、フィードの位置を変更した際にどのような性能を示すのか
ということを確認した。フィードの位置は④焦点中心から x 方向に +100mm の位置にある場合、⑤焦点中心から y 方向に -100mm の位置
図 3. LiteBIRD 前光学系モデルにおける迷光起因判定結果。
この結果より、問題となる迷光の経路の判定やコニカル
ホーンスピルオーバーの影響が大きいことが分かった。
にある場合の結果を行った。( 表 3 下段参照。) この結果より、フィードの位置を変更しても迷光やスピルオーバーの影響は大きく変わら
ないことが分かった。
今後は各伝送経路におけるアンテナビームパターンを算出し、どのピークがどの経路が原因で現れているか等の確認、およびバッフルの設計を行っていく予定である。
表 3. LiteBIRD 新光学系モデル アンテナビームパターン比較
F 値 3.5 モデル
F 値 3.0 モデル
F3.0 model antenna beam pattern:conical_center @60GHz
-20.0
-40.0
-40.0
-90.0
-45.0
0.0
θ [deg]
45.0
90.0
135.0
180.0
同一結果
co pol. @90deg
20.0
-90.0
-45.0
0.0
θ [deg]
45.0
90.0
135.0
180.0
-180.0
-135.0
-90.0
-45.0
0.0
θ [deg]
45.0
90.0
135.0
180.0
Amplitude [dB]
co pol. @90deg
0.0
-40.0
-40.0
-40.0
-40.0
0.0
45.0
90.0
135.0
180.0
-180.0
-135.0
-90.0
-45.0
0.0
θ [deg]
45.0
90.0
135.0
180.0
135.0
180.0
-180.0
y -100mm
0.0
-20.0
θ [deg]
90.0
20.0
-20.0
-45.0
45.0
x +100mm
-20.0
-90.0
0.0
θ [deg]
40.0
20.0
Amplitude [dB]
20.0
-135.0
-45.0
center
-20.0
-180.0
-90.0
コニカルホーン位置別結果比較 (cut 方向 45deg)
co pol. @45deg
40.0
co pol. @90deg
0.0
-135.0
co pol. @0deg
co pol. @45deg
40.0
20.0
-180.0
F3.5 antenna beam pattern:conical cut_90deg @60GHz
co pol. @0deg
co pol. @90deg
0.0
-40.0
F3.5 model antenna beam pattern:conical_y-100mm @60GHz
co pol. @0deg
co pol. @45deg
0.0
-20.0
コニカルホーン:中心より y 軸方向に -100mm
F3.5 model antenna beam pattern:conical_x+100mm @60GHz
40.0
Amplitude [dB]
Amplitude [dB]
0.0
-40.0
-135.0
F2.5 model
20.0
-20.0
コニカルホーン:中心より x 軸方向に +100mm
F3.5 model antenna beam pattern:conical_center @60GHz
Amplitude [dB]
F3.5 モデル コニカルホーン位置変化
コニカルホーン:焦点中心
-180.0
40.0
Amplitude [dB]
-135.0
F3.0 model
co pol. @45deg
co pol. @90deg
0.0
-20.0
-180.0
40.0
20.0
Amplitude [dB]
20.0
F3.5 model
co pol. @0deg
co pol. @45deg
40.0
co pol. @90deg
0.0
antenna beam pattern:conical_center @60GHz
co pol. @0deg
co pol. @45deg
40.0
F 値別結果比較 (cut 方向 45deg)
F2.5 model antenna beam pattern:conical_center @60GHz
co pol. @0deg
Amplitude [dB]
コニカルホーン中心 F 値変化
F3.5 model antenna beam pattern:conical_center @60GHz
F 値 2.5 モデル
-135.0
-90.0
-45.0
0.0
θ [deg]
45.0
90.0
135.0
180.0
-180.0
-135.0
-90.0
-45.0
0.0
θ [deg]
45.0
90.0
135.0
180.0