3.9.1.1 仙台リサーチセンター - NICT

3.9 連携研究部門
3.9.1.1 仙台リサーチセンター
リサーチセンター長: 草川慶一 総括責任者: 荒井賢一 ほか 5 名
電磁波セキュリティを確保するための高感度電磁波測定技術の研究開発 概 要
高周波電磁界測定用電気・磁気光学結晶材料・素子の開発及び微細加工・集積化技術等を用いた高感度光電
界・磁界測定プローブの開発
⑵高感度電磁波測定技術の研究開発
活動状況
とを目的として、次の研究開発を行った(研究期間は、平成 17 年度から平成 21 年度までの 5 年間)。
⑴高感度電磁波測定プローブの研究開発
3
仙台リサーチセンターでは、電子機器から放射される不要電磁波による誤作動や情報漏えいを防止し電磁波
セキュリティを確保するために、光エレクトロニクス技術を応用した高感度な電磁波の測定技術を確立するこ
光電界・磁界プローブからの信号を高感度に検出するための信号処理技術の開発及び広帯域で高速な近傍電
磁界測定システムの開発
平成 21 年度の成果
電界や磁界によって光の屈折率や、通過する光の偏波面が変化する光学結晶を利用することにより、高い周
波数においても電磁界や回路の動作への影響の少ない測定が可能になることが知られている。しかし、この光
を用いた測定システムは、感度や周波数特性、安定性などの面で多くの課題が残されており、広く実用化され
る段階には至っていない。
本リサーチセンターでは、研究課題を「高感度電磁波測定プローブの研究開発」及び「高感度電磁波測定技
術の研究開発」の 2 つに分け、「プローブ」に関する研究開発では、「光学結晶材料・素子の開発」と「光電界・
磁界プローブの開発」を、「測定技術」に関する研究開発では、「信号処理技術の開発」と「測定システムの開
発」を目指した。特に磁界検出用の光学結晶材料については結晶の育成技術からの開発を実施し、高周波化と
高感度化を目指した。60GHz までの微弱な光信号と高周波電気信号の処理技術の検討を行い、最終的に雑音
レベルに近い電磁界の検出が可能な測定システムを作製し、測定技術の検証を行うことを目標とした。
本研究開発の目標と成果は以下のとおりである(図 1)。
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図 1 研究開発の目標と成果
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3.9 連携研究部門
⑴高感度電磁波測定プローブの研究開発
① 高周波測定に最も適した電気光学結晶として DAST 結晶
*1
を採用し、微小なループコイルと組み合わせ
て光ファイバ一体型プローブを完成させ、目標とした 60GHz までの高周波化と 40dBμV/m、40dBμA/m
以下の微弱な電磁界の検出を達成した。
*1 電界による光の屈折率の変化の高い DAST(4-N, N-dimethylamino-4’
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-methyl-stilbazolium tosylate、4-N, N- ジメチルアミ
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- メチル - スチルバゾリウムトシラート)と呼ばれる有機結晶。
*2
② 磁気光学結晶に関しては Bi 置換型磁性ガーネット に着目し、結晶の作製装置を整備して育成条件や
組成の最適化を行い高周波特性の改善を図った。さらに、直流磁界バイアスの印加による強磁性共鳴現象
を利用することで、高周波磁界の特定の周波数成分を高い感度で検出する測定法を確立し、40GHz まで
の測定が可能であることを実証した。
*2 高い周波数でも磁性を示す透明で薄い膜状の結晶。YIG(Yttrium Iron Garnet、
イットリウム鉄ガーネット)の一部を Bi(ビスマス)
や Gd(ガドリニウム)で置き換えた材料。
③ 平板型の光学結晶を用いた電磁界分布測定では、電気光学結晶及び磁気光学結晶を微細なアレイ構造に
することによって、数 10GHz の高い周波数においても、侵襲性の少ない測定が可能になることを実証した。
⑵高感度電磁波測定技術の研究開発
① 信号処理技術では、60GHz までの低雑音ミキサ、偏波変動の自動安定化装置、光差動信号処理装置の
開発を行った他、光走査システムのインターフェースやソフトウエアの高速化を図った。
② この信号処理技術と開発したプローブ及び走査機構を組み合わせ、
「プローブ走査型システム」及び「光
走査型システム」の 2 種類の電磁界分布測定システムを作製した。
「プローブ走査型システム」は「光ファイバ一体型プローブ」を機械的に走査して電磁界分布を測定するシ
ステムで、偏波変動の自動安定化装置により光ファイバの屈曲や温度による出力変動を抑制して、高感度な計
測が可能である(図 2)。
「光走査型システム」は平板型の電気光学結晶または磁気光学結晶と光ビーム走査機構からなる測定システ
ムで、極めて高速に電磁界分布を可視化することが可能である(図 3)。
これらの測定システムを用いて実際の電子回路基板やアンテナ近傍の位相を含めた電磁界強度分布の解析を
行い、光を用いた電磁界測定技術が GHz 帯の高周波において優れた特性を示すことを実証した。
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図 2 プローブ走査型システム 図 3 光走査型システム
これらの研究成果を広く外部へ公開するために仙台リサーチセンター単独で 1 回のワークショップを開催し
たほか、関連する学会等での講演発表や展示会への出展を積極的に行った。学会・セミナー等での講演発表の
総数は 12 件で、うち 6 件が国際会議での発表である。さらに 2 件の論文等の投稿を行った。
知的財産権を確立するための特許出願も重要な課題とし、磁性ガーネット結晶を用いた高周波磁界測定に関
する特許を 1 件、電気光学結晶とループコイルを用いたプローブの構造に関する特許を 1 件出願した。
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